平成19年10月12日大臣会見概要

平成19年10月12日
9時22分〜9時51分
参議院 議員食堂

大臣)

 本日の閣議は、一般案件1件、条約2件、法律案4件、それから政令4件と人事案の報告がございました。法律案の中では、環境省から提出された温泉法の一部を改正する法律案については、例の事故を受けての法律ということです。あと、年金記録問題に関する関係閣僚会議の開催について、官房長官から、続けて、総理、厚生労働大臣からも発言がございました。文部科学省は私学共済を持っておりますので、関係閣僚ということで参加を致します。その後、色々と報道されています「自殺サイト」の問題で、担当大臣である内閣府の岸田大臣から、色々と知恵を出さなければいけないのではないかという発言がございまして、若干の意見交換がありました。最後に総理から、命をあまり大事にしないという風潮が広まっているということが、やはりよくないことであり、知恵を絞って色々な対策をしていこうという発言がありました。

記者)

 教科書検定問題について、教科書会社から歴史教科書の訂正申請があり、教科用図書検定調査審議会(以下「検定審議会」)が開かれた場合に、沖縄戦の専門家や沖縄県民などから意見を聞くというようなお考えはありますでしょうか。

大臣)

 そのことも含めまして、検定審議会の委員の先生の意見を聞きたいと思っております。検定は、今までも申し上げてきましたように、検定審議会で行われます。中立、公正という意味から、委員の先生方に意見を聞いて、最終的に判断させて頂きたいと思っております。

記者)

 教科書会社の訂正申請に向けた動きがだんだん具体的になってきていますが、その辺についての受け止めと対応について教えて下さい。

大臣)

 このことについては、従来から、報道各社からのご質問にもお答えをしてきましたし、また国会でも答弁をしてきたとおりでありますが、そういう申請があれば、そのことを真摯に受け止めて、適切に対応したい。適切に対応したいという意味は、これも再三申し上げておりますように、やはり私がこれを判断するというのは政治介入に当たるという部分があろうかと思いますから、検定審議会の委員の先生方の意見を聞いて最終的な処遇というものを行いたい、これが一番のルールかと思います。教科書会社側の申請手続きは、教科用図書検定規則(以下「検定規則」)第13条第1項か第2項でなされまして、それを受けて、教科用図書検定調査審議会運営規則(以下「運営規則」)第4条第2項第3号により検定審議会にて審議するという事になると思います。この手続きにより、審議会にはかるのが、一番適切だと思います。

記者)

 教科書会社から、これまでに文部科学省に対して訂正申請に関する問い合わせとか、打診みたいなことがあったのでしょうか。

大臣)

 はい、ありました。今は内容というより手続き上の問題について問い合わせがあったと聞いております。

記者)

 何社ですか。

大臣)

 相談という意味では、手続き上の件は複数あると聞いております。なお、今朝の報道では、正式に決定をされたところが2社あると聞いております。

記者)

 相談は全て電話ですか。

大臣)

 はい、全て電話です。

記者)

 内容についての相談というのは来ていますか。

大臣)

 それはまだ来ていません。

記者)

 先日の会見で審議会の公開・非公開という話が出ましたが、行政処分に関わる部分については、原則非公開ということになっていますが、そのことについては、どのようにお考えですか。

大臣)

 これは基本的なルールでありますから、その部分を公開するというのは、なかなか難しいのではないかと考えております。

記者)

 議事録も公開しないと明記してありますが、その点についてはどのようにお考えですか。

大臣)

 議事録は公開できないと思います。ルールだからしないというよりも、何よりも大事なことは、専門的、学術的に行うということ。それから、中立性、そして、静かな環境で審議して頂くということが大事です。私の経験上、生命倫理の審議会でクローンの法律に携わったときに、ある委員の方が、「これは絶対公開ではできない」と言われたこともあります。ですから理由を、「なぜここの部分が公開にできないか」ということを、はっきりした上で非公開にしているわけですから、そこの部分は難しいと思います。ただ、色々な説明を求められたときに、説明できる体制を、これから検討していかなくてはいけないと思っております。今の段階では、具体的な議論は詰まっていません。昨日も国会で答弁いたしましたが、色々な疑義が生じないような仕組みというのはありません。これが私の最大の関心事であります。

記者)

 検定審議会の小委員会で行政処分に関わらない部分の審議というのはあるのですか。つまり、全部が行政処分に関わることなのですか。

大臣)

 その判断は、もう少し時間を頂きたいと思います。

記者)

 週明けの15、16日にまた沖縄から県民大会の主催団体の代表の方がお越しになる予定です。国会等もあると思いますが、直接お会いになるというご希望はありますか。

大臣)

 正直、難しいと思います。参議院の予算委員会が予定されており、全閣僚出席で準備もありますし。そういう申し出があるということは承知をしていますが、15、16日というのは、あまりにも日が悪いというのが、正直な実感です。

記者)

 訂正申請について、具体的に、事務的な相談が来ているということもありますし、また来週沖縄から再度撤回の要請という動きもあります。今までよりもだいぶ、訂正申請の手続きに向けた動きが進んでいくのではないのでしょうか。

大臣)

 今まではそういうことも考えられるといいますか、報道からの色々な情報もあったわけですが、今回は、報道によると、2社が訂正申請を表明されておるということでもありますし、手続き上のご相談も数社からありますから、ある意味での準備作業にはかからなければいけないと思います。それは、提出されたものを、運営規則第4条第2項第3号になると思いますが、この手続きを検定審議会にかけるにしても、どういう形でお願いするのか、先程もご質問ありました、例えば専門家をどうするかということも意見を聞かなければいけないわけですから、そういった準備作業というのは、始めることはできるのではないかと思っています。

記者)

 複数の相談があったのは、昨日と捉えて宜しいのですか。

大臣)

 昨日までにです。

記者)

 その準備作業というのは具体的にはどんな作業になりますか。

大臣)

 委員会の審議をどういう手続きでやるかです。これは、通常の検定手続きとは違う、法律上でいいますと運営規則第13条第1項、第2項に基づいて申請されたものをかけるわけですから、どういうやり方がいいのか、どういう手順になるのかという事についても、少し作業をしておく方が良いとか、そういうことです。

記者)

 その準備作業は、省内だけでなさるのですか。

大臣)

 必要に応じて検定審議会のご意見を聞くことは有り得ると思います。

記者)

 委員の方を招集というのか、声をかけるというのか分かりませんが、そういうことも含めてですか。

大臣)

 検定委員会の部会が中心になると思いますが、細かい手続きですので、私は今正確なことは申し上げられませんし、断定はできません。

記者)

 これまでに、内々に検定審議会の委員の方から意見を聞かれているということはありますか。

大臣)

 少なくとも私は承知しておりません。

記者)

 もし、沖縄戦の専門家と言われる人を呼ぼうという話になったときに、直ぐに声をかけられるような状態にしておかないと、教科書会社の出版準備のスケジュール的な部分でおそらく問題が出てくると思うのですが、今の段階で準備作業とおっしゃった中に、予め呼ぶとしたらこういう専門家が良いのではないかというような選定は、もう始まっていたりするのですか。

大臣)

 何も情報を取っていないということではないと思います。色々な意見が出ていますから、どういう方がおられるのかということは、そういう方を入れる入れないは、検定審議会にご相談しますが、作業はしていると思っております。

記者)

 それはもう、そういう方を入れる可能性もあるということで、作業はしているということですか。

大臣)

 いえ、入れる入れないも含めて、審議頂き最終的に判断を頂く方への相談は必要ですから、入れる入れないにかかわらずと私が申し上げましたのは、そういう意味でして、そこも含めて検定審議会の委員の先生の意見を聞きたいと思っております。ただ、私は民間企業に15年おりまして、何があっても対応できるように、ある種の準備をするということは、あっても良いと思っています。霞ヶ関はそうではない部分もあるようですが。

記者)

 前例のない作業になるのですが、少なくともこういうことは気をつけたいとか、心がけたいと大臣自身が思われていることはありますか。

大臣)

 当初から申し上げていますように、この問題に関する限り、私は常に二点を自分の中で大事にしております。一つは、沖縄県知事をはじめ、沢山の方が私のところに来られました。この沖縄県民の心というものを、しっかりと受け止める。これは総理もおっしゃっていることであります。そして、いわゆる次の世代の子どもたちにしっかりと教育し、伝えていくということ、これもやらなければいけない。これも何度も国会で、私も総理も答弁しております。そのことと、長年中立性を守ってきた検定制度に、私の時代に政治介入があったと言われないように、これをどうやって対応していくか。この二点が基本であります。検定審議会に責任を押し付けるということではなく、それがルールなのです。何回読んでもそれがルールなのです。私も検証しましたが、法律上も規則を改正しませんと、再検討する仕組みはありません。で、私の権限で変えるということは、完全に私が政治介入をしたということになってしまいます。このことは是非ご理解を頂きたいと思います。

記者)

 政治介入の関係ですが、訂正申請を促すような、例えば、真摯に対応するとか、県民の感情に応えるといったような発言をされること自体が政治介入ではないかという意見もあると思うのですが、その点に関しては如何でしょうか。

大臣)

 これは別に弁解するつもりはありませんが、はっきりさせておきたいと思います。これは一番最初はマスコミから質問があり、国会でも同じ質問がありました。「そういうことがあれば、どういう対応をされますか」という質問があったので、「真摯に対応する」ということをお答えした、ということです。

記者)

 県民感情ではなくて、学術的に考えるべきではないかという意見も、検定審議会の委員の中にはあるようですが、その辺に関しては如何でしょうか。

大臣)

 今回の検定は、学術的、専門的に検定審議会が判断をされて行われたと私は理解しています。そういう手続きであったと理解していますから、もちろん検定審議会の委員の先生方が、先生とは直接話をしておりませんから分かりませんが、学術的なら見直すのは良いのではないかとおっしゃっているのなら、今度も学術的に審議されてどうなるかということではないでしょうか。委員の先生方は既に調査意見書に対して審議はされているわけです。特段意見が無かったということで、議論をしていないのではないかとの意見もあるようですが、その議論を省略したわけではなくて、委員の先生方が学術的に見て、これはこれで良いのではないかということで決定された検定意見だと理解をしておりますから、学術的にやるというのであれば良いというのは、別に否定はしませんが、どういう意図でおっしゃっているのかは分かりません。検定意見がつけられたのが昨年11月くらいで約一年経ちますから、新たな学術的な問題というのが今出てきているということであれば、そういうことになろうかと思います。

記者)

 たぶん国民が心配をしているのは、政治介入しないという言葉の下で、ごく一部の意見だけが走ってしまうことについての管理者が誰もいない状態にはなってほしくないということなのではないですか。政治介入しないなら多分仕方がないことなのですが、ごく一部の意見に偏ることがないように責任をもっていただけるのですか。

大臣)

 ごく一部といいますと。

記者)

 つまり、検定意見に対しての意見が出なかったと、それが結論であると断言してしまっていいのかということについての心配をしているのではないかと。それはそれで良いと解釈されていらっしゃるのですか。

大臣)

 意見が出なかったことをして、議論をしてないとか、手続き上まずかったのではないかということを決めることは、私はできないと思います。これは国会での質問でもはっきりお答えしました。要するに、検定審議会としては審議の場を設けて、最終的に特段の意見は出ず、これで良いという手続きをされたわけでありますから、それに対して、今おっしゃられているようなことが出ているので、私は審議の在り方とか、透明性をもう少し上げることを考える必要があるのではないかという、かなり踏み込んだ、思い切った発言をさせて頂いたわけでありまして、そのことはご理解を頂きたいと思います。

記者)

 そこで異論が出なかった、議論にならなかったのは、つまり委員の中に沖縄戦の研究者、詳しい方がいなかったからだと。そのことは文部科学省も発言されていると思います。そうなると、大臣は学術的な判断をされたとおっしゃいますが、そうとは言い切れないと思うのですが。

大臣)

 沖縄戦の専門家はいませんでしたが、近代史の専門家はいらっしゃるわけですから、そこの部分は検定審議会の委員の先生方がむしろ判断して頂かないと。もちろん沖縄史の方がいらしたら、そういう声が起こらなかったわけでありますが、一概に、決め付けることはできないのではないかと思います。検定審議についてはこのところずっと、そういう形なのでしょうか。今年特になかったというわけではなく、毎回同じだと思いますので、そういうことも含めて、今回出されたら、非常に真っ白な気持ちで、委員の先生方にご判断をして頂こうと思っております。

記者)

 高校野球の特待生問題ですが、昨日、日本高校野球野球連盟(以下「高野連」)の有識者会議が一学年5人というガイドラインをまとめました。これは文部科学省からも高野連に対してきちんと措置をしてほしいと求めていましたが、ご所感をお願いします。

大臣)

 学生でありますから、やはり野球だけで採用するというのはいけないのだろうなと。ただし、有識者会議の堀田座長が昨日、全体がまとまったわけではないが標準的なところで、という表現をされていたと思います。正確ではないですが、そういうふうにおっしゃっておりましたが、それで運用していくと。ただ確か、各学校から意見を聴取するということだったと思います。最終答申の内容は、5人までが入学金と授業料以上はお金を出してはいけないとか、情報公開しなさいというようなことだと思います。分かり易く言えば、全然勉強しないのに野球だけやって野球は非常に上手いと、それでは困ると思いますが、当然教育の場でありますから、勉学だけではなくて、そういった部分をもった選手というのも、個性を伸ばしていく上では大事だろうと思います。5人という枠が良いのかどうか、そこは私はよく分かりません。野球は9人でやるスポーツで、そのうちの5人に特待生がいて、全員が出られるわけではないでしょうが、その辺は有識者会議で判断をされたと思っております。文部科学省としては、何もここが決めたからというより、ポイントの一つは、野球だけではないよということは、しっかり言っておかなければいけない。一定水準の試験を皆受けて入ってくるわけでしょうから、それは満たして頂かなければいけないといったことは、きちんと言っていきたいと思います。でも、自分の高校の野球が強いと、その学校全体が元気になりますよね。そういうところはあります。学校の構造上、特待生以外の父兄が負担することになるのでしょうか。皆、授業料を払っているわけで、特待生は免除されているわけです。そうしますと、やはり特待生以外の父兄の理解とか、そういうのも必要なのでしょうね。

(了)

(大臣官房総務課広報室)