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平成18年10月24日大臣会見概要

平成18年10月24日
9時30分〜9時55分
参議院議員食堂

大臣)
 本日の閣議については、文部科学省関係の案件はありません。麻生外務大臣から韓国訪問についてのご発言があり、北朝鮮による核保有や核実験は容認できないこと、北朝鮮がただちに無条件で6者会合に復帰する必要があることなどを、韓国での外相会談において日米韓3国が確認したとのことです。また、麻生大臣から拉致問題の重大性について指摘をし、米韓両国の理解を得たとのことでした。閣僚懇談会において、安倍総理大臣から、「中越地震から2年が経過したけれども、なお多くの問題が残っているので、魅力ある山古志村がコミュニティとして復活再生するよう、関係閣僚が一致協力のうえ、これにあたってほしい」というご発言がありました。
 私から皆さんにご報告することがあります。福岡で起きたいじめの問題について、先般、初等中等教育局の職員が調査を行いましたが、法律上の色々な制約というのか、国は援助・助言の権限はありますが、強制的に改善措置命令をする権限を地方分権法の審議の際にはずしていますので、直接関与しづらいこともあって、教育委員会から話を聞いて帰ってきたという形になっています。その後色々な動きが報道され、教育基本法の審議も再開するように聞いていますので、少し政治家の目で現地を見て来てもらいたいと思っています。本来私が行くべきところですが、教育基本法が明日から審議入りというようなことも報道されていますので、とりあえず小渕大臣政務官に、明日現地へ行っていただいて福岡県の教育委員会、筑前町の教育委員会、校長先生、ご遺族等に直接お話を伺い、例えば、ご両親には具体的ないじめについて子どもから訴えがあったのか、なかったのか、親子の間でどのような対話がありどのような親子関係であったのか、ご両親がそういうことを学校に訴えられていたのか、等の事実関係を全てしっかりと聞いて来てもらいたいとお願いをいたしました。その結果については、小渕大臣政務官からお話しすることになると思います。

記者)
 直接現場に立ち入りをしたり、直接的に改善命令を出すようなことは制度的にできないということですが、今後その辺りを制度的に変えていくお考えはありますか。

大臣)
 安倍総理は所信表明で、「基礎的な学力と規範意識を全ての児童が持つ機会を保障したい」と仰っています。全ての人を見ているというのは、やはり国しかありません。法律上では国が国庫負担金等で財政的な支援をし、都道府県と政令指定都市の教育委員会に指導・助言をし、必要な調査を行うという構成になっています都道府県と政令指定都市の教育委員会は、政令指定都市を除いた市町村の教育委員会に同様の権限を持ち、市町村の教育委員会は学校を設置し、人員を配置する。そうすると、校長の管理のもとに教育が実施される。教育の実施にあたっては、文部科学省の指導要領により決められた検定を受けた教科書を使用する形になっていますので、間違いなく行われている場合はそれでいいと思いますが、支障が生じた場合の責任権限が誰にあるのかということが非常に不明確だと思います。今の法構成であれば、今回のことについて行政上の責任を持って行う立場にあるのは、町の教育委員会になります。学校の管理は先生に委ねられているので、教育委員会の長がどのような考えでいるのかについて、文部科学省からすると、靴の上から足を掻いているような感じです。教育の権限、特に公教育の権限はどこにあるかという問題をどの、どういう方向で考えていくかということは、いずれ、教育基本法の審議の中でも色々議論が出てくると思います。しかし一方で地方分権の流れがあり、政治が教育に介入するということは排除しなければならないので、都道府県知事部局に教育権を持たせることは、やってはいけないと私は思います。都道府県知事、首長は政党選挙をしますので。安倍総理が予算委員会でも答弁しておられたように、やはり基本的には教育委員会が地方の教育の責任を担うということだろうと思います。しかし責任の所在を明確にして教育委員会にもう少し当事者能力を持っていただかないと困りますので、その場合に国がどういう関与ができるかも含めて、与野党含めて国会でこれから教育基本法について議論が始まりますから、色々なご意見を伺って考えてみたいと思います。大きな枠を動かす必要はないでしょうが、教育委員会に責任感があって、教育行政、特に公教育の現場の責任が明確になる体制をつくらないといけませんね。

記者)
 今仰った教育委員会というのは、市町村の教育委員会ということですか。

大臣)
 はい。また、市町村の教育委員会と都道府県の教育委員会との関係においても、同じことが言えると思います。

記者)
 小渕大臣政務官の現地派遣についてですが、明日からどれくらいの日程なのでしょうか。

大臣)
 国会もあって忙しいので、日帰りです。その代わり、朝一番で行って、精力的に皆さんの意見を聞いて、お役人的な仕事はせずに政治家小渕優子として見て来て報告をしてくださいと指示しました。

記者)
 北海道滝川市についても同様に派遣するのでしょうか。

大臣)
 校長からもお話を聞いておりますし、もう事実関係の解明はできています。たいへんな無責任体制であるという、制度の不備も分かりました。ただ、福岡の話は、報道で色々なことが次々と我々の目や耳に入ってきますが、事実関係がまだ十分にわからないから小渕大臣政務官に行ってもらうということです。

記者)
 北海道教育委員会が滝川市から報告を受けていたのが、放置して、しかも遺書のコピーを紛失したという事実がありますがこれについてはどうお考えですか。

大臣)
 滝川市の教育委員会が放置していたことも困ったことで、この二つの事案は児童間のいじめの問題であるよりも、まさに児童を守ってあげるべき人たちの問題です。北海道教育委員会が遺書のコピーを入手していて、何の指導・助言・援助も滝川市の教育委員会に対してしていなかったということは、重大な責任回避というか、怠慢ですね。

記者)
 小渕大臣政務官が福岡に行かれるのは、新しい事実関係が次々に出てきているからということですか。

大臣)
 次々に出てくる事実関係をしっかり把握し、校長先生や町や県の教育委員会があるのに、なぜ、新しい事実関係が次々出てくるのかを見てきてくださいとお願いしました。

記者)
 安倍総理からの働きかけみたいなものもあったのでしょうか。

大臣)
 いえ、それはありません。今日他のことについて安倍総理と話をしたときに、私のほうから、小渕政務官に行ってもらいますとお話しました。安倍総理は、それはぜひよろしくお願いしますと言っておられました。

記者)
 遺族のご家庭のほうに直接行かれるんですか。

大臣)
 どこでお話を伺うのかについては、学校の子どもの心理への影響だとか、ご遺族の立場もありますから、人間社会の常識をもって小渕大臣政務官が判断すると思います。

記者)
 今週、教育再生会議の2回目がありますが、1回目が終わったときに有識者メンバーから話を聞いたときに、教育現場に競争原理を導入することに積極的な方がいらっしゃっいましたが、競争原理を導入することについての大臣のお考えを改めてお聞かせください。

大臣)
 教育現場に競争原理を入れていいかどうかという議論をする前に、まず、教育費として国と地方で合わせて20兆円、義務教育で10兆円の納税者の税金を背中に背負って仕事をしている人が効率的に仕事をしているかどうかを考えなければなりません。いじめの問題に対処している教育委員会も、色々問題があるといわれている教師も、みんなこの10兆円のお金の中から給与をもらって働いているわけです。教育や社会保障には、効率や儲け仕事を超える価値というものがあります。具体的にいうと、日本国民として生きていくために、総理の言葉を借りれば、「最低限の基礎学力と規範意識を身につける」という、国家としてのバランスのような価値です。よく似たものとしては、社会保障でいうところの、ともに助け合って生きていく、「共生」というような価値、あるいは「国家の安全保障」、「防衛」というもの。ですから、こういうものは株式会社ではやっていませんよね。しかし、こういうところに敢えて競争原理を持ち込まないといけないと言われているのはなぜか、ということをまず教育に携わっている者が考えなければいけないと思います。教育現場に競争原理を持ち込むのがいいか悪いかという質問には非常に答えにくいです。自由競争原理というか、市場原理から生ずる弊害、例えば勝ち組、負け組が出るとか、いい学校と悪い学校が出てしまうとかいう弊害があることがわかっていても、競争原理を導入しなければいけない状態なのかどうかということを、まず議論しないといけないですね。国民の税金を背中に背負って仕事をして、最低限の基礎学力と規範意識を身につけさせるために、教育は天職だと思って頑張ってくれている教育関係者ばかりであれば、競争原理は入れなくていいでしょう。そうでない場合に、弊害が生じることを補ってなお余りある、効果が生じるのであれば、競争原理を入れなければいけないでしょう。短絡的には答えられません。大学の独立行政法人化などもそうでしょう。市場経済に乗っかっていきやすい分野、例えば法科大学院や経営大学院、あるいは新しい産業に転化している先端の医学、もしくは薬学、工学などの分野は、独立行政法人化して効率を考えながら、経営体として運営しやすいでしょう。しかし、源氏物語の男女の哀歓をもマスターしていない、永井荷風の「断腸亭日乗」も読んだことのないような裁判官に離婚の判決を出されることがいいかどうかというと、市場原理には乗らないがリベラル・アーツの厚みをもっている人間性というものは大切でしょう。ところが源氏物語を一生懸命研究したり、サルの研究をしても、独立行政法人では金食い虫になってしまうわけです。では、国の大学のままでいいのかというと、とんでもない悪平等がまかり通って、一生懸命研究をしている研究室も、そうでない研究室も、年度末にお金が余ると均等に旅費や事務費を分けたりするので、独立行政法人化して効率化をしなければいけません。効率化をすると、やっぱり市場化の弊害も出てきます。と、これはどこでも同じ事なんです。従って、弊害をカバーしてでも、直さなければならないなら、市場化は導入しなくてはいけないし、市場化を導入することによって失うことがあまりにも大きすぎたら導入してはいけない、そこの判断が重要です。

記者)
 昨日、文化審議会の国語分科会で敬語の指針について概ね了承され5分類になるということですが、謙譲語の定義から、へりくだるとか、自分を多少下げるとかいう表現がなくなるということですが、それについてはどうお考えですか。

大臣)
 私も詳しい話は聞いていませんが、言葉はTPOに応じて、その人の教養や色々な素養によって使えばいいと思います。言葉遣いは強要されるべきものではなく、下手な言葉を使って周りの人に蔑まれるという中で直っていくものですから、ひとつの拠りどころを示したということじゃないでしょうか。

記者)
 安倍総理と閣議後に、教育基本法の審議入りについてお話をされたのでしょうか。

大臣)
 今まだ理事懇談会をしているのでわかりませんが、少なくとも明日から教育基本法に関する特別委員会において、法案の提案理由説明を始めようということについては、与野党の意見の隔たりはないようです。安倍総理と私とは、国の形についての考え方が違うわけではないので、総論については自由闊達にお互いに話してもいいですが、法律や裏付けのある各論の部分については、齟齬があってはいけないので、若干の意思統一をしておこうということで話しておりました。

(了)

(大臣官房総務課広報室)

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