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第2部   科学技術発展の基盤
第1章  研究活動
5  民間企業の研究


わが国の民間企業の研究活動は,戦後の経済混乱により一時は不振をきわめたが,経済回復とともに外国技術の吸収消化等に関連して回復がいちじるしいことは, 図2.11 に示した研究費の推移によっても推定される。民間企業の研究機関の状況は 図2.12 に示すとおりであるが,その研究は,企業活動にともなう応用,開発研究であり,この分野で民間企業の研究のしめる地位がもっとも高い。

業種別の研究費は 図2.14 のとおりであり,化学,電気機械,鉄鋼,輸送用機械,機械,紡織等の技術発展の速度の高い業種に多い。しかしながら先進工業国に比較すると, 表2.1 のように研究費は,総額においてはもちろん,売上高との比率についてもいちじるしいそん色を示している。 (表2.4参照)

図2.11 民間企業の研究費の推移

図2.12 民間企業の研究の従業者,研究者,支出総額,研究費

図2.13 民間企業の研究費の学問別構成比率

図2.14 民間企業の産業別研究費

図2.15 民間企業の研究費と売上高との比

表2.1 米国産業における研究費

産業界は技術進歩を急速に推進する必要に迫られているが,資本蓄積が乏しく,資源や技術の外国依存度が高いというような悪い条件下にあるため,研究に十分な資金が投入されていないのがその実情といえる。

これまで導入されてきた外国技術や外国機械は,わが国の産業技術の進展を促がす重要な要素であるとはいえ,適宜なものにとどめられなければ,わが国の研究の正常な発展を抑圧するにいたるであろう。技術の発展は古い技術を陳腐化する速度を早め,新技術を早期に確立することが必要とされるが,このためには単に技術の優位を外国に求めるだけでなく,国内で開発することに努めなければならないであろう。これについては企業においていっそうの努力を必要とするが,政府からも格段の援助を与える必要がある。

研究資金のうち国家支出のものは各種の補助金として各省より交付されていてかなりの効果をあげている。また研究助成のため研究費や研究設備に対し税制上の優遇措置が講ぜられている。しかし民間企業に対する研究補助金は約7億円(32年度)にすぎず,新技術の育成や産業技術の主要研究に対して,十分なものとはいい難い。米国,英国等の先進国においては,民間産業界の研究費も多いが,そのうえ委託研究による国家支出も頗る大きく,民間において実施する研究費のうちそれぞれ39%(米国,昭和28年)60%(英国,昭和30年)をしめしている。これらはほとんど軍事研究ではあるが,航空機,電気機械,精密計測器等に関して民間産業の技術の進歩に多大な貢けんをしている。

わが国ではこれと事情を異にしても,今後の経済発展に重要な意義をもつ産業技術の研究には多くの政府の支援が行われるべきであろう。

民間企業研究では多くの同種の研究を重複して少なからざる研究者と研究資金を投じているとみられるが,たとえ企業間の研究競争が研究促進に適宜な刺げきとなるにしても,わが国の研究規模は先進国に比しはるかに小さいことを認めるならば,基礎,応用研究について広く共同研究を行うことが望ましい。

これまで共同研究によって成果を求めた例としては酸素製鋼,カメラにおけるレンズ,電子顕微鏡等の研究がある。

新しい食糧クロレラの研究

共同研究は同業種間ばかりでなく,関連産業間,たとえば資本財産業と需要産業との間でも広く行われる必要がある。産業技術の研究は1産業のみでなく多くの関連分野の総合されたものによって完成されるからである。これらの研究体制は少ない研究者と研究費の浪費を防ぐばかりでなく,研究によって広く技術がゆきわたったり,研究の成果を効果的に利用できるという優れた利点を有している。

一方,わが国は,中小企業の産業活動の比重はかなり高く,その発展は重要な課題である。

図2.16 公益法人研究機関の従業者,研究者,支出総額,研究費

図2.17 公益法人研究機関の研究費の学問別構成比率 図2.17 公益法人研究機関における学問研究費と全国総数との比較

これら中小企業においては,生産の方法,原材料の歩留り等の応用研究は多分に重要なものとなっているが,研究活動はほとんど行われていない。これは研究の必要性が薄いというのではなく,研究を独力で行うには,資本や規模が弱小であるからである。

従来これらの研究に対しては,国としても十分な施策が講じられてなかったが,中小企業の同業者の共同研究を助成する等漸次措置が講ぜられている。


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