萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年7月30日)

令和3年7月30日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録、令和7年度大学入学者選抜に係る予告について、高温工学試験研究炉「HTTR」、令和2年度学校保健統計調査、新型コロナウイルスと大学における対面・オンライン授業

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和3年7月30日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和3年7月30日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和3年7月30日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。お久しぶりです。
 冒頭、私から3件です。まず、今週の27日(火曜日)、オンラインで開催中の第44回世界遺産委員会拡大会合において、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産への登録が決定をされました。この貴重な17の考古遺跡群が、世界の人々に祝福されつつ世界遺産となったことを心から嬉しく思っております。地元関係者のたゆまぬご努力に心から敬意と祝意を表します。関係者の皆様には、引き続き、遺産の保全・保存・管理に、地域社会一体となって取り組んでいただきたいと思います。文科省としても、地元の関係各位及び関係省庁と連携しながら、人類の共通の宝である世界遺産の保護に万全を期して、後世に確実に引き継ぎ、その価値を積極的に発信してまいりたいと思います。
 2件目です。私の下に設置した大学入試のあり方に関する検討会議が今月8日に提言した内容を踏まえ、高校・大学関係団体の代表者等で構成される大学入学者選抜協議会において、令和7年度大学入学者選抜実施要項の予告及び大学入学共通テスト実施大綱の予告の内容について合意が得られましたことから、本日、各大学等に通知をしたいと思いますのでご報告します。まず、大学入学者選抜実施要項については、提言において整理された大学入学者選抜の原則を実施要項の基本方針に反映するとともに、入学者の多様性を確保する観点から、家庭環境、居住地域等の要因により進学機会の確保に困難がある者等を対象として選抜を工夫すること、各大学の入試において「自らの考えを論理的・創造的に形成する思考・判断の能力」や「思考・判断した過程や結果を的確に、更には効果的に表現する能力」の評価充実のため、可能な範囲で記述式を取り入れることが望ましいこと、総合的な英語力を適切に評価・判定する観点から、これまでと同様に資格・検定試験等の活用を求めつつ、家庭環境や居住地域により、資格・検定試験等を受検することの負担が大きい入学志願者等への配慮を要請することなどの内容について、令和7年度大学入学者選抜から反映することとしています。また、大学共通テストについては、出題科目を現在の30科目から21科目に再編するとともに、『情報Ⅰ』を出題すること等を予告します。なお、記述式問題の出題及び英語成績提供システムに係る方針を定めた大学入学共通テスト実施方針は廃止をいたします。各大学においては、現在の中学3年生が、余裕をもって大学進学の準備ができるよう、本日通知するこれらの予告内容をもとに、学習指導要領の改訂を踏まえた令和7年度大学入学者選抜における出題教科・科目等について、速やかに学内における検討に着手をし、いわゆる2年前予告を遺漏なく実施していただきたいと思っております。
 3件目です。日本原子力研究開発機構が茨城県大洗町に保有する高温ガス炉の試験研究炉「HTTR」は、平成23年以来、運転を停止していましたが、その後、新規制基準に対応するための安全審査や安全対策工事を終え、本日、約10年半ぶりとなる運転再開を予定をしております。高温ガス炉は、安全性の面で優れた性能を有することに加え、高温熱を用いた高効率発電や、水素製造過程における熱源としての利用も可能なことから、2050年カーボンニュートラル実現への貢献が期待をされています。今後、出力を少しずつ上昇させながら、10月までの間に性能確認のための点検運転を行った上で、今年度中に安全性の実証実験を行う予定と聞いています。引き続き、原子力機構において、安全確保に万全を期した上で、カーボンフリー水素製造の実証に向けた研究開発等を着実に進めていただきたいと考えております。私からは以上です。

記者)
 冒頭、幹事社から2点お聞きします。まず1点目、冒頭発言で言及のありました共通テストの実施大綱の予告の通知に関してですけれども、記述式英語民間試験の活用の方針を定めた実施方針を廃止をするという内容のご発言がありましたが、これは、この2つの改革内容については、導入はこの通知をもって正式に見送るということでよろしいのかという確認と、また、その上で、この間、議論を重ねてこられた上でそうした結論を出された背景・理由についても伺えますでしょうか。お願いします。

大臣)
 前段の、本日発出する通知の中で、29年度に記述式問題や英語成績提供システムの導入に係る方針を示した共通テストの実施方針を廃止するということになります。先ほどお話した通りです。

記者)
 そうしますと、すみません、重ねてですが、それは試験の中で実施はしないということになるんでしょうか。

大臣)
 そうです。

記者)
 その理由については。

大臣)
 理由はさっき申し上げた通りなのですけれど、私、就任当初からですね、この課題については問題意識を持って、就任の記者会見でも、精査をするということを記者の皆様の前でお約束をさせていただきました。その後、翌年の実施を一度立ち止まって考え直すということで、省内、また、関係各団体の代表の皆さん、また、有識者の皆さんにもお集まりいただいて、会議体をもって、私の下に設置した大学入試のあり方に関する検討会議において、この間、1年半にわたりまして慎重な様々な議論をしていただきました。その結果、先ほど申し上げたように、直ちにこれを共通テストに紐付けるということはやらない。しかし、その重要性については一定理解をするわけですから、これは、今後の大学の入試のあり方、それぞれの学校でしっかりですね、総合型推薦選抜制度などを活用して、例えば記述式についてはそういう機会にしっかり確保するとか、それから4技能については、今までも活用していた民間テストを否定するわけではありませんので、こういったものを有効に、参考にしながらですね、選抜の根拠にしっかりしていただくということにしました。ただし、その場合、中止を、私自身が判断した、言うならば、居住地による様々な課題ですとか、あるいは民間ですから受験科目については金額が様々異なるとか、こういったことも含めて、今後、工夫をしていただくということを前提に、今回、見直しを決定したということになります。

記者)
 わかりました。ありがとうございます。
 2点目、話題が変わって恐縮なんですけれども、先般、2020年度の学校保健統計調査の結果が公表されまして、裸眼視力の1.0未満の子供の割合が小中学生で過去最高となりました。調査時期が例年と異なって単純比較ができないということだと思いますけれども、視力の悪化に歯止めがかからない状況をわかりやすく示しているデータというふうに言えると思います。1人1台端末が配備をされ、デジタル教科書の本格導入も進もうとしている中で、今回の結果は、大臣はどのように受け止められるか、学校現場での今後の端末活用の進め方も併せてご所見をお聞かせください。

大臣)
 令和2年度学校保健統計調査は、新型コロナウイルス感染症の影響により、調査期間を年度末まで延長したため、過去の数値と直ちに単純比較することはできませんが、数値としては、小中学生の裸眼視力が1.0未満の者の割合が過去最高値となりました。ここ十数年、小中学生の視力は低下傾向が続いており、子供の目の健康に配慮することは重要な課題と考えております。文科省としては、これまでもデジタル端末利用に当たって、視力や姿勢、睡眠への影響などの配慮事項をお示しするとともに、啓発リーフレットを作成し、周知を行ってまいりました。さらに、今年度からは近視実態調査を実施し、子供の近視や生活状況を調査をしているところです。引き続き、ICT機器の利用等に伴う子供たちの健康への影響に十分留意しながら、子供たちの学びが充実したものになるように取り組んでまいりたいと思っております。

記者)
 冒頭発言でありました大学入試について、1点、重ねて聞かせてください。共通テストでは英語4技能と記述式に関しては実施しない方針ということなんですけれども、先ほど大臣がおっしゃいましたが、個別入試などでなるべく対応してほしいという捉え方でよろしかったでしょうか。また、こちらの2つの重要性、入試でやる重要性というのを改めて教えていただけますか。

大臣)
 先ほども申し上げたように、国が実施をする共通テストに直ちにこのスコアを紐付けするということはやらないということを決定しました。しかし、記述式で表現力・主体性などを判断することの重要性ですとか、また、英語の4技能をしっかり身に付けていくことの重要性はいずれも否定するものではなくてですね、これは、大学入試、大学側のですね、それぞれの個別試験の中でできる限りこういったものを評価をしていくということを取り組んでいこうということを、期待をするんじゃなくて、皆さんで合意をさせていただいたところでございます。あと何でしたっけ。

記者)
 それだけで大丈夫です。

記者)
 冒頭発言にありました「北海道・北東北の縄文遺跡群」についてお聞きしたいと思います。今回の登録に当たって、専門家の方々のお話を聞きますと、非常に、派手さはないけれども、非常に奥深い遺跡なんだというようなお話をされていました。特にですね、1万年にわたって気候変動に応じて周辺の環境をほとんど変えずに生活してきたということですとか、戦争をしないでですね、介護だったり福祉を、介護していた形跡も残っていたりと、例えば、持続可能性のなす社会ですとか、あと共助社会ですとか、そういった現代的なテーマにつながるものが非常に数多く見て取れるというようなお話をなさっていました。その上で、学校教育でもですね、非常にこういったテーマというのは活用できるんではないのかという、非常に大きな期待を専門家の方が寄せられております。大臣としても、学校でもですね、こうした教材としての縄文時代の活用について、お考えがあればお聞かせいただけないでしょうか。

大臣)
 小学校では、学習指導要領に基づいて、社会科の第6学年において、我が国の歴史上の主な事象についての学習が行われており、縄文時代については、日本列島では長い期間、豊かな自然の中で狩猟や採集の生活が営まれていたことが分かるように指導が行われているところです。今ご指摘のように、1万年以上にわたって自然と共生するこういった暮らしの在り方というのは、国連の目指すSDGsの、言うならばコンセプトにも一致するところですから、今後、学校現場で、様々な機会に、この縄文時代のことについて触れていただくことは、私は大いに結構だと思っています。総合的学習時間において、地域や学校、児童の実態などに応じて課題を設定することとしておりますので、特に、当該地の皆さんには大いに深い学びをしてもらいたいと思いますし、それ以外の地域の子供たちにもですね、これを機会に、ぜひ、そういった時代の暮らしの在り方みたいなものをみんなで話し合っていただくことは極めて重要だと思っています。多分、この、ちょうど端境期なのですけれど、途中で教科書の中身を変えていくことも出版社の判断で可能ですし、次の検定のときには、きっと、もうすでに世界遺産になっているわけですから、そういう、少し詳しい資料などもきっと出てくるのだと思いますので、ぜひ、大いに、かつての皆さんの暮らしを参考にしながらですね、子供たちに学んでいただく機会というのを増やしていくことを、ぜひ現場の皆さんにも心がけていただいたらありがたいなと、そう思っております。

記者)
 大学入試の関係なんですけれども、『情報Ⅰ』を共通テストで、この度、問うことにした意義とか理由についてお願いしたいのと、あと学校の高校側の方で、やはり準備が整っていないという声も聞こえているんですが、ここについて、どのようなことを期待されるか、そこをお願いします。

大臣)
 今回、『情報Ⅰ』を出題することになった背景というのは、やっぱりこれからの、正にデータ社会をどう子供たちが生き抜くか、そういったことを考えたときに必要な科目であるということを判断をし、今回、導入に至ったと承知をしておりますが、おっしゃるように、今まで『情報Ⅰ』というカテゴリーで高校生時代の学びをしてきたわけじゃないわけですから、そういう意味では、やや不安があるという声は承知をしております。こういう新しい科目ができたときには、直ちにですね、ギアチェンジするんじゃなくて、やっぱり少しずつ、段階的に皆さんの学びを深めていただくことが大事だと思うので、これは、出題内容を含めて、当然、配慮があるべきだというふうに思っていますので、そこは、そんなに心配しないで、今ある目の前の勉強をしっかりやってもらえばいいんじゃないかなと思っております。

記者)
 新型コロナの関係でちょっとお聞きしたいと思います。ワクチン接種が進むことで、夏休み明けの学校現場での対面授業の機会の増加など、通常の学校生活ということに大臣も期待を持っておられるかと思うんです。一方で、昨今ですね、感染者が増加傾向にありまして、本日も、緊急事態宣言の延長、拡大、また、まん延防止に関する対象の拡大といったことを検討するという手続が、今日、進むんだと思うんですけれども、そういった現状を踏まえて、改めて、夏休み明けの学校教育、授業の在り方についてどのようなお考えを現状で持っておられるのかお聞かせください。

大臣)
 これは大学に限らずですね、学校現場は対面が基本だという姿勢には変わりはありません。ただ、デルタ株については、かつての感染状況とやや違ってですね、若い人たちにも陽性患者が増えているという実態があることは承知していますので、ここは、注意深く見ていきたいと思います。他方、陽性患者の数と若年世代の重症化率はどうなのかということも科学的にも見ていかなきゃいけないと思っていまして。幸いそこはですね、直ちに命の、別状を心配するような事態は、案件は非常に少ないというふうに承知をしています、特に20代以下の皆さんに関しては。ただ、陽性患者が増えているということは現実として受け止めていかなきゃいけないと思いますので、ワクチン接種、非常にスタートダッシュは良かったのですけれど、皆さんもご承知のような事情で、ワクチンのストックの問題、配送の問題などがあって、やや今、足踏み状態なのですけれど、8月9日以降、また、新たに大学での接種が加速をしてくることになると思いますので、ぜひ、2学期以降、後期の授業等については、対面とオンラインを上手に使い分けをしていただいて、感染拡大に注意をしながら、しかし、在るべきキャンパスの生活、大学の授業の在り方というものを、しっかり各大学がですね、取り組んでいただくことを期待をしたいなと。要するに、安易にまた学校を閉めて、全てオンラインに代替するというようなことじゃなくてですね、様々な事情の中で工夫をしていただくことが大事だと思いますので、そういう発信をこれからも後期に向けて続けていきたいと思っています。

記者)
 入試の関連でお尋ねします。検討会議の中でですね、いわゆる入試の実態調査が行われました。その結果というのは、実現困難という提言にも結びついたと思うんですけども、裏を返すと、大臣の就任前ではありますけども、導入に向かっていたときというのはそういった実態調査というのは行われないまま議論が進んでいました。それは提言も、実証的データに基づく議論とかというのを求めるという形で反映されておると思うんですけども、実態調査が行われずに進んでいた過去の議論について、併せて、今回の検討会議で行われた実態調査の意義について、お願いします。

大臣)
 ご指摘のように、当時はですね、実態調査をもって制度設計をするというプロセスがなかったということはその通りだと思います。それぞれ、歴代大臣の下で、類似の諸会議で検討を様々していただいたんだというふうに思いますけれども、こういう大きな改革をするときというのは、ぜひ前広に、いろんなシミュレーションというのを今後もしていく必要があるのだと思っています。これは入試に限らず、文部科学省として、もっと言えば霞が関全体で、こういったことはですね、ぜひ、スタディベースにしていかなきゃいけないなという、そういう思いがございます。時間をかけて様々な現場の皆さんの声を聞いて、最大公約数でこういう形ができたことは、改めてご協力いただいた皆さんに感謝を申し上げたいと思いますが、他方、一度方針を示したことで、その方向が変わったことによってですね、結果として当時の受験生等には大変なご迷惑をおかけしたわけですから、そのことは重く受け止めてですね、今後こういったことがないようにですね、しっかりやっていきたいなと思っているところでございます。あの、これ私もいつか去ると思いますし、会議のメンバーの皆さんもこれでバラバラになるのでは、ややもすると一過性のものになってはいけないということで、何らかの形でこういった会議体を常にしっかり文科省が連携して持って、入試のあり方というのは常に時代の変化に合わせて必要な見直しがあればしていくということを、今後、続けていこうと思っていまして、そういう努力を、ぜひ評価をいただければなと思います。

(了)

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