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NPO法人「ふくろうの森」との協働(徳島県鳴門市立図書館)

NPO法人「ふくろうの森」との協働 -市民の目線に立った図書館運営をめざして-
鳴門市立図書館

1.鳴門市立図書館の概要

  ア 鳴門市の概況

 鳴門市は人口6万4千人、面積135.45キロ平方メートルの小規模な市である。四国の東部、徳島県の東北端に位置しており鳴門海峡をへだてて淡路島に対峙し、本州と結ぶ四国の東玄関をなしている。特に当市の北部は瀬戸内海国立公園に指定され、北に播磨灘、東に紀伊水道をのぞみ、鳴門海峡の急流と逆巻く渦潮でその名を知られた景勝地である。1998年に神戸淡路鳴門自動車道が開通、さらに2002年には高松自動車道が全線開通したことから、四国・本州の交流拠点都市として、恵まれた自然や歴史、文化などの観光資源を有機的に結んだ広域観光誘致事業を展開するとともに、全国的にも有名なワカメや鯛などの海産物、さつまいも、塩等、地域特産物の供給基地としての体制づくりを進めている。なかでも製塩業の歴史的な資料を図書館にも保管し、提供している。また、ベートーベンの「第九」の、日本初演の地であるドイツ館を中心として、文化や観光に力を入れている。2006年に公開予定の映画「バルトの楽園」のロケ地となった。さらに、四国遍路88ヶ所の基点の地として、全国から鳴門を訪れる人が増えている。

  イ 図書館のあゆみ

 図書館施設は、1947年に鳴門市公民館に鳴門文庫として誕生し、1958年に鳴門市立図書館として独立館となる。その後、1980年に現在の場所に新築移転し、今に至る。また、図書館が市の東端に位置するため、1963年より移動図書館「青い鳥」が遠隔地に巡回を開始し、現在4台目である。また、2000年から資料のデータベース化が行われ、コンピュータによる貸出業務を開始した。2002年には「子どもの読書活動優秀実践図書館」として、文部科学省より表彰を受けた。

  ウ 図書館の重点目標

 2003年度より継続して以下の4点を重点目標として掲げ、図書館運営をしている。

1  市民参加による図書館運営の推進…NPO法人「ふくろうの森」との協働
2  読書活動の推進…子どもの読書推進計画の実施、読書振興協議会の活性化
3  図書資料の充実・整備…郷土資料の収集と整備
4  施設設備の充実…心地よい図書館環境、学校図書館ネットワーク事業の支援

2.協働を行うにあたっての背景・経緯について

  ア 協働事業の準備期間から現在に至るまでの経緯

 職員組織は、図書館連続勤務(司書資格有)職員1名と数年で異動する職員(司書を含む)により構成されていて、市の人事異動は児童サービスを継続的に構築していく上で大きな障壁となっていた。そこで児童サービスを継続していけるようにと、1992年に図書館がおはなしボランティアを募集し「モモの会」を発足させた。そして図書館におけるお話とは何か、お話の選び方、語り方、おはなし会の進め方等を指導し、共に図書館におけるおはなし会の実施、また学校・幼稚園等に出かけていき、お話の語りや読み聞かせ、本の紹介などを行ってきた。活動を重ねることにより「モモの会」では子どもの読書環境や子育て環境にも問題があり、お話を届けるだけでなく何か自分たちにできないか、何をすればいいのかという意識が次第に高まってきた。図書館側とすれば「モモの会」の方々のボランティア活動により芽生えた意識の向上と実践力を見るにつけ、図書館運営にそれらのパワーを活かせないかと感じ始めていた。
 一方、財政難により進む行政改革は、図書館にもひたひたと押し寄せて来た。図書館には「モモの会」だけでなく「赤ちゃんと遊ぼう」のボランティア、学生のお話ボランティア、子ども向け行事のボランティア、読書振興協議会の読書グループ等の文化活動を進めるグループなどがあり、職員削減によりそれらの行事を統括していくには厳しい状況となっていた。そこで図書館に係わるたくさんのグループをまとめ、事務局を持った自立した一団体にできないものだろうかと模索していった。また、利用者からは「市の財政難は文化面からの切捨てが起こる。文化は人間の生き方の結晶であり、そこに住み生活している人々が自ら作り出すもので他から与えられるものではない。文化のシンボルである図書館を衰弱させることなく、市民ができるところで支えていかなくてはならないのではないか。」という力強い意見をいただいた。

  イ 鳴門市立図書館ボランティアNPO法人「ふくろうの森」発足

 「モモの会」を母体としたNPO法人を発足させてはどうかと、図書館より提案をし、2001年から準備にかかった。翌年3月にNPO法人「ふくろうの森」が誕生し「市民参加の図書館づくり」の体制ができあがった。ところが、その年の人事異動で職員1人減となり、厳しい船出となった。さらに、11月に市より「給与の鳴門市独自カット」が提案され、多くの退職者を出し、この影響は必然的に図書館にも及ぶと懸念された。
 そこから、考え出されたのが「図書館業務一部委託」である。2003年度の委託料予算獲得に始まり、鳴門市立図書館ボランティア協議会(構成:教育委員会、図書館、NPO法人「ふくろうの森」)を立ち上げ、2003年度からの委託事業に向けて連日協議を重ねていった。「ふくろうの森」側からは、「図書館は、あくまで行政が責任を持って運営していくものである。ふくろうの森は、市民を代表し市民の鳴門市立図書館を支援していくものであり、行政の肩代わりをする団体ではない。行政が図書館の柱をしっかり作っていかなければ、われわれは支援をしない。」と厳しい意見をいただくことになる。

  ウ 協働事業の目的や内容

 それまで行っていなかった平日における児童室の午前中開館と木曜・金曜の開館時間延長のサービス拡大を目的とし、2003年度より委託業務も含めた協働の事業が始まる運びとなった。市民の目線に立った図書館運営をめざし、2004年度・2005年度と引き続きサービス向上に努めており、協働体制で現在に至る。具体的な内容については次に述べる。

表1 ―これまでの図書館の職員組織の推移―
正規職員 嘱託職員 臨時職員 合計 備考
人数 うち司書 人数 うち司書 人数 うち司書 人数 うち司書
1995 10 5         10 5 正規職員10名(内司書5名)
1996 10 4         10 4 正規職員10名(内司書4名)
1997 10 3         10 3 正規職員10名(内司書3名)
1998 9 3         9 3 正規職員9名(内司書3名)
1999 8 4 1       9 4 正規職員8名(内司書4名)。市職員数減少急激に進む。コンピュータ化のための入力開始。
2000 7 3 1       8 3 コンピュータによる貸出開始。10冊4週間になる。
2001 5 2 2   1   8 2 行革により、生涯学習課の配下に。館長が嘱託となり、決裁権がなくなる。
2002 4 1 2   2 1 8 2 館長は生涯学習課長が兼務。「NPO法人ふくろうの森」誕生、連日新聞に取り上げられる。
2003 3 2 4 3     7 5 図書館業務一部委託を始める。
2004 3 2 4 3     7 5  
2005 4 2 4 3     8 5 館長(副課長)常勤となる。

3.協働事業の概要・方法

 NPO 法人「ふくろうの森」への委託業務(受託業務)は、主に、カウンター業務と図書館行事への支援である(正会員数93名)。2003年度から始まった委託事業は3年目を迎え、年度の終わりにはボランティア運営委員会を開き、業務支援に対して総括を行い、次年度につなげている。
 予算については、2003年度より年間595万円を委託料として支払い、運営を行ってもらっている。今年度まで委託料の増減はない。図書館2階の一室を「ふくろうの森」の事務室として使用し、図書館との連絡調整や市民に向けての広報・受付等、事務局員がほぼ毎日行っている。月末には図書館と「ふくろうの森」が合同の館内会議を行い、行事やカウンター支援についての細かい打ち合わせを行っている。
 委託の中心であるカウンター業務支援は一般・児童閲覧室に分かれ、1日3交替で5名に、本の貸出・返却の支援(従事している会員数21名)をしてもらっている。また、図書館行事支援として、夏休み・冬休みの行事を中心に手伝っていただいている。その他の図書館業務支援として、毎月末の館内整理日の閲覧室の図書の整理、新着本のブックコート貼り、学校団体貸出の補助等、幅広く館内での支援に取り組んでもらっている。

写真1 カウンター業務支援(児童室)
 
写真2 カウンター研修会(年1回)

4.現在の状況・実績・成果・問題点

 6万5千人前後あった鳴門市の人口も、ここ数年で6万4千人へと人口減少が急速に進んでいる。また、図書館の命である図書資料費も、1千万円は必要と要求し続けてきたが、坂を転がるように630万円になった。もはや、利用者の要求に応えられない状態である。しかし、NPO法人「ふくろうの森」の誕生と協働事業に伴い、図1の貸出利用統計からもわかるように図書館の利用は確実に増えている。市民にとり図書館が身近なものになっていることの表れであり、成果が出てきているといえよう。また、図書館の開催行事が数多くなり、それに伴って参加人数が増えてきている。大勢の市民が来館する機会が増え、図書館に活気が出てきたといえよう。
 資料費削減に対しても、「ふくろうの森」の主催で「図書館に本を贈ろう!」のもとチャリティーバザーを行い、本の購入費として寄贈をしていただいている。(2003年には約18万円、2004年に約17万円、2005年に約20万円)これらの寄贈金は、図書館が児童書を中心に選定し、資料の充実にあてている。

図1 貸出統計のグラフ
 
図2 ふくろうの森行事参加数のグラフ

 子ども体験活動「科学で遊ぼう!」に参加をした子どもの声に「自分で藍染ができて、満足できたのでよかった。早くお母さん、お父さんに見せたい。そして、来年も来たいなあ。」とある。このようにたくさんの行事に参加した方々から感動の言葉をいただき、ボランティアも元気になっている。そしてその喜びを図書館に伝えてもらっている。
 このように満足度の高い行事の運営は、図書館の職員だけでは時間的に無理である。「ふくろうの森」が中心となって行事を運営してこそ、市民参加の図書館づくりとなる。一人一人のボランティアが、自分の持てる力を発揮し達成感を感じることができるよう、文化活動を充実・発展させていくことが図書館づくりの一歩であると考える。
 
写真3 草木染

 委託業務においては職員と共にカウンター業務に携わり、きめ細かな応対で利用者に好評である。閲覧室の図書も整理整頓され、見やすくなったと利用者から声をいただいている。職員にゆとりができたために、未整理図書の整理や書庫の整理が随時でき、資料の動きがスムーズになった。レファレンスも時間を気にせず対応できる等、利用者にとってサービスの向上へとつながっている。
 その他の業務支援として、学校への団体貸出では、資料の返却・修繕・貸出の手続き・梱包までの作業を手伝ってもらい、以前より図書が使いやすく整えられて学校に届けることができている。また新着本の装備等の支援を受け、すばやく新刊提供ができている。特別整理の蔵書点検は、ボランティア(無償)で手伝ってもらい、休館日を以前よりも2日間短縮することができた。
 このように、多くの成果を上げてスタートを切ることができ、継続できている現状ではある。しかし、今後の課題としては職員組織の問題がある。正規職員(司書)2名もあと数年で退職を控えまた人事異動もある。図書館業務には、継続的に進めなければならない部分が非常に多い。まして、協働を進めるには、図書館側が専門家として絶えずパートナーである市民をリードし、時代の要請にあった図書館を運営し構築していかねばならない。しかし、市の財政状況はもう瀬戸際まできている。これから新たな局面を迎えるであろうが、今後一層市民と共に将来の鳴門市の図書館を考えていかねばならない。よきパートナーとして。
 

5.協働事業のこれから

 図書館業務をカウンターでの貸出、返却、調べ物の支援のみで捉えると指定管理者制度、PFIなどの考えが起きかねない。しかし、それはあまりにも図書館を平面的にしか捉えていない。お話会もイベントとして存在するのではなく、それに続く読書や学習への誘いである。図書館は、生涯学習の拠点として、赤ちゃんから高齢者まで全ての年齢の方の生きがいを実現する文化活動を行い、住民の生活の営みを記録した資料の活用は、その土地の文化であり次世代に継承していかなければならない。また社会的病理に対する問題提起とその問題解決を行うべき資料を、人々に提供し続けることが図書館の使命である。そして、不特定多数の市民が自主的に参加し、自己実現できるのが図書館である。一人一人の知的要求に応えてこそ生きた文化施設といえよう。
 したがってこの協働体制をコーディネートしていけるのは、図書館のカウンターで市民と直接接し、潜在的な要求を感じ取り、判断をする図書館職員の司書である。しかし、高度成長期のように行政のみで進めるには無理もあり、21世紀は市民参加の行政づくりが必要と考える。NPO法人「ふくろうの森」が新聞等マスコミに取り上げられることにより、図書館の情報が市民に伝わり、利用のみならず何か図書館のためにできないかと尋ねてくださる方も増えている。これからも図書館は、もっと図書館の展望についてPR し、市民と共に歩んでいくことが必要ではないかと思う。



 

-- 登録:平成21年以前 --