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第2部   科学技術発展の基盤
第2章  外国技術導入
3  外国技術の導入とその要因


外国の技術が国内に導入される手段は,科学技術者の外国への視察や留学,外国文献の入手,完成品とくにサンプルの輸入による調査研究,生産手段としての機械装置の輸入による製造技術の獲得,などの間接的な技術の吸収手段と,対価を支払って特許やノウハウ図面などを購入する直接的なものとに分けることができる。前者は科学技術の基礎的な面の研究の指針ともなり,既成技術をより完全にし,より改良するという意味で研究成果のあがった後にも必要なもので,今後もますます活発に行わねばならないが,ここでは普通,技術導入と呼ばれる後者の場合について考えよう。

このような技術導入の認可の根拠となる法律には,「外資に関する法律」(昭和25年法律第163号)(略して外資法といわれる。)と「外国為替及び外国貿易管理法」(昭和24年法律第228号)の2つがあり,前者によるものを甲種技術援助契約,後者によるものを乙種援助契約と呼んでいる。甲種は契約の期間または対価の支払の期間が1年以上で,しかも外貨によって対価の支払を行うものであり,乙種は対価の支払が1年以内に終了するものである。したがって,扱われる技術内容もおのずから異り,甲種は特許の実施権取得,包括的技術提携,高度な生産技術などが対象となり,乙種では機械設備の設計図面,簡単な技術情報,部分的なノウハウ,技術者の招へいなどが対象で,図面代が支払金額の大半をしめる。しかし,契約の形によってはこのような区別は必ずしもあてはまらない場合もある。

戦後,政府は外貨事情の改善と基礎産業の復興は国家の緊急施策であるとの観点から,外貨を節約し,また積極的に外貨を獲得しうる技術や,国内の重要産業に寄与しうるような技術の導入については強い制限を加えずに認可するという方針をとった。

一方戦後の世界的傾向として製品輸出の困難な地域への技術の輸出が,技術の商品化という傾向からさかんになり,これには受入れ側に相当の技術的,経済的基盤が必要であるが,わが国のかなりの技術水準と工業力,および加工貿易依存という経済条件は,これらの諸外国にとって格好の技術の市場たるに十分な条件となり,さらに国の内外を問わず製品の品質やコストの差が,技術そのものに起因する傾向が強くなり,市場競争の点から,わが国の企業としても優れた技術は相当の技術料を支払っても採算に合うという認識がうまれた。以上の諸々の条件が重なって,今日みられるような導入全盛時代が到来したものと考えられるが,このような基調のうえに立つものとしてさらに次のような具体的な要因が存在している。

1) わが国では戦前から多くの企業が外国との技術提携を行い,企業的にもつながりをもって自己の技術水準を維持し,向上させてきた。戦後,これらの企業は何をおいても戦前の提携を復活した。その他の企業でも同様にある程度の水準をもったものが,その生産品種の全般について,とくに生産工程に関する技術の包括的な契約によって,また既成技術の穴埋めを目的として,その企業の技術水準を常に世界の水準に接触させようとする理由から,外国企業と提携する傾向がみられる。
2) 戦後の技術進歩の結果,多数の新製品,新技術が登場し,わが国にはほとんどその基盤がないため,急速にその技術を導入して製品化する傾向があった。しかもこの傾向は,国内各企業の競争から多数の企業が同一種類の技術を各国から導入するという事態をもたらした。 もちろん,これらの技術のなかには,今後とも,困難な条件をおしてまであえて国内開発をするよりは,すべて外国技術の導入に依存する方が有利だと思われるものもあり,技術の国際分業という観点から導入が促進されるものもある。
3) これらの新製品,新技術についてわが国に相当の技術的基盤があっても特許権が相手側にあるため,導入契約によって生産する必要が生じたものもあり,また,技術売買の中心となる特許権は,一率に15年の有効期間をもっているが,さらに「連合国人の工業所有権に関する戦後措置令」によって,戦時中有効であった外国人特許の大部分が一率に10年延長されたことが,この種の導入傾向にかなりの影きょうを与えている。
4) 海外ではすでに企業化されている工業をわが国ではじめる場合,わが国にその基礎がないめ,ノウハウや設備の指導を受けるのはやむをえないとしても,国内ですでに工業化されているものでも外国技術によって他の企業を圧倒しようとして,その指導を仰ぐという傾向があり,さらに外国技術との提携自体に信頼感をもったり,外国製品の商品名が通用しやすいという市場条件から,外国企業やその商品名のネームバリューを利用するために外国企業と提携する傾向がみられる。
5) 外国の大資本がわが国の低賃金労働力(技術者を含めて)や,極東におけるわが国の立地など特殊条件を利用する傾向がみられる。 実際の導入にあたって,個々の契約の成立には通常これらの要因のうちのいくつかが関連しているとみるべきである。

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