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公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準

文部科学省告示第百三十二号
  
   図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第十八条の規定に基づき、公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準を次のように定め、平成十三年七月十八日から施行する。
  
平成十三年七月十八日   
文部科学大臣    遠山   敦子
  
目次
   
   総則
  (一) 趣旨
  (二) 設置
  (三) 図書館サービスの計画的実施及び自己評価等
  (四) 資料及び情報の収集、提供等
  (五) 他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
  (六) 職員の資質・能力の向上等
         
   市町村立図書館
  (一) 運営の基本
  (二) 資料の収集、提供等
  (三) レファレンス・サービス等
  (四) 利用者に応じた図書館サービス
  (五) 多様な学習機会の提供
  (六) ボランティアの参加の促進
  (七) 広報及び情報公開
  (八) 職員
  (九) 開館日時等
  (十) 図書館協議会
  (十一) 施設・設備
         
   都道府県立図書館
  (一) 運営の基本
  (二) 市町村立図書館への援助
  (三) 都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク
  (四) 図書館間の連絡調整等
  (五) 調査・研究開発
  (六) 資料の収集、提供等
  (七) 職員
  (八) 施設・設備
  (九) 準用
       
       
   総則
  (一) 趣旨
  1    この基準は、図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第十八条に基づく公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準であり、公立図書館の健全な発展に資することを目的とする。
  2    公立図書館の設置者は、この基準に基づき、同法第三条に掲げる事項などの図書館サービスの実施に努めなければならない。
       
  (二) 設置
     1    都道府県は、都道府県立図書館の拡充に努め、住民に対し適切な図書館サービスを行うとともに、図書館未設置の町村が多く存在することも踏まえ、当該都道府県内の図書館サービスの全体的な進展を図る観点に立って、市(特別区を含む。以下同じ。)町村立図書館の設置及び運営に対する指導・助言等を計画的に行うものとする。
     2    市町村は、住民に対して適切な図書館サービスを行うことができるよう、公立図書館の設置(適切な図書館サービスを確保できる場合には、地域の実情により、複数の市町村により共同で設置することを含む。)に努めるとともに、住民の生活圏、図書館の利用圏等を十分に考慮し、必要に応じ分館等の設置や移動図書館の活用により、当該市町村の全域サービス網の整備に努めるものとする。
     3    公立図書館の設置に当たっては、サービス対象地域の人口分布と人口構成、面積、地形、交通網等を勘案して、適切な位置及び必要な図書館施設の床面積、蔵書収蔵能力、職員数等を確保するよう努めるものとする。
       
  (三) 図書館サービスの計画的実施及び自己評価等
     1    公立図書館は、そのサービスの水準の向上を図り、当該図書館の目的及び社会的使命を達成するため、そのサービスについて、各々適切な「指標」を選定するとともに、これらに係る「数値目標」を設定し、その達成に向けて計画的にこれを行うよう努めなければならない。
     2    公立図書館は、各年度の図書館サービスの状況について、図書館協議会の協力を得つつ、前項の「数値目標」の達成状況等に関し自ら点検及び評価を行うとともに、その結果を住民に公表するよう努めなければならない。
       
  (四) 資料及び情報の収集、提供等
     1    資料及び情報の収集に当たっては、住民の学習活動等を適切に援助するため、住民の高度化・多様化する要求に十分配慮するものとする。
     2    資料及び情報の整理、保存及び提供に当たっては、広く住民の利用に供するため、情報処理機能の向上を図り、有効かつ迅速なサービスを行うことができる体制を整えるよう努めるものとする。
     3    地方公共団体の政策決定や行政事務に必要な資料及び情報を積極的に収集し、的確に提供するよう努めるものとする。
     4    都道府県立図書館と市町村立図書館は、それぞれの図書館の役割や地域の特色を踏まえつつ、資料及び情報の収集、整理、保存及び提供について計画的に連携・協力を図るものとする。
          
  (五) 他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
        公立図書館は、資料及び情報の充実に努めるとともに、それぞれの状況に応じ、高度化・多様化する住民の要求に対応するため、資料や情報の相互利用等の協力活動の積極的な実施に努めるものとする。その際、公立図書館相互の連携(複数の市町村による共同事業を含む。)のみならず、学校図書館、大学図書館等の館種の異なる図書館や公民館、博物館等の社会教育施設、官公署、民間の調査研究施設等との連携にも努めるものとする。
          
  (六) 職員の資質・能力の向上等
     1    教育委員会及び公立図書館は、館長、専門的職員、事務職員及び技術職員の資質・能力の向上を図るため、情報化・国際化の進展等に配慮しつつ、継続的・計画的な研修事業の実施、内容の充実など職員の各種研修機会の拡充に努めるものとする。
     2    都道府県教育委員会は、当該都道府県内の公立図書館の職員の資質・能力の向上を図るために、必要な研修の機会を用意するものとし、市町村教育委員会は、当該市町村の所管に属する公立図書館の職員をその研修に参加させるように努めるものとする。
     3    教育委員会は、公立図書館における専門的職員の配置の重要性に鑑み、その積極的な採用及び処遇改善に努めるとともに、その資質・能力の向上を図る観点から、計画的に他の公立図書館及び学校、社会教育施設、教育委員会事務局等との人事交流(複数の市町村及び都道府県の機関等との人事交流を含む。)に努めるものとする。
          
          
   市町村立図書館
  (一) 運営の基本
        市町村立図書館は、住民のために資料や情報の提供等直接的な援助を行う機関として、住民の需要を把握するよう努めるとともに、それに応じ地域の実情に即した運営に努めるものとする。
          
  (二) 資料の収集、提供等
     1    住民の要求に応えるため、新刊図書及び雑誌の迅速な確保並びに他の図書館との連携・協力により図書館の機能を十分発揮できる種類及び量の資料の整備に努めるものとする。また、地域内の郷土資料及び行政資料、新聞の全国紙及び主要な地方紙等多様な資料の整備に努めるものとする。
     2    多様な種類・内容の視聴覚資料の収集に努めるものとする。
     3    電子資料の作成、収集及び提供並びに外部情報の入手に関するサービス等に努めるものとする。
     4    本館、分館、移動図書館等の資料の書誌データの統一的な整備や、インターネット等を活用した正確かつ迅速な検索システムの整備に努めるものとする。また、貸出の充実を図り、予約制度などにより住民の多様な資料要求に的確に応じるよう努めるものとする。
     5    資料の提供等に当たっては、複写機やコンピュータ等の情報・通信機器等の利用の拡大に伴い、職員や利用者による著作権等の侵害が発生しないよう、十分な注意を払うものとする。
          
  (三) レファレンス・サービス等
        他の図書館等と連携しつつ、電子メール等の通信手段の活用や外部情報の利用にも配慮しながら、住民の求める事項について、資料及び情報の提供又は紹介などを行うレファレンス・サービスの充実・高度化に努めるとともに、地域の状況に応じ、学習機会に関する情報その他の情報の提供を行うレフェラル・サービスの充実にも努めるものとする。
          
  (四) 利用者に応じた図書館サービス
     1    成人に対するサービスの充実に資するため、科学技術の進展や産業構造・労働市場の変化等に的確に対応し、就職、転職、職業能力開発、日常の仕事等のための資料及び情報の収集・提供に努めるものとする。
     2    児童・青少年に対するサービスの充実に資するため、必要なスペースを確保するとともに、児童・青少年用図書の収集・提供、児童・青少年の読書活動を推進するための読み聞かせ等の実施、情報通信機器の整備等による新たな図書館サービスの提供、学校等の教育施設との連携の強化等に努めるものとする。
     3    高齢者に対するサービスの充実に資するため、高齢者に配慮した構造の施設の整備とともに、大活字本、拡大読書器などの資料や機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また、関係機関・団体と連携を図りながら、図書館利用の際の介助、対面朗読、宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。
     4    障害者に対するサービスの充実に資するため、障害のある利用者に配慮した構造の施設の整備とともに、点字資料、録音資料、手話や字幕入りの映像資料の整備・充実、資料利用を可能にする機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また、関係機関・団体と連携を図りながら手話等による良好なコミュニケーションの確保に努めたり、図書館利用の際の介助、対面朗読、宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。
     5    地域に在留する外国人等に対するサービスの充実に資するため、外国語資料の収集・提供、利用案内やレファレンス・サービス等に努めるものとする。
       
  (五) 多様な学習機会の提供
     1    住民の自主的・自発的な学習活動を援助するため、読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、又は他の社会教育施設、学校、民間の関係団体等と共催するなど、多様な学習機会の提供に努めるとともに、学習活動の場の提供、設備や資料の提供などによりその奨励に努めるものとする。
     2    住民の情報活用能力の向上を支援するため、講座等学習機会の提供に努めるものとする。
          
  (六) ボランティアの参加の促進
        国際化、情報化等社会の変化へ対応し、児童・青少年、高齢者、障害者等多様な利用者に対する新たな図書館サービスを展開していくため、必要な知識・技能等を有する者のボランティアとしての参加を一層促進するよう努めるものとする。そのため、希望者に活動の場等に関する情報の提供やボランティアの養成のための研修の実施など諸条件の整備に努めるものとする。なお、その活動の内容については、ボランティアの自発性を尊重しつつ、あらかじめ明確に定めておくことが望ましい。
          
  (七) 広報及び情報公開
        住民の図書館に対する理解と関心を高め新たな利用者の拡大を図るため、広報紙等の定期的な刊行やインターネット等を活用した情報発信など、積極的かつ計画的な広報活動及び情報公開に努めるものとする。
          
  (八) 職員
     1    館長は、図書館の管理運営に必要な知識・経験を有し、図書館の役割及び任務を自覚して、図書館機能を十分発揮させられるよう不断に努めるものとする。
     2    館長となる者は、司書となる資格を有する者が望ましい。
     3    専門的職員は、資料の収集、整理、保存、提供及び情報サービスその他の専門的業務に従事し、図書館サービスの充実・向上を図るとともに、資料等の提供及び紹介等の住民の高度で多様な要求に適切に応えるよう努めるものとする。
     4    図書館には、専門的なサービスを実施するに足る必要な数の専門的職員を確保するものとする。
     5    専門的職員のほか、必要な数の事務職員又は技術職員を置くものとする。
     6    専門的分野に係る図書館サービスの向上を図るため、適宜、外部の専門的知識・技術を有する者の協力を得るよう努めるものとする。
          
  (九) 開館日時等
        住民の利用を促進するため、開館日・開館時間の設定にあたっては、地域の状況や住民の多様な生活時間等に配慮するものとする。また、移動図書館については、適切な周期による運行などに努めるものとする。
          
  (十) 図書館協議会
     1    図書館協議会を設置し、地域の状況を踏まえ、利用者の声を十分に反映した図書館の運営がなされるよう努めるものとする。
     2    図書館協議会の委員には、地域の実情に応じ、多様な人材の参画を得るよう努めるものとする。
          
  (十一) 施設・設備
        本基準に示す図書館サービスの水準を達成するため、開架・閲覧、収蔵、レファレンス・サービス、集会・展示、情報機器・視聴覚機器、事務管理などに必要な施設・設備を確保するよう努めるとともに、利用者に応じて、児童・青少年、高齢者及び障害者等に対するサービスに必要な施設・設備を確保するよう努めるものとする。
          
          
   都道府県立図書館
  (一) 運営の基本
     1    都道府県立図書館は、住民の需要を広域的かつ総合的に把握して資料及び情報を収集、整理、保存及び提供する立場から、市町村立図書館に対する援助に努めるとともに、都道府県内の図書館間の連絡調整等の推進に努めるものとする。
     2    都道府県立図書館は、図書館を設置していない市町村の求めに応じて、図書館の設置に関し必要な援助を行うよう努めるものとする。
     3    都道府県立図書館は、住民の直接的利用に対応する体制も整備するものとする。
     4    都道府県立図書館は、図書館以外の社会教育施設や学校等とも連携しながら、広域的な観点に立って住民の学習活動を支援する機能の充実に努めるものとする。
          
  (二) 市町村立図書館への援助
        市町村立図書館の求めに応じて、次の援助に努めるものとする。
       
資料の紹介、提供を行うこと。
情報サービスに関する援助を行うこと。
図書館の資料を保存すること。
図書館運営の相談に応じること。
図書館の職員の研修に関し援助を行うこと。
          
  (三) 都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク
        都道府県立図書館は、都道府県内の図書館の状況に応じ、コンピュータ等の情報・通信機器や電子メディア等を利用して、市町村立図書館との間に情報ネットワークを構築し、情報の円滑な流通に努めるとともに、資料の搬送の確保にも努めるものとする。
          
  (四) 図書館間の連絡調整等
     1    都道府県内の図書館の相互協力の促進や振興等に資するため、都道府県内の図書館で構成する団体等を活用して、図書館間の連絡調整の推進に努めるものとする。
     2    都道府県内の図書館サービスの充実のため、学校図書館、大学図書館、専門図書館、他の都道府県立図書館、国立国会図書館等との連携・協力に努めるものとする。
          
  (五) 調査・研究開発
        都道府県立図書館は、図書館サービスを効果的・効率的に行うための調査・研究開発に努めるものとする。特に、図書館に対する住民の需要や図書館運営にかかわる地域の諸条件の調査・分析・把握、各種情報機器の導入を含めた検索機能の強化や効率的な資料の提供など住民の利用促進の方法等の調査・研究開発に努めるものとする。
          
  (六) 資料の収集、提供等
        都道府県立図書館は、三の(九)により準用する二の(二)に定める資料の収集、提供等のほか、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。
       
   市町村立図書館等の要求に十分応えられる資料の整備
   高度化・多様化する図書館サービスに資するための、郷土資料その他の特定分野に関する資料の目録、索引等の作成、編集及び配布
          
  (七) 職員
        都道府県立図書館は、三の(九)により準用する二の(八)に定める職員のほか、三の(二)から(六)までに掲げる機能に必要な職員を確保するよう努めるものとする。
          
  (八) 施設・設備
        都道府県立図書館は、三の(九)により準用する二の(十一)に定める施設・設備のほか、次に掲げる機能に必要な施設・設備を備えるものとする。
       
研修
調査・研究開発
市町村立図書館の求めに応じた資料保存等
          
  (九) 準用
        市町村立図書館に係る二の(二)から(十一)までの基準は、都道府県立図書館に準用する。
  
  

-- 登録:平成21年以前 --