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第1部   総説
第1章  経済の発展,福祉の向上と科学技術
1  輸出振興への役割


わが国の経済の今後の見通しを示すものとして,先般公表された新長期経済計画は,わが国の経済が毎年6.5%の成長率で拡大することが必要であり,そのためには,昭和37年度には輸出による外貨受取りを昭和31年度より19億ドルを増加させた44億ドルにしなければならないとしている。これは資源に乏しく人口の多いわが国にとって経済規模を拡大し,生活水準をより高くするためには,いかに輸出の増加が必要であるかを示すものといえよう。

昭和31年から32年にかけて,わが国の経済は国内投資の増大を主因として非常な活況を呈し,鉱工業生産指数も23%の伸びを記録し,実質国民所得は10%も増加して,いわゆる神武景気をおう歌した。しかしながら,これにともなって原材料を中心として輸入が激増したが,輸出はこれに見合っただけ増大しなかったので,外貨保有が激減し,昭和32年4月以降ついに金融および財政の引締めなど経済の拡大にブレーキをかける政策をとるのやむなきにいたったことは記憶に新らたなところである。

このように輸出を拡大させることは,わが国の経済を健全に成長させ,国民生活を向上させるために必須不可欠ということができる。

わが国の輸出品の構成は,戦前にくらべて繊維製品が次第に減じ,金属製品や機械類が増加して,輸出の重点はいわゆる重工業,化学工業製品に移行しようとしている。また国際的にも綿布や綿製品などの貿易量は,停滞気味であるのに対し,機械類や金属製品などの重工業,化学工業品の貿易量が着実に増加してきている。

わが国の最近の輸出をみても伸びのいちじるしいものは,船舶,ミシン,鉄道車両などの機械類や,医薬品,化学肥料,鋼材などで,これらの輸出の増加は技術の進歩に負うところが大きい,戦前から輸出の大宗であった繊維製品は

輸出される4万7,000トンスーパータンカーの進水

従来の輸出先であった後進国の工業化の進展などによって,低級品から高級品へ綿から化繊への転換が行われている。

図1.1. わが国の輸出品の構成の変化

わが国と同じように第2次大戦によって大きな打撃を受けながら,現在西欧随一の外貨保有国となって繁栄への道を歩んでいる西独の復興は,健全な財政金融政策や適切な輸出振興策によるところもあるとはいえ,その裏づけとして高度の科学技術水準があって,はじめて可能となったことを率れてはならない。たとえば西独では技術の結晶ともいうべき機械と金属製品の輸出額は1956年(昭和31年)には30億ドルを超えて,総輸出額の半ばを占めている。

このように国際的な傾向や,わが国の輸出品の構成変化を考えてみても,これからのわが国の輸出は低賃金労働による競争力に頼るのではなく,少い輸入原材料で高い価値をうみだす高度の技術と熟練の裏づけによって発展させてゆかなければならない。

図1.2. 西独の輸出品の構成の変化

しかし,このような製品はいずれも先進工業国と競合するものであるから,今後のはげしい国際競争に打ち勝つだけのすぐれた技術を育てる必要がある。

このことは外国でつくれない新しい高度のもの,すぐれた性能のものをつくりだすことであり,また高能率の生産によって安く製品をつくることである。いうまでもなく輸出は輸入に対する支払手段としても,また経済の健全な拡大の起動力としても,わが国の経済発展に重要な意味をもっている。そして輸出の増大のために科学技術の果すべき役割はきわめて大きいといわねばならない。


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