平成19年11月9日大臣会見概要

平成19年11月9日
9時41分〜10時12分
文部科学省 記者会見室

大臣)

 本日の閣議は、一般案件等の報告がございました。岸田国民生活担当大臣から「平成19年版自殺対策白書」について、上川少子化対策担当大臣から平成19年度「家族の日・家族の週間」について、これは11月第3日曜日を「家族の日」、その前後一週間を「家族の週間」ということですが、各々、発言がございました。閣議後の閣僚懇談会では、泉防災担当大臣から自然災害について犠牲者ゼロを目指すという取り組みについて発言がございました。この件に関して、冬柴国土交通大臣から防災情報について地震発生の10秒前くらいに情報が流れれば被害をかなり食い止めることができるという発言等、若干のやりとりがありました。
 それから私から、中央教育審議会(以下「中教審」)教育課程部会「審議のまとめ」の学校現場への周知についてご報告させて頂きます。お手元にパンフレットを配付しておりますが、そのパンフレットを今月中に全国の国・公・私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等の全教員一人ひとりの手元に届けることにしたいと考えております。是非、皆さんにも読んで頂いて、今回の学習指導要領の改訂の方向性を少しでも理解をして頂ければと考えております。また、昨日11月8日から一ヶ月間、意見公募を行っておりますので、そういったことを通じて教員の皆さんから、色々な意味で直接ご意見を頂ければと思っております。前回の会見でもご質問がございましたが、前回の学習指導要領改訂の理解がなかなか進んでいなかったという反省もございまして、今回、できるだけそういったことも含めて、しっかりと皆さんに周知をしたいという趣旨で発表させて頂いた次第です。また昨日、早速、都道府県教育委員会の担当課長等にお集まり頂き、説明をしたところですが、今後はできるだけ文部科学省の担当官が直接地方に出向きまして、全国の教育委員会や学校関係者に対して説明を行うとともに、現場の声も聞きたいと考えているところです。さらに、一枚紙をつけさせて頂いておりますが、文部科学省のホームページの中に、「審議のまとめ」の紹介、中教審の委員のメッセージ等からなる「新しい学習指導要領」のページを開設しております。以上のような取り組みを併せて、先程申し上げました意見公募も含め、広く国民の皆さんからご意見を募集するということを実施しながら、同時に、一方的ではなく、双方向での周知を図るよう努力したいと思っております。
 加えてもう一点ご報告を申し上げます。新しい学習指導要領の実施時期について、報道等を見ましても、うちの子どもはどうなるというふうなお母さんとか、そういう色々なご意見があります。学習指導要領が決まりましたら、できるだけ早急に実施の体制を取りたいということで、少しでも前倒しをしたいと考えておりまして、従来でしたら、完全実施まで3年余の時間がかかるわけですが、先行して実施できるもの、これはもちろん周知をしなければいけないわけですが、大きな変更を伴わないものについては、平成21年度から実施をするということも考えております。中教審の審議を踏まえて、新しい学習指導要領の作成にあたって、実施時期を少しでも早められないかということについても検討したいと思っております。

記者)

 教員の定数増について、昨日、これまでの文部科学大臣経験者が、福田首相に要望書を出すことなどを話し合ったそうですが、この予算の実現の見込みについて、どのようにお考えかを教えて頂けますか。

大臣)

 文部科学省としては、教育三法を変え、そしてその中から、教員が生徒と向き合う時間を確保するということについて、様々なメニューを作り、なおかつその中で考えてお願いをした予算ですから、この当初の要望をきっちりと実現したいと考えております。現段階において、確かに厳しいことが色々ありますから、これがどうなるだろうということについてお答えすることは、なかなか難しいと思っております。
 昨日の会議は、これまでも党で定期的にお開きになっている会合でして、私が大臣に就任してから、まだご挨拶をする機会もなかったわけでして、一度そういう機会もということをお願いをしていたわけです。文教制度調査会を中心として、国会も少し落ち着いたといいますか、もちろんまだ懸案は残っているわけですが、この時期に一度開くからということでお招きがあり、出席をさせて頂いたということです。ただ、この時期ですから、今ご質問がありましたような話には当然なります。色々なご意見なり、ご示唆なり、また激励なり頂きました。そういう中で、当然、然るべき時期が来れば、色々なところへ働きかけなければいけないだろうということも議題になっておりまして、その中のひとつに、これは総理にもきっちり言わないといけないなというふうな発言も確かにございました。今どんな時期に、誰がどういうふうにということについては、これからお決めになることだと思っております。

記者)

 教員の定数増の問題について、財務省の方では今公務員の定数削減を進めている段階で、到底のめないというような認識のようなのですが、何故、今必要なのかを改めて教えて頂けますか。

大臣)

 昨年、教育基本法が成立しまして、それに基づいて今後の教育のあり方をどうするかということで、今年の通常国会で教育三法が成立しました。その様々な議論の中で、これから教育の質の向上、子どもたちの学力の向上、また規範意識を上げていくという意味で、様々な施策を講じていかなければいけない。その上で、どうしても今のままでは実現することが難しい。例えば事務的な負担を減らすとか、非常勤講師を活用して教員が子どもと向き合う時間をもっと確保できるようにしていこうということも、併せて考えているわけですが、加えてどうしてもやはり、教員の定数を増やさないと、なかなかその目的を達成することは難しいということです。これは行政改革推進法が施行された後に、色々と国会でもご議論を頂き、教育三法の附帯決議ではっきりと書かれているわけですから、そういうことを受けて、8月の概算要求の段階で、先程説明しました考え方のもとで、定員増を要求しているということです。

記者)

 学習指導要領の前倒しの件ですが、「大きな変更を伴わないようなものは」というような表現でしたが、具体的にはどういうものでしょうか。

大臣)

 私から、とにかく今から、そういう検討をして欲しいということを指示しました。要は、出来るだけ早く実施できるようにやろうということでありますが、ひとつは、新しい教科書を作らなければいけないという作業がございます。教科書の作業というのは、もちろん従来の検定システムで実施するわけですが、どうしても一定の時間がかかりますから、なかなか難しいのかなと思っております。ただ、それを補うようなものを用意をするというようなことも可能かもしれません。これは断定できません。これは検討しなければいけないかもしれませんが、そういったことも含めて考えれば、先程言いましたように、やはり新しい教科書ができてからでないとここの部分は進めないということは、なかなか難しいという意味で申し上げたつもりです。

記者)

 今の学習指導要領では、あまりにも性急にやろうとしすぎたために、現場の理解が十分ではなかったのではないかということが、よく言われますが、その現場の理解が大事だという部分との兼ね合いは、どういう形でバランスを取っていかれるお考えですか。

大臣)

 これはまさにバランスだと思います。そこの部分は、冒頭説明しましたように、前回の反省があるわけですから、理解をして頂くためにどういうことをやるかということは、しっかりとやらなければいけない。出向くことも必要でしょうし、こちらから意見を求めるということもやらなければいけないと思っております。前回は確か、例えばエル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)で一方的にこちらから配信するだけで、少し丁寧さが足りなかったのではないかという反省もあります。そういった意味で、もちろんスピードアップと理解の向上というものが矛盾する部分と、同時に実現できる部分とがあると思いますから、工夫をしながら、前回の失敗を繰り返さないということを考えながらやる必要があると思います。先程ご説明しましたように周知の努力は既にスタートしておりますが、まず、1年くらいをかけて、かなり集中的に理解の期間を設けまして、前回の轍をふまないよう、しっかりと理解増進を図ろうと思っております。ただ、やはり現場の皆さん、特に子どもたちや保護者が、何か変わるらしいが、我々のところはそうではないんだよね、というような率直な意見、これは私も報道等で見ましたが、こういった声には率直に応えていかなければいけないだろうと。そのスピードアップを図るために何ができるかということを、中教審の委員の先生方にもよく考えて頂きたいと、申し上げようと思っております。

記者)

 前倒しの件は、これから検討ということだと思うのですが、現時点で、例えばどの教科のどういうことだったらできそうというふうに、大臣がお考えになっているかということを、少し具体的に教えて下さい。

大臣)

 前倒しの件は、昨日あたりから色々な意見を聞く作業に入っておりますので、今私が申し上げるのは適当ではないと思います。「ああ言ったじゃないか」ということになっても困りますので、もう暫く時間を頂きたいと思います。

記者)

 施行については、通常の場合、学校段階で1年ごとにずれてきておりますが、前回は小中同時施行でした。これについては現在どのようにお考えでしょうか。

大臣)

 これもやはり、もう少し検討しなければ、今断定的に申し上げることは難しいかもしれませんが、今までの段階では施行は少しずれるのではないかということであります。

記者)

 移行措置は全部共通で21年度からというふうにお考えですか。

大臣)

 移行措置は共通にやります。

記者)

 前倒しした場合、結果的に時数増等で現場の教員が一時的に負担が多くなると思います。今概算要求している定員増以外に、更に現場の環境整備というのは考えないといけないと思うのですが、その点についてどうお考えですか。

大臣)

 そこもきっちりと調整をさせて頂きたいと思います。今回、概算要求でお願いをしている部分というのは、大きく3つメニューがあります。定数増については3年間でということもあるわけですが、あとはボランティアの活用とか、非常勤講師をお願いをするとか、そういったことを全体で調整をしながらやっていきたいと思っております。

記者)

 学習指導要領の実施に併せて、更に定員増が必要だというふうにお考えになっているのでしょうか。

大臣)

 そこのところは、もう少し検討させて頂きたいと思います。前倒しの検討は、昨日くらいから入ったことでありますから。

記者)

 授業時間を増やす計画も前倒しするというようなお考えでしょうか。

大臣)

 それも含めて、もう少し時間を頂きたいと思います。当初の計画では、もう少し後ろであったものを、できるだけ前に持ってくることができないかということを、今検討して欲しいと指示したことを、今日報告したと理解して頂きたいと思います。

記者)

 検討は「昨日あたりから」ということですが、そのきっかけというのは、具体的にどのようなことからですか。

大臣)

 「こんなに時間がかからないでできないかな」という私の率直な疑問からきております。そのことを担当部局とも、昨日議論しまして、そういうことなら少し何とか検討できる部分があれば検討しましょうということです。

記者)

 高校歴史教科書の訂正申請が昨日までに5社出揃ったようですが、訂正申請に対してどのように対処されるのか、改めて大臣のお考えを。

大臣)

 昨日までに5社から申請がございました。対処の方針は、前回の会見でも申し上げましたように、教科用図書検定調査審議会(以下「検定審議会」)に意見を聞くということを、11月2日付けで願いをしております。改めてということですが、基本的に何ら変わっておりません。

記者)

 検定審議会が5日にもう既に第1回目が開かれたという報道もありますが、大臣は進捗状況をどのくらい把握されていらっしゃるのでしょうか。

大臣)

 一応報告は受けております。ただ、その中身とか、どういうことであったかということについては、私は透明感を上げるという約束をしておりますから、審議が終わった段階できっちりと報告をさせて頂きたいと思いますが、この審議はできるだけ静かな環境の中で行って頂きたいと思っておりますので、現時点では、いつあったかとか、どうだったかということについては、差し控えさせて頂きたいと思います。

記者)

 検定審議会の中で、複数の専門家から意見を聞くというような議論もあるようですが、専門家の意見を聞くということについて、どのような方が望ましいのかなどについて大臣のお考えを。

大臣)

 そのことについても検定審議会にお任せしておりますから、今の段階でのコメントは控えさせて頂きたいと思います。

記者)

 教育振興基本計画ですが、昨日、一定の議論の整理といいますか、重点的に取り組む事項などについて、案を示されて意見公募をするということになったのですが、委員の方々からも総花的だという批判がある一方で足りない点もあると、評価が非常にまちまちなんですが、案についての大臣のご感想、ご所見を伺えればと思います。

大臣)

 現時点のものというのは、これから広く意見を求めていく上で重点的に取り扱う項目なり、これから議論をしていく内容ですので、ある意味、総花的に出させて頂いたものと理解しております。12日からの予定で意見公募を行い、そういったことも加えて、これからの年末の予算の状況等も踏まえた上で、1月になりましてから再度議論をし、そして最終的な教育振興基本計画を作って頂くということです。まだ内容については、総花的な表現になっていますが、作業が進んでくれば、もう少し濃いもの、ある意味具体的なものになってくるのではないかと思っております。

記者)

 昨日、関東学院大学ラグビー部の3年生が、大麻を栽培していたということで現行犯逮捕されたのですが、関東学院大学と言えば、大学ラグビーで名門校ですし、こういったスポーツ界の不祥事が続くということに関しての受け止めをお願いします。

大臣)

 私はマスコミの記事でしか、あまり詳細を知らないのですが、アマチュアの世界でもプロの世界でも、最近スポーツ界で色々な不祥事が起こっているということは非常に残念なことだと思います。基本的にフェアプレーというのが、スポーツをする上での心構えでありますから、やはりこういうことが起こるのは非常に残念なことであるというのが率直な実感です。今回は大学でありますから、そういった意味では大学関係者の皆さんが、よく指導監督して頂きたい。プロスポーツの世界でも、私が就任してからも色々起こりましたが、これもやはり、関係競技団体が第一義的にはしっかりと、そういうことがないように、日頃から気をつけて頂きたいと思います。感想といえば、それが率直な感想ですね。

(了)

(大臣官房総務課広報室)