平成19年9月7日大臣会見概要

平成19年9月7日
10時7分〜10時25分
文部科学省記者会見室

大臣)

 今日の閣議は、来週からの閣議の開催について、国会が始まりますので、原則として9時から院内ということです。それから、閣僚懇談会において防災担当大臣から、「台風9号が強い勢力で本日未明に神奈川県に上陸し、現在東北地方を北上中。この台風による大雨や暴風等により、現在までに死者1名のほか多数の負傷者や住家の浸水などの被害が出ています。台風は、この後北日本を縦断する見込みであり、引き続きその備えに万全を期す必要がありますので、関係省庁におかれてもご協力をお願いします」というご発言がありました。総理が今日からアジア太平洋経済協力(APEC)(エイペック)首脳会議に行かれますので、その間の代理は与謝野官房長官です。

記者)

 台風9号の関係ですが、最近では非常に大きな台風ということで、しかも直撃ということで、学校では休校になったり、2時間遅れで始まったりとか、色々出ているのですが、児童・生徒の安全確保のために、特段、指示をされたりということはお考えでしょうか。

大臣)

 台風、地震等の対応については、各教育委員会、各学校において、各々どう対処するかは、日頃からお話されていると思います。文部科学省としては、防災担当大臣の発言にもありましたように、台風はまだ北上中ですが、昨日までの段階で、各教育委員会に教育施設等の被害状況、それから児童・生徒に何か問題があった場合については、できるだけ早くまとめて報告するように、既にお願いをしています。これは未確認情報ですが、日光に修学旅行中の児童が、窓が割れた等によって数名負傷されたという情報がありましたが、今のところ校舎の倒壊や、児童・生徒、或いは教員の重大な人命に係る事故の報告はありません。いずれまとまりましたら、数字等をきちんと確認して、記者クラブにご報告致します。
 実は先週、私は、新潟の学校現場を見に行きたいなと思っていました。国会の状況や国際案件等もあり、行けなかったのですが、国会が予算委員会でも終われば、新潟中越沖地震後の現場がどう対応し、困っておられることは何かを伺ってみたい。また、帰りに群馬県を通りますので、文部科学省のお役人のお仕着せで大変恵まれた東京の学校ばかりを見せてもらっていても仕方がありませんので、地方の過疎の学校を見に行きたいと思っておりました。ところが、今その群馬県が台風の直撃を受けておりますから、いずれ国会が一段落をしましたら、新潟や群馬の状況も見せて頂き、現場の先生方のご苦労も伺ってみたいと思っております。

記者)

 今、中央教育審議会(以下「中教審」)の教育課程部会等で、学習指導要領の見直しについて話し合いが行われていまして、大臣が前回の会見のときに、「授業時間が増えるのであれば、そこに手を打ちたい」、或いは「時間数の増加だけを現場に押しつけることがないようにするのが私の責務だ」と発言されていますが、5日の中教審の教育課程部会の検討素案の中で、「年間の授業数の増加を図る場合には定数改善をはじめ、指導体制の整備を進める必要がある」というような文言が加えられています。それについて大臣の所感をお願いします。

大臣)

 世の中には原理原則というものがあります。記者の皆さんでも仕事の量がものすごく増えれば、超過勤務(以下「超勤」)をするしか仕方がないわけで、超勤の限度が超えた場合は、当然、取材記者を増やしてもらわないと困るという話が起こるのではないでしょうか。それと同じ状況だと私は思います。一方で、行政改革推進法というものがあり、財政を再建していかなければならないという、内閣としてのひとつの大きな方向がありますから、まったくの真空状態で文部科学省の立場だけを主張することは適当ではないでしょう。内閣というものは、一体となって国会に対して責任を負うわけですから、来年の税収見積もりをしっかりと見極めた上で、財政再建に資するために国債をどの程度減額できるのか、そして少し余地があればそのお金を内閣としてどこに重点的に配分するのか、これが、政党政治の下における政治の責任なのです。安倍内閣は教育の再生というのを最優先の課題として取り組むということを再三言っているわけですから、授業時間を増やしたいということになれば、当然、今の人員で対応できるのかどうかの検討はしなければなりません。しかも教員勤務実態調査によりますと、教員の超勤の状況は、田中角栄先生が人材確保法を作られた30年くらい前に比べますと、当時10時間未満であった1ヵ月の超勤時間が30数時間という状況になっており、これは社会状況が変わりましたから仕方のないことだと思いますが、こういう状況でどうするのか。授業時間は増やす、児童の学力は向上させる、生徒に向かい合う時間は確保する。しかし、教員の人員は増やさないでは、この連立方程式は解けませんよね。ですから、国会で皆で議論をして頂けばいいのではないでしょうか。

記者)

 遠藤前副大臣の諮問機関で提言されたり、或いは先日、公明党文部科学部会長がお見えになったり、スポーツ省(庁)という役所の創設を求める声が一部に上がっているようですが、この動きについて大臣はどうお考えですか。

大臣)

 これも先程の教員の話や行政改革の話と同じような関係ではないかと思います。これは、真空状態で理想を追い求めれば、スポーツ省を作ったりということも宜しいのではないかと思うのですが、省庁を増やさないとか予算はできるだけ抑えるとかという中で、優先順位を考えればなりません。スポーツ行政というのは極めて大切で、私たちもしっかりやらなければいけないと思うし、先日の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)で私が挨拶をしたときにも、普通「知徳体」と言うところを、「体徳知」と意図的に「体」を最初に話をしたくらい大切なことだと思うのですが、要はバランス論ではないでしょうか。私の英語の肩書きを見ますと、色々と長く書いてありますよね。外国の大臣が来られますと、科学担当大臣、スポーツ担当大臣、教育担当大臣、文化担当大臣と、4人の大臣にお目にかかったりしますが、私の給料は4倍になっていないのですよね。省庁をたくさん作って細やかに行えば、行き届いたことができると思いますが、現時点では、スポーツ行政というものを大切に扱いながら、スポーツ省をすぐに創設というのは難しいのではないでしょうか。理想を失わずに現実を踏みしめていくということだと思います。

記者)

 中教審の専門部会で、武道とダンスを必修にする話が出まして、伝統と文化を尊重するというような話ですが、大臣ご自身の経験の中で、どういう経験から伝統と文化を尊重することを身に付けられたのかと、今回のこの必修の件をどうお考えかをお聞かせ下さい。

大臣)

 自分の身に付いているかどうかは、第三者が判断することですが、私はやはり親のしつけと、私の家に伝わっている家憲というものだと思います。祖先から言い伝えがあって、こういうことをしてはいけないとか、こういうことは進んでやらなくてはいけないとか、皆出来ているかどうかは分かりませんけどね。日本の伝統的な武道というのは、今は柔道や相撲等も、ガッツポーズをしたり、勝ったときに腕を挙げたりしますが、本来はああいうものではないと思うのです。お互いに「礼に始まり礼に終わる」と。ですから、そういう意味で日本の大切なものを具現している、武道というひとつのスポーツの形を借りた「道」なのです。茶道、華道も一緒だと思います。ですから、そういうことを教えていくと。これは私も最初は、これはどうなんだと言ったのですが、体育というのは一年間を通じて、球技とか、体育の基礎理論とか、走ることとか、色々必修になっている中で、武道かダンスかの選択であったのを必修としてその中の一つにするということであって、一年中剣道や柔道をやるという話ではないのです。ある意味では、少しそれに触れるというような感覚なのです。で、触れてみて、例えば、球技でサッカーに触れた人がサッカーを中心に部活動をするとか、そういうことに動いていくのだと思うのです。

記者)

 例えば剣道にしても、柔道にしても、道具の費用がかかるのですが、剣道ですと4・5万円かかりますが、予算面としてはどうお考えでしょうか。

大臣)

 そういうことは考えないといけないと思います。共有して使ってもらわないといけないのでしょうから、ある程度は整えないといけないでしょう。何事もお金がかかりますよね。理想を語るだけでは現実は動きませんから。しかし、現実に溺れすぎますと理想がなくなりますから、両方のバランスの中でやっていくことだと思います。

大臣)

 この前、河合元文化庁長官のお別れの会に行って、つくづく思ったのですが、麻生幹事長が「アルツハイマーでも分かることだ」と言ったのは失礼な話ですが、小沢民主党党首が「自民党は今脳死状態になっている」というのも失礼な、これは河合元文化庁長官の病状を聞いている時、なぜ報道各社は、麻生幹事長はいけなくて、小沢民主党党首については何も言わないのかなと思っていました。美しい日本語を所管する文化庁の大臣として、そういう感覚を持ちました。

(了)

(大臣官房総務課広報室)