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第2部   科学技術発展の基盤
第6章  科学技術者の育成
1  わが国の現状と動向
(2)  学校教育による科学技術者の育成


学制改革

終戦以来,わが国の学校教育の制度,内容,方法,さらに中央,地方の教育行政制度などに画期的な変革が行われ,民主主義の理念に基く,6・3・3・4制の新教育制度が実現された。終戦から翌年にかけては従来の教育制度の解体となり,続いて昭和22年に教育基本法および学校教育法の制定をみ,これによって学校制度の単純化,義務教育の年限延長と中等教育の改良,男女間の差別撤廃による教育の機会均等,高等教育の普遍化等と,いくつかの特色をもつ新教育制度を樹立することとなった。同22年度から義務教育としての中学校,23年度に高等学校,24年度には大学と,新制度がそれぞれ実施に移された。また教育行政の民主化,地方分権化,教育の自主性確保のため,各地域に教育委員会が設置され,占領下という特殊事情のもとで,きわめて短時日の間に制度的には一応整った形体をかたちつくり,去る昭和28年には新制大学第1回卒業者を,昭和33年には新制大学に新しく設置された大学院から新博士課程修了者を送りだすまでにいたった。

小,中,高校の科学技術教育

科学技術の基礎となる理,数科教育の時間数は全教育時間に対し,小,中,高校において30%前後で,欧米諸国に比して必ずしも少ないとはいえないが,生徒の学力の低いことが批判されている。これは1学級当りの児童,生徒数の過剰,教員の質の低下,施設・設備の不備,老朽化1などが主な原因として指摘されている。ことに高校においては理科・数学に選択制が認められているために,科学技術者として必要な基礎科目の修得が不十分なまま,大学に進学するものが相当にあり,これが大学における教育に少なからず障害をおよぼしている。これに対し,文部省では高校の教育課程につき,就職者,大学進学者(文科系,理科系)別などの生徒の進路,特性に基いた5種類の教育課程を,昭和31年度から実施を目標として高校に示したが,実施状況はきわめて微々であるというのが実情である。

最近とくに問題となってきた小,中,高校における道徳教育,社会教育と理科教育との関連ならびに理科教育の実施方法が,文部省付属機関の教育課程審議会によって再検討され,教科書中心から実験実習に重点を移す方針を打ちだすなど,理,数科教育に対する関心がひろまってきている。

旧制度では,中学校と実業学校との2元制が敷かれ,後者で職業教育が行われていたが,新制度の高校では,普通課程と職業課程とを1本化し,職業教育を重視する方針がとられた。これを推進するために,昭和26年産業教育振興法が制定され,翌年から,中学より大学にいたる産業教育に必要な国庫負担,および私立学校に対する補助金が支出されることとなった。

なお,小,中,高校における理科教育の高揚をはかるため,施設・設備の充実,教育基準の作成,教員または指導者の養成のために,理科教育振興法が制定され,昭和29年から実施に移された。

以上の2つの法的措置によって,理科教育,産業教育に必要な施設・設備を一定基準までもってゆくために整備拡充がはかられているが,いずれも予算的に十分でなく,かつ立法当時の計画が技術の速度に合わないため,整備計画の改訂が強く要望されている。

高等教育機関の科学技術教育

学制改革によって,高等教育機関は新制大学と短期大学とになった。新制大学は旧制の大学,高専および教員養成諸学校が基本となって編成され,下級1〜2学年は一般教養に主をおき,専門についての修業年限は旧制に比し短縮されたことになる。ただし,医科,歯科については,従来の4年制を6年制とし,さらにインターン,国家試験を加えて専門能力の低下を防止している。短期大学(短大)は暫定措置として設けられ,修業年限は2〜3年(大部分は2年)で,家政関係を主とする女子の学校が圧倒的に多い反面,医,歯,薬,商船,水産関係はなく,理,工関係がきわめて少いことが特徴である。

大学および短大の機関数においては, 表2.17 のように,大学数の飛躍的増大となった。

表2.17 高等教育機関の変遷

卒業者数をみると,昭和14年以前の14年間は大学高専の文科,理科合計で年平均4万5,000人であったものが,戦時から新学制までの12年間は年平均7万7,000人,昭和27年以降30年までは大学,短大とあわせて年平均10万5,000人,昭和32年3月卒で13万1,000人と増加している。この増加は,主として教育の普及,女子学生の増加,勤労青少年のための夜間部の増設(戦前の5倍以上)されたこと,外地からの引揚げ,人口の自然増などが原因とみられている。

過去5年ごとの,大学別,学部別の卒業者の推移は 表2.18 , 図2.28 のごとくである。これを国・公立と私立別にみると,表2.19のごとく,戦前に比して国・公立は,理科系で2.4倍,文科系では2.1倍であるのに対し,私立においては理科系で2.4倍,文科系で4.5倍となり,私立の文科系の増加がいちじるしい。したがって文科系と理科系の比率は,戦前(昭和9年)73:27であったのが昭和31年は79:21,昭和32年は76:24で依然として文科系卒業者が圧倒的に多いことが見られる。

表2.18  5年ごとの大学別,学部別高等教育卒業者数

図2.28 高等教育卒業者の大学,高専,短大別比較図

表2.19 戦前戦後における国,公,私立別,文,理科別高等教育卒業者概数

また,大学,短大における学部数を文,理科別,学部別,また国,公,私立別にみれば, 表2.20 のとおりである。

表2.20 大学別,国,公,私立別学部数

最近の社会的要請が資質の高い科学技術者に向けられてきつつあるため,大学院の存在が相当に重要視されている。大学院数,在籍者数,入学状況を分野別,国,公,私立別にみると, 表2.21 , 表2.22 のごとく,入学定員に対し入学者は非常に少ない現状である。

表2.21 大学院数および在籍者数

表2.22 大学院入学状況

以上は量の面からみた現状および動向であるが,質の面はつぎのとおりである。

新制大学の教科内容は,一般教育(人文科学,社会科学,自然科学)と専門教育との総合に重点を置いている。一般教育つまり教養科目の重要性は広く認められている左ころであるが,4ヵ年間で専門教育をもあわせて修得するところに難点がある。旧高専を母体として組織された大学は,教職員の量と質,施設・設備等の準備不足のままの発足であり,旧制大学の転換したものも施設・設備の老朽化,未更新のものが大部分で,加うるに教職員の数,教育方法に旧態依然のものが多いこと,さらに教官研究費(講座研究費),学生経費等の主要教育経費は一般にきわめて不足しているのが現状であろう。

手製の装置で行われている真空管の発振波長試験

大学院においても,指導専任の教職員定員が増加されず,かつ予算措置もほとんど講ぜられていないため,大学院学生の質の向上に対しては十分な期待をもつことができない。また,社会の大学院に対する見方も十分とはいえないばかりか,大学院学生の受入れについても不満足の点が少なくない。一方,産業界は職員の再教育および研究の場として,大学院を活用しようとする気運が濃厚である。

理,工系の短期大学は,前述のごとく修業年限が短いので,専門技術の習得については中途半端であるとの批判が産業界から指摘されている。これに対し中央教育審議会において,短大制度の改善について検討した結果,高校と結びつけた5年制専科大学(仮称)とすることを答申している。


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