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第3部   部門別に見た技術の動向
第2章  鉱業
  金属鉱業
2  採鉱


採鉱法の発達は使用機械の発達にいちじるしく影響される。戦時中は採掘に追われて研究が行われなかったため,技術の発達はみるべきものがなかった。

戦後は海外技術,とくに優秀な採鉱機械の輸入に刺戟され,また労働事情の変化に対応するため,坑内作業の機械化に重点が置かれるようになった。さらにこれはコスト引下げという経済的要求によって促進された。技術の進歩は採鉱作業の大宗をなす掘さくと積込運搬の面でとくにいちじるしい。

まず,細さく技術では,その進歩の原動力となったものはタングステンカーバイド・ビットの採用であった。これはすぐれた外国製品の輸入が刺戟となりその国産化が達成されたものである。このビットの採用によって,その磨滅がいちじるしく少くなり,従来数本のたがねを必要とした作業が,一本でたりるようになり,さく岩機やさく岩方式にも大きな改革をもたらした。もつとも代表的なものは従来のさく岩機を小型化したワンマン・ドリルの採用であり,細脈の多いわが国の坑内条件に適合するものとして広く使用されており,採鉱作業の合理化に好影きょうをおよぼしたことは特記すべきである。小型,軽量のさく岩機の普及とともに,一方では強力高能率のさく岩機が求められ,大型化の方向にも進歩した。この大型化にそったジャンボの発達が積込運搬の機械化と相まって坑道掘進の速度をいちじるしく高め,また大型さく岩機による長孔さく孔が可能となったことは塊状鉱床の採鉱法に新機軸を生み出した。

つぎに運搬積込みの機械化は外国機械の輸入と石炭鉱業,建設産業のこの面における機械化の進歩などから,すぐれた機械が国産されるようになったため,いちじるしく発達した。坑道細進においては,掘さく機としてジャンボ,積込機としてロッカ・ショベル,運搬機械としてグランビ鉱車,小型蓄電池機関車を総合的に組合せ,これに作業組織としてクルーシステムを採用するという近代的な一貫した採鉱技術が確立され,能率の向上に大きな効果をおさめている。坑内作業の機械化の進展と使用機械の性能向上によって,採鉱法にも大きな進歩がみられた。なかでも,切羽運搬機械としてのスクレーパの発達により,切羽における鉱石および充填ずりの運搬が容易となったため,従来広く行われていたシュリンケージ採鉱法に代って,充填採鉱法が普及したことは注目に値する。この採鉱法は

1) 鉱石中にずりの混入する率が少なく,鉱石品位の低下を防止しうる。
2) 採鉱のずりを坑外に出さないでそのまま充填材として使用しうる。
3) 採鉱実収率を高め鉱床を完全に近いまで採掘できる。
4) 軟弱な鉱床も安全に採掘でき,保安上良好である。

など種々の利点をそなえている。さらに選鉱廃滓を坑内に流体輸送して,充填材料として利用するスライム充填採掘法が研究されて,企業化された。これは従来の大きな敷地と経費を必要とする選鉱廃滓堆積場を不要とするという利点が加わるので,今後広く普及するであろう。

表3.12 採鉱法別出鉱比率

積込の能率化に役立つローダ

細脈の採掘に偉力を発揮する小型さく岩機

坑道掘進速度を早めたジャンポ

以上,戦後の採鉱技術の進歩の状況を概説したが,この間における生産性の向上は 表3.13 に示したとおり,昭和27年に比し銅鉱山においては約60%,鉛,亜鉛鉱山においても約60%と急激な上昇を示している。しかし,諸外国にくらべるといまだかなり低い。もちろん,わが国のような坑内掘しかできない不利な自然条件にあっては,いくら機械化しても,諸外国における機械化した大規模な露天掘にはおよばないことはいうまでもない。しかしながら,鉱床の規模や品位等の坑内条件に十分適合した機械化という点では,さらに研究すべき余地があり,とくに中小鉱山ではその条件に適したより能率的な機械化の途が残されている。

表3.13 銅鉱山および亜鉛鉱山の1人当り生産量の推移


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