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第2部   科学技術発展の基盤
第8章  科学技術情報活動
1  概説


あらゆる科学技術の発展の基礎には,必ずその諸活動の成果を発表しそれを吸収し利用するという知識の交流が行われる。1つの新しい研究,新しい製品の製造において,今までに得られた知識の集積のなかから,必要なものを探しだし,それを完全に吸収することから出発して,新しい発明,発見が行われ,これが常に循環している。いいかえれば知識の交流の場のなかで人類の文化が築きあげられているのである。

科学技術情報の交流には,いろいろの形がある。その最も単純なものからはじめるならばまず会話,討論会,国際会議,という,直接意見を交換する方法,および科学技術雑誌,図書等の刊行物により,研究や調査の成果を発表する方法などがあげられよう。

これらの方法は,古くより行われているが,それだけでは最近の科学技術の進歩にともなう情報発表量の激増のなかで,科学者,技術者が,必要なものを入手することがきわめて困難となり,このため,ぼう大な刊行物のなかに含まれる論文やニュースを整理し,活用をはかるドキュメンテーション活動 *(1) が必要となってきている。


*(1)Documentation文献整理活用活動゛

この活動は,現在のところ,文献抄録,文献索引の作成を中心とし,文献の複写,翻訳の仕事をも包含して行っているが,それを専門に行う機関が各国にできつつある。また,この活動は,電子技術の進歩とともに,次第に文献をはなれ,文献のなかに含まれる「情報」を単位とする整理技術を研究し,その利用を行いつつある。さらに科学技術情報交流の仕事の国際的性格から,ドキュメンテーション自体が国際的関連のなかで行われる傾向となり,ユネスコおよび国際ドキュメンテーション連合(FID) *(2) などが中心となってこの方面の仕事をしている。またドキュメンテーションは,その仕事の性格上,国際規格の問題,図書館活動と関連が深く,FIDは国際規格機関 *(1) (ISO),国際図書館協会連合 *(2) (IFLA)と協力して,その業務を行っている。


*(2)Federation International de Documentation


*(1)International Organization for Standardization


*(2)International Federation of Library Association

次に,科学技術情報交流の仕事のなかには,情報の整理を行うぱかりでなく,文献自体を集め,それを保管すると同時に,その相互貸借などにより文献の利用をはかる図書館活動があり,とくに米国および英国において活発である。

以上の科学技術情報交流活動のほか,最近さかんになってきたものとしてコンサルテーションと,情報サービスがある。コンサルテーションは企業体が,その運営上心要とするデーターの入手ないしは,新工場の設計を行うとき,それを行うための職員を傭わず,心要なとき技術士(コンサルタント)に頼んで代行させる方法である。これは,企業体の経営の多角化,および生産の合理化の運動とともに発展し情報交流活動の一翼を担うものである。

情報サービスは,現在のところ諸種の間合せに対し,データーや情報を提供する活動である。しかしこれは,前述の会話,会議等の意見交換方法を,さらに集団化したもの,すなわち不特定な情報需要者と,不特定な情報所有者との間で情報を交換するものであるが,この活動について,さらに研究する心要があろう。

以上の諸点につき,わが国の現状を概観しよう。

討論会・会議

情報交流経路のうちこの経路は,科学技術研究体制の1つの問題点として,最近重要視され,とくに近年各学会の国際会議が活発となりつつある。しかしまだ全般的にみて,十分な体制にあるとはいえない。

科学技術雑誌の発行は,その数においてわが国には世界に誇り得るものがあるが,しかし,その内容において,後述のように多くの問題をもっている。

図書館活動

世界においても非常に重視されているが,「専門図書館職員の質的低さ」という,世界共通の悩みと,とくにわが国における問題点として,「研究および生産活動における,文献整理の必要性」の認識が低いため,十分な活動をしていない。わが国には,専門図書館協議会,国立国会図書館を中心とする支部図書館組織があるが,その活動はまだ初歩的段階であり,科学技術情報交流の経路としての地位をもつにいたっていない。

ドキュメンテーション活動

後述のごとく現在まだ十分な体制にはないが,昭和32年,日本科学技術情報センターが設立され,その事業を専門的に行いうるようになったことはく科学技術情報交流において,画期的なことである。

最近の傾向

最後に,これらの情報交流の諸活動は,それぞれ細分化されかつ,専業化しつつある。これは,それ自体望ましいことではあるが,一方,それらの間の調整が必要となりつつある。すなわち,科学技術雑誌の発行とドキュメンテーションは,均衡を保つ必要があり,またコンサルテーションや情報サービスは,その基礎に文献の整理を必要とする。これらの活動と図書館活動は互に独立するものではなく,さらに科学技術の各専門分野における情報活動に不均衡があることも望ましくない。

これらの間を常に調整しつつ科学技術情報活動の振興をはかることが,わが国の科学技術の発展の上で極めて重要である。


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