萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和元年12月17日)

令和元年12月17日(火曜日)
教育

キーワード

大学入試共通テストにおける記述式問題の導入見送り

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和元年12月17日(火曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和元年12月17日)

令和元年12月17日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
冒頭、私から1件ございます。大学入学の共通テストにおける記述式問題について申し上げます。この問題について、この間、国会での御指摘等も踏まえ、累次にわたり協議を続けてまいりました。最終的に先週及び昨日、大学入試センターの山本理事長から二度にわたり検討状況に関する現状の報告を直接受けました。また、昨日は、大学入試センターを訪問をし、極めて厳密な体制で試験問題の作成などの試験実施業務が行われていることも伺ってまいりました。文部科学省としては、大学入学共通テストにおける記述式問題の導入に関して指摘されている課題に対し、どのような改善が可能かできるかぎりの方策を大学入試センターとともに検討し、採点事業者に必要な対応を求めるなど様々な努力を重ねてまいりました。その結果として、一つには、採点事業者に守秘義務を課し、違反した場合の損害賠償等も規定した契約の締結や、採点者等に対し試験実施前に試験問題を類推できる情報を開示しないことなどを定めた機密保持契約の締結などにより、採点業務に関する機密を保つ体制を確保いたしました。また、採点事業者に対し、採点業務に伴い知り得た一切の情報の漏洩や目的外使用の禁止を契約に規定しているほか、採点業務を受託したことを利用した宣伝行為を、同社のグループ全体で自粛していただき、社会的疑念を招くことのない体制の確保に努めてまいりました。更に、障害のある受験生に対しては、記述式問題を導入することに伴い、解答欄の大きさやレイアウトを変更した解答用紙を用意すること、それでも解答が難しい受験者に対しては、パソコンやタブレットを用いた入力を可能にするためのソフトウェアの開発などを行うなど新たな受験上の配慮を行い、それらをこれまでより早期に公表することにするなど、種々の検討・対応を進めてきたところです。同様に採点の質、自己採点と採点結果の不一致の課題についても、真摯に取り組んでまいりました。大学入試センターによりますと、まず、採点体制については、採点事業者としては、示された採点期日までに採点を完了するために必要な質の高い採点者を確保できる目途は立っているということであります。一方で、実際の採点者は、採点事業者において、適正な試験等により選抜し、更に必要な研修を行うという慎重なプロセスを経て適任者を得ることとしております。このため実際の採点者が決まるのは来年の秋から冬になるということでありました。採点の精度を上げることについては、2度の試行調査の検証結果も踏まえ、採点事業者において、当初の予定より更に多人数の視点で組織的・多層的に採点を行う体制の構築や、元教員等の専門的知見を有する者による品質管理専門チームを設け、ダミー答案を活用したチェックや無作為抽出によるチェックなどを執り行うなど、大学入試センターとしても更なる採点精度の向上を図ることが可能であるということでありますが、採点ミスを完全になくすところに至るまでには限界があるということでありました。このため、各大学での個別選抜の前に、記述式問題の採点結果を本人に開示することも含め検討しましたが、採点スケジュールや各大学への成績提供の開始時期との関係から調整・解決すべき点が多く、少なくとも来年度からこれを行うことは現実的には困難との判断に至りました。その検討にあたっては、共通テストを12月や1月上旬に早めることも再度検討しましたが、12月については、受験までに高校の学習内容を終了することができないことや各種の体育大会や文化行事の日程との関係などから難しく、1月上旬に早めることについても、年末年始の時期に、試験問題の配送や厳重な保管などを確実に行ううえで問題があり、困難との判断に至りました。自己採点については、2度の試行調査において、国語で約3割が自己採点と採点結果が不一致となりました。これについては、正答の条件に基づく採点の仕方について説明した資料を年度内に周知することに加え、模擬答案を用いた自己採点動画の提供による自己採点シミュレーションの支援なども検討いたしました。これらによって、一定程度の改善が期待できるとのことでありましたが、自己採点の不一致を大幅に改善することは困難であるということでありました。また作問の工夫によって、自己採点しやすい設問にすることも検討いたしました。しかし、その場合、論理的な思考力や判断力を評価するという記述式問題導入の本来の趣旨を損なうことになりかねないとの判断に至ったとのことであります。これを受け、文部科学省としては、採点体制について、採点事業者として必要な数の質の高い採点者の確保ができる見通しは立っていることは認められるものの、実際の採点者については、来年秋以降に行われる試験等により選抜、研修の過程を経て確定するため、現時点では、実際の採点体制を明示することができません。採点の精度については、様々な工夫を行うことにより、試行調査の段階から更なる改善を図ることはできると考えておりますが、採点ミスをゼロにすることまでは期待できず、こうした状況の下で、試験の円滑かつ適正な実施には限界があると考えております。自己採点については、様々な取組みを行うことにより、一定の改善を図ることができることは確認しましたが、採点結果との不一致を格段に改善することまでは難しく、現状では、受験生が出願する大学を選択するにあたって支障になるとの課題を解決するにはなお不十分だと考えております。この間、国会審議をはじめとして本件に関し様々な御意見が出され、受験生の立場に立って、早く結論を出すことが何をおいても重要だと考えてまいりました。これらのことから再来年1月実施の大学入学テストにおける記述式問題の導入については、受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点において困難であり、記述式問題は実施せず、導入見送りを判断をいたしました。再来年1月の共通テストに向け勉強している生徒や、保護者、教師をはじめとする関係者の皆様には御迷惑をおかけする結果となり、誠に申し訳なく思いますが、御理解を賜りたいと思います。今般の大学入試改革は、子供たちが未来を切り拓くために必要な資質・能力の育成を目指して、高校教育改革、大学教育改革とともに「高大接続改革」の一環として取り組んでいるものであります。初等中等教育を通じて論理的な思考力や表現力を育て伸ばすことは、大変重要であり、それらを評価する観点から、大学入試において記述式問題が果たす役割が大きいことに変わりはありません。今回、令和3年1月の大学入学共通テストでは記述式問題は実施せず、導入見送りを判断しましたが、各大学の個別選抜において記述式問題の活用に積極的に取り組んでいただきたいと考えており、文部科学省として、各大学に対してそうした取組をお願いしていきたいと思います。また、私の下に設置する検討会議において、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題の在り方など大学入試における記述式の充実策についても検討してまいりたいと考えております。私からは以上です。

記者)
先ほど、大臣が理由として挙げられました採点ミスの懸念であったり、自己採点の難しさというのは、かなり以前から指摘されていたことだと思います。何故この時期になったのか、遅すぎたのではないかという点についての大臣のお考えと、こうした課題について文科省はこれまできちんと対外的に説明をしてきたのかと、ごまかしがなかったのかという点についてどう考えるかについてお聞かせください。

大臣)
採点事業者は、示された期日までに契約を履行する意思を示しており、文科省としても、採点事業者においては、必要な採点体制を確保できる見通しを持っていると受け止めております。一方で、再来年1月の共通テストまで1年余りに迫り、受験生が安心して受験できる体制を早く整えなければならない中、今般の大学入試センターの報告によれば、実際の採点体制は試験等による選抜、研修を経て秋以降に決まるとのことで、現時点では採点体制を明示できないということになりました。こうした点を踏まえますと、試験まで約1年となった今、ここで決断をせざるをえないという判断に至ったところでございます。文部科学省としてごまかしをしていたのではないかという御指摘なんですけれど、文科省は大学入試センターとしっかり連携をとりながら、国会での与野党の皆さんの指摘を踏まえてですね、改善方努力をしてきました。どこまで詰められるかという問題はありましたけれども、採点ミスをゼロにすることが可能かということについては、確かに当初からですね、それは現実的ではないんじゃないかという意見もあったんですけれど、しかし0.3パーセントをできるだけ圧縮してですね、そして万が一そういう事態が生じた時のセーフティネットをどう張るかについても検討してまいりましたので、いたずらに時間を延ばしたわけではございません。できるかぎりの努力をして、この年末が限界だということで判断をした次第です。

記者)
今回ですね、記述式を巡ったことで大学入試改革の2つの柱がなくなったということになるかと思うんですけれども、そのことについての大臣の受け止めと、加えて検討会議の中でですね、英語の4技能も含めて、記述式も含めてですね、どういう議論をされていくのか、お考えをお願いします。

大臣)
再来年1月の共通テストについて、大学入試英語成績提供システムと記述式問題の導入について見送ることといたしましたが、高大接続改革の中で英語の4技能評価や記述式問題が果たす役割が大きいことには変わりがないことから、これらについては、今後、私の下に設置する検討会議において、英語4技能の大学入試における評価の方法、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題の在り方など、大学入学における記述式試験の充実策について検討してまいりたいと思います。共通テストに関しては、マークシート式問題についてもより思考力、判断力などを重視した作問となるよう見直しを図るなどの取組みを行うこととしており、大学入学共通テストの実施に備えてまいりたいと思います。

記者)
まず1点確認させていただきたいんですが、前回、英語のときは、24年度まで見送ったうえで検討するとしていましたが、記述式については期限は区切られるんですか。

大臣)
文科省としては、大学入試センターと共に様々な努力を重ねてきましたが、センターによれば先ほども指摘しましたけれども、事業者において必要な採点者確保の目途はたっているものの、試験等による選抜、研修を経て実際の採点者が決まるのは、来年の秋から冬になること、元教員等による品質管理専門チームを設けるなどにより一定の採点精度の向上は図れますが、採点ミスの可能性は依然として残ること、自己採点の不一致を一定程度改善できる方策は検討したものの、大幅に改善することは時間的に困難であるということでありました。これを受け、文科省としては、受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは困難であり、また指摘されている課題を解消できる時期を現時点で見極めることができないことから、令和3年1月の大学入学共通テストにおける記述式問題を実施せず、導入見送りを判断をしました。期限を区切った延期ではありません。大学入試において論理的な思考力や表現力を評価する観点から記述式問題の果たす役割は重要と考えており、私の下に設置する検討会議において共通テストと個別選抜の役割を踏まえた記述式問題の活用の在り方、採点を具体的にどのように行うかといった観点からの検討など、大学入試における記述式の充実策について議論をいただきたいと思っております。

記者)
あと1点、先ほど採点ミスをゼロにすることは難しいというお話でしたが、これ民間事業者に委託する段階で採点ミスをゼロにするというのは、もう根本的な前提ではなかったんですか。

大臣)
採点事業者は、現時点でも履行日までの間にそれをしっかり履行するということをおっしゃっています。それをあらかじめ、しかしミスはあるだろうということをセンターが申し上げるわけにはいかないというふうに思います。ただ現実問題として考えて、プレテストで0.3パーセントと数字があって、これがゼロまでいけるかといわれればですね、これは私の判断で困難であるという決断をしました。

記者)
記述式の導入を延期された場合の共通テストの配点や問題形式の変更はあるのかどうかというのが1点と、もう1点はですね、去年8月に開札されていて60億円余りで既に採点業者が決まっています。こちらの契約は何か変更等はあるのか、2点教えてください。

大臣)
今後、国語と数学について、問題作成、配点の見直しなどの対応が必要となることから文部科学省と大学入試センターで速やかに協議の上方針を決定し、関係方面への周知などを行ってまいります。時間の配分ですとか配点については、これから協議をしたいと思います。もう1点はなんでしたか。

記者)
開札された60億円余りの業者との採点事業に関する契約内容の変更等はあるものなのか。

大臣)
今回、契約見直しに伴って学力評価研究機構において契約履行のために既に支出した費用及び支出が確定した費用ついては、その性質、対応等に応じて何らかの対応が必要になると考えております。今後、大学入試センターと学力評価研究機構において協議を重ねていくことになると思いますが、その中で具体的な対応が決まっていくものと認識をしております。ご指摘の金額は、向こう6年間の契約でありますので、今申し上げたように、まずは今日までかかった費用について、これは協議の上で対応していきたいと思っております。

記者)
判断の理由で確認なんですけれども、体制確保は実際に整うのは来年冬以降ということや、採点の質、あと自己採点の問題など主に3点述べられたと思うんですけど、大臣としては最もこの点が課題だと思ったという、何が一番問題なのかということをお聞きしたいと思います。

大臣)
3つ大きく理由を説明しましたけれども、特に国立を目指す皆さんにとっては、自己採点によって二次試験の願書の提出をしなくてはなりません。この間ですね、解答用紙を本人に戻すということも考えてみました。先ほどもちょっと触れましたけれども、物理的に果たしてそういう時間が確保できるのか、そして返ってきた解答を見た受験生がですね、自分なりの疑義があったときに、それを問い合わせをする窓口も作ってみようということも検討したんですけれども、しかし、ここまでやっぱり受験生の不安が拡大している中で初めての試験で、これは多分多くの皆さんが問い合わせをしてくるということになるんだと思います。そうすると現実問題として、これ、システムとしては対応がしきれないということを判断をしたのが一番の要因です。採点の質については、繰り返しになりますけれども、事業者との約束の中で先方がやる、やれるということは言っていますので、それを評価をして入試センターも応札に応じて契約をしているわけですから、そのことを今から否定することはできないと思います。ただ、国会での質疑でもありましたように、現時点でどういう人が採点するのか説明してくれといわれても、現時点では説明できないということは、先方も認めているところでありますので、これも不安解消の一つになっていないという判断をしたところでござます。受験まで1年近くなりましたので、受験生の皆さんが落ち着いてですね、目標に向かって準備をしていただくには、ぎりぎりのタイミングではないかと思って決断に至った次第です。

記者)
関連してなんですけれども、今後の会の方向性にも関わる問題なんですが、特に自己採点の大幅改善は難しいと大臣もおっしゃったところなんですが、そうなると、結局、今回の議論が大学の個別試験で現状課すしかないので、共通テストで一斉にかけようということで導入が始まったと思うんですが、今後の方向性として共通テストで課す方向性で議論するのか、それともそこも含めてやはり一度見直すべきなのか、大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
これから検討しますから、今日の記者会見であまり方向性を私が言うのは望ましいとは思わないんですけれど、しかし英語の中止以降の大学の皆さんの対応を見たり、あるいは今回の問題についてもそうなんですけれど、もう少し実際の大学関係者の皆さんとの、いうなら価値観の共有という点では、やや時間的に足りなかったのではないかなと私は思っております。ですから記述式が大事だとおっしゃっていただける各大学の先生方が大勢いるんですけれども、しかし自分たちの大学では問題は作らない、採点はしないというのは、ちょっと私個人はですね、腑に落ちないところがありますので、この点は、今後検討を加えた上でですね、是非、各大学に必用だと認めていただけるんだったら、例えばセンターの知見を使って作問を何種類かすることは可能だということが確認できていますので、問題は提供するので採点は各学校でやっていただくようなことも一つのツールとしては可能なんじゃないかと思ってまして、やっぱりことを全てなくしてしまうという方向ではなくてですね、どうやったら試験の中に加えることができるんだろうか、どうやったら皆さんが公平に受験ができるんだろうかということは、ちょっと時間をいただいて検討してみたいと思っています。

記者)
逆に言うと記述式問題を共通テストで問わない可能性というのは残されているんですか。

大臣)
英語と違って見送りという申し上げをしましたので、全くまっさらな状態から対応していきたいと思います。

記者)
共通テストで英語の民間試験に続いて、国語と数学の記述式問題も見送りとなりました。それで、それに向けて準備してきた受験生や学校関係者、塾の関係者なんかたくさんいらっしゃいます。また、この制度が一体どうなるんだろうと、このところ不安に思っていた人達もたくさんいると思います。そこでお聞きしたいと思うんですけれども、まず今回の見送りにいて、萩生田大臣ご本人の責任、それから今まで関わってきた歴代大臣のですね、政治責任、それから、あるいは文科省幹部の処分とかですね、何か、検討されているのか。つまり、誰に責任があって、誰が責任を取るのかというところは、どのように大臣、今お考えでしょうか。

大臣)
見送りの決断をしたのは私ですから、私に責任があると思っています。この間、関係者の皆さんに不安な思いを与えたり、混乱をさせたことも事実でありますけれども、残り1年ありますので、落ち着いた環境でしっかり頑張っていただきたいと思っていまして、ここはぎりぎりの判断をしたというふうに御理解をいただきたいと思います。

記者)
見送りを決断されたのは大臣で、そこは大臣に責任があるということですが、今まで、下村さんをはじめですね、たくさんの、柴山さんもですね、大臣が関わってきました。たくさんの文部科学省の職員の方も関わってきました。その方々も含めた責任についてはどういうふうにお考えてらっしゃいますでしょうか。

大臣)
入試改革の議論が始まって、高大接続の様々な議論の中で、英語の4技能や記述式が必要だと判断したのは、与党全体の考え方の中で行ってきたので、それぞれ、その時々の大臣は、その時々の大臣までの環境の中でベストを尽くしてきたと思います。私が最終的に実施段階で大臣を拝命しました。私の判断の中ではですね、これ以上、前に進めない、公平性が保てないという判断をしたので、その過去の大臣の皆さんの段階は実施段階ではなかったわけですから、それはそれなりに、きちっと皆さん、責任を果たしていただいたと思っています。

記者)
そうすると誰も具体的に責任を取らないということになるのか、あるいは与党、政府全体の責任と考えるか、市民の皆さん、どのように考えたらいいんでしょうか。

大臣)
誰か特定の人の責任でこういう事態が生じたのではなくて、今までも申し上げてきましたけれども、目指すべき理想とですね、それをきちんと評価するシステムの間に様々な齟齬が生じてしまった。それが埋めれると思ったけれども埋めれなかったというのが現実だと思います。現時点で私が責任者ですから、私の責任でしっかりこれを立て直していきたいと思っています。

(了)

お問合せ先

大臣官房総務課広報室