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第3部   部門別に見た技術の動向
第3章  建設
  建築
3  動向と問題点


前述の近代建築技術の性格を実現する手段として,現在における構造技術,施工技術,新材料等についてこれらに重点を置き検討を加え,あわせて将来あるべき生産方式,計画,設備に焦点を合わせてみたい。
(1) 構造技術の進歩と変革

建築の発達を歴史的にみると,その重要な変革は構造上の技術的発展からきている。たとえば,古代における自然利用ないし加工の住居から柱,梁の使用をするようになったこと,またアーチ(迫持)の発明,ボールトドーム(半球の屋根)の駆使による大スパン(張間)の可能性,また現代においてはシャーレン(曲面版構造)がこれにつづいている。

わが国は世界有数の災害国であって,建築においては耐震,耐火,耐風の3耐久性を具備することが基本的に要求されているとともに,いちじるしく狭あいな国土の合理的利用と,都市公共施設に要するばく大な投資の経済的合理化が要求されているので,これらの要請に応ずる都市の建築構造は,鉄筋コンクリート(以下,R.C.と略す)造等の耐久的でかつ立体的である構造様式の普及である。しかし,わが国のR.C.造等の建築費は欧米に比してとくに耐震性のために,高額となることをまぬがれないので,合理的な耐震設計の推進と施工の能率化により建築費の低減をはかることが要求されている。

このことが国民所得水準の低いわが国において,都市の建築物の立体化を普及し,健康で文化的な生産および生活の場を作りだす道であるといえよう。
(a) 構造理論の進歩

構造設計上の外力および荷重取扱いの進歩

構造設計の基礎事項である荷重・理論・実験のうち第1に荷重の実状が詳細に調査され,とくに地震力・風力・積雪荷重の地域的分布に関する規定が建設省告示(昭和27年)第1074号として出され,ある程度地域別に実状にそくした設計の基準が示された。また資源調査会の勧告に基いて地震時における建築物各部の加速度の測定が開始されたことは,耐震設計合理化の基礎を固めるものといえる。

建築物の振動,弾性理論の進歩

理論としては静力学的弾性理論の一応の成果をみるにいたり,これと平行して戦時中に行われた耐爆構造の研究がもととなって,建物の破壊機構に関する研究がさかんになり,弾性体としての構造から塑性体としての把握がなされるようになった。動力学的にも地震動の非定常振動と建物との関係が積極的に解析されるようになった。

建築物応力の測定および実験の進歩

前項の理論の裏には実験的根拠があった。測定器械たとえば電気抵抗線式ひずみ計などの利用により,容易に構造物の応力状況が把握できるようになり,模型実験あるいは実際構造物の試験が数多くなされるようになってきたし,また起振機の設置により建物の動的性状の実体もある程度判明してきたことは戦後の大きな収穫であろう。

以上の基礎から各種構造の研究が進み,その一部は実際に活用されてきたが,たとえば地震動と地盤,そして建物との関係については不明な部分が多く,統一された見解をえていない現状であり,合理的な構造設計の実現についてはなお今後解決すべき技術の問題が残っている。
(b) 各種構造型式の進歩

R.C.構造

この構造は従来,柱と梁で架構が形式されるいわゆるラーメン(部材の接合の剛なるもの)形式が主であったが,戦後住宅の低廉化と不燃化を計る一手股として,間仕切壁の多いアパート等にはスラブ(床版)と壁版のみで構成されたR.C.壁式構造が採用された。この形式はたとえば箱に窓の孔をあけたような構造で,地震横力も上部荷重もすべて壁体にもたせるものであるが,耐震的にわきわめて有効な壁体を活用することによって,鉄筋やコンクリート量を相当節約し,建築費の低下をはかることができて,3階程度までの建物に対する構造形式の新しい発展として意味が深い。なお最近はシャーレン構造が新構造法として採用され,一部建築物には同構造法が使用されている。

鉄骨R.C.造

高層ビルの設計法として従来鉄骨R.C.造が採用されていたが,戦後は溶接技術の進歩にともない,鉄骨の接合法として溶接工法が広く採用されるようになった。このことは梁の断面をなるべくへらすことによって,使用できる室内空間の容積を増加するとともに,とくに大,中都市の密集地域内における施工時の騒音防止に効果を収めている。

木構造

膠着剤および接着工法の発達により,積層材利用の構造が考案されて,とくに今までの木造では不可能であったアーチにその特性が生かされているとともに建築費の低下に役立っている。

コンクリートブロック造

これは戦後とくに普及した構造法で,R.C.造のように型枠用木材を使用して建築する現場生産に対して,工場生産したコンクリートのブロックを鉄筋で補強して使用する工法であって,建築費もR.C.造に比して安く,研究の結果それまでの大きな欠陥であった耐震性の問題も解決したため,とくに昭和25年以来,住宅,低層アパート等壁の多い建物あるいはビル内の間仕切りとして急速に使用されるようになった。ただし目地部分の防水について一段の研究が必要である。

神戸市庁舎

組立R.C.造

R.C,の部材をあらかじめ工場生産して,これを現場で組立てるいわゆる組立R.C.造は,すでに戦時中から建築不燃化の方法とし考案されていたが,戦後工業生産化された。

作業が迅速であるので,現在2階建以下程度の工場,学校等に利用されている。

新しい住宅

軽量鉄骨構造

鉄骨造を安価にするため,最近薄鉄板を折り曲げた型鋼を利用する軽量鉄骨構造が考案され,低層の住宅,小工場に利用されている。

軽量コンクリート造

川砂利,川砂のかわりに火山の軽石や石炭殻などの軽量骨材を用いる軽量コンクリート造が生まれたのは,戦後の一つの収獲である。これは建物の重量を軽減することにより,耐震設計や基礎工法のうえで建築費の節減が可能なので,とくにその施工方法については大いに研究が進み,石炭殻を用いた軽量コンクリートは,主として2階建以下の壁の多い住宅に用いられる。

基礎構造

都市およびその周辺の軟弱地盤において建築されるR.C.造等はその数を増しているが,軟弱地盤における基礎工事の経済化と公害防止は,基礎構造や根伐り工事についての経済化のためきわめて重要となった。ことに都市内の建物の密集した地域の根伐り工事は非常に注意を要することになる。

このため土質力学は急速の進歩をみせ,各種基礎施工法も大きな進歩をみせた。
(2) 材料の進歩

セメントに関しては最近高スラグセメントが早急工事,寒冷地以外において使用されようになり,建築費が安くなり大いに普及されるべきであろう。

コンクリートの施工軟度を改良するために用いられるAE材およびセメント拡散材は戦後輸入されたもので,広く使用されてコンクリートの施工に貢けんした。なお,現在は国産品がでている。

従来はコンクリートを現場において混練していたが,最近大都市ではコンクリート会社より供給されるレディミキストコンクリート(いはゆる生コン)を使用するようになり,コンクリートの品質向上に役立っている。

セメント,石膏,合成樹脂等を結合剤として木屑や,石綿,ガラスウール,岩綿等を強く圧縮し,板をつくったり,あるいはさらにこの板を重ねて接着して合板とした建築板が生産されている。

合成樹脂を用いてつくる建築板は床材,屋根材,配管に利用され,その特性を生かしてさらに拡大するすう勢にある。

その他軽金属材料としてアルミ材の利用,断熱材としての気泡入合成樹脂板等が挙げられる。

戦後の材料の発達は,その物理的,化学的試験成績に根拠を置き,着実に進展していることは将来いっそうの発展を期待できるものである。
(3) 施工技術の進歩

外壁仕上げとして戦後打放しコンクリートを多く施工するようになったが,このため必然的に施工精度が高まり,コンクリート施工もバイブレータを使用することにより均質を維持できるようになった。また型枠としてメタルフォーム(薄鋼板)が使用されるようになり,さらに打ち継ぎをなくじ,型枠を経済的を使用する意味で現在サイロ(穀物倉庫)等に活用されているスライディング工法が発達した。また,鋼製パイプ足場の利用も進んでいる。

以上のほか,ビルの移転工法技術も,進歩して都市の区劃整理を容易にしている。また,新技術としてドリゾール軽建築資材を使用する建築法(スイス),サーモコン構法を使用する建築法(アメリカ)等が導入され,現在わが国ではいまだ実用化のための試験段階にある。
(4) 将来あるべき生産方式

施工にあたって要望される点は,建築費の低下と現場工程の削減による工期の短縮である。

建築における生産性の向上は,材料の選択による現場施工の簡易化と施工の機械化という2つの面から押し進められようとしており,進歩した機械や製造技術が施工の全般にまでゆきわたらなければならない。現場工程を可能なかぎり工場生産化して,労力を最も経済的に活用した量産方式が望ましい。

この意味においてprefabricationの出現に希望がある。これは「あらかじめ工場において建築物の一部分,または大部分を製作しておいて現場にて取付ける。」という意味のことで,将来の構造法を暗示するものといえよう。前述のレデイミキストコンクリートもprefabricationの一端とみることができよう。

この方式によって工事を簡単にして,建築物の質のレベルを向上させるのが目的である。

またplefabrictionに関連してcore systemがあるが,これは厨房,浴室,便所といった設備部分を1ヵ所に集めて1単位とするやり方で,これらの部分を室単位として工場生産することが将来の建築の1つのゆき方となるであろう。
(5) 計画

終戦直後は建物も質より量が重視されたが,最近は居住性の向上にも大きな努力が加えられ,いわゆる計画原論研究の進歩とともに,高層不燃化の構想の線にそって公団,公営住宅による最小限住宅の平面もとみに研究が加えられ,また官庁総合庁舎の出現も大きな特徴がある。

都市計画については戦前は道路計画の観があったが,戦後は住宅政策その他にからんで建築面からの研究が強力に行われてきた。
(6) 設備

最近の傾向としてコンクリートのビルの発達とともに,大きな商業建築では空気調整(Air Conditioning)設備を採用することが一般的となり,小規模な事務所建築にも採用される傾向がある。

技術的方面が向上してアメリカのレベルに到達するのも近い将来と思われる。わが国の建物は,欧米のそれにくらべて地震に耐えるために,梁や柱がことのほか大きく,ダクトスペースとして有効な空間をつぶさないためにはいわゆる高速ダクト方式を採用してダクト径を小とし,梁貫通あるいは柱骨組内にそれをおさめるなどの方法によらざるを得なくなる。騒音処理,吹出口等に関してもまだ進歩の余地があり,今後の研究にまつべき点が多い。

昇降機,エスカレータは,性能的には相当高度であるといえるが,その使用面でことに後者はデパート以外の建築に進出する余地がある。

給排水,衛生設備においては,給水管,雨樋などにプラスチック管が進出して,また冷,温水排管に銅管を使用する例が見られる。

電気設備としてはビル,工場などの大建築にたいして,低圧配電電圧の格上げの気運があり,すでにどの方針で計画している例もある。これは欧米ではすでに普及している。一般的問題として,家庭用電気器具の普及にとらなう住宅の配線適正化が重要な課題になっている。通信施設として,20回線以下の卓上小型交換機は正式交換手も不要で軽便なため大いに普及してきた。


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