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第2部   科学技術発展の基盤
第2章  外国技術導入
7  今後の問題点
(1)  技術導入と研究


昭和31年度の技術導入による対価の支払金額は120億円に達し,昭和25年外資法制定以来の支払総額は360億円(1億ドル)をこえた。契約の数は年々累積してゆくため,今後かりに新規契約の件数がへるとしても,対価支払額の増勢は当分衰えないと思われる。

今までのところ技術導入のための外貨支払額は全輸入外資支払額の1%程度にすぎず,結果として得られた輸出増加により十分回収しているので,外貨の問題としてはそれほど神経を使う必要はないが,問題はむしろ国内での研究投資に比較して相当の額に達し,とくに進歩のいちじるしい化学や電気の分野 * では,技術導入による対価の支払額は比較的大きく,昭和31年度の国内研究投資額(研究業務費)が,それぞれ88億円,39億円であるのに対し,技術導入対価がそれぞれ51億円,20億円と研究費の約60%にも達している。しかも研究投資額が伸びなやんでいるのにくらべ,技術導入の対価支払いは年々増加の傾向にある。このことは経済的にも研究活動を圧迫する可能性を示し,さらに国内の研究意欲を滅殺するという面から批判されている。

しかしながらわが国の現状からみて,経済自立のためには是非とも導入する必要のある技術もあるので,導入による弊害をできるだけ避け,さらに各種の障害をのりこえて研究の促進される政策がとられる必要がある。

国内で開発の可能性がある技術を対象としてみた場合,国内研究によるか,技術導入によるかをきめる要素は,外国の企業やその技術に対するネームバリューや信頼度の問題もあるが,原則的には研究に要する時間と経費に関する採算の問題に帰する。従来は彼我の技術水準の差があまりにも大きすざたため,時間的要素が大きく,その上ネームバリューや信頼度も意味があったので,経費的な採算比較は厳密になされていなかった。

しかしながら,国内研究能力も次第に恢復し,研究に要する時間にも大差がなくなり,生産規模が拡大され,研究投資余力もできてくる一方,技術導入対価負担による製品のコスト高が問題になってくれば,国内研究投資の方が有利となる可能性もでてくるであろう。しかも国内市場だけを対象とすれば,現在のように主要技術の源泉を海外にもとめ,製品の生産面だけに重点をおき,国内研究投資を節約するのも1つのゆき方ではあるが,長期的にはわが国の工業にとって最も必要な国際市場における競争力の培養と,正常な国際間の技術交流という両面から,国内研究の有利性が考えられる。

資源に乏しく人口の多い国として,少い資材から付加価値の大きい生産をしなければならないことを考えた場合,むしろ新しい技術をうみだして,その水準を背景として高付加価値の特色ある製品の生産を可能にし,対外競争力を強大にすることが望ましく,さらに技術そのものを商品として海外に輸出するようになれば,製品競争における優位と相まって研究投資の回収を容易にし,さらに新しい技術をうみだす良循環へ通ずる道となる。さしあたり国内の技術基盤の確立したものから重点的な研究を進めてゆけば,技術開発における国際的分業の方向もおのずからでてくることになり,この観点から技術導入の方向もはっきりしてくることになろう。


* 学問別分類としたため第1章図2.14における化学のほかに石油,ゴム,窯業関係,パルプなどを化学分野に含めている。


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