スポーツ立国戦略 基本的な考え方

基本的な考え方

 本戦略では、「スポーツ立国戦略の目指す姿」を実現するため、

1.人(する人、観る人、支える(育てる)人)の重視
2.連携・協働の推進

 の基本的な考え方のもと、実施すべき5つの重点戦略として、

(1)ライフステージに応じたスポーツ機会の創造
(2)世界で競い合うトップアスリートの育成・強化
(3)スポーツ界の連携・協働による「好循環」の創出
(4)スポーツ界における透明性や公平・公正性の向上
(5)社会全体でスポーツを支える基盤の整備

を掲げることとする。基本的な考え方は次の通りである。

1.人(する人、観る人、支える(育てる)人)の重視

○ スポーツを通じて幸福で豊かな生活を実現することは、すべての人々に保障されるべき権利の一つである。各人の自発性のもと、各々の興味・関心、適性等に応じて安全かつ公正な環境のもとで、日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、スポーツを支え、スポーツを育てる活動に参画する機会が確保されなければならない。

○ こうした観点から、スポーツを実際に「する人」だけではなく、トップレベルの競技大会やプロスポーツの観戦など、スポーツを「観る人」、そして指導者やスポーツボランティアといったスポーツを「支える(育てる)人」に着目し、人々が生涯にわたってスポーツに親しむことができる環境をハード(施設等)、ソフト(プログラム・指導者等)の両面から整備する。

○ 具体的には、地域における人々のスポーツ機会の確保・充実を図るとともに、豊かなスポーツライフを実現する基礎となる学校体育・運動部活動の充実に取り組む。また、世界で活躍するトップアスリートが安心して競技に専念できる環境の整備や、トップアスリート・指導者・審判員等に対し、必要なサポートを提供する。さらに、国際競技大会の招致・開催を積極的に支援する。

○ 我が国のスポーツの普及及び競技水準の向上において重要な役割を担うスポーツ団体の運営は、スポーツを行うアスリートや指導者等の個人にとって大きな影響がある。また、スポーツ界には、国費はもとより、スポーツ振興基金・スポーツ振興くじ助成など多額の公的な資金が投入されている。スポーツ界にはこれら財源をアスリート等の育成・強化やスポーツの普及のために効果的・効率的に活用する責任と、公的な資金を受給するのにふさわしい団体のガバナンスが求められる。

○ このため、国はスポーツ団体等と連携・協力し、団体のガバナンス強化、紛争解決システムの整備、ドーピング防止活動等を通じて、透明性の高い公平・公正なスポーツ界を実現する。

 

2.連携・協働の推進

○ スポーツを普及・定着させ、スポーツを人々にとって身近なものとするためには、地域スポーツクラブ、学校、地方公共団体、スポーツ団体、企業などが組織の違いを超えて連携することにより、トップスポーツと地域スポーツの垣根をなくし、人材の好循環を生み出すことが必要である。

○ すなわち、トップアスリートが有する優れた技や人間的な魅力とスポーツを通じて培ったコミュニケーション能力やマネジメント能力を積極的に地域に還元することにより、青少年を含む人々のスポーツへの参加意欲を高め、地域から新たな才能が発掘されることが期待できる。このような人材の好循環を形成することにより、スポーツのすそ野が拡大し、トップの伸長にも寄与するであろう。

○ このための具体的な方策として、拠点となる総合型地域スポーツクラブ(「拠点クラブ」)に引退後のトップアスリートを配置し、地域住民に質の高いスポーツサービスを提供したり、学校体育の外部指導者として派遣したりすることなどを積極的に進める。また、競技により培ったトップアスリートの技能が社会に還元されるよう、キャリア形成のための奨学金の給付、企業や総合型地域スポーツクラブ(総合型クラブ)等への紹介・斡旋などを一体的に行う新たなシステムの構築を検討する。

○ また、我が国のスポーツ界全体の向上という観点からは、優れた技術・能力・施設を有する組織には、自らの組織にのみ目を向けるのではなく、それらを他者に開放し、互いに共有・活用しあう姿勢が求められる。このため、地域スポーツクラブ、学校、地方公共団体、スポーツ団体、企業などスポーツ界の横断的な連携を強化し、スポーツ界が一丸となってスポーツ振興に取り組む体制を構築することが必要である。

○ さらに、スポーツは世界共通の人類の文化の一つであり、現在、国際競技大会をはじめとする世界的な規模でのスポーツ交流が活発に行われている。このような交流を通じて、多くの日本人が積極的に諸外国の人々と広く国際的に連携・協働することは、我が国に対する理解を深め、友好的な関係を構築するとともに、スポーツ界における我が国の存在感を高めることにもつながる。 

○ 一方、スポーツは、地域住民の結びつきを強め、地域の一体感を生み、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の形成に大きく貢献するものである。現在、推進している総合型クラブ等を通じて、互いに顔の見える家族や社会とのつながりの中で住民同士が連携・協働することにより、スポーツを主体的に楽しむことができる地域スポーツ環境の整備を進める。

○ その際、これまでの行政による無償の公共サービスから脱却し、地域住民が出し合う会費や寄附により自主的に運営するNPO型のコミュニティスポーツクラブが主体となった「新しい公共」を形成することを進める。

○ また、このようなスポーツを基盤とする「新しい公共」の形成への参画を促すためには、人々が広くスポーツの持つ意義や価値を共有することが必要である。このため、公的な資金に支えられて活動しているトップアスリート・指導者が、自らの活動内容や成果を直接人々に訴えかける機会を設けるなど、スポーツ界自身が積極的に社会貢献や説明責任を果たす取組を進める。また、人々のスポーツへの興味・関心を高めるための国民運動の積極的な展開や広くスポーツに対する寄附を促す税制措置の検討等を行う。

 

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スポーツ・青少年局企画・体育課

(スポーツ・青少年局企画・体育課)

-- 登録:平成22年09月 --