内閣府経済財政諮問会議が打ち出した「骨太の方針」では、21世紀型経済・社会制度を確立する一環として、安心・安定した社会の実現に向け、地域・地方の自立を目指すことがうたわれている。更に、「豊かな生活とセーフティーネットを充実するために」の表題の下では、「地方自立・活性化プログラム~地方ができることは地方に」という、同趣旨のプログラムも掲げられている。
これらの方針やプログラムが目指すところは、地域の活性化、個性ある地方の発展、「美しい日本」の維持・創造にあると言ってよいだろう。このような日本社会を実現させるための国民的基盤として、一人ひとりの人間力向上及び「公共心」涵養に向けて、生涯学習の今日的な意義や重要性があらためて見直されている。
今後、地域の自立性・自主性が尊重されるにともなって、地域住民のライフスタイルや価値観を反映するよう、地域社会の在り方も変容を迫られている。そこでは、多様な地域の課題に対し、住民自らが関わりその解決に貢献することで、地域住民としてのアイデンティティを見出す可能性が高まると考えられる。そうした地域が解決すべき具体的な課題として、総務省では、少子・高齢化の進展、災害の発生、治安の悪化、地域文化の衰退、デジタル・ディバイドの拡大、地域雇用の減少、地方財政の悪化、等をあげている。
一方、「e-Japan戦略」(平成15年7月2日IT戦略本部決定)に掲げられている「次世代情報通信基盤の整備」等を具体的に展開するため、総務省では、地域における学校、図書館、公民館、役所・役場等の施設を高速ネットワークで結ぶことを構想している。これが実現すれば、地域イントラネット基盤施設整備事業等を通じて地域公共ネットワークの全国的な普及が推進されることになる。
こうしたなかにあって、全国に設置されている公立図書館は、地域社会における情報蓄積及び情報発信の拠点として、地域公共ネットワークに積極的に参画することが期待されている。更には、インターネットによる情報収集やeラーニングの普及に見られるように、生涯学習においてもICTの活用の可能性が広がりつつあることから、公立図書館には、地域住民の多様な生涯学習活動を推進していくうえで、主要な担い手となることも求められている。
このような文脈においてあらためて公立図書館の役割をとらえ直してみると、自立した個人の育成と公共心を共有する市民社会を効率的・効果的に実現していくことが、その役割の一つに位置づけられるのである。すなわち、地域の自立を促す21世紀型社会にあって、「知」を循環させる拠点として、多種多様な資料や情報が集積する公立図書館を“ハブ”とした地域公共ネットワーク整備が必要不可欠なものとなる。
こうした認識に立ち、文部科学省生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)付の委託により、学識経験者や図書館関係者、利用者等から成る「図書館をハブとしたネットワークの在り方に関する研究会」を設置し、計3回の研究会を開催した。本研究会では、国民に対する生涯学習機会の普及と向上に向けて近未来の公共図書館像を構想するとともに、国内外の先進事例を参考にしつつ、地域公共ネットワークやICTを活用した公立図書館サービスの在り方を検討してきた。
本報告は、これまでの研究会での議論で出されたアイディアや意見等をもとに、今後の文部科学省生涯学習政策局の図書館施策ならびに情報化関係施策等に資するよう、公立図書館をハブとした地域公共ネットワークの在り方として提言するものである。関係者におかれては、研究会設置の趣旨をご理解いただき、本報告書に対するご意見やご批判をお聞かせ願えれば幸いである。
平成17年1月28日
図書館をハブとしたネットワークの在り方に関する研究会
主査 糸賀 雅児
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