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第1部   総説
第2章  科学技術の一般動向とわが国の現状
1  展望


世界的にみて,近年の科学技術の進歩はきわめて急速であり,新しいもの,高性能,高能率なものをつぎつぎとうみだしている。

合成化学

戦前のナイロンにはじまり,ビニリデン,アクリルニトリル,ポリエステル系などの各種の合成繊維がつぎつぎと企業化され,天然繊維の分野を侵しつつある。

一方,塩化ビニルをはじめとして,尿素樹脂,ポリエチレンなどから,弗素樹脂にいたる合成樹脂や,合成ゴムが出現し,天然ゴム,皮革その他に,とってかわりつつある。これらの合成物は,天然物には期待できないすぐれた性能をもっており,さらに新しいものの出現が予想されている。また,有機合成の原料分野では,石油や天然ガスを基盤とした石油化学が非常な発達をとげ,石炭やカーバイト工業あるいは発酵工業に基礎をおいて形成されてきた従来の原料供給体制を一変させようとしている。

国産の石油精製装置の1例

エレクトロニクス

過去において真空管の利用を中心に,各種の通信技術として発達し,さらにラジオやテレビ放送の発展をもたらしたこの技術は,各種の計測や制御など新しい技術手段を提供し,科学から産業全般にいたる各方面の技術発展に大きく貢けんしている。さらに最近はゲルマニウムやシリコンのトランジスタが出現し,この種の半導体の進歩によって今後の大きな発展が予想され,生産の自動化や電子計算機にみられるごとく,オートメーションの技術的基礎をつくり,人間の頭脳にかわる役割を果すことが期待されている。

原子力利用

従来の熱や力の利用とは異った原子力による発電,船舶の運行が着々と実際化され,一方ラジオアイソトープはトレーサとしての利用や高分子化合物の特性の改善など各産業分野に新しい手段をあたえつつある。さらに現在の核分裂による原子力利用は,将来核融合の方向に進むことが予想されている。

金属材料

躍進をつづける各分野に対して,生命ともなる高性能な材料を提供する金属材料分野の技術進歩を見落すことはできない。核燃料としてのウラン,トリウム;原子炉構造材としてのジルコニウム,ベリリウム;ジェット機構造材としてのチタン;半導体としてのゲルマニウム,シリコンなどの新しい金属がつぎつぎに実用に供されるにいたっている。さらに金属純度の向上,焼結加工,希元素添加など耐熱,耐食その他の高度な要求に応ずる材料の改良が進められている。

航  空

高速化,大型化,安全化の方向に前進しつつある航空技術の進歩とともに,ピストン発動機を装備した航空機は過去のものとなり,すでにジェット機の時代をむかえつつある。躍進を続ける航空機の技術はエレクトロニクスや材料技術の粋を集めて形成されるが,また窮極兵器を求める軍事上の要請からロケット兵器,すなわちミサイルの技術的な向上にその努力が集中されている。

機  械

すべての産業に設備を提供する機械工業の基幹となる工作機械の精度の向上,高能率化,自動化や原動機,産業機械における大容量化,高能率化など機械分野全般における技術進歩は目ざましい。

農  業

新品種や肥培法が遺伝学や植物生理の解明に基いてうみだされ,また新しい農薬や各種の改良肥料が導入され,栽培技術に生かされている。

医療衛生

新しい抗生物質の出現が革命的な役割を果し,電子的,理学的な各種の医療機械やラジオアイソトープ利用など新しい手段が導入され,医療衛生技術の躍進の支えとなっている。さらにこれら医学および生物学等を結集して,いまや生命の解明にまで研究の目がむけられている。

電子顕微鏡によるプロテウス菌の拡大写真(1万5,000倍拡大の縮図)同バッタ精子尾部横断面

運輸・通信

運輸の分野では車両,船舶,航空機の性能向上によって,安全度,積載量,速度が飛躍的に増大し,高能率化されているが,さらに動力源としての原子力利用と安全度向上のためのエレクトロニクスの利用に,関心が集中されている。

通信の分野では急速な進歩をとげたエレクトロニクスを駆使して,テレビやマイクロ波にみられるように通信方式の高性能化,高能率化が行われ,さらに電子交換方式の採用や新しい電波領域の開拓,新しい通信方式の実用化に向って前進している。

建  設

施工の機械化が進み,合成樹脂その他新しい材料をとり入れ,これに建築構造を適応させてゆく傾向がみられるほか,従来の現場で組立てる方式にかわって一部を工場で組立てておく方式が進んでいる。

その他

さらに注目すべきことは生産技術の分野で品質管理,計測管理,工程管理など一連の科学的管理技術が発達し,生産の高能率化にいちじるしく寄与していることである。このような科学的な管理手法は,産業全般の近代化にともなって増大する間接業務を,より合理的に遂行するためにも次第に利用されつつあり,市場調査や経営管理におけるペレーションズ・リサーチなどの予測,・判断技術の採用は,経営事務面における高度なオートメーション化とともに,将来のこの分野の様相を一変することになろう。

また,商品価値定めるデザインが技術の中にとり入れられ,生産技術の大きな要素どなりつつある。

以上,主要して最近の進歩を技術の面からのべてきたが,これら多くの技術的進歩の背後には,自然を解明してゆく核物理学,高分子化学,生化学など科学の領域に大きな進歩があることを見逃がすわけにはいかない。


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