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第1部   総説
第4章  前進への道
2  政府の役割


科学技術の規模の拡大と進歩にともない,欧米諸国の実状をみるまでもなく政府の果す役割は重要なものとなってきている。

政府は,科学技術を産業経済の進展と国民生活の安定を目標として奨励育成する立場にあるが,その重要な役割として研究機関をもち,みずから研究を行って成果を提供する研究遂行者としての役割と,多数の国立学校をもち人材養成を行う教育担当者としての役割とがある。またおもな任務として科学技術に関する内外事情を調査し,その動向を把握して,振興の方向づけと基本的構想の樹立を行うことがあり,さらにこれにもとづく政策の実施に必要な財政的裏づけをすることが重要な内容となる。すなわち,いかなる問題の解決にいかなる態度で研究すべきかということであり,資金面では科学技術教育に投ずる経費と,研究に投ずる経費,とくに基礎研究と応用研究とのわりふり,国立機関によって行うべきか,民間研究を助成すべきか,さらに研究以後の企業化や普及のための投資をも全般的に包括する国の資金計画をもつ必要があろう。

近時,総合的な技術開発を担当する政府の役割が,世界的になってきていることが注目される。これは,技術開発の総合化と,大規模じにともなってぼう大な経費と多くの人員とを要し,多方面の協力を必要とするため,1企業,1研究機関では大規模な技術の開発ができなくなったことによるのである。現在わが国でとりあげられている原子力開発は1つの典型的な例である。すなわち,政府みずからプログラムをもち,直属の研究機関を動員し,また産業界,学界の協力のもとに関連技術を委託研究にとり開発し,あるいは補助金によって育成しつきく,総合的に開発を進めてゆく方式である。わが国に必要とされる総合的新技術の開発において,今後この方式を採用する必要がしばしばおこってくるであろう。

このほか,民間,地方自治体の研究活動や技術の企業化に対して財政,金融,税制の面でこれを援助し,特許制度の適正な運営や標準化事業の健全な育成をはかり,また研究成果や内外情報の交流を行う情報活動など,国際的な協力や連絡を行うなどの行政をも推進する必要がある。

これらに関する行政は現在定められた所掌にしたがい,各省庁において行われているが,その全般を通じて現在最も必要視されるところは,科学技術の振興を国の重要施策としてとりあげてこれを強力に進めることである。

これまで科学技術振興と称するものが戦時以来しばしば叫ばれてきたが,その実がともなわず,一時的に終り,その場かぎりのなおざりなものと,して消えたものが多く,関係者の努力にもかゝわらず永続的に推進をつづけることがなかった。世界的な視野にたち,科学技術の正しい把握と理解のもとに,わが国の今後の繁栄と発展をめざし,科学技術を基調とする国策をたて,有機的活動を強力に推進する決意を改めて必要とする。

とくにこゝで強調すべきことは科学技術の諸対策に対し,その本質を十分に理解し,いたずらにその速効を要求してはならないことである。研究の完成や技術の成熟に要する時日よ1年や2年でたりるものではない。科学技術が基礎研究から発展して実用上の成果をあげるには,10年の才月を要するのは通常である。

科学技術の振興は国の立場においてあくまで助長的培養的要素を必要とし,長期的態度をもってとりあげてゆくべきものである。時流を追わず永続性ある一貫した対策を強力におしすゝめることこそ,科学技術行政に要請される最大のものであろう。


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