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第3部   部門別に見た技術の動向
第1章  農林水産業
4.  加工・貯蔵・輸送
(3)  貯蔵・輸送


果実,魚類の生産者価格は,いちじるしく豊凶に左右されるので,価格安定対策も,当然,講ぜられてしかるべきであろうが,果実,魚類,獣肉の冷凍貯蔵,冷凍輸送,戻しの技術研究を進めて,それらの施設を充実することも重要である。生鮮度を尊ぶこれら食品は,冷凍技術とその施設の整備によって,豊凶による生産者価格の変動を少くすることに役立つであろうし,小売業者の販売リスクの軽減をともなって,消費者価格の低下も期待できよう。

貯蔵は,単に冷凍のみではない,γ線照射による食品の腐敗防止の研究を進めることも考えられるべきである。

最近,穀物倉庫の冷凍施設による貯蔵の研究が進められつつあるが,穀類を俵,むしろに梱包したまま,検査,輸送,貯蔵している現況には問題があろう。俵,むしろを梱包,包装資材としないことは,わら加工による農家の副業収入減ということも考えられるが,前述したように,わらを農家の経営外に持だすことは,有機資源の消失による地力消耗を招来するという不利がある。

俵,むしろをやめれば,屈強な男子労働によらなければ,俵に梱包することができないという制約からまぬがれることができるだけでなく,荷役業者,需要者側においても,輸送貯蔵にあたっての労力が削減され,俵づめの穀類がしめるスペースなどの無駄も排除できる。これらのことから,穀類のバラ輸送,バラ貯蔵,そのための乾燥方法の研究も進められるべきである。バラ輸送といっても,その輸送距離,輸送品目によっては,梱包,包装容器も必要であろうし貯蔵の場合も容器が必要な場合もあろうから,俵,かますに代替すべき包装材料が問題となってくる。

やさい,果実の輸送には,一般に木箱が使用されているが,前述したようなわが国の木材需要の現況からすれば,代替容器による輸送や,バラ輸送も考えられるべきであろう。生鮮度と,品質が尊ばれるやさい,果実のバラ輸送には幾多の問題もあろうが,生産者価格,消費者価格の低下が期待される以上,所得弾性値の高いやさい,果実の消費市場拡大にも貢けんするであろうから,バラ輸送の研究は,真剣に考えられるべきであろう。

木材,薪炭の輸送は,石炭とともに粗材料として,わが国輸送の最も大きな部分である。工場,都市の偏在,集中化と森林資源の奥地移行にともなって長距離輸送,交錯輸送は増大する一方で,一連の研究すべき問題が残されている。とくに森林の奥地開発が進むに従って,奥地林に多いブナ材の山元貯木方法の研究と,その腐敗防止をはかることが必要である。また,木材生産費の大部分をしめる輸送費削減のため,林道,索道等の施設,およびトラック,貨車等の運搬機器等についての研究も進めねばならない。

以上,農林水産業についての現況と問題点を叙述したがこれを要約すれば次のようになる。

(1)生産基盤たる土地と水についての現行の調査は,全国的統一を欠き,調査制度にも疑問がある。これらの調査は,全国統一的に行い,現行行政区画,あるいは問題となっている道州制の行政区画にとらわれることなく実施さるべきであり,各産業別に行われている諸調査を統合し,調整する土地利用調査機関の組織化が望まれる。英国における,第2次大戦中の食糧増産対策の展開に土地利用調査所による土地資源の徹底した精密な調査が果した役割を想起すれば,あえて多言を要しないであろう。
(2)生産技術については,農業においては,地力培養を中心にした新しい技術体系を,機械化の方向において樹立さるべきで,とくに畑作と畜産の振興に期待されるところが大きい。そのための研究の実施にあたっては,農民の経験と英知の集積である農家経営の実態のなかから,その方向を見いだすことが重要である。 林業については,集約的な育成技術に関する基礎ならびに実用化の研究を進めて,木材供給量の確保に努力するとともに,木材資源の高度利用に関する画期的技術の確立が望まれる。 水産業については,魚撈技術よりは,むしろ資源の調査,開発,培養,なかでも沿岸漁業のそれに力点をおくべきである。漁業海域の縮少に対する対策としては,市場の問題を考慮しつゝ,未開発海域の漁業資源調査を長期にわたって実施して漁業資本を投下し,未開発外国海域での外国との協同操業をはかるべきであろう。 そして,漁業制度,林地の農業的利用のための制度,水利慣行等の改革によって,これらの生産技術はますます発達し,生産力は飛躍的に向上するであろう。
(3)生産基盤が整備され生産技術の発達をみても,発達する技術を駆使する農林漁民の教育,啓もうと,技術者の資質向上をはからない限り,技術は,その本来の機能を発揮せず死物と化すであろう。 発達する技術を駆使することのできる農林漁民が形成されてゆくための努力,あらゆる産業への労力としての適格性を獲得し科学技術の広い裾野を形成しようとする努力は,すでに小さな新しい芽として動きつつある。これらの新しい芽である理科教育や,普及活動のなかから,正しい教育,普及方法の理論を抽象し,その普遍化に努力すべきであり,教育,普及の内容を,農山漁村の多方面にわたる指導機関が,それぞれの専門に応じて深化し,充実せしめるとともに,相互に連絡調整する努力を続けねばならない。とくに量的には確保しえても,質的に確保できず,問題の多い農林水産業関係の教師,技術者の資質向上をはかるための措置が望まれる。
(4)盲点となっている加工,貯蔵,輸送については,農家所得の増大という視点に立って,一般消費者への低価格供給をはかるための各種技術を研究することに努力すべきである。同時に,クロレラ類,酵母等の研究を進めて,これを企業化し,新食糧資源開発をはかるべきである。

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