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令和二年 年頭の所感

文部科学大臣 萩生田 光一

(はじめに)

令和二年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
 昨年九月の就任以来、私は教育再生、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の振興に全力で取り組んでまいりました。
 安倍内閣においては、人生百年時代や「ソサエティ5.0」の到来を見据えた経済社会を大胆に構想する中で、「一億総活躍」の旗を更に高く掲げ、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていくため、内閣一丸となって「人づくり革命」を断行し、「生産性革命」を実現することを最大の使命としています。文部科学省が担う教育再生、科学技術イノベーション、スポーツ、文化の振興は、「人づくり革命」や「生産性革命」において中核を担うものです。
 年頭にあたり、国民各位の期待に応える文部科学行政の推進に向けて、決意を新たにしております。

まず、昨年の台風第十五号及び第十九号等によりお亡くなりになられた方々に、衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。文部科学省としても、関係地方公共団体ともよく連携し、被災地に寄り添いながら、被災地の支援に全力を尽くしてまいります。

昨年末策定された新たな「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において、令和の時代の新しい学校像として、児童生徒一人ひとりがそれぞれ端末を持ち、ICTを十分活用することのできる環境整備のほか、台風第十九号をはじめとした大規模災害により被災した施設の復旧や、子供たちの教育機会確保、防災機能強化や高等専門学校の高度化を含めた学校施設・設備の整備、首里城跡やノートルダム大聖堂における火災を踏まえた文化財の防火・防災対策、H3ロケットの打上げや国際宇宙探査への参画に伴う取組の加速に向けた宇宙・航空分野の研究開発、ラグビー競技が実施できるスポーツ施設の整備などを進めることとしており、これらをはじめ、盛り込まれた事項についてしっかりと取り組んでまいります。

(復興の加速化)

東日本大震災や近年相次ぐ災害については、昨年、文部科学大臣就任以降に初めて、福島県や千葉県南部を訪問し、復興に向けた決意を改めて強くしたところです。就学支援、児童生徒の心のケア、学習や学校再開への支援等をはじめ、復興を支える教育・人材育成、大学・研究機関による地域再生への貢献、学校施設や文化財の復旧など、被災者の心に寄り添った復興を更に加速します。廃炉に関する研究開発や人材育成、原子力損害賠償に着実に取り組みます。さらに、原発事故の避難者をはじめとする被災した児童生徒に対するいじめについては、関係機関とも連携して必要な取組を行ってまいります。

(教育再生)

教育再生は、安倍内閣の最重要課題の一つです。教育再生実行会議のこれまでの提言を踏まえ、子供たちの個性を伸ばし、多様な価値に対応できるよう、義務教育における基礎・基本の習得の上に、子供たちの個性を伸ばす多様性のある教育の実現に向けて必要な施策を推進します。また、これまでの提言の進捗についてしっかりとフォローアップを行ってまいります。
 幼児教育については、昨年十月から全面的な無償化措置を実施したところです。その上で、今般の無償化措置の対象とならないものの、地域や保護者のニーズに応えて重要な役割を果たしている施設等として自治体が認め、支援を行っている場合に国においても併せて支援を行い、国と地方が協力した効果的な支援の在り方を明らかにするための調査事業を実施するとともに、並行して地方団体とも協議・調整を行い、令和三年度からの新たな支援策の実施を目指して取組を進めてまいります。併せて、質の高い幼児教育の提供にしっかりと取り組みます。
 さらに、来年度から年収五百九十万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現します。また、高校生等の奨学給付金の充実にも取り組みます。

 昨年十二月に公表された、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果」によれば、数学的リテラシー及び科学的リテラシーは、引き続き世界トップレベルですが、読解力については引き続き課題が見られることも明らかになりました。このため、文部科学省としては、児童生徒の学力向上を図るため、本年四月から順次全面実施される新学習指導要領の着実な実施など所要の取組を進めてまいります。
 安倍内閣が「働き方改革」を実行する中で、世界からも評価の高い我が国の学校教育を持続可能なものとしていくためには、教師が子供たちの指導に使命感を持ってより専念できるよう、「学校における働き方改革」を強力に推進することが必要です。
 学校における働き方改革は特効薬のない総力戦であり、文部科学省が学校と社会の連携の起点・つなぎ役としての役割を前面に立って果たすとともに、勤務時間管理の徹底や学校及び教師が担う業務の明確化・適正化、小学校における質の高い英語教育のための専科指導等に必要な教職員定数の改善充実、学校の運営体制の強化、部活動指導員やスクール・サポート・スタッフ等の専門スタッフや外部人材の配置拡充など、あらゆる手段を尽くして取り組んでまいります。
 この総合的な取組をさらに推進する一つのきっかけとなるよう、先の臨時国会において、昨年一月に策定した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を法的根拠のある「教育職員の業務量の適切な管理等に関する指針」に格上げするとともに、休日の「まとめ取り」のため、一年単位の変形労働時間制を条例で選択的に活用できるようにすることとする公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律が成立しました。教育委員会や学校長、そして現場の先生方とが共通認識を持って、制度を活用していただく必要があると考えており、各地方公共団体で同じ思いを共有して取り組んでいただけるよう、あらゆる機会を通じて、今回の法改正の趣旨や意義について説明していきたいと考えています。さらに、急激な社会的な変化が進む中で、これからの時代に応じた教育課程や教職員配置、教師の養成・採用・研修や教員免許制度等の初等中等教育の在り方について、総合的に検討を進めてまいります。なお、令和四年度には教師の勤務実態状況調査を実施し、その結果などを踏まえながら、教師に関する勤務環境について、給特法などの法制的な枠組みを含め検討を行ってまいります。
 これらに加え、初等中等教育については、地域と学校の連携・協働の推進、「特別の教科道徳」の実施、ハンセン病に対する偏見差別の根絶など人権教育の充実、いじめや不登校への対応、SNS相談体制の構築、フリースクールなど多様な場で学ぶ子供への支援、夜間中学の設置促進・充実、家庭教育支援の充実、読書・体験機会の提供の推進、登下校時の子供たちの安全確保対策も含めた学校安全の推進などにしっかりと取り組みます。
 児童生徒の自殺予防の取組やインターネットを通じたトラブル等を回避するための取組、スクールカウンセラー等の配置拡充などに取り組みます。
 児童虐待により子供が亡くなることは誠に痛ましく、あってはならないことです。悲劇を繰り返さないよう、文部科学省としても、厚生労働省等の関係府省庁と緊密な連携を図りながら、スクールソーシャルワーカー等の重点配置など児童虐待の防止にしっかり取り組んでまいります。また、指導体制の充実を通じた学力保障へ向けた取組や高校中退の予防及び中退後の支援、更なる教育費負担軽減など子供の貧困対策を推進します。
 今後さらに加速していくグローバル社会を見据え、外国語教育や在外教育施設における教育、留学生交流、日本型教育の海外展開、ユネスコが主導する持続可能な開発のための教育等の活動、いわゆる「ESD」や国際バカロレアなどを推進します。また、外国人に対する日本語教育、外国人児童生徒等への教育の充実、大学等における留学生への支援やその在籍管理の徹底等にしっかりと取り組んでまいります。昨年文部科学省が初めて行った調査により判明した義務教育段階の外国人の子供たちの不就学等の状況を踏まえ、就学状況の把握や就学促進のための取組を進めてまいります。
 学校施設は、子供たちの学習・生活の場であり、災害時に避難所となるなど国土強靱化の観点からも重要な施設です。このため、非構造部材を含めた早期の耐震化の完了を目指すとともに、老朽化した学校施設の長寿命化対策、防災機能の強化、空調や給食施設の整備、バリアフリー化、ブロック塀の安全対策等を推進します。
 高等教育については、来年度から、真に支援が必要な低所得者世帯に対して、授業料及び入学金の減免制度の創設と給付型奨学金の拡充を行います。新制度の円滑な実施に向けて、必要な準備を加速させます。
 少子高齢化やグローバル化が進展する社会において、「ソサエティ5.0」に向けた人材育成やイノベーション創出の基盤となる大学等の改革が急務です。高等教育の無償化・負担軽減の実施にあたっては、高等教育の質の向上及び教育研究基盤の強化を図ることが必要です。意欲ある若者の高等教育機関への進学機会を確保するとともに、高等教育・研究機関の取組や成果に応じた「手厚い支援」と「厳格な評価」を徹底することにより、「教育」「研究」「ガバナンス」の一体的改革を推進してまいります。

多様な卒業者が大学等で修得した知識技能を社会で活用できるよう、教育の質の保証と情報公表、多様で柔軟な教育体制の構築、多様な学生の受入れ促進等を通じて、教育の質を向上してまいります。リカレント教育については、抜本的に拡充し、生涯にわたって学び続け、チャレンジし続けられる機会の確保を目指してまいります。
 グローバル人材の養成、指定国立大学法人による国際競争力の強化、地方創生を担う人材育成、専門職大学等の充実、専修学校等における教育の充実に向けた取組を推進します。
 このためにも、国立大学法人運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成など基盤的経費を安定的に確保するとともに、経営力強化、連携統合の促進や財政支援のメリハリ化を通じて強靱な大学への転換を促してまいります。
 国立大学は社会変革を先導し、社会や地域から支えられる存在になることが重要です。先般改正された国立大学法人法や「国立大学改革方針」の方向性を踏まえ、国立大学の改革を支援してまいります。
 また、高等専門学校は、創設以来約六十年にわたり、五年一貫の実践的技術者育成を行っており、産業界や諸外国からも高い評価を受けています。高等専門学校の機能の高度化、日本型高等専門学校の海外展開と国際化の一体的推進、技術者教育の基盤となる施設・設備の整備に努めてまいります。
 英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」については、経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して試験を受けられるような配慮などの準備状況が十分ではないため、来年度からの導入を見送り、延期することといたしました。英語四技能評価は、グローバル人材の育成のため重要であり、令和六年度実施の大学入試に向けて、私の下に新たに検討会議を設置し、今後一年を目途に結論を出したいと思います。
 令和三年一月実施の大学入学共通テストにおいて、記述式問題は実施せず、導入見送りを判断しましたが、初等中等教育を通じて論理的な思考力や表現力を育て伸ばすことは、大変重要です。それらを評価する観点から、大学入試において記述式問題が果たす役割が大きいことに変わりはなく、各大学の個別選抜において記述式問題の活用に積極的に取り組んでいただきたいと考えていることから、文部科学省として、各大学に対してそうした取組をお願いしていきたいと思います。今後、検討会議において、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題の在り方など大学入試における記述式の充実策についても検討してまいりたいと考えております。引き続き高等学校教育、大学教育及び大学入学者選抜を一体的に改革する高大接続改革に取り組みます。また、大学入学者選抜の公正な実施に向けた必要な対応を行っていきます。
 法科大学院については、先般改正された法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等に基づき、法務省等の関係機関と連携して、法科大学院教育の改善充実に取り組みます。
 障害者が一生を通じて自らの可能性を追求できるよう、福祉部局等と連携した切れ目のない支援体制の構築や、障害のある子供の自立と社会参加に向けた特別支援教育の充実、障害者の生涯にわたる多様な学習活動の充実に取り組みます。
 これらの「教育再生」に向けた取組を着実に実現するため、第三期教育振興基本計画に基づく施策を実行するとともに、必要な財源を確保しつつ、教育投資の充実に努めてまいります。

(科学技術イノベーション)

我が国が将来にわたって成長と繁栄を遂げるための「要」は、科学技術イノベーションです。国連が定めたSDGsの達成に科学技術イノベーションが果たす役割が極めて大きいことは国際社会の共通認識です。諸外国に比べ研究力が相対的に低下傾向にある現状を一刻も早く打破するため、「研究力向上改革二〇一九」に基づき、研究人材、研究資金、研究環境の改革を大学改革と一体的に進め、絶えずイノベーションを生み続ける社会の実現に全力で取り組んでまいります。
 我が国の科学技術イノベーションの中核を担う文部科学省として、第五期科学技術基本計画に基づき、「世界で最もイノベーションに適した国」を目指します。基本計画で掲げる政府研究開発投資目標の達成に向け、科学技術予算の確保に努めます。

昨年十二月、吉野彰旭化成株式会社名誉フェローがノーベル化学賞を受賞されました。今回の受賞は、日本人研究者が高い研究水準を有することを改めて世界に示すものであるとともに、長きにわたって国を挙げて、基礎研究から応用研究に至るまで幅広い科学技術・学術政策を強力に推進してきた成果の賜物であり、先生の業績に心からの敬意を表したいと思います。
 我が国の研究力の向上にむけては、優秀な若手研究者へのポストの重点化や多様なキャリアパスの確保などの研究人材改革、若手研究者への重点支援や新興・融合領域への取組強化などの研究資金改革、研究設備等の共用促進や研究支援体制の強化などの研究環境改革を総合的に進めます。
 持続的なイノベーションの創出には、その源となる学術研究・基礎研究が極めて重要であり、科研費の充実を図るなど、これを強力に推進します。また、将来を担う人材の育成や女性研究者の支援等に取り組みます。次世代放射光施設など物質科学等を支える最先端の研究基盤をはじめとする大型研究施設等の整備・共用を促進するとともに、光・量子技術等の新たな価値創造のコアとなる分野の研究開発を進めます。加えて、特定国立研究開発法人をはじめとする国立研究開発法人を中核として、世界最高水準の研究活動を進めます。
 人材・知識・資金の好循環システムの構築に向けて、大学等のマネジメント機能強化や産学官共創の場の構築によるオープンイノベーション、地域のイノベーション創出、ムーンショット型研究開発などハイリスク・ハイインパクトな研究開発を進めるとともに、優れた人材が長期間にわたり集中して研究に打ち込める環境を整備し、破壊的イノベーションにつながる成果の創出を目指す「創発的研究」の場の形成にも取り組みます。また、科学技術の戦略的な国際展開を図ります。
 「ソサエティ5.0」の到来を見据え、人工知能、ビッグデータ等の研究開発・活用やスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」の開発などの情報科学技術の推進、我が国が強みを持つ再生医療や感染症等のライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料等の研究開発を進めます。また、地震・津波・火山・豪雨等の防災・減災に関する研究開発、環境・エネルギーに関する研究開発、ITER計画、BA活動等の核融合研究開発などを進めます。
 さらに、来年度に初号機打上げを目指すH3ロケットの開発や、同年度に地球への帰還が予定されている「はやぶさ2」に代表される宇宙探査、今般我が国が参画することを決定した月周回有人拠点「ゲートウェイ」を含む国際宇宙探査の推進など、国内外で大きな期待と関心が寄せられている宇宙・航空分野の研究開発や、本年十一月にアジアで初となる我が国での開催が予定されている第3回北極科学大臣会合の実施など、近年ますます重要性が高まっている北極域を含めた海洋・極域に関する研究開発、原子力に関する研究開発など、国主導で取り組むべき基幹技術を推進します。

(スポーツ・文化)

スポーツには、体を動かし楽しむだけでなく、人を夢中にさせ感動させる力があります。また、文化は、我が国のアイデンティティを形成する源であり、世界に誇る重要な資源です。
 昨年九月から十一月にかけて、我が国でラグビーワールドカップが開催され、全国各地で熱戦が展開されました。日本代表選手の活躍はもとより、スポーツの持つ力を改めて実感する大会となりました。そしていよいよ本年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。大会の成功に向けた取組を着実に進めてまいります。第二期スポーツ基本計画を着実に実行し、全ての人々がスポーツを「する」、「みる」、「ささえる」機会を確保し、「スポーツ立国」の実現を目指します。国際競技力向上やドーピング対策など東京オリンピック・パラリンピック等に向けた取組を強力に進めることはもとより、次世代に誇れるレガシーを創出する視点で、アスリートのセカンドキャリア形成支援、スポーツを通じた健康増進、国際交流・協力や地域活性化、大学スポーツの振興、スポーツの成長産業化、障害者スポーツの振興、学校体育の充実等に取り組みます。
 また、スポーツ活動が公正かつ適切に実施されるよう、スポーツ団体に対し、昨年策定したガバナンスコードの遵守を促しつつ、スポーツ・インテグリティの確保に努めてまいります。
 文化芸術は、無限の可能性を秘めています。
 東京オリンピック・パラリンピックが開催され、世界中から注目が集まるこの機に、「日本博」をはじめとした「文化プログラム」を全国で展開するとともに、日本遺産等の様々な文化資源の活用や文化観光拠点の支援等を通じて、伝統文化から現代芸術まで幅広い文化による国づくりをオールジャパンで推進し、日本文化の魅力を世界に積極的に発信します。
 文化庁の京都への移転を見据え、地方創生や観光などの関連分野とも連携しながら、文化行政を総合的に推進し、文化による本質的・社会的・経済的価値の創出を強力に実行するとともに、文化芸術基本法に基づき策定した文化芸術推進基本計画や文化経済戦略を着実に実行し、「文化芸術立国」の実現に取り組んでまいります。
 インターネットにおける著作権侵害の被害拡大の防止等を図るため、国民の皆様の声を丁寧に伺いながら、法整備を行うための準備を進めてまいります。

(終わりに)

私としては、「令和」という新しい時代を迎え、改めて、国家百年の計に立って、文部科学行政全般にわたり、「文部科学省創生実行計画」に基づいた取組を進めることにより信頼の回復に努めつつ、「人づくり」をはじめとした諸課題の解決に着実に取り組む考えです。引き続き関係各位の御指導、御鞭撻(べんたつ)のほど、よろしくお願い申し上げます。