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第3部   部門別に見た技術の動向
第2章  鉱業
  石炭鉱業
2  生産技術の概況



(1) 採炭

わが国の採炭方式を大別すると長壁式と残柱式があるが,戦後に入って長壁式採炭法が,鉄柱・カッペの併用によるカッペ採炭法,これに関連して必要な平型コンベヤ,さらにこールカッタなどの採炭機械の輸入および国産化によっていわゆる切羽の鉄化をもって確立され,鉄柱・カッペ切羽よりの出炭は長壁切羽からの出炭の60%におよび,またカッタ使用によるいわゆる機械採炭は,長壁切羽からの26%である。

鉄柱・カッペ切羽におけるカッタ採炭技術の確立への努力とともに昭和31年はじめて輸入されたドイツ石炭鉱業長年の研究の所産であるホーベル採炭機は,果然新型採炭機として業界の注目を集め,32年に入ってその輸入申請は急増し,近い将来その使用が軌道に乗れば,切羽における生産性は一段と飛躍するであろうことが期待されている。もちろん,石炭鉱業における生産性はその自然条件に左右されることも大きいし,またこれを乗り越えるべく種々の対策が考えられるが,とくに炭鉱の第1線である切羽の集約,可能なかぎりの機械化が,急務であるとされる。コールカッタ,ダウエルビユーラ,コンテイニヤス・マイナ等による機械採炭においてもいえることであるが,ホーベル採炭も炭層の自然条件および石炭の性質によって相当制約されるとはいえ,わが国炭鉱の当面している切羽の集約,出炭の増大,能率の向上等の問題を解決する有力な1つの方法である。もちろん西独といえども,その条件によってホーベル万能とはいえないが,もしその所を得たならば,切羽の面長,採掘進行速度は現在の約2倍,出炭は約4倍となって,従来の4切羽が1切羽となることになる。このような集約が行われた場合,坑内の維持坑道は短縮され,運搬系統も簡単化され,連続運搬は向上し,保安上も安全となる等の坑内構造の単純化が実現し,また採掘進度の増大によって作業条件は良,なりく作業管理も容易になる。

活躍中のコンティニヤス・マイナ 工場で組立を終ったカツタ・ローダ

切羽におけるホーベル採炭機

表3.5 採炭方式別出炭状況

表3.6 炭切方法別長壁式切羽状況

表3.7 支保方法別長壁式切羽状況


図3.22 1人1日当り石炭生産量

ところで,採炭の機械化,合理化の効果を知るための能率であるが,わが国炭鉱では,その科学的管理が過去まったく等閑に付されていたため,基礎となる資料も少なかったが,近年にいたり西独の鉱山原価方式が紹介され,合理的な作業過程の工数計算のための準備が急速に進み,作業別消費工数を調査できるようになった。この結果を西独のルール炭田と比較してみると,採炭においては機械化は大分進んだとはいえ,西独の2倍の工数を消費していることがわかる。

表3.8 作業別消費工数


(2) 掘進

石炭の生産には,つねに新しい採炭現場を求めねばならず,そのために坑道を先行して掘進しなければならないという林業の場合の林道開発のそれと似た他の産業にみられない特殊性がある。現在石炭を採炭するために保有している坑道は出炭1,000トン当りについてみると 表3.9 とおりで,その値は大差ない。

日本の炭鉱は単位面積当りの埋蔵量が少いため,より多くの坑道を掘進しなければならない宿命にある。

表3.9 出炭千トン当り維持坑道延長

最近になり各種の近代的機械が採用され,かつ切羽が集約され,カッペ採炭法が行われ,切羽の進行が早くなってくると,掘進能率の向上がさらにいっそう強く要望され,いろいろの方法が試みられている。最近では岩石坑道で1ヵ月150m以上も掘進した例がある。しかし掘進の機械化は切羽の機械化程進展せず,積込みに例をとると,沿層坑道で機械積は4.7%,半機械積は2.0%,岩石坑道では機械積9.7%,半機械積5.0%程度で,ほとんど手積によって行われている状態であるが,これでも従前にくらべれば相当の進歩といえる。また坑道の枠入においてはさきに述べた切羽の鉄化と並行して坑道の鉄化といわれる古レール,Iビーム等の鋼枠による施枠が目立ち,維持坑道における鋼枠の使用は飛躍的に増大している。その使用鋼枠については,規格が定められ最近は可縮,可屈枠等も使用されている。
(3) 運搬

石炭鉱業は運搬作業であるといっても過言ではなく,運搬が各作業のうちに占める比重はきわめて大きい。そのため運搬作業の合理化は開坑方式に対する批判とともに機械化およびスピードアップについて積極的な検討が行われている。

わが国の開坑方式は主として斜坑システムによったものが多いため,稼行区域の横および縦の拡がりが大きくなるにつれて運搬段数が増加し,能率の上昇を阻害する重大な要素となっている。切羽の平均深度は約300mに達し,最大は900mを超えている。長壁切羽についてみると500m以下からの出炭は約20%に達し,その往復に要する時間は平均63分,最大は3時間という切羽もある。

この打開策として昭和28年に炭鉱合理化計画として立坑97本を開さくすることを主体とする合理化案が検討され着手された。

今後の運搬は切羽の集約と立坑システムにより,運搬系統の簡略化が図られスピードアップされるであろうが,最近は切羽から選炭場まで一連のベルトコンベヤによって石炭を搬出しようという方法も2,3の炭鉱で採用されている。

さらに研究中のものに石炭のパイプ輸送がある。これは坑内排水あるいは近い将来の夢となりつつある水力採炭と同時に石炭をパイプによって坑外へ運び出そうとするものである。
(4) 選炭

選炭工程を大別すると,手選と機械選炭に分けられるが,近年はたんに炭とぼたとを分離することではなく,管理技術の進歩により需要に応じた製品をつくり出すという方向に変りつつある。処理量も年々増加し,昭和15年は出炭5,600万トンに対し機械選炭を行ったものは2,200万トンであったが,昭和27年には出炭4,600万トン,処理量3,000万トンと約30%増加している。その工場数の推移は表3.10のとおりで昭和15年から約3倍の増加となっている。

表3.10 選炭工場数の推移

機械選炭はバウム式,レオ式のみであったが,昭和27年より重液選炭が登場し,現在では30工場で採用されている。これとともに微粉炭の回収にサイクロン,PU法などが研究され,微粉の品質向上,実収率の向上に成果をあげている。また超音波による微粉の完全回収も研究されているが,これが実用化すれば,高能率に微粉を回収することが可能となるであろう。

機械採炭の進展により粉炭や微粉炭の生産が増加し,選炭技術の向上による精炭の品位向上にともない,多量の2号炭と廃石が生産されるが,これら2号炭や微粉のうち,4,500Kcal/kg以下の発熱量の低品位の塊炭が年間300万トン,微粉は浮選,分離層,沈澱などで捕収されるものは年間140万トン,さらにこれ以外に選炭水とともに放流されているものが年間約10万トンと見積られている。また採炭にともなって産出する廃石は生産炭の40%以上あるといわれ,そのうちの大部分は2,000〜2,500Kca1/kgで,これがいたずらにぼたとして棄てられている。これから判断すれば,2号炭の大部分,沈澱微粉,廃石は生産炭の50%以上を占め,これが低発熱量あるいは微粉であるために使用されず,そのまま廃棄されているわけである。したがって,もしこれらが技術的に効果的に利用されるならば,いわゆる未利用資源の活用となって,それだけ国家的にプラスになるばかりでなく,炭価の引下げに役立つことが期待できるのである。

低品位炭を利用ずるには,それが灰分を多く含み,発熱量が低く,また沈澱微粉のようなきわめて取扱いにくいものであるだけに特殊の装置を必要とし,しかも原産地山元で活用することが必要な条件である。すなわち山元またはその附近で利用するかあるいは価値の高いものに変形して消費地に輸送し,資金効率をあげなければならない。その手段の主要なものをあげると 図3.23 のように発電,煉炭または煉炭原料,ガス化,その他工業原料化等によるのが一般である。

図3.23

ところで,これらの利用方法はいずれも石炭中の可燃物を対象にしており,低品位炭中にとくに多い灰分は問題にされていない。というよりもこの灰分はいずれの場合でも,はなはだしい障害となっているが,むしろこの灰分を利用することによってこそ低品位炭の利用価値も高まるであろう。現在のところ化学工業原料化するにしても低品位炭よりも高品位炭の方が有利であり,さらに天然ガス,石油利用の方が有利である。

石炭中の灰分利用といえばもっとも大きなものは,高炉セメントの原料,肥料としての高炉鉱滓の利用であり,その他にボイラのフライ・アッシュの利用,石炭灰分中の特殊成分,例えばゲルマニウム,チタニャの分離抽出などが考えられる。低品位炭利用にはもつともつと魅力的な方法が研究されなければならない。


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