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第1部   総説
第3章  わが国科学技術の諸問題
1  研究から技術への発展


新しい技術は研究によってうまれ,生産や実施の場に導入されて結実するのであるが,ここにその一般的な流れと発展過程をみよう。

科学技術の源泉ともいうべき研究は,目的によって性格がいちじるしく異っているので,通常,基礎研究,応用研究,開発研究の3つに区分される。

テープコントロールのジグ中ぐり盤の開発研究

知識の拡大のために行う研究を基礎研究と呼ぶ。大学などで行っている自然現象の確認や,原理の発見などを目的とする科学研究はその代表的なものであるが,このほか現象の解明によって,新しい応用の可能性がうまれることを期待して行うものなども含まれる。

基礎研究は実用上の直接の効果を狙っていないが,画期的な発明や新しい技術がしばしばこのなかから芽をだし,あるいは技術上の諸問題の解明に役立つ。この研究は研究者の独創性を生かす自由な雰囲気のなかで伸びるのであり,大学が主としてこれを受けもっているが,国の研究機関や民間の機関でも一部行っている。その成果は公表され,世界的に交流される。

これに対して,科学知識を実際に応用して新製品や新方法をうみ,あるいは生産上の問題の解決をはかるため知識を得ようとする研究が応用研究と呼ばれる。応用研究は,基礎研究の成果を発展させる場合のほか,実施面におきた問題の解決をはかるためのものがある。

応用研究で良い結果が得られても実際の規模に移した場合,研究室とは条件が異るので必ずしもうまくゆくとは限らず,また経済性をも検討する必要があるため,さらに実際に近い条件で研究を行う必要がおきてくる。この段階を開発研究(または実用研究)という。パイロットプラントによる試験や,機械の試作研究,農業における適用化試験などがこれにあたる。この場合,前提条件として市場調査なども行われる。

開発研究は生産段階にうつすことを前提として行われる。基礎研究はもちろん,応用研究でも,必ずしも確実でないものにむかっても手をつけるのに対して,開発研究の場合は,とりあげる研究課題を選択することが経営上の大きな問題である。

このような性格から応用研究までの段階では,とりあげられた研究の成功率は必ずしも高くない。研究室ではうまくゆく見通しがついても,生産にはもちこめそうもないと,いうので打切る場合があり,開発研究にうつされるものは数が少い。

この間の関係を数量的にあらわすことはなかなか困難であるが,大規模な研究所をもっている米国のデュポン社やRCAなどは,研究所で手がける応用研究の問題のうち90%までは思わしい結果がでなかったり,研究室で成功しても生産に移すには不適当なものとして研究所どまりとなり,残りの10%たらずのものから開発研究の段階をへて実際に生産に移すものがうまれ,しかもこのわずかのもののなかから販売製品の大部分がうみだされるといわれている。

このように開発研究は生産に直結しているが,これを終えて研究は終了したこととなり,実際の生産にもちこまれて技術として実現することになる。

さらに技術は実際上の経験や,できあがった製品の品質に関する欠陥などの情報をもとにして,改良が加えられてゆく。この際生産を担当する技術者が研究者の意見を聞き問題の解決にあたるのであるが,問題によっては,研究所に解決を依頼する方法がとられ,ここで問題が解決されると,再び現場の方にもどされるという別の循環がある。

このような研究から生産への流れが科学技術の発展における形式である。しかし技術はみずからつくりあげるもののほか,他で完成されたものをとり入れあるいは指導を受けるということが普通に行われている。大企業が系列企業に技術情報を提供したり,国や都道府県が中小企業者や農民に対して行う技術指導などもこの例であり,工業部門では外国企業から技術を買う技術導入が,現在大きな役割をしめている。

さてこのような経路で技術が実際に採用され,行きわたることを技術の普及と呼んでおこう。高い技術を用い,高度の製品を高能率につくりだすことが科学技術を考える場合の目標になる。局部的に高い技術が存在しても,普及しておらず,あるいは研究段階で高いものが完成されていながら,実際に採用されるにいたっていないことや,逆に高い技術を取り入れても局部的であり,周囲と遊離して機能を発揮しえないというような不均衡がおこって,技術水準を低位にとどめることも多い。「技術の普及」は新しい技術をつくり出す「研究」,とともに最も重要な問題である。

この両者を考える場合,切り離すことができない要素として人の問題がある。すなわち研究において新しいものを創造し,現場において新しい技術を受入れ,それを駆使してすぐれたものを生産し,改良するのは人なのである。

これまで科学技術が成長して技術として駆使されるにいたる過程をのべてきたのであるが,これらは鉱業,農林水産部門のみならず,医療衛生部門でもほぼ同様な段階がとられる。

以下わが国の科学技術の諸問題を摘出するにあたり,研究,普及,人の3つの角度でとらえてみよう。


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