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平成20年9月9日大臣会見概要

平成20年9月9日(火曜日)
10時50分〜11時12分
文部科学省 記者会見室

大臣)

 本日の閣議ですが、予定通り終了しました。若干長引きましたのは、野田科学技術政策・食品安全担当大臣より『平成20年度「自殺予防週間」の実施』について、今月10日から16日までの一週間、「自殺予防週間」を実施するという発言があり、それに関連して二、三の閣僚からも少しお話があったためです。

記者)

 秋田県の寺田知事が、昨日の記者会見で学力調査の結果を自分の責任で公表したい旨の発言をされたようですが、大阪府知事の発言をはじめ、今後、各県知事がこのような判断をし、公表されることとなると、序列化につながっていくことが懸念されると思うのですが、大臣の受け止めをお願いします。

大臣)

 寺田知事の発言については報道及び県当局からもお聞きしています。ただ、学力調査も二回目のことですから、知事も実施要領等について、正確に把握してくださっているかどうかです。我々から言えることは、この調査結果の取扱いは、実施要領に基づいて市町村教育委員会が判断すべきことだということです。要は、県レベル等で公表することによって、無用な、と敢えて申し上げますが、不適切な競争の激化とか序列化が進んでは、調査そのものの意義が失われてしまうわけです。学力調査の目的は、学校あるいは市町村教育委員会が、子どもたちの教育にあたって、どういう工夫を重ねていくかということを、この悉皆調査をもとにして把握して頂くというのが本来の目的ですから、私どもは、その実施要領を守って頂きたいと思います。

記者)

 大阪府の橋下知事が、予算を絡めて学力調査の公表を迫るような発言をしています。いわゆる自発的というのにはほど遠いような気もするのですが、大臣の受けとめをお願いします。

大臣)

 以前申し上げたとおりで、大阪府の場合は、府全体が不振を極めていたから、色々な思いもあって、橋下知事は少し過激に言われたのだと思いますが、私どもの立場からすれば、予算の問題にまで広げるべきものではないと思います。

記者)

 文部科学省はむしろ、学力調査の分析結果であったいわゆる平均値からほぼ5パーセントの中に上下が収まっていて、学力がほぼ均等に近いということを強調された方が良いような気がするのですが、いかがでしょうか。

大臣)

 東京に次ぐ大都市の大阪で、思うような良い結果が出ていなかったので、知事としては少しショックだったのでしょう。府全体をもう少しレベルアップしたいという思いで、あのように言われたのでしょう、その思いは良くわかります。また秋田県においては、さらに向上させなければいけないと思ったのかもしれません。ただ、やはり原則は原則ですので、実施主体の文部科学省の方針は守って頂きたいと重ねて申し上げたいと思います。

記者)

 そもそも学力調査の結果というものは、それを見たいと思う国民はたくさんいて、そういう声にも応えなければいけない自治体の現場があって、そういうことを内包していると思うのですが、ただ、今おっしゃられた過度な競争や序列化を生まないという文部科学省の趣旨が、知事レベルでさえ理解されていないのではないかという気がするのですが、文部科学省は今後趣旨を徹底するようなことが必要なのでしょうか。

大臣)

 おそらく想像するに、おっしゃるような保護者や教育関係者の意見は手紙やインターネット等で寄せられているでしょう。そこは市町村教育委員会で、地域住民からの声を斟酌しながら、やはりもう少しデータを出そうじゃないかという合議が成り立てば、各市町村教育委員会が公表して頂いてまったく良いわけでして、それを都道府県教育委員会が縛るというわけにはいかない、ということを申し上げているのです。地域住民のそういう声が高く、各市町村教育委員会が判断されてある程度データを示し、皆の議論の材料を提供するというのは、学校現場で活かして頂いたり市町村のレベルアップのためであれば、ある意味望ましいことだと思います。

記者)

 確認ですが、今のお言葉だと、データをある程度開示することは望ましいことだと大臣自身はお考えですか。

大臣)

 いえ、地域住民からの声を聞いて、斟酌して、市町村教育委員会が判断すべきことだと申し上げました。

記者)

 とすると、結局秋田県もそうですが、知事が笛を吹いても市町村自体がなかなか公表しないので、あのような発言になったという背景があるわけです。市町村ごとに公表がされたりされなかったりすることについては大臣はどのようにお考えですか。

大臣)

 それはあくまでも市町村教育委員会の判断に委ねるべきことで、私がとやかく言うことではありません。それに、それぞれの市町村には議会もあるわけで、議会の方々がどういうふうに考えられるかということもあるでしょう。そこに地方自治の原点がありますから、文部科学省がとやかく言うべきことではないと思います。

記者)

 大分県の教員採用試験を巡る汚職事件の関係で、不正採用者の処分が決まってきました。基本的には、その教員採用は地方自治体の職務と権限で行われると言われていますが、これだけ大きな事件が起きて、公教育の信頼という責任を負っている文部科学省も、その責任の一端がないとは言えないと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。

大臣)

 文教行政の一番頂上にある文部科学省が、この問題の重大さを認識していないわけでは、決してありません。公教育への信頼が揺るがされたことは、本当に文部科学省としても考えねばならないことです。ただ、また新しい報道もあったようですし、まだ教育長、教育委員長の措置もはっきりしていないわけですから、そこを大分県教育委員会がどうされるのか、もう少し推移を見たいと思います。これをもって文部科学省で何らかの処置を考えるかというと、そのようなことは考えていません。政策としての検討に値する材料はあると思いますが、文部科学省が責任を負うというものではないと思っています。

記者)

 よく教育行政において言われるのが、文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会と縦のラインがあって、上は発言するが責任は取らないというところに問題があるという指摘があり、また、そういうところを改めるのが教育改革につながっていくという考えもありますが、責任について大臣のお考えをお願いします。

大臣)

 このように理解してください。トータルの教育の在り方について、我々が行政機関のトップとして、身を侵すということは考えてもいません。ただ直接的に地方分権を原則とする教育のシステムの中で、大きな意味での反省はもちろんしなくてはいけないし、新しい改革も進めていかなければなりませんが、こと、大分県の事件を受けて、何かを文部科学省内でするというものではないと私は思います。議論はすべきことだと思います。

記者)

 そうすると、今回の事件が起きたことについて、文部科学省では、地方の教育委員会がやったことで、文部科学省には全然問題がなかったというお考えですか。

大臣)

 いえ、そのようなことは申していません。この件に関しては、大変な事件だということを前から申し上げてきましたし、日本の風土が生んだ面もあります。だからそういう意味でトータルな教育論を展開しなければいけないという責任は文部科学省にあります。ただ、直接的に局の誰がどうだとか、大臣がどうだとかということには、つながらないということを申し上げているのです。事件が起こったことは残念ではありますが、全般的な公教育の改善のための事例として、これを良い方に活かしたい。それが私どもの責任だと思っています。

記者)

 では文部科学省として、何が問題だったかを検討するということですか。

大臣)

 それは当然省をあげてやっていることでして、これもぜひお願いしたいのですが、地方の議会も、教育委員の任命にあたり同意しているわけですから、もう少し地方の議会も公教育の在り方についての取り組みをやって頂ければという思いもあります。

記者)

 その意味では、いわゆる地方議会の首長をもっと教育委員会でコミットメントしろということですか。

大臣)

 いえ、コミットメントというか、ほとんどが承認案件でしょうから、その承認をめぐって、例えば神奈川県でも最近は色々な教育の議論がありますけれど、もう少しその地の独自性に基づいた、地方での教育論議というものがあって、その中に教育委員会の在り方というものも深めて頂ければと思います。大分県の場合でも地方の議会の議員が働きかけたというケースもあるようですから、こんなことでは困るなと思います。

記者)

 今の話からすると、先程の秋田県や大阪府での学力調査の結果を公表せよと知事が迫ってみたり、逆に地方の議員が教員の採用に口を出してみたり、やはり教育委員会の独自性というのは、ある意味侵されているのではないかと思うのですが大臣はいかがでしょうか。

大臣)

 結果的にはそういうことも言えると思います。ただ先程も申し上げたように、やはりきわめて日本的なこの風土をかいま見ることができる事件だと思います。一種の談合です。教育の世界に限らず、どこにでも表面化する、日本の長い社会のしきたり等が招いている風土のひとつの問題点だと思います。例えば、正直に申し上げれば、議員というのは何かを頼まれると、選挙のことを考えるとなかなかそれを断れないのです。これなんかもやはり、日本的な選挙、政治というものの、ひとつの改革すべきところなのだと思うのです。

記者)

 これが大分県的な風土ではなく、日本的な風土であるとすると、他の県でこういったことが慢性化しているということですか。

大臣)

 それは全部調査をしまして、まったく不正らしきものはないという結果を発表しています。

記者)

 信頼性の問題ですが、こういうことが起き、各都道府県教育委員会に調査を依頼して、結果としては不正がなかったということですが、これはだいぶ一般の感覚と乖離している、他県でもあるのではないかという疑問に答えられてないのではないかと思うのですがいかがでしょうか。

大臣)

 そこは信じる以外ないと思います。そこまでダウトフルであったら、何事も真相は突き詰められませんから、二度にわたって調査しましたから信頼できるものだと思っています。

記者)

 つまりこれで、公教育の信頼は回復したということですか。

大臣)

 いえ、そういう意味ではありません。データとして信頼すべきものだと言っているのであって、公教育の信頼を全部戻せたなんてことはない。考えてみてください。特に大分県の当該学校の子どもたちは、四、五ヶ月で担任が代わってなんだったのだろうって、納得できないでしょう。学校ってこんなことになるのかなあって、やはりその不信感というか、そういう思いは消えません。調査の信憑性を信じたいという意味です。幸いにして、他に不正がないとすれば、これからさらにどうやってよりしっかりしたものにしていくか、調査に基づいて、何か心配事があれば改善していく、方策を探るということにしたいと思います。

記者)

 大分県の事件を受けて、文部科学省として何を、どのようにしていきたいのかというのを、もう一度教えて頂けますか。

大臣)

 要するに、一言で申し上げれば、教育委員会が、もっとしっかりしたものに自分たちを作り直して欲しいと、その一点です。そのためのサポートは、我々はします。

記者)

 何か具体的にコミットするということですか。

大臣)

 教育のトップであるべき教育委員会が、そのくらいの知恵を出せなくては、教育委員会に値しないではないですか。中央が口を出すべき段階ではないとさえ言いたいくらいで、やはり地方独自の教育方針というものを確立して頂かなければなりません。そのための指導助言等はします。議会にも頑張って頂きたいというのはそういう意味です。それ以上はオーバーコミットメントになりますね。

(了)

  • 本概要は、発言内容を変更しない範囲で読み易く修正しています。

(大臣官房総務課広報室)