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平成16年11月9日大臣会見の概要

平成16年11月9日
 9時41分〜10時8分
 文部科学省記者会見室

◎国会提出案件

衆議院議員長妻昭(民主)提出転倒事故に関する質問に対する答弁書について
(厚生労働省)
衆議院議員長妻昭(民主)提出回転扉等による事故に関する質問に対する答弁書について
(国土交通省)


◎法律案

日本郵政公社による証券投資信託の受益証券の募集の取扱い等のための日本郵政公社の業務の特例等に関する法律案(決定)
(総務省・金融庁)


◎政令

証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(決定)
(金融庁・財務省)
国際捜査共助等に関する法律施行令(決定)
(法務省)


◎人事


大臣)
 今日の閣議においては、文部科学省関係の案件はありませんでした。閣僚懇談会では、町村外務大臣から訪韓の報告がありました。

記者)
 ITER(イーター)(国際熱核融合実験炉)の関連ですが、12月に閣僚級の会合を開くというような予定はありますでしょうか。

大臣)
 今日、ウィーンにおいて6回目の6極によるITER(イーター)の次官級会合が開催される予定です。結城文部科学審議官が代表として出席参加することになっております。今回の会合では6月から10月にかけて行った日欧の二国間協議の結果等を他の参加国に報告するとともに、改めて6カ国でサイトの決定に向けた協議を行うことにしております。今後のスケジュールについては、まだ、未定でございまして、今後、調整するということになるかと思います。

記者)
 今朝、一部の報道で、大臣が統一教会の関係団体からの資金提供を受けているというものがありましたが、その件についてお聞かせください。

大臣)
 昨日、朝日新聞から地元の事務所の方に取材があったということを聞きました。昨年の衆議院の選挙期間中の時に、地元の「世界平和連合」の方が来られて、「会でカンパしましたので持ってきました。」というようなことだったらしいのですけれども、やはり、法律に基づき報告すべきではないかということで報告をしたということでございます。

記者)
 今後どのような対応をされるのでしょうか。

大臣)
 法的に問題があるとは思っていないのですけれども、問題があれば考えたいと思っています。私自身はよく知りませんでしたし、何といいますか、それ以上のことを申し上げることもないと思います。

記者)
 今朝の4大臣による三位一体改革の関係のレクをお願いします。

大臣)
 まずは、改革案に対する基本的な考え方について御説明いたしました。それから、先日、総理に御説明し、また経済財政諮問会議の場でも説明した私の教育改革案について御説明いたしました。また、イギリスのサッチャー政権、そして、ブレア政権では、日本を見習いながら教育改革を進めているということを詳しく御説明させていただきました。イギリスでは、国の教育予算が増えないために地方により学力格差が生じ、それを受けてブレア政権で、教育投資を大幅に増大しており、そしてまた、地方の教育当局が学校の教育予算を十分に措置しなかったということが社会問題になって、2006年からは、学校予算を教育技能省が全額配分する新たな制度を作りました。要するに、イギリスでは全額国庫負担になっており、教育を国家戦略として取り組んでいますということを申し上げました。それから、義務教育改革の議論の方向性は、市町村・学校現場の権限を強化するという方向で今進めておりますと申し上げました。また、地方教育行政における指導、助言、援助ということで、国の役割と地方の役割がどのようになっているか御説明をいたしました。国は制度の枠組みと全国的な基準を設定し財政的な保障をしており、それに対して地方は、都道府県においては給与と人事と学級編制を、市町村の役割においては学校の設置、管理運営、教職員の服務監督を行っており、そして国は、いわゆる技術的助言、勧告、資料提出要求、是正の要求と、そして指導、助言、援助を行っているということを御説明いたしました。地方への関与については、地方自治法上の関与と教育行政特有の関与がございまして、その教育行政特有の関与の中に、指導、助言、援助というのがあり、具体的には何かというと、戦前では上級官庁が下級官庁に対して方針、基準、手続、計画等を命令し、これに従わせる拘束力を持っていましたが、それに対して戦後の指導、助言、援助というのは、教育行政の適正な実施のため一定の方向性を示し誘導を図るもので、拘束力を持たず、対応は地方公共団体の主体的な判断に委ねているということを御説明いたしました。指導というのは、国から地方に対して促すもので、通知とか会議による指導、例えば、いじめ等の問題行動への対応についての指導とか、あるいは指針の作成提供というものがあります。助言というのは地方からの求めに対して応えるもので、先進的な取組事例の紹介とか、あるいは統計的資料の提供といったものが助言でございます。援助というのは、研修の実施などで、地方の中核となる教職員、管理職、指導主事等に対する研修や例えば「心のノート」といった指導資料を作って配付することであるということを御説明しました。また、一般財源化された教材費の都道府県ごとの予算措置状況についても御説明いたしました。東京都、大阪府、福岡県は基準財政需要ベースを超えてますけれども、そのほかのところは100パーセントを下回っております。特に富山県と徳島県は、40パーセントを切っています。さらに教材費の予算措置率の推移を見ますと、14年度は約85パーセントだったのですけれども、15年度になりますと10ポイント下がりまして75パーセントに減っている。例えば、まだソビエト連邦のままの世界地図が教室に貼っているという状況もあるということを申し上げました。また、地方六団体案の問題点といたしまして、5つの問題点をあげました。義務教育に対する国の責任放棄になるということと、教育には目的を特定した財源保障が必要だということ、それから義務教育重視という世界的潮流に逆行すること、税収格差により教育財源の格差が発生することと、地方交付税では教育財源の格差を補填できないということです。それから地方の声に真摯に耳を傾けろということで、そのことについては注意して聞いておりますが、他方、各界の声としては、科学者22名、中央教育審議会の鳥居会長、文化人20名、日本PTA全国協議会、教育関係22団体などから義務教育費国庫負担制度の堅持に関する要望が出ており、教育委員会や一般市民も義務教育費国庫負担制度が堅持される必要があると考えています。平成15年12月の全国市町村教育委員会連合会の調査では89.4パーセントの市町村教育委員会が義務教育費国庫負担制度は必要と回答しています。平成16年5月の「日本の教育を考える10人委員会」のアンケート調査によると90パーセントの市民が一般財源化に反対と回答しています。地方議会におきましても、義務教育費国庫負担制度の堅持を求める声が多く、15年度は22都道府県議会が、16年度は11都道県議会が、また、市町村にいたりましては、15年度で2,026市区町村議会、16年度は1,088市区町村議会が意見書を提出しています。また特に、先日、財務省から7、8兆円の地方交付税の削減というようなことが出ましてからは、地方も困惑しているようです。そのような地方の声にも真摯に耳を傾けておりますけれども、知事会の出された改革案の裏には、いろいろな考えや思い、願いがあるようで、そういういろいろな声も聞いておりますということを申し上げました。
 その後、協議に入ったわけでございますけれども、一つは、中央教育審議会の議論が、平成18年度末までということになっているけれども、もっと早くできないのかということで、例えば来年の10月とか11月までにまとまらないのかというお話がございました。これについては、2年間で義務教育改革を仕上げる方向で検討しており、そういった中でもスピード感を持ってやっていきたいということを申し上げました。
 また、義務教育費国庫負担制度というのは、なぜ教員給与の2分の1を国が負担するのかというような意見が出たのですけれども、義務教育には学校の施設整備とか、教材費だとか、いろいろな経費があるけれども、何といっても教育は人なり、優れた立派な教師を確保するということが一番大事なので、本来ならば全額国が負担すべきだと思うと答えました。なぜ2分の1かといわれたら、本当は全額負担すべきだと考えているが、財政論からそうなってしまう。そういう意味では、減らすという方向でなくてもいいのではないかというような話もしました。それから、先生方の給与については、国が持っても、地方が持っても同じではないかという意見がありましたけれども、それは違うのではないかと思います。憲法の要請によりまして、国が義務教育については責任を持つということになっています。地方交付税というのは地方固有の財源ということになっていますから、地方交付税で持てば同じではないかといったって、それでは国の責任を全うすることにはなりません。標準法により学級編制と教職員定数の標準を定めて、それを実施してもらうための担保として先生方の給与の2分の1を負担しているというのが義務教育の根幹ではないかというような話をいたしました。
 また、高校はうまくいってるではないか、警察行政だってうまくいってるではないかと、こういうご質問がありましたので、高校と小中学校は違うことを御説明いたしました。小中学校は、子どもが一人でもいれば、学校を作らなければならないという設置義務がありますけれども、高校の場合にはありません。また高校の場合は、私学のシェアが非常に高いところもあるし、そういう意味で都道府県はそれぞれの地方の状況に合わせて学校を作ればいいのです。生徒が少なくなっているところは統合したりしているところもあります。そういう意味で設置義務ではありません。一番の違いはやはり有償だということで、授業料を徴収しているということです。小中学校は無償ですけども、高校は有償です。そういう意味で、高校でできているのだから小中学校でもできるのではないかということについては、それは全く違いますと申し上げました。
 それから警察行政でやっているのだから、同じように基準を定めてやれば良いのではないかという意見については、警察行政というのは権力的な行政であり、ご承知のように県警等の幹部というのは国家公務員です。しかも基準を定めて、拘束力を持って行っているわけでございますから、そういう意味で極めて反地方分権的ともいえると思います。学校の場合にはそうではなくて、基準を定めて例えば総額裁量制など地方の裁量により行っていただく極めて非権力的な行政です。指導、助言、援助により行っている教育行政を、警察行政のようにするということは、これはまさに地方分権に反するものです。そもそも地方分権から始まった議論が回り回って元に戻り、極めて地方分権に反するようなことになってしまっている。そんな議論は納得できないということを申し上げました。
 また、教育基本法改正との関係を聞かれました。教育基本法改正については中央教育審議会の答申をいただいて、与党の協議会で鋭意協議をいただいていますということを申し上げました。そして、教育基本法改正の前提に義務教育費国庫負担制度の堅持というものが根底にあることを御説明いたしました。これからの日本における人材育成という視点があり、ここで義務教育を国が放棄することになれば、教育基本法改正の審議成立にも影響します。ぜひ文教制度調査会の保利会長の話も聞いてもらいたいということも申し上げました。

記者)
 今日の議論を受けて、官房長官から新たな宿題や今後の進め方について、何か指示はあったのでしょうか。

大臣)
 特にありませんでした。

記者)
 これまでの文部科学省の主張は、地方交付税は削減される方向にあるので、そうすると教育に対する財源的な保障がなくなるというとことが一つあると思いますが、それに対して総務省は地方交付税をきちんと措置するという主張をしております。今日は、それについての議論はあったのでしょうか。

大臣)
 そういうような議論もありました。地方は、まさか人件費までは削らないだろうというような話がありました。しかし、税源移譲と言っても豊かな地方自治体と貧しい地方自治体では非常に格差が出てきますし、しかも近年、地方交付税は削減されてます。さらに7、8兆円も削減するということになりますと、本当に、地方財政は大変なことになります。これは、義務教育だけではなく全般的にそうなりますけれども、そういった中で教員の給与そのものに影響が出るようなことがあってはなりません。そこが一番の問題であるということを申し上げました。それに対して、地方教職員の給与費は削減しないから、国はそれ以外の役割を持つようにしたらいいのでないかいう話もありましたけれども、何といっても、如何にして良い教員を確保するかということで、教員免許更新制や専門職大学院の議論もしているわけで、学校の教員をきちんと確保することが一番優先されなければならないという話をいたしました。

記者)
 文部科学省の主張というのは、一貫して財政論や手続論ではなく、そもそもの教育論からはじめてほしいというものですが、今後この主張はやはり変わらないのかということについてと、与党の中でも議論が進んでいますけれども、これに対してはどう対応していくのかお聞かせください。

大臣)
 要するに丸投げ丸呑みならば政府はいらないわけだから、やはり政府全体として受け止めていただきたいということをずっと主張しているのですが、何というか袋小路に入っているというか、先ほど申し上げたように、回り回って元に戻るような議論になっていて、本当に残念だなと思っております。与党でも、いろいろと議論していただいていますから、与党の論議と併せて調整していくことになるのではないかと思います。

記者)
 今日は結局、最後はどういう形で終わったのですか。

大臣)
 今日は、言いっぱなし、反論しっぱなしで終わりました。小泉総理からは、夜を徹して議論するようにといわれたそうですけれども、今日はそういうことで終わりました。今後、夜を徹して議論させていただけるのだと思いますが、しかし結局、回り回って元に戻る議論になってしまいます。

記者)
 先日の会合の最後に官房長官から、国の指導、助言、援助をもう少しつき詰めて考えてほしいという宿題があって、今日、回答をしたわけですが、それについては何か議論はあったのでしょうか。

大臣)
 先ほど説明してまいりましたが、特に何もございませんでした。私としては、最後に申し上げたのは、義務教育費国庫負担制度というのは、単なる補助金改革とか財政論で議論するものではないということです。特に世界が、教育を国家戦略として教育投資をどんどん増やしている時に、日本が国の教育投資を減らしていくということで、本当にいいのですかということを申し上げました。

記者)
 それに対して、他の大臣から何か反論はありましたでしょうか。

大臣)
 反論はありませんでした。それはそうだと。竹中大臣からは、むしろ「前向きに内閣として教育に関するメッセージを出すのにいい機会ですね。」というような話もありました。そういう機会として取り上げてもらいたいと思いますけれども、それは減らす方向ではなくて、むしろ増やすくらいの心意気でメッセージを出してもらいたいと思います。教育は大事だと、小泉総理も言っているわけですから。

記者)
 補助率を例えば3分の1とか、5分の2に引き下げるという話が出ているようですが、受け入れる余地といいますか、その辺についてのお考えをお聞きかせください。

大臣)
 そういう数字が出ているということは知っていますけれども、具体的に誰からもそういうことを言われたことはありません。この問題はやはり、義務教育制度のあり方や義務教育における国と地方の役割分担を中央教育審議会で議論していただいているのですから、それを踏まえて検討するべきで、そのような数字を2分の1から3分の1にしたらどうかということは、まさに数字のつじつまあわせの議論ではないでしょうか。

記者)
 先ほど警察行政の話が出ましたが、竹中大臣は以前の会見の中で、予算はなくても警察行政のような人を守る仕組みを作ればいいのではないかといっていたのですが、そういった議論はなかったのでしょうか。

大臣)
 先ほどお話したとおり、高校ではうまくいってるし、警察行政だってうまくやってるではないかということを言われましたので、警察行政と教育行政というのは全く違うことを御説明いたしました。権力的行政と非権力的行政の違いの最たるもので、教育行政において拘束力を持って上から従わせるというのは、まさに地方分権に反するものです。いろいろ議論してきて最終的にはそういうことに戻ってくるのはおかしいのではないかということを言いました。基準さえ作ってこれに従えというのでは、それは中央集権国家になってしまいます。基準をつくってこれを守ってもらうかわりに、十分ではありませんけれども、できる範囲の予算措置をしますということで協力を願いし、お互いに国と地方が一緒になって教育制度・行政を行っているわけですから、それを一方的に基準だけ示してこれで従えというようなことには、教育行政ではなじまないというのが私の基本的な考えです。

(了)


(大臣官房総務課広報室)

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