萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年10月20日)

令和2年10月20日(火曜日)
教育、科学技術・学術、その他

キーワード

市立小学校及びトヨタ自動車株式会社東京デザイン研究所の視察、学校が保護者等に求める押印の見直し等、文部科学省による日本学術会議の活用、教育再生実行会議高等教育ワーキング・グループ、静岡大学長の選考と大学再編、コロナ禍における学生の就職活動に対する支援、ICTを活用した教員の指導力

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年10月20日(火曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年10月20日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年10月20日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 冒頭、私から2件ございます。まず、昨日なのですが、調布市飛田給の小学校におきまして、「一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」と連携して実施された「ダイアログ・イン・サイレンス」の授業及びトヨタ東京デザイン研究所における有人与圧ローバの研究を視察をしてまいりました。本来でしたら記者の皆さんにもご同行いただきたかったのですが、学校現場ということでお許しをいただき、報告に代えさせてください。「ダイアログ・イン・サイレンス」は、聴覚障害者の方の進行によって、音声によらないコミュニケーションを体験するプログラムであり、本年8月に私自身が体験・視察をさせていただいたところです。今回、調布市立飛田給小学校において実施されるということで、プログラムを体験する子供たちの様子を視察するとともに、学校長等と意見交換をさせていただきました。子供たちが、初めての体験であるにもかかわらず、ジェスチャーなどを用いて、いきいきと、積極的にプログラムに参加していたのが印象的でした。意見交換の中では、音声によらない教育プログラムは、普段積極的に発言できないような子供たちも主体的に参加しやすいものであり、言葉の壁を越えるという意味で、外国人の子供たちにも有効なのではないかという意見もありました。文部科学省としても、引き続き、特別支援教育の充実に努めてまいりたいと思っております。トヨタ東京デザイン研究所では、トヨタとJAXAが共同研究を進めている燃料電池技術を用いた月面車両の試作機「ルナ・クルーザー」の研究開発現場を視察してまいりました。実物大の外観映像や試作タイヤなどを見て、我が国の技術力の高さを改めて実感をしました。将来の月面探査活動における我が国の存在感を示すだけでなく、様々な分野の企業、お聞きをしますと大中小を含めて100社が参加されているってことですが、そういった企業も含めて、産官学が幅広く協力する宇宙開発時代の幕を開けるものとして期待がますます高まりました。今回訪問しました関係機関の皆様のお取組に改めて敬意を表し、御礼を申し上げたいと思います。
 もう1点なのですが、児童生徒の学習や生活に関する学校と保護者の日常的な連絡において、学校が保護者に求めている押印を見直すとともに、学校と保護者間における連絡手段のデジタル化が順次進められるよう、本日、教育委員会に対し通知を発出をいたしました。通知では、保護者で多用されている認印の効力はそもそも限定的であることを示した上で、これを機に押印を見直し、順次、地域の実情やシステムの整備状況、学校種等に応じたデジタル化を進められるように、具体の情報伝達手段のデジタル化の例示、個人情報の取扱い、デジタル環境への対応が難しい家庭の配慮など、具体の方策や留意点などをまとめています。今回のデジタル化は、学校の業務効率化、保護者の負担軽減、そして迅速な情報伝達につながるものであるため、可能なところから、順次、取組を進めていただければと考えております。私からは以上です。

記者)
 1点質問させてください。日本学術会議について、文科省でも、ここ数年でいくつか審議依頼をしていると思うんですが、それらの回答を施策にどのように活用しているのか教えていただきたいです。

大臣)
 日本学術会議は、関係機関からの審議依頼事項に対し、回答することを職務の一つとしておりまして、文部科学省においても、学術に関する各分野の有識者の幅広い知識・知見が必要な課題について審議を依頼してきたところです。例えば、研究活動における不正行為への対応や科学的エビデンスに基づく「スポーツの価値」の普及の在り方などについて、日本学術会議に審議依頼をし、回答いただいたところです。文科省においては、日本学術会議からの回答も参考にしながら関係政策を推進をしているところでございます。

記者)
 昨日、教育再生実行会議のワーキンググループがありまして、大学の入学時期に関しては、一律に9月にということよりも多様化した方がいいんじゃないかということで、出席者の意見が一致したということなんですが、これに関する大臣の受止めをお聞かせいただきたいのが1点と、直接関係なくて申し訳ないんですが、イギリス政府が、ロシアの情報機関が東京オリパラの関係団体にサイバー攻撃を仕掛けていたと発表しているんですが、この件の受止めも併せてお聞かせいただければと思います。

大臣)
 昨日、教育再生実行会議の第2回高等教育ワーキンググループが開催され、「グローバルな目線から見た新たな高等教育の戦略」をテーマにご議論をいただきました。会議においては、大学の国際化や外国人留学生の獲得について様々なご意見をいただいて、大学入学時期に関しても、従来留学生の入学時期を9月のみとしていたところ、4月・9月いずれの時期でも留学生の入学を可能とした結果、留学生の割合が大幅に増加したという事例を紹介いただいたり、9月しか入学できないことになると硬直的な仕組みとなってしまう。大学の入学と卒業の時期、入口と出口を柔軟化していくことが重要である、といったご意見をいただいたと報告を受けております。今後、教育再生実行会議において、大学入学時期の在り方も含めた新たな高等教育の戦略について議論を深めていただきたいと考えております。後段の報道の件は、報道は承知しているんですけれど、そういった事実関係があったかどうかっていうのは、私、確認をしておりません。

記者)
 国立大学の静岡大学と浜松医科大の法人統合・大学再編についてお伺いします。本日、静岡大学の次期学長に、法人統合・再編に慎重な立場の新学長、日詰一幸氏が選ばれたとの発表がありました。両大学が法人統合し、再来年には新たな二つの大学に再編される予定ですが、予定通りの改革が難しくなるのではとの見方があります。文科省は、少子化や経営効率化などから、1法人複数大学制度のもと、地方の国立大の法人統合・再編を促していますが、今回の静岡大学学長選考の結果と、統合・再編の影響を受けてご所感を教えていただきたいと思います。

大臣)
 昨日、静岡大学において学長選考会議が開催され、同大学の次期学長候補として、日詰一幸さんが選考され、本日、大学からその旨が公表されたことは承知をしております。国立大学法人の統合に当たっては、大学間だけではなく、地元自治体や産業界等と十分に意思疎通をしながら、将来構想を練り上げ、実現していくことが重要であります。この点について、現在、静岡大学においては、静岡市との間で静岡大学の将来構想について協議会を設けて議論されていると聞いています。次期学長には、地域の声も踏まえながら、今般の両大学の改革が、国立大学として、静岡・浜松双方の地域の方々からも支援され、地域の将来に貢献できるものとしていただくことを期待したいと思います。文科省としても、地域貢献に重点を置く両大学の経営改革を、引き続き、支援をしてまいりたいと思いますし、あの、報道でしょうか、その慎重派というのは。あんまりそういうレッテル貼りをしちゃうと、今後、学長もやりづらくなるんじゃないかと思っていまして。新学長候補はですね、静岡大学将来構想協議会に入って、この間何年も、この合併協議の中のプロセスを承知している人なので、そういう意味では、方向性は変わらないというふうに期待をしたいと思います。

記者)
 先日、「日曜討論」で、コロナ渦における大学生の就職支援について、厚生労働大臣との協力の下、経済界への申入れを行うということがありました。改めて、具体的に教えていただきたいのと、それについてのスケジュール、何か決まったものがあれば教えてください。

大臣)
 文部科学省としては、学生の皆さんが大きな不安を抱えることがないよう対応することが重要と考えております。その中で、一昨日、私からお話をした通り、希望した就職へのチャレンジすらできず落ち込んでいる学生がいるという話も伺っており、これまでも、政府としては、卒業・修了後少なくとも3年以内は新卒者同等の扱いをするよう経済界に要請をしているところですが、今般のコロナ渦の状況も踏まえ、改めて、経済界に申入れを行うことで、学生たちが少しでも希望を持てるように取り組んでいきたいと思っています。その具体的な対応につきましては、現在、学生の就職・採用活動に関する要請を担当する関係省庁間で議論を進めているところでありまして、まとまり次第、経済団体へ要請を行いたいと考えております。番組の中では、1分間という発言が制約されておりましたので、厚労大臣の名前しか、私、出しませんでしたけど、当然のことながら経済産業大臣ともお話はしていますし、一億総活躍大臣にもご協力をいただいて、4大臣で協議をして、そして、関係団体に申入れをする予定です。できるだけ速やかに行動に移したいと思っています。

記者)
 冒頭発言にありました押印の見直しと連絡手段のデジタル化について、これ多分、子供を持ってる保護者の方にとってみれば、非常に、LINEで欠席の連絡とか、そういうことも可能になるかと思うんですけども、大臣、これをやることによって、学校の負担とか保護者の負担とか、どのように変わるというイメージをお持ちかお聞かせ願えないでしょうか。

大臣)
 そもそも先ほど申し上げたように、押印そのものはですね、別に法律や政令で定められたものではないんですけれど、学校間との連絡の中で信頼関係を高める上で、今まで慣例的に使ってきたものだと思います。既に学校の色んなシステムで先行している、例えば、政令市の横浜市などは遅刻や欠席の連絡は、既にスマホを活用してですね、学校のシステムに直接、親御さんから連絡を入れるっていうことで、そういう意味では、書類を書いたり、朝、電話をしたりすることが省かれることで、親御さんたちも負担が軽減されているし、その受け手になる先生方も負担軽減に繋がっているという事例を承知をしておりますので、そういったことが進んでいくんじゃないかと思っています。ただ、事によっては、子供の方がシステムに詳しくてですね、なりすましで遅刻や欠席なんてことがあってはならないと思いますので、そういったセーフティーネットもこれからしっかりやっていきたいと思います。いずれにしても、ICT環境が整うのが今年度末ということで、来年からが学校現場でのICT元年ということになると思います。あの、あんまり背伸びして、色んなことをわっと広げてですね、結果としてトラブルが起こらないように、慎重に一つ一つ検証しながら、できることを移行していくということで頑張っていきたいなと思っています。

記者)
 1つフォローさせてください。GIGAスクールを進めるときに、4月頃に全国で調べたときに、大体、クラスの5%くらいがスマホを持っていない家庭があるという調査があったと記憶しています。今回のこういう連絡のデジタル化というときに、結局そういう問題が出てくるかと思うんですけれども、この辺りについてはどのようなご対応をお考えでしょうか。

大臣)
 全てのご家庭にICTの環境の整っているわけではないことは、今までも承知をしておりました。従って、例えば、学校からタブレットを持ち帰るご家庭でWi-Fi環境がない家庭にはルーターの貸出しなどの政策をやってきましたけれど、今後、こういったツールが当たり前になるということになればですね、これ、政府全体で考えなきゃいけないことだと思います。学校の保護者にだけ何かスマホを多用するっていうのは、ちょっと政策としてはいかがかなと思いますので、政府全体でそういう世の中を作り上げていくってことが大事だと思います。従って、そういう環境にない親御さんが、何か負担感を感じてですね、新たな負担を背負わなきゃならないっていうのは全然望んでいないので、あくまでハンコをなくすだけですから、連絡帳とかメモとかで今まで通り連絡を取っていただくこともツールとしてはしっかり残していきたいと思います。すなわち、デジタルとアナログ、しばらくはハイブリッドで進むことが必要だと思っています。

記者)
 先月、OECDが発表した教育に関する統計データで、ICTを活用した教員の指導力について、日本がOECD加盟国中、最下位という結果が出ました。この結果について、大臣はどのようにお考えでしょうか。また、かねてより、ICTを活用した教員の指導力は課題となってきましたが、今後、文科省としてどのような政策で対応していくか教えてください。

大臣)
 9月29日に発表されたOECDのデータにおいて、校長等が「教員は、指導にデジタル機器を取り入れるために必要な技術的スキルと教育的スキルを有している」と答えている学校に通う生徒の割合について、日本が、参加国中、最も低かったという、そういう結果が出たことは承知をしております。調査結果がいかなるものであれ、ICT化が進む現代の社会において、教師がICTを活用して指導する力を身につけられるようにすることは重要であると考えており、文科省としては、独立行政法人教職員支援機構において、各地域でのICT活用に関する指導者の養成研修の充実を図るとともに、自治体に対して、ICT活用に関する助言や研修支援などを行うICT教育、活用教育アドバイザーの派遣も実施をしております。また、教師や児童生徒がICTを活用した学習に取り組むに当たって参考になるように、自宅等で活用できる教材や動画等を紹介する「子供の学び応援サイト」の開設・充実、また、各地域におけるICTを活用した取組事例等に関する情報のホームページへの掲載・周知、各教科等の指導におけるICTの効果的な活用に関する参考資料の作成・提供などに取り組んでおり、来年度要求においても、ICTを効果的に活用するための指導事例等のオンライン教員研修プログラムの作成等に係る経費を計上しております。これらの取組を通じて、現場の負担を軽減しつつ、教師のICT活用指導力の向上を図ることによって、全国でICT活用が進むように、文科省として支援をしてまいりたいと思います。先ほどもちょっとお答えしましたけれども、児童生徒に1人1台が完備されるのは今年度末ですから、いよいよ来年からが、学校現場のICT元年だと私は思っておりますので、今までなかなかそういう環境になかった先生方が、ある意味ではスキルが低いと言われるのは、これはもうやむを得ない部分もあったと思います。そもそもOECDのPISAの調査は、パソコンで答えなくてはならないっていうこともありますので、答える先生が苦手ですと、これまた、なかなかそのタイムリーな答えができなかったり、あるいは学力テストなどもこれ、子供たちはパソコンで答えなければならないんですけど、パソコンで答えるってことを今まで日本の子供たちはあんまり経験しなくて。私も、あの、ユネスコの会議に出たときちょっとびっくりして皆さんにお話したと思うのですけど、休校時にほとんどの学校がオンラインでの授業をやっているということを、各教育大臣がおっしゃって、ちょっと青くなった記憶がございます。ですから、今までのことは今までのこととして、来年からは環境が整うわけですから、その中でしっかりできる指導というのをしながらですね、先生方にもそのレベルアップを図ってもらいたいと思いますし、また、そのことが過度な負担になってですね、先生方が更なる仕事が増えることがないように、その辺のバランスをしっかりとりながら、サポート体制を強化していきたいなと思っております。

(了)

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