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第1部   総説
第3章  わが国科学技術の諸問題
4  科学技術の担い手としての人
(3)  今後の課題――待遇と社会環境


待遇への考慮

以上,人の問題を展望してきたが,今後の方策として,とくに考慮しなければならないものの1つは,科学技術者の待遇である。科学者が科学者として,技術者が技術者として,おのおのその任務を十分にまっとうし得る措置が講ぜられてこそ,優秀な人材が科学技術の分野に吸収される。

このためには,まず優秀な学生を学資の心配なく勉学にいそしませるための奨学制度の拡大にはじまり,各方面の科学技術者に対する待遇改善がとくに望まれる。

また国家的に,科学技術上の功労に対して顕彰を強化し,栄誉を与えることは,科学技術者の意気ばかりでなく,さらに,科学技術に対する一般国民の関心を高めることであり,十分考慮に値することであろう。

社会環境の問題

科学技術の進展をはばむ因子の大きなものとして,社会環境の問題がある。

わが国では,社会的に地位の高い職業として,地方では,知事や教師などいわば地域の有力者をあげる者が多く,消費都市では,経済的地位がそれらにおきかわる,といわれている。また勤労青少年の読書傾向を調査(勤労青少年教育調査,国立教育研究所,昭和31年)したものをみると,都市,農村を通じて文芸大衆物が圧倒的であり,単行本では,男72%,女87%,雑誌では,男67%,女82%がそれに集中し,自然科学書はわずかに2%,(男),専門雑誌は7%(男)にすぎない,という結果になっている。

以上のことから富,名声,権威あるいは情緒への逃避傾向が,わが国民性を支配しているという傾向がうかがわれ,今まで科学的なもの,合理的なものがそこに割りこむことができなかった。

最近,科学技術の進歩のもたらした生活上の恩恵が,わが国民生活に深く入ってゆくにつれて,国民の科学技術への関心は徐々に高まってきた。しかし全般的にはまだ科学技術は国民から遠いものと感ぜられている。そのづれの原因は,わが国の歴史にも求められ,現状のなかにも求められるが,要は,科学技術を国民の間からうましめる努力が少なかったことによっている。わが国独自の研究が推し進められ,その努力の過程が刻々と国民に伝達され,,理解され,かつ研究の効果が経済と文化の形で国民全般にもどされることによってのみ,社会環境の問題は克服される。また科学の教育もそのような事実の裏づけのないかぎり,単なる宣伝に終ってしまうであろう。


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