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第2部   科学技術発展の基盤
第7章  普及活動
2  日常生活への普及
(2)  マス・コミュニケーションによる普及


現在,科学技術についてのマス・コミの大部分は報道としてあらわれている。新聞,ラジオ,テレビニュース映画がそれを代表している。内容は原子力の問題,ミサイル,人工衛星など,政治,国際問題としての科学技術に重点がかかり,国内の科学技術上の問題でも,政治との関連において扱われることが多い。

これに対し,新聞の科学欄,教養欄,ラジオ・テレビの教養番組,科学短篇映画などは,科学的知識を教育的に流そうとするものである。しかし量は少なく,最近までのものについてみれば,新聞で科学欄あるいはそれに準ずる欄を設けている数社でも,週1回,朝,夕のいずれか半ページ位であり,ラジオの教養番組では,時間にしてNHKが全体の6%,民放40社の平均は4%である。科学雑誌は著名誌でも発行部数はきわめて少ないようである。また科学技術図書は発行点数で全体の15%程度である。科学短篇映画は,「佐久間ダム」が常設館に上映されて以来,企業のPR映画,記録映画として,短篇映画年間製作本数約600種の3割にもおよぼうとする程に成長したが,一般的に常設館に上映されたものは数えるほどである。

少い理由として,現状において科学技術関係のものが大衆にうけとめられなく,企業としてなりたたないということが常にあげられているが,最も大きな理由はマス・コミの報道性以外の基調が,娯楽性,流行性にあるからだと思われる。ラジオ,テレビの娯楽芸能番組が圧倒的に優位な編成,出版界の投機的なブームと称せられる傾向,常設館上映映画の娯楽性がそれを物語っている。

商業的に作られた流行性や娯楽性は,回転率の高いもの,寿命の短いのへと流れ,受け手の側においても,娯楽のバラエティが富めば富むほど,科学的な思考のいらない娯楽へと走る結果となり,思考の必要性の強い科学技術のものは,うけとめられないという悪循環が生まれてくる。その結果,科学技術関係のものは圧迫されるという事態となったのであろう。

また報道にしても,教養にしても科学技術の成果だけが内容とされることが多く,それにいたった研究の過程,背景となった社会事情,国民生活などとの関連には余り触れられていない。片方に科学技術の恩恵とも思える新しい生活様式の実際の体験,あるいはそれへの要因がある時,他方から生活と結びついた科学についてのニュースや番組がいろいろと流されれば,科学と生活とを結びつける効果はいっそう大きいであろう。

マス・コミの一方におけるこのような傾向に対し,最近その傾向をかえたり強力な力を活用しようとする動きが部分的にあらわれてきた。

その1つは,新しく発足する教育テレビや,NHKの番組改正の際の科学番組の優遇,あるいは各新聞,雑誌の科学記事の増加,さらに良書普及運動,教育映画の推せん制などである。これらは,主として送る側のものである。

他の1つは,読書会や,科学の会などのサークル活動,ラジオ・テレビの集団聴取,映画や公民館等非劇場での上映,など地域的な集団利用の動きである。これらは,マス・コミの媒体の地域的の普及差(たとえば新聞の購読において,鹿児島は全国平均購読率の1/3,東京の1/10)とからみ合いながら,徐々に発展しつつある。前者の送る側の新しい活動の成否も,その有形の利用者,推進者である集団利用活動の発展と平行して考えられるであろう。


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