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平成18年10月27日大臣会見概要

平成18年10月27日
9時48分〜10時14分
文部科学省記者会見室

大臣)
 本日の閣議について、文部科学省関係の案件は、平成18年度の文化勲章受章者が閣議決定され、文化功労者についての了解をいただきました。文化勲章については安倍総理から内奏され、天皇陛下のご了承を得て、正式に11月3日に文化勲章の親授式、6日に文化功労者の顕彰式がございます。それ以外には文部科学省関係の案件はございません。総務大臣から2件の発言がございました。一つは、消費者物価指数の公表についてです。東京都部のうち区部の10月の消費者物価指数速報値は年率0.5パーセントの上昇、9月の全国確報値は0.6パーセントの上昇。ただし、食料とエネルギーを除いたものは、0.5パーセントの下落ということで、石油価格の高騰で物価が上がっているということです。私見ですが本格的なデフレ回復宣言がまだ出ないのは、こういう数字を見れば当然のことと思います。もう一つは、11月24日正午から、全国知事会議を総理官邸で行う予定とのことです。また、内閣官房長官、経済産業大臣、環境大臣から、「暖房温度を20度を目処とするようにご協力をいただきたい」との発言がありました。さらに、既に報道されておりますが、冬柴国土交通大臣から、「尖閣列島周辺に船が移動中であることを確認しました」との発言がございました。

記者)
 高等学校における必修科目の履修漏れの問題ついては全国的な影響が出てきそうですが、それについての大臣のお考えと今後の対応についてお聞かせください。

大臣)
 まず実態を把握するため、都道府県及び政令指定都市の教育委員会を通じて各高等学校に現状を調査をするという法体系になっておりますので、遅くなると思いますが、今日中には大体の数字をご報告できるのではないかと思います。
 色々話を聞いてみると、世界史・日本史、あるいは世界史・地理、日本史・地理という、二科目選択制で入試を実施している大学は、極めて限られているようですから、一科目だけを集中的に勉強しておけば大学受験に非常に有利なのは、誰でも気付くことです。しかし、同時に高等学校の教育は何のために行っているのかということです。このグローバル化した時代において国際社会の人たちとお互いに交流し、仕事をしていく場合に、パスポート無しで海外へ行けないのと同様に、アイデンティティ、日本人として生きてきた文化の基本・素養をしっかりと身につけて、さらに進んで、これからお互いに交渉ごとや交流をしていく人たちの文化の基礎、つまり「世界史」をマスターして社会に出てもらいたいと思います。これが学習指導要領の基本ですから。このような教育の基本的な狙いと目先の「大学に入る」ということが少し混同していると思います。時々どの学校の進学率がいいということが優先的に報道されるような風潮の中で、自分の学校をよく見せたい、いじめの問題も一緒ですが、隠して自分たちをよく見せたいということの残念な結果ではないでしょうか。
 高校生がそうしてくれと要求をしているわけではないでしょうから、高校生に迷惑がかからないように、実態を少し見てから指導をしたいと思います。真面目に学習指導要領どおり授業を受け、大学受験をする人と、必履修教科・科目を未履修のままの形で受験をする人との間に、アンフェアな条件の違いがあってもいけませんから、必ず卒業証書を出すまでの間に、学習指導要領に定めたとおりの授業は受けていただくこと。これは、文部科学省として各都道府県や政令指定都市に厳正に通知をするつもりです。3年生の場合は、在学期間が平成19年3月31日までありますから、受験その他色々あるでしょうが、冬休みの利用、放課後の利用等の方法もあるでしょう。何の責任もない生徒に、極端な負担のかからないように、ただ、真面目に学習指導要領に沿ってやっていた県の高校生と、そうでない高校生の間に、アンフェアなことが生じてはいけませんから、卒業証書を出すまでには必ず決められたとおり学習してもらう。そこだけはきっちりするように事務方には指示しました。

記者)
 親御さんの中には、受験を前に相当子どもさんが動揺して、不安を抱えているので、何か特別な配慮をしてもらえないかという声もありますが。

大臣)
 それは難しいです。法治国家というのか、皆で決めたルールを守るところから日本の国の社会秩序は成り立っているわけで、ルールを守らなかった人を前提に、なし崩しにするということは、適当ではないと私は思います。しかし生徒に責任がなかったということは確かですから、結果的に児童にも、進学を最優先の課題と考えておられるご父兄にも、今のようなご要望の引き金を引いてしまった人の結果責任は重いと思います。人間が失敗をしたときは、必ず誰かが結果責任を取らないといけません。これはどの社会においてもそうで、例えば、会社を悪くしようと思って経営しているわけではなくても、赤字になったら誰か辞める人を決めているということですね。ですから、文部科学省において、こういう失敗が起こった場合には文部科学大臣が最終責任を取って辞めるという法構成であれば、私は全責任をもって、このことに当たらなければならないし、結果責任を取らねばならないと思います。しかし今の法構成だと、高等学校については、所管をしている教育委員会に責任があるのではないでしょうか。既にいくつか報道がありますが、教育委員会のあり方について法律的な構成に不備があるのなら、将来考えていかなくてはならないと思います。

記者)
 「卒業証書を出す前にきちんと授業は受けていただく」ということでしたが、3年生はあと残り数ヶ月で、物理的に間に合わないという学校も出てくる可能性がありますが、それについてはいかがですか。

担当者)
 例えば世界史は2単位ですので、時間に直すと50分の授業が70回です。学年末は3月31日ですので、それまでの間に履修を行っていただくということになります。具体的な方法は子どもたちの実態にあわせて各学校で相談されるべきことです。

大臣)
 卒業式は大体3月の初めにしていると思いますが、これだけの失敗をした学校、教育委員会には、卒業式の日程の調整とか色々知恵を出して、責任を持って処理をしてもらいたいと思います。

記者)
 履修せずに卒業してしまった人もいると思いますが、これに関してはいかがですか。

大臣)
 一番悩ましいところですね。卒業証書を渡してしまったということを考えると、少し慎重に検討しないといけないと思います。

記者)
 卒業式の日程調整というのは、必要な授業が終わっていない場合は、3月31日までの延期も有り得るということでしょうか。

大臣)
 私はやはり、卒業証書を出すまでに、きちんと授業を実施すべきだと思います。冬休みがありますから、一日3時間で2週間すれば約36時間、それに少し足せば実施できる等々、学校・教育委員会で考えてもらわなければいけませんね。

記者)
 先ほどより教育委員会の話が出ていましたが、大臣の色々な答弁を聞いていますと、平成11年以降、権限を国から地方へ委譲してしまったが故にこういう結果になったように思えますが、すぐできることではないと思いますが、今後教育委員会に対する文部科学省の権限をもう少し強化すべきだとお考えでしょうか。

大臣)
 色々な考え方があります。平成11年に地方分権一括法が成立し、文部科学大臣による都道府県と政令指定都市の教育長の承認権、および措置要求権がなくなり、是正の要求として地方自治法の一般法の規定に改められました。以前の一般法にも措置要求権がありましたが、これは、どの大臣も是正を要求するときは内閣総理大臣に依頼をし、内閣総理大臣が地方自治体の長に命ずるというものですから、法的な整備はされていますが、政治的にはなかなか使いにくい条項ですね。しかし、この権限が文部科学省にあったとしたら今回のようなことが起こらなかったかというと、権限を委譲したから問題だったとは、私は思いません。
 教育論(理想の日本人像ということ)は、誰でも論じることができます。教育行政を預かっている立場から言うと、法令や政令や通達の中の権限と予算の統制がなくても、神様のように各教育委員会の教育委員長以下、教育委員の人がすべてを見通してすべてをやってくれればいいわけで、それなら制度を直さなくてもいいわけです。しかし残念ながら、私も含めて、そういう神様のような人は誰もいないわけです。皆ついつい自分のことや組織のことを考えてしまいます。その場合に、ラストリゾート(最後の手段)として、「こういう権限がある」、「そういうことをしていたら地方自治体から是正命令が来る」とか、そういう権限が無いと、行政の責任の所在というのは明確になりません。あらゆる組織体に言えますが、結果責任を取る人にある程度の権限を与えておかないといけません。権限がないのに責任だけというわけにはいきませんから。
 色々な考え方があります。例えばかつて自民党におられた民主党の教育行政の大先輩などは、義務教育に携わる人はすべて国家公務員にするべきだという考え方もあります。しかし現在は、国会議員も政党政治、議院内閣制ですし、地方自治体の首長も、地方議会議員も選挙で選ばれています。特定の政党が特定のイズム(主義)をもって政治の現場に入ってくるということについての、防波堤的な意味もあって教育委員会制度をおいていると考えれば、現実的な考え方をすれば、教育委員会制度は重視をしていかねばなりません。それだけに、そこにある人に対して、本当はもっともっと使命感をもって、務めてもらいたい。その使命感をもって、しっかり務めてもらうための制度的な裏づけが不十分であれば、それを皆で考えるということではないでしょうか。教育再生会議でもそのようなことを検討するという報道もありますし、月曜日からも教育基本法の審議の中で色々な考え方が出てくるでしょうし、その中から、各紙の論調の違いでどちらを取るかというのは、色々な意見が論説等にも出てくるのではないですか。それらを皆で見極めて判断をしていくということだと思います。

記者)
 都道府県の教育委員会の一部には、今回の問題が露見していながら黙認していたということを既に認めている方もいらっしゃいます。そういった方については、明確に責任を取るべきだとお考えでしょうか。

大臣)
 文部科学大臣として、今の法律構成上、その方の責任を云々するということは極めて難しいでしょう。しかし一般論として言えば、組織体で間違ったことを行った場合には、組織体の長が責任を取りますよね。

記者)
 今回の事態が現在中央教育審議会で審議している学習指導要領の見直しへ与える何らかの影響についてどうお考えですか。

大臣)
 今のところ予断をもってお答えをしないほうがいいと思いますが、「基本的な学力と規範意識をすべての国民、すべての児童生徒に保障する」という安倍総理の基本的な姿勢、所信表明の中にある言葉通り考えると、高等学校としての必要最低限の基礎学力というのはどこまでかという判断をしないと、学習指導要領をどうするという議論はできないと思います。しかし、必要なものが十分身についていないという意見は多いですね。

記者)
 地方分権一括法で文部科学大臣の教育長の承認権とか是正要求権がなくなりましたが、それを復活させるべきだとお考えなのか、それともまだそこまでお考えではなく、とりあえず議論が必要だということでしょうか。

大臣)
 一番いいのは、常に制度を変えるよりも、使命感を持って務める人が制度を動かすことで、それが保守主義の原点です。ところがどうしてもそういう動きにならない場合には、制度を変えることを考えなければいけないから、すぐに法律のことを考えるのは少し早いのではと思います。

記者)
 既に卒業してしまった人の問題について、慎重に検討しなければならないというお言葉でしたが、今年の卒業資格に何らかの影響が出る可能性もあるということでしょうか。

大臣)
 そうならないように、内閣法制局の意見等も聞いてみないといけないと思います。我々は現実を預かっているので、病理学や法理論だけで行動して、結局患者が死亡したのでは何にもなりませんから。

記者)
 卒業認定の権限は学校長にあるという状況ですが、組織体として失敗があった場合はしかるべき責任を取ってもらうとなると、現在の教諭や校長、または過去の校長についても同じような責任があるとお考えでしょうか。

大臣)
 残念ながら、校長に対する任免権、処罰権は文部科学大臣にないという法構成になっていますので、これは私が申し上げるべきことではなく、教育委員会が判断されるべきことでしょう。

記者)
 生徒に負担をかけないかたちで補習を実施するとしたら、やはり受験が終わった後の3月に集中的に補習を実施するのが望ましいということでしょうか。

大臣)
 かつて高校生の子どもを持っていた親として言えば、できるだけ子どもに負担をかけて欲しくないと思います。しかし学校管理者や教育委員会の失敗で負担をかけざるを得ないようになってしまったので、そこは、学年は3月31日までありますよ、教育を実施する期間はありますよ、という示唆を申し上げているということです。文部科学大臣にはそれ以上の権限はありません。

(了)

(大臣官房総務課広報室)

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