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平成19年6月15日大臣会見概要

平成19年6月15日
9時11分〜9時38分
参議院議員食堂

大臣)
 本日の閣議は、文部科学省関係では、科学技術の振興に関する年次報告の閣議了承を得ました。私から、「本年次報告では、特集テーマを『科学技術振興の成果−知の創造・活用・継承−』とし、科学技術振興の成果を具体的・多角的に分かりやすく紹介しております。文部科学省としては、我が国の経済発展と豊かな国民生活の実現に向けて、国民の理解と支持を得ながら、科学技術の振興に全力で取り組みたいと存じます。各閣僚には一層の御理解・御協力をお願い申し上げます」と申し上げておきました。あとは、がん対策振興基本計画について、厚生労働大臣からご発言がありました。それから、国際会議の開催・誘致拡大に向けて各省庁が積極的に取り組んでほしいということが、官房長官からありました。

記者)
 骨太の方針ですが、その中で国立大学法人運営費交付金について、「大幅な傾斜配分」という記述から「適切な配分」という記述に修正されたことについての大臣の思いと、「適切」とは具体的に何をさすと大臣はお思いなのか、その2点をお伺いします。

大臣)
 まだ最終的に閣議決定したわけではありません。今、与党間の調整をしているところですから、早ければ来週の火曜日に閣議決定の運びになるのではないでしょうか。骨太の方針そのものが予算編成と直接結びつくものではないと私は思います。日本の予算は、財政法のもとで各省が8月31日までに概算要求書を出して、財務大臣に調整権があって、最終的に内閣を構成する国務大臣が共同して責任を負って国会へ提出すると。そのための概算要求枠が、参議院選挙後、決められると思います。ただ問題は、骨太の方針は閣議決定をしますので、内閣の構成員である各国務大臣は、閣議決定をした限りはこれに縛られるということです。縛られて仕事がしにくいところ、あるいは各省の立場から言うと困るところは申し上げなくてはいけない。しかし内閣として、財政再建等大きな目標がありますので、各省の都合だけを聞いているわけにいきません。その調和をはかった中で、内閣を構成する各国務大臣としては、概ね今の案で良いのではないかということです。与党がこれから何をおっしゃるかは、また別の話です。議院内閣制ですから、与党との調整を経て最終的に閣議決定をすると。報道各社も文部科学省のところは、眼光紙背に徹して、よく読みこんで下さい。教育再生は安倍内閣の大きな政策目標になってます。予算というものは、内閣の全政策を金銭で表示するバランスシートですから、安倍総理の考え方がにじみ出た構成になってないといけないと私は思います。国立大学法人運営費交付金、あるいは私学助成費を形式的に一律配分するのではなくて、政策目標に照らして配分をしてほしいというお話がありました。しかし、その政策目標ということになると、色々な要素があります。誰かの思いだけで、効率的だとか、よくやってるとかというのは、なかなか決められないと思います。例えば、地方で医師が不足してるから医師の養成をやらされるという地方大学も出てくるでしょうし、地域振興の中心になっているところもあるでしょう。また、教員養成大学とか実務的な人づくりのための大学機能を果たしているところは、論文を出したり、研究論文を発表したりする余裕は、むしろ少ないかもわからない。研究論文をたくさん出しているところが良い大学だというと、実務者を養成している大学というのは、困る立場になるわけです。そこのところは、国民の税金を使うわけですから、大学人にある程度の効率化原則を持ってもらうという前提で、大学の教育機能を果たしていける配分は確保したいと。その上で、特色のあることをよくやっている大学については、国立大学法人運営費交付金の中に、研究に着目をして交付をする競争的資金ではない項目で対応をしてほしいということではないですか。私も呼ばれて行きましたので、その旨を申し上げた結果、むこうもなるほどと思われたと思います。

記者)
 4月に行われた全国学力・学習状況調査の採点をめぐって、大規模な、いまだかつてない規模の試験ということもあり、若干混乱がおきているようですが、公平性を保つためにどういうことが必要だと大臣はお思いでしょうか。

大臣)
 採点は全国一律でなければいけないでしょうね。公平性というのが、どういう意味で言っているのか分かりませんが、全国一律同じテストをしてるわけですから、同じ採点の方法でなければならないということでしょう。これは何度も言っているように、今後の教育の在り方、あるいは学習指導要領その他を作成する場合に、どこに重点を置くか、どこが遅れているかを把握するために実施しているわけですから、別段これで予算を傾斜配分するという目的で実施しているわけではありません。一応、全国一律の問題である限りは、全国一律の採点方法、採点の基準は守らないといけないでしょうね。詳しい報告はまだ受けていませんが、きちんと報告をするように言っておきたいと思います。不公平なことはさせません。

記者)
 国会について、会期末が迫る中、教育再生関連法案をはじめ重要法案がまだ山積しています。自民党内では、延長論について発言される人もいれば、慎重であるべきだという方もいらっしゃいますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

大臣)
 会期は決まっていますので、基本的には会期の中で全力を尽くすということです。そして、議院内閣制ですから政府だけが発言をしては駄目です。政府は行政の一部門で国会は立法府と明らかに三権分立しているわけですから、まずこの節度を守らないといけません。しかし議院内閣制ですから、与党と政府というのは常に連絡を密にして、そして双方がなるほどと思う重要法案があった場合は、議会を中心に会期というものは決めていくべきなのでね。そのときは幹事長や国会対策委員長が与党間、つまり公明党と自民党で相談をして、そして野党とお話し合いをした上で決めていくのであって、政府にいる者は、報道されて批判を受けないように陰で努力をするということは、汗をかかなければいけないポジションの人も色々いるわけですから、十分やらなくてはいけません。同時に各派の幹部も、同じく陰で汗をかくということです。最近は、陰で汗をかかずに、表で声を出す人が多いというのが、やや政局運営に不安を感じますね。

記者)
 教科書検定の沖縄戦の記述をめぐって沖縄で反発が高まっているという動きがありますが、それについてどうお考えでしょうか。

大臣)
 その件で、いくつかはっきりと分けて議論をしなくてはいけないのは、沖縄の方が、戦前は日本軍に多くの基地を提供されて、そして戦争が終わった後、その基地のほとんどが米軍が引き続き使用して、そして日本がアメリカの核の傘と安保条約のもとで平和を享受しているコストを、沖縄の人がほとんど背負っているということと、沖縄が、当時は千島も日本領でしたから唯一ではありませんが、大規模な戦争の戦場になったのは沖縄が唯一なんです。そのことに対して、本土にいる人たちが常に沖縄の人たちの気持ちを忖度するということを、まず大前提で考えておかなければならない。それから、教科書の問題は、報道各社はもう分かっていて質問しておられると思いますが、国定教科書ではありません。文部科学大臣が教科書を作っているわけではありません。検定制度というのは、第三者機関である教科用図書検定調査審議会が正確に記述されているかどうかということをチェックしている仕組みです。今回の教科書は、沖縄の集団自決について、軍の関与がなかったとは言っていません。軍の関与があったことは認めているわけです。しかし、全ての集団自決が軍の関与のもとに行われたという記述については、必ずしもそうではないのではないかと。事実、これには色々な説があります。そして、軍の関与があった場合には、援護予算上の措置が遺族に対してなされているわけですが、集団自決をされたと思われる方の遺族全てが援護予算の対象になっておられるわけではないです。ですから、集団自決について軍の関与を否定した検定をしているということでは当然ありません。全ての集団自決が軍の関与によって行われたということについて、検定意見を付したということですから。ただ沖縄の方々のお気持ちとしては、私が一番最初に申し上げたようなお気持ちがあるでしょうから、それは色々文部科学省も説明をしたり、気持ちをほぐしていかなければならないということは、当然のことです。検定の仕組みについて、文部科学大臣にそれを撤回しろということをおっしゃっても、撤回する権限が大臣にあるほど、日本は色々な意見を官が認めないというほど怖い国であってはいけない。ですから国定教科書にしていないのです。検定の仕組みというものを、よく理解して頂きたいと思います。

記者)
 今の大臣のご発言に関連して質問させていただきます。審議会において、審議が始まる前に、その審議会のテーブルに調査意見書というものが文部科学省から提出されます。その調査意見書に、今回の検定意見と全く同じように、沖縄戦の実態について誤解を招く恐れがある表現であるというふうなものが付されていて、それがそのまま検定意見になっていますが、これは文部科学省サイドから、沖縄戦の集団自決について発議をし、それが審議会の方向性を形付けたというふうに見えるのですけれども。

大臣)
 それは違うのではないですか。色々出す資料というのは、あくまで第三者である審議会の委員の先生方の判断の資料ですから、従来、私も少し危惧を持っていましたので、過去の事例についても調べさせましたが、意見書どおりの結論になっているものもありますが、意見書どおりの結論になっていないものもたくさんあります。あくまで判断をされるデータとして出しているということですから、くどいようですが、日本の検定教科書の仕組みというのは、文部科学省がものを決められる仕組みではないということです。そして、集団自決について軍の関与がなかったということは、一言も言ってないです。ただ、全ての集団自決に軍が関与したという記述は不正確だと言っておられるわけです。率直に何度も申しますが、日本の国というのは、文部科学大臣がこうするとか、こうしてはいけないとかいうことで、児童・生徒に物事を教えられるほど怖い国ではないということです。ですから今回のことは、沖縄の方には、お気持ちには沿わなかったかもわからないけれども、逆に、沖縄の方のお気持ちに沿うように文部科学大臣が動いたら、今度は俺たちの意向に沿うように動けという動きが、次々と起こってきたときに、戦前のことを想起させるような事態にはしたくないということを、私は申し上げているわけです。

記者)
 在日本朝鮮人総連合会の中央本部の違憲登記の問題ですが、公安調査庁長官の緒方氏は中央教育審議会スポーツ・青少年分科会の臨時委員も務められてるということですが、今後、事態の進展の具合によっては、何か変化はあるのでしょうか。

大臣)
 さあ、どうでしょう。犯罪行為があるかどうかは、まず確定しなければならないでしょうね。犯罪行為があれば、当然委員は辞めて頂かなければいけないのではないだろうか。

記者)
 個人的にはどうご覧になってますか。

大臣)
 これは、検察において捜査をしているところでしょう。それについて、内閣を構成する国務大臣が発言するということは、一種の指揮権発動に近いことで、最もやってはいけないことです。教科書をこうしろというのを文部科学大臣が言ってはいけないのと同じように、自制をすべきことだと思いますけど。

大臣)
 沖縄の集団自決の件について、本土の人たちは、沖縄の人たちの気持ちをよく考えて、色々発言したり、行動したりしなければならないということですね。今度のことも、歴史的事実に照らすと、全ての集団自決に軍の関与、命令があったかどうかということになると、今回のような検定意見になるのかもわからないけれども、大変辛い目にあって、ここまで来られたという、その気持ちは、我々はよく受け止めて、日々の言動とか行政に当たらなければならないということと、検定とは別問題なのですよ。私どもは、お気持ちは十分良く理解しておりますから。

記者)
 心情の問題ではなくて、制度の問題として、大臣もかつて懸念されていたとおっしゃいましたが、文部科学省側から提出された調査意見書にそれがあったことで、そういうふうな発議がされたと。

大臣)
 あろうとなかろうと、何度も申し上げているように、過去にも、このことだけではなく、全ての教科書については、事前の準備をする調査意見書がついているのです。それを見て、その通りの検定結果の判断をされている場合もありますし、その通りではない検定結果の判断をされている場合もあるのです。それはあくまで資料であって、判断は審議会の委員に委ねられているということです。そうでなければ、これはおかしなことになりますよね。だから過去の例を調べてごらんなさい。出している通りに、全てなっているということはありません。

記者)
 ただ、審議会のメンバーが17年度と18年度で変わっていないのに、17年度の検定意見書には集団自決についての軍の関与について、一言も意見が付されていませんが、18年度では付されていると。

大臣)
 それはあるでしょう。一年間色々な社会情勢があったり、自分がこういうことを言われるのは不本意だといって、訴訟している人もいますよね。そして、その後公判がずっと行われており、その公判記録とか、あるいは色々な人の証言とか、色々なことを調べているから検定調査意見書というのを出しているわけで、このこと自体に私が答えるということも、私ははばかっているのです。私だから良いのかもわからないけれども、超右側の大臣や、超左側の大臣が出てきて、自分の思い、あるいは調査意見書の内容を事前に見てたとか、そんなことがあったら、えらいことになるでしょ。ですから、私は事後に調べさせているわけです。もうこの問題は、話せば話すほど、教科書の中立性に対して国務大臣が介入を要請されているような質問になってくると私も困りますし、今まで申し上げたことで私の気持ちは理解してくれたと思いますから、この程度にしましょう。

(了)

(大臣官房総務課広報室)


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