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第1部   総説
第3章  わが国科学技術の諸問題
3  技術の適用と普及
(1)  技術の適用と普及をさまたげている要因


わが国は外国の技術をとりいれ,消化して生産に適用し,そのうえに改善を加えてゆくといった点は,すぐれた能力と実績を示してきたということができる。しかし現在でも,外国技術依存は,前節で述べたところの源泉としての研究に対してだけでなく,普及の段階においてもいろいろな影きょうをおよぼしている。

一般に,各産業が技術の源泉を国内に求め得る場合には,当該産業の技術が向上するだけでなく,技術が生産に適用される過程において,短期間に,波及的に多くの関連産業の技術進歩を促す刺できとなり,国内全般の技術の向上や普及に広く貢けんすることになる。しかもこのような技術は,次の進歩のための基礎として不断の発展性をもつことができる。しかし,わが国のように完成技術としての技術導入が多く,技術の源泉の外国依存度が高い場合には,導入される技術は概して局部的,固定的であり,また技術導入の契約上過度の機密性が要求されるなどのため,関連産業間に,相互依存によって技術進歩を促しあうとか,産業全般にわたって技術水準を向上させるといった好ましい連鎖的効果をもたらすことが少い。また導入技術がわが国の特殊事情によって,生産やその他の分野へ円滑に適用し得ないような場合もしばしばみられる。

このように,外国技術導入は生産体制をはじめとする経済的,社会的諸条件とあいまって,技術の円滑な適用と普及をさまたげ,また各部門間にみられる技術的不均衡の大きな要因ともなっている。このため国内で生れた技術にしても,試作段階や実験室規模ではうまくゆくが,本格的生産に移すと能率がわるくなり,品質が落ちるなどといった生産技術上の劣勢が,機械工業,化学工業などにおいてしばしば見受けられる。これは,開発研究を十分行わずに技術が生産に導入されたり,材料の選択,使用,生産工程の編成,運営などに関する製造設計や管理技術,あるいはプラント設計などの化学工学的技術の不備なことに原因するものであり,わが国における技術の普及の跛行と不均衡性を示している。

また,機械工業のある部門のように,過去において軍事技術を中心に即効性を狙って国内で短期に育成された技術もあるが,これらは広い基盤に根をおろして成長したものでないため,各分野に多くの技術的跛行を残すことになった。

さらに,わが国では資本蓄積が乏しく,低賃金の労働力が豊富であるという条件や,生産体制,流通などの諸条件が科学技術の発達,生産への技術の円滑,均衡的な普及に不利に作用してきたことも否むことができない。また,新しい技術の適用が労働者の仕事に質的,量的変化をもたらす場合,労働者の能力がこれについてゆけなかったり,配置転換が難しいため実現し得ないようなことも,技術の普及をさまたげる1つの要因となっている。


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