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第1部   総説
第1章  経済の発展,福祉の向上と科学技術
2  雇用の増大と労働の軽減


完全雇用の達成は,わが国の経済政策の重要な目標となっている。わが国は狭い国土に9,000万の人口をかかえているので,雇用の問題を解決するのは決して容易ではない。このためには,経済規模の拡大を中心とするいろいろな施策の総合的な効果を期待しなければならない。

最近,技術革新による投資の増大が指摘されているように,新技術・新産業による投資活動の増加は,世界的傾向となっている。このような科学技術の進歩による投資活動は,景気循環とはある程度独立的な性格をもっているので,経済規模の健全な拡大には,きわめて望ましい効果をもっている。また科学技術の発展は,生産性の向上をもたらし,それによる高能率・高賃金は,消費水準の向上を通じて経済規模の拡大に役立つことも指摘できよう。前に述べた輸出における役割とともに,科学技術の進歩が,投資・消費の両面にわたるいわゆる所得効果によって,経済規模の拡大に果す役割は大きいものがあると考えられる。

図1.3. 産業別就業者数の変化

たしかに,科学技術の進歩は,たとえばオートメーション化の進展がそうであるように,雇用を排除する一面をもっていることは否定できない。しかしながら雇用問題を積極的に解決するには,経済規模の拡大がほとんど唯一の手段である。したがって,科学技術の発展は短期的には雇用の増大と矛盾するようであるが,長期的には経済規模の拡大を通じて,雇用を積極的に増大させる効果が大きいということができよう。

科学技術の進歩は,雇用を増大させるとともに,また労働内容の質的な変化をもたらす。たとえば従来強度の筋肉労働であった鉱山,建設,運輸部門での積込,運搬作業や,農業の耕転作業あるいは林業の伐採作業などは,機械の進歩と普及によって,運転,操作,保全などの労働にかわり,筋肉的な負担はいちじるしく軽減されている。科学技術の進歩とともに機械工業や化学工業などでは,機械化が進み,いろいろな制御が自動化されたり,集中化されたりすることによって,筋肉労働の多くは監視労働に切りかえられ,さらにこのような精神労働をも軽減する方向に向っている。また,労働の質的変化のほかに高温,騒音,じん埃などの作業環境はいちじるしく改善され,不良な作業環境に書かれる時間はよ減少の傾向をたどっている。

輸入小麦の荷役の機械化(ニューマチックアンローダ) 耕転作業の機械化

しかしながら,たとえば原子力の開発にともなって放射線障害が問題となってくるように,科学技術の進展は新しい労働環境上の問題を生じさせる。このことは,科学技術の進歩が一見労働の安全と矛盾するようであるが,科学技術は災害の発生を防止し,労働の安全を高めるためにも,推進されなければならない。

さらに,オートメーションの発展とともに,機械や計器の監視などの精神労働の比重がますます高まってくるが,これは場合によっては,従来の筋肉の負担にかわって,束縛感,抑うつ感などの精神的負担を増大させている。,このような労働の質や労働条件の変化に対応して,労働を改善するために科学技術の果すべき役割は今後ますます増大するであろう。


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