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第1部   総説
第2章  科学技術の一般動向とわが国の現状
2  現代の科学技術に見られる傾向とわが国の現状,
(1)  科学と技術の結合の強化


科学と技術との関係は,歴史的にも大きな変せんがみられる。近世においては,科学は自然の認識を進めるために学問として,技術は経済的目的達成のために生産の場において別個に発達してきた。蒸気機関も航空機も,学問とは別に経験的なものをもとにして出発した。金属の製錬もガラスの製造も,古代から少なくとも原理的には現在と大差ない方法で行われていた。しかしながら現在の最尖端をゆく技術の場合はそうではない。合成繊維の代表ともいうべきナイロンは,カロザース博士の高分子化合物についての研究にはじまって,10年余の才月を費して完成されたことは周知のことであるし,新しい時代を開く核エネルギ利用は,物質の窮極構造を探究する核物理学の進歩によってうまれ,それにもとづいて技術的に完成されたものであることはあまりにも有名である。

また最近注目をうけているトランジスタは,過去の物性論をもとにしたショクレイのゲルマニウム結晶中の電気伝導機構の研究にはじまり,物性論的な研究の進展によって4年後にはじめて生産の軌道にのせられたものである。

このように,画期的なものは多く科学の成果からうみだされているが,近時技術の進歩があまりいちじるしいため,その源泉である科学の領域の芽が枯かつしつつあることが憂慮されており,技術の進歩のためにはまず科学の前進をはかることが強く要請されている。

一方技術の進歩によって新しい課題が科学の前に提示され,また技術が媒介となって科学の前進を助け,新しい科学の領域がひらかれている。このような相互作用は,最近の高度な科学技術の成果である電子顕微鏡をはじめとする科学研究用機器によって,科学の探究が一段と進んできている最も直接的な事例によっても理解されよう。

したがって,科学と技術の結合が強まれば強まるだけ,科学の成果の技術への応用速度は大きくなりつつあり,接近と結合度が強まったために,科学と技術を切りはなして取扱うことが困難となっている。科学と技術を合わせた「科学技術」という用語が一般に使われるようになっているのもこれを反映している。

わが国では,科学も技術も,外国からの輸入にもとずいて発達してきたため科学は外国の科学との結びつく傾向が強く,国内の技術との関係は薄くなっており,技術もまた外国技術の模倣や導入消化という形をとっている。このため科学の分野で見出された芽を研究で実際化してゆくという基本的な科学技術の流れが乏しく,また学問としての科学技術と実際の生産の場における技術が遊離していたり,研究所にすぐれたものがあっても,実際に適用されている技術は,これと異なった低いものである場合が多い。

わが国の誇るべき技術的成果;国産高性能電子顕微鏡の1例


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