日時:平成29年12月27日水曜日14時30分~16時20分
場所:文部科学省3階2特別会議室
林芳正(文部科学大臣)【座長】
鈴木寛(文部科学大臣補佐官)【座長代理】
新妻秀規(文部科学大臣政務官)
【構成員】
太田昇(岡山県真庭市長)
大橋弘(東京大学大学院経済学研究科教授)
北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長)
紫舟(書家/アーティスト)
城山英明(東京大学大学院法学政治学研究科教授/東京大学政策ビジョン研究センター副センター長)
杉山将(理化学研究所革新知能統合研究センターセンター長/東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻教授)
新居日南恵(株式会社manma代表/慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 修士課程)
水野正明(名古屋大学総長補佐/医学部附属病院先端医療・臨床研究支援センター副センター長)
【ゲストスピーカー】
安宅和人(ヤフージャパンCSO)
(敬称略。五十音順)
出席者からの主な意見は以下の通り。
<Society5.0の社会像>
○人と健康、人と自然、人と芸術、人と文化、人とテクノロジーなど多様性を持って人と共生する社会を創ることが目標。重要なのは、すべて「人」を中心とすること。
○健康・医療分野においては、AI、ビッグデータ、IoTの発展により、疾病体系、診断・治療、医療開発、そして医師が変わる。集団の医療から個の医療へと発展し、医師には「病気を診る」ことから「病人を診る」ことが問われることになる。
<社会を創造し、先導する人材の育成>
○健康・医療分野においては、医療をつくる人とつかう人のお互いの立ち位置を尊重し、ハーモナイズできる能力が重要となる。意識上での処理能力である「知能」のみならず、このような意識下での処理能力である「知性」が豊かな人材が求められるのではないか。
○富を生むメカニズムは、既存の市場・枠組み・ルールの中で規模と効率を追求することから、既存の枠組みを越えて、ICT・技術革新をテコに世の中を変えていくことに変容してきている。このような社会にあっては、世界を変えようとする意志と、「妄想し、それをカタチにする力」が必要となるだろう。
○AI×ビッグデータが決定的に重要となる社会で成功するためには、1 デバイス・領域を越えたマルチビッグデータの利活用、2 圧倒的なデータ処理力、3 質と量で世界レベルの情報系サイエンティストとICTエンジニアが必要となるが、我が国では理工系の学生が少なく、その中でも計算機科学の深い分析訓練を受けた学生の数も諸外国と比べて少ない。
○高校生が進路選択をする際、理系の大学に進学しても意味がないと思う風潮がある。目標とする人や対象があればいいのだが。
○世界水準の研究者と院生が居続けられる国にする必要がある。大学も変わりつつあるが、アメリカなどと比べると、給与などの待遇の面での差が大きいのが現状で、この差を埋めるためには、抜本的な支援の拡充が必要。今の日本の国家予算の現状を考えると厳しいと言われるかもしれないが、このような支出はいわば「投資」なので、将来増えて返ってくるもの。
<Society5.0において広く必要となる能力>
○AIと人間の対決になるというような誤解があるが、実際には自分とその周りの経験だけから学んでAIやデータの力を使わない人と、手に入る限りのあらゆるデータからコンピュータの力を利用して学んでそれを活用する人との闘いになる。
○社会を生き抜くための基礎教養が、母国語、世界語、問題解決能力、データリテラシーになる。特に、データの力を解き放つためには、単なるプログラミングではなく、ビジネス力、データサイエンス、データエンジニアリングの3つのスキルセットが必要。
○ますます一人ひとりの知覚と思考の質が求められることになる。見る力(知覚する力)、マチュリティとリーダシップ、データ時代に即した人材育成がポイントとなる。
○知能はもちろん、知性豊かな人材の育成のためには、胎児期、子供、大人という段階別に考えるべき。子供の頃から人間にとっていいことは何か、どのような社会が理想的かということをしっかり教え、価値観を形成することが重要。
○何かに秀でた子供たちの能力をきめ細かく伸ばしていくことが重要。早い段階から多様な人やもの、価値観等に触れさせておくことが、このような芽を見つけ、その後のモチベーションやハングリー精神を育むことにつながる。世界を知ることで上には上がいることに気付くことができるのではないか。
○我が国では安全を重視し、失敗する要因をできる限り排除していくなど、子供を過剰に保護してしまいがち。地域の方を巻き込んで社会全体で子供たちを育てていくことで、子供たちを守りつつ多様なものに触れる機会が生まれるのではないか。
○文系であろうと数理・データサイエンスやバイオロジーの教育が必要で、採用の際にそのような観点を持っていない企業は将来的に淘汰されていくだろう。企業にもそのことに早く気がついてもらう必要がある。
大臣官房政策課