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第2部   科学技術発展の基盤
第1章  研究活動
4  公立試験研究機関


公立試験研究機関は,地方における農林水産業および中小企業の鉱工業技術振興のため,あるいは公衆衛生向上のために,各都道府県と1部の市に設置されており,組織の上では,それぞれの地方自治体における,行政上の技術センターたるべき地位にある。したがって,その役割も純然たる研究業務を対象としたものだけでなく,技術指導,試験・分析,設備の開放,講習会の開催等,各般の業務にわたっている。この点国立試験研究機関とは異った性格をもってこおり,技術指導ないし普及が業務の中心で研究はそのために必要な限度で行われている。

公立試験研究機関の状況は 図2.8 のとおりであるが,支出総額のなかにしめる研究費の比率が少ない点からもその性格をうかがうことができる。研究費の学問別構成は農学がもっとも高く,鉱工業や公衆衛生に比して農林水産部門の研究にしめる比率が高いことがわかる。

がんらい,公立試験研究機関の規模,業務内容等は,それぞれの業種によりあるいはまた地域によりかなり異っている。すなわち農林水産業部門の機関は一般に他部門の機関よりも規模が大きく,研究・技術指導の面で国立試験研究機関や地方自治体の普及組織を通じて一貫した体制が整っており,これまでにこの分野の生産技術向上のために果した役割は少くない。しかし農業試験場以外の機関では,地域により能力の低い機関もあり,また共通的問題をもつ同一地域の農業,林業,蚕業等の公立試験研究機関相互間の連けいや,畜産についての試験研究体制の強化等今後に残された問題も多い。

鉱工業部門では,1部の,東京,大阪,名古屋など大都市を含む府県に設置された機関は総合的な研究機関として内容も充実しているが,その他の地方の機関は概して貧弱であり十分その機能を発揮している機関は少い。

図2.8 公立試験研究機関の従業者,研究営,支出総額,研究費

図2.9 公立試験研究機関の研究費の学問別構成比率

これは種々の理由によるものがあろうが,取扱う業務がその機関にあたえられた能力以上に多岐にわたっているのも一因で,この点たとえ規模は小さくとも専門化された埼玉県鋳物工業試験所,福岡県直方鉱業試験所等実際の生産の場で指導力の大きい機関もあり,これらは地方事情に応じた今後の方向を示しているものといえよう。なお中央地方を通じての研究体制が確立されていない点も指摘できる。中小企業の重要性にてらし,その技術振興のため国立試験研究機関との関連を緊密にし,孤立化しているこの部門を強化することは,現在きわめて重要.な問題となっている。

厚生部門の機関は前述のとおり,戦後行われた整備統合により,各都道府県と4大市(大阪,古名屋,京都,神戸市)にそれぞれ1機関ずつ設置され,また,中央地方を通じての研究体制も確立し,地方公衆衛生向上のために果している役割は大きいが,鉱工業部門と同様,規模の大きい機関は,1部の大都府県にかぎられており,その他の機関では,必要な調査研究に専念できないのが現状である。

図2.10 公立試験研究機関の総人員による規模別分布

以上のように,公立試験研究機関は全般的に弱小な機関が多く,また業種別にも地域的にもはなはだ不均衡なかたちで存在している。そのため今後は,それぞれの機関について,運営方針を確立し,人事の刷新資金の充実,設備の近代化をはかりつつ,行政面,地方産業界および国立試験研究機関等との緊密な連けいのもとに,全国的に均斉のとれた体制とし,本来の使命を果しうる機関として育成する必要があり,その努力を地方自治体当局にまつのみでなく,関係各省のよりいっそうの援助が期待されこところである。


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