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第3部   部門別に見た技術の動向
第1章  農林水産業

農林水産に業に従事する人々の生活は必ずしも,豊かで,健康なものとはいえない。わが国の経済発展の過程からする農林水産業の生産力の低さがその決定的要因一方,わが国の食糧資源は不足し,年々数億ドルにのぼる食糧を輸入している。食糧輸入が,わが国の貿易に大きな負担となっている現状から,農・畜・水産物等の食糧の自給力を高めてゆくことが,わが国の経済発展のために要請されている。また,工業原料,建設資材などとして必要な森林資源も,近年とみに需要の激増をきたし,その生産増大は,緊急な課題となっている。

生産力を高め,生産に必要な資源の開発を推進して,農林水産業に従事する人々の生活を,豊かで,健康なものにするため,科学技術の発達に期待されているところは大きい。

生産を高めてゆくためには,まず,生産基盤たる領海および公海と,2,400万町歩の林地と,600万町歩の耕地の利用についての,科学的究明からはじめねばならないであろう。

生産基盤の科学的究明のうえにたって,生産技術の発展が期待される。しかしながら,漁業制度に制約を受けて,中小漁業経営体には技術の発展が少ない。また,少数の巨大な森林所有者の存在することが,森林開発の阻害要因となっているだけでなく,ぼう大な零細森林所有農家が併存して,技術の発達を停滞させている。農地は解放されたが,依然として,林地,草地の農業的利用のための制度や水利権に不合理が存在し,零細な,手労働中心の農業構造は,技術の発達,普及を渋滞させている向きもある。これらの制約の排除が技術の発展をともない,生産力を飛躍的に上昇させることは,農地解放による農民の生産意欲の向上が,戦後,わが国の農業生産力の増大をもたらしている事実から明白である。

戦後の社会,経済条件は大きな変化をみせ,戦前における生産技術体系は,改変を迫られ,水産においては資源調査を,林業においては育林技術を,農業においては畑作および畜産の技術を重点に研究を進めて,農林水産業の生産力を向上することに,多大の期待が寄せられている。

しかし,試験場の研究がいかに発展しても,生産者たる農林漁民の技術水準が低位であり,科学的資質に欠けるところがあっては,農林水産業の生産力向上も期しえないであろう。明治以来,試験場を中心にした技術指導は,成果をあげてきたとはいえ,生産者は,零細,手労働中心の,低い資本の有機的構成のなかに育ったので,一般に,生産者の技術は停滞しがちであるが,試験場の研究は,飛躍的な発展をみせている。停滞的な生産者の技術と飛躍的に発展する試験場の研究との間に生じたギャップをうめることが,きわめて重要になってきている。

科学技術は,単に生産者たる農林漁民のためのもののみではない。,農林水産物を消費する一般大衆にも,また,その恩恵がおよんでしかるべきである。農林水産業における生産に関する技術の発展のみではなく,,生産された後,消費者大衆が入手するまでの加工・貯蔵・輸送に関する技術についても,科学のメスを入れ,国民に低廉豊富な生活資源を供給して,はじめて,科学技術は,国民生活を豊かで,健康的なものにするという,基本使命を果したことになるであろう。

したがってここでは,生産基盤,生産技術,生産者および加工・貯蔵・輸送に関する問題をとりあげることとする。


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