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第2部   科学技術発展の基盤
第7章  普及活動
1  生産活動への普及
(3)  農業への科学技術普及


農業の場合,保温折衷苗代,2・4-D,新農薬の普及過程で普及の問題をとらえてみる。

保温折衷苗代は,ある農家が障子紙で苗を保護していた実践的なものを農業試験場がとらえ,被覆材料を障子紙から油紙,ビニールへと発展させた健苗育成技術で,早生品種の誕生に助けられ,災害回避,早場米として収入増,反収増という魅力と,被覆材に対して補助金が出されたためにその普及はいちじるしかった。2・4-Dは,手労働にかわって田の雑草を駆除する薬剤で,米国から導入され,国産化されるにあたって,国,公立試験場で系統的かつ周到に薬害の程度,施用基準が試験研究され,全国的な検討のもとに普及が進められた。保温折衷苗代が儲る技術であるのに対し,この技術は楽になる技術であったうえに,弱い作物に薬害があって,撒布の範囲が限定されたし,また漑排水と関係深かったために,その普及は,土地と水にからむ村の古い習慣や家族からの制約を強くうけた。たとえば,若手が先に手をつけた村では早く使用されたがそれ以上拡がらなかったのに。村の有力者が導入した場合には,全村に拡がったという現象が随所にみられた。新農薬の場合は,それが動力撒布機,または簡易な背負撒布機の進歩と,全村的な共同防除組織の発展に支えられて普及したところに特徴があった。

農家は,果樹園芸農家の一部を除いては,一般に経営と生活が未分離の状態にある。そこで経営者といってもその意識は,経営に対するのと同じ位に生活維持の面に向けられる。新しい技術をとり入れるための資金は生活資金と共通となりがちであり,最近のように兼業化が進むと婦人,老人が経営の全面におし出される。このため,経営内部からの改善意欲は他の産業部門にくらべて乏しく,また一部に意欲が出てもそれが改善に発展するまでに障害が多く,上の例にみられる補助金による経済的援助,古い社会習慣の打破,共同的な技術活動などが,科学技術普及の前提となる。したがって,農業,蚕業,林業,水産業の各分野ごとに,それぞれ地域普及制度が設けられている。そして農業の場合,技術問題,経営問題,さらには生活改善上の問題について農家の相談相手になるような普及者がおかれている。


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