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平成18年10月31日大臣会見概要

平成18年10月31日
9時32分〜9時56分
参議院議員食堂

大臣)
 今日の閣議においては、文部科学省関係の案件として、文化庁長官の人事について、河合長官は状況は良くなっておられると聞いておりますが、ご健康がなかなか回復しませんし、11月は文化庁関係行事が色々ございますので、休職とし、近藤文部科学審議官を任命することが閣議で了承されました。また、国立大学法人東北大学の学長に井上明久先生を任命することが了承されました。そのほか、テロ特別措置法の有効期限を1年間延長することに基づく対応措置に対する基本計画について、各大臣からご発言がありました。また、労働力調査および家計調査、有効求人倍率等について、総務大臣および厚生労働大臣からご発言がありました。

記者)
 必履修教科・科目の履修漏れの話と関係すると思いますが、茨城県の県立高校の校長が自殺をしました。これについて大臣のお考えを伺えますか。また、昨日の教育基本法特別委員会で、救済策を今週中にもまとめると仰っていましたが、その点についてお考えを伺いたいと思います。

大臣)
 まず、人の命は何より尊いものですから、お亡くなりになったことに対して、心からご冥福をお祈りしたいと思います。自殺をされたのが未履修問題に関連して非常に悩んでおられたためだという記事がありますが、国会でも、いじめと自殺の関係というのはきわめて多面的であり、なかなか自殺の原因が特定できないというやりとりがありますが、今回の自殺の原因について、率直なところ、私も事実関係をつまびらかに伺っておりません。遺書があったという報道がありますが、遺書の内容についても教育委員会は拝見できていないということです。一般論として言えば、残念な事件が起こると、必ず末端の力の弱い方がお亡くなりになったり、辛い目に遭うという繰り返しです。ですから、私は、情緒的に流されず、どういう制度的な問題があって今回のような履修漏れが起こったのかということをきちんと調べて、こういうことを二度と起こさないようにするのが、高校生諸君に対しても、国民に対しても、私たちの責任であり、同時に立法府の責任であると思います。
 それから救済策についてですが、かねてから申し上げておりますとおり、全体で116万人の高校3年生のうち、公立学校については既に調査が終わっており、5.8パーセントだけが未履修の人で、残りはきちんとルールに則って授業を行っていた高校で学んでおられる高校生です。現実にどういうことが起こっているかというと、必修ではあるが受験に必要でない科目を端折って、受験に有利な科目を深堀りして教えているということです。安倍総理にもお話をし、総理もまったく同じ意見だと仰っていますが、95パーセントのルールどおり授業を受けている人との間に、アンバランスがあまり生じないということが基本だと思います。しかし同時に、必修科目を未履修であった時間を他の受験科目に当てており、必修科目未履修の高校生自身に瑕疵はないわけです。私も高等学校にいたときに、授業は学校のカリキュラムどおりに受けて、学習指導要領に合っているか反しているかなど、まったくわかりませんでした。ですから、この人たちを完全に筋張った議論で切り捨てるのは、現実的ではないだろうと思います。その間のバランスをとってやっていくことになります。今、内閣法制局と法律上の色々な詰めをしております。このことが決まれば、それとのバランスを考えて、既に基準を満たさずに学校長の認定によって高校を卒業していた人の対応を考えなければいけません。また、今年においても、既に正しくない内申書によって推薦入学の決定を受けている人がいるし、これからも入試や推薦入試に際して、正しくない内申書を提出せざるを得ない高校が出てきますから、これらを包括した対策を講じたいと思います。議院内閣制ですので与党の了解を取らないといけませんので、若干の調整が残っておりますが、今週中にはそれに基づいた局長通知を都道府県の教育委員会、政令指定都市の教育委員会、私立学校を監督している都道府県知事、および受け入れ側である国公私立大学長に発出したいと思っております。国民にも内容を理解して頂き、そして、公平感を大切にしているということを理解して頂きたいと思っております。

記者)
 各新聞で報道されておりますとおり、補習を70回受ければ卒業を認めるという救済策を調整中であるということでよろしいでしょうか。

大臣)
 色々な報道がありますが、与党内の調整が残っておりますし、内閣法制局と最後の詰めができておりません。「報道しているから大臣はよろしいですか」というのは、現実がこうだから、学習指導要領を変えろというのと同じことで、大臣の立場としてはコメントはできません。

記者)
 既卒の方々について、卒業資格を満たしていないことに対して遡って何らかの措置を行うお考えですか。

大臣)
 法制的に言うと、卒業資格がない方について、資格を担保するための措置を今、与党との間でも協議をしていますが、資格を満たすために規定どおり100パーセント受けるのが一番良いと思います。しかし現実にできないことを決めて社会を大混乱させることはできないので、若干の人たちについては法律の許す範囲で救済策を講じざるを得ません。救済策を講じた場合、それとのバランスで、既に卒業している人たちの問題を考えます。行政法の一般原則から言うと、与えられた権利、つまり高校を卒業したという権利について、本人に重大な瑕疵あるいは権利認定の要件がないにも拘らず、第三者の申し出によって取り消すことはできないことになっております。従って、重大な要件を満たしていないかどうかは、今年3年生の生徒たちの救済策とのバランス、均衡において判断されるべきことだと思います。

記者)
 仮に救済案が決まったとすると、前に大臣は「卒業証書を出す前には基本的には全部の授業を受けていただきたい」と仰っておりましたが、その点はいかがでしょうか。

大臣)
 基本的にはそのように考えております。ただし、授業を300時間受けるというような非常識なカリキュラムを組んだところで、300時間受けさせることは現実にはできません。ですから、大部分の人が70時間の補習を要する人だということは、ひとつの手がかりになると思います。

記者)
 救済策は、与党との協議の前に発表されるのですか。

大臣)
 いいえ。与党との協議を開始してからでないといけません。先に発表してしまったら大問題になります。

記者)
 本人に瑕疵がないのにも拘らず切り捨てられてしまうことはないという救済策になっているのですか。

大臣)
 はい。

記者)
 救済策を講じた後の再発防止策についてはどのような道筋で検討を進められるのでしょうか。

大臣)
 再発防止策と仰いますが、基本的に、防止策というよりも担当者の規範の問題だと思います。どのような制度を作っても制度を覆して行動する人は出てくるものです。教育委員会制度や学校の制度に拘らず、一般論として私は人間の力というものに最大限の信頼をおいて社会を動かすという保守主義者なので、何か問題が起こったらすぐ制度を変えるということは思いません。たまたま今に生きている者が、何百年積み重ねたものより、制度がおかしいから変えるという考えと、人間の力を信頼して、制度が間違って運用されないように期待するという政治思想と、二つの思想があります。ところが、人間の力に期待しても、あまりにもその期待が常々裏切られるという場合には、制度的な改正を考えなくてはいけない。それは教育行政の在り方に関わってくることだと思います。しかし、教育行政の在り方を変えて文部科学省が深く関与できるような状態を作ったとしても、文部科学省の人間に責任感がなければ、同じことが起こります。もちろん、どこかの時点で教育の実際の実施権、管理権、人事権を持っておられる方々に、注意を促すようなことを申し上げたいと思っておりますが、今はそのようなことを言う時期ではありません。

記者)
 5年前にも同様な履修漏れの問題が発覚してますが、その当時に今回のような調査を実施していれば、今回のことは防げたとは思われませんか。

大臣)
 前回の内容について、私はつまびらかにしませんが、後で色々批判することはできると思います。マスコミもその時にはこれだけの報道をしておられなかったわけですから。ですから、子どもを困らせないように、現実をうまく処理していくということに、まずは全力をあげたいと思います。

記者)
 一部の救済が必要なのは仕方ないと思いますが、それが結果的に、学習指導要領の拡大解釈や一部曲げるようなことにつながりはしないかという懸念があります。その点はどうお考えですか。

大臣)
 学習指導要領については、変えない形で救済策を検討しております。学習指導要領を変更してしまったら、今、司法の場に移っているものから何から、崩れてしまいますので。

(了)

(大臣官房総務課広報室)

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