私立学校法の施行について


昭和25年3月14日文管庶第66号
各都道府県知事あて文部次官通達

 さきに私立学校の健全な発達を図るために制定公布されました私立学校法は、本年3月15日から施行され、学校法人登記令及び私立学校法施行規則も今般公布されましたので、別記の各事項に十分御留意の上、私立学校に関する教育行政、学校法人制度等についての事務処理に遺憾のないようお取り扱い下さい。



一、  私立学校審議会について
 私立学校審議会の委員は、特定の学校の利益を代表する者でなく、私立学校の教育全般について見識のある人が望ましい。
 私立学校法(以下「法」という。)第10条第2項第1号に掲げる者のうちから任命する私立学校代表たる委員は、学校の種類を考慮してなるべく広範囲から任命することが望ましい。
 同条同頃第2号に掲げる者のうちから任命する学識経験者たる委員の定数は、同条第3項に規定する限度で即ち私立学校代表たる委員の数の3分の1になるように定めることが望ましい。
 学識経験者たる委員は、法第10条第2項第1号に掲げる者であってはならない。
 学識経験者たる委員を他の公職にある者から任命することは、審議会の運営上好影響を与えると思われる場合には差支えない。(国会議員は、法律上兼職を禁止されている。)
 法第10条第4項に規定する私立各種学校等の代表たる委員1人は、私立学校審議会がこれらの学校のことについても審議する関係上、なるべく任命することが望ましい。
 なお、任命するに当って、もし所轄に属する私立各種学校の相当数を含む有力な団体があるときは、その団体の意見を聞くことも運営上の問題として望ましい。
 法第11条第1項に規定する団体に該当するものは、法施行の日から1月以内に都道府県知事に届け出ることを要するが、法施行後の当初において団体の届出があり、それが法に規定する団体に該当するものであり、他に法に規定する団体はないと都道府県知事において認められる場合又は1月を経過しても他に法に規定する団体が組織されることはないものと認められる場合には、1月の期間をまつことなく推薦を求めて差支えない。なお、法施行後届出がない場合でも、法施行の日から1月は職権によって委員を任命しないこと。(私立学校法施行規則(以下「施行規則」という。)第1条第1項及び附則第9項。)
 なお、法の施行に関する都道府県規則等を制定する場合には、私立学校審議会の庶務を処理する部課を明確にされたい。
二、  収益事業の種類について
 法第26条第2項の規定によって学校法人(法第64条第5項の規定により準用される法第64条第4項の法人(以下「準学校法人」という。)を含む。)が行うことができる収益を目的とする事業の種類を定めるに当っては、次の点に留意されたい。
 学校を設置経営する法人として教育上支障のない範囲の事業であること。
 収益事業の種類の分類は、なるべく具体的に細分することが望ましい。(この分類は、「日本標準産業分類」(統計委員会・産業分類専門部会作成)によるのが適当である。)
 収益事業の種類を定めても、個々の学校法人における事情を考慮して当該学校法人に適当であるかどうかを審査した上で寄附行為の認可をすること。
三、  学校法人の資産の認可基準について
 学校法人を新設する場合の法第25条第1項に規定する資産については、次の基準によることが適当である。
1  基本財産(施行規則第3条第2項に規定するもの)
 次の施設及び設備又はこれらに要する資金を有すること。
(a)  施設
(イ)  校地(校舎敷地、屋外運動場、実験実習地(中学校、高等学校の場合)等
(ロ)  校舎
 校地及び校舎の面積は、学校の種類及び生徒数に応じて相当のものであること。
(b)  設備
(イ)  教具(教育上必要な機械、器具、標本、模型等)
(ロ)  校具(教育上必要な机、腰掛等)
 基本財産は、原則として負担附(担保に供せられている等)又は借用のものでないこと。但し、特別の事情があり、そして教育上支障がないことが確実と認められる場合には、この限りでない。
2  運用財産(施行規則第3条第2項に規定するもの)
 運用財産としては、学校の種類、規模に応じて毎年度の経常支出に対し授業料、入学金等の経常的収入その他の収入で収支の均衡が保てるものであること。
四、  準学校法人の認可基準について
 準学校法人は、学校法人に準じて同様の取扱をするものであるから、その認可基準は、相当高いものであることが望ましく、次の基準によることが適当である。
 その設置する各種学校が次の基準を充していること。ただし、(イ)および(ロ)については、課程または地域の特殊性その他特別の事由があると認められるときは、これらの要件を下まわることができる。
(イ)  修業年限は1年以上、授業時数は1年680時間以上であること。
(ロ)  生徒定数は、80人以上であること。
(ハ)  生徒定数に応じ相当数の専任教員を有すること。
(ニ)  学校の経営が営利企業的でないこと。
 法人の資産については、前記三、の学校法人の資産の認可基準に準じて取扱うこと。
五、  削除
六、  従来の財団法人が組織を変更して学校法人となる場合について
 資産の認可基準について
 この場合の基準については、次によることが適当である。
(イ)  基本財産としては、教育の継続上支障のない程度の施設及び設備を有すればよい。
(ロ)  基本財産が、戦災等により他施設の転用を受けているもの、戦災復旧貸付金等のため担保に供しているもの、その他の事情により負担附又は借用のものであっても、教育の継続上支障がないと認められるものは、差支えない。
(ハ)  従来の財団法人のときの基本金は、運用財産として運用することが望ましい。
(ニ)  従来条件附で認可した財団法人でその条件を履行していないものについては、この際その条件を履行せしめるようにすること。
 従来都道府県知事限りで認可した学校経営の財団法人について
 この場合には、前記三、の学校法人新設の場合の基準に適合せしめるよう特に検討することを要する。
 学校経営と全く関係のない事業をあわせ行う財団法人の組織変更について
 従来の財団法人が、学校の設置経営のほか各種の公益事業を行っている場合には、それらの事業が学校教育と密接な関係のある事業である場合(例えば、図書館の設置経営等)は、そのまま学校法人に組織変更して差支えないが、学校教育と全く関係のない事業である場合には、学校法人の組織変更のほかに学校教育と関係のない事業について財団法人を新設するか、又はその事業について財団法人として残り、別に学校法人を新設することを要する。
 寄附行為変更の形式について
 一部改正でなく、全文改正を行うこと。
七、  従来の財団法人が組織を変更して準学校法人となる場合の認可基準について
 この場合には、前記四、の準学校法人新設の場合の認可基準に準じて取扱うことが適当である。
八、  2以上の都道府県知事の双方に権限又は関係のある事項に関する手続について
 甲県に主たる事務所を置き高等学校以下の学校を設置している学校法人が、乙県に更に高等学校以下の学校を設置する場合、乙県に設置される学校の所轄庁は乙県知事であるが、学校法人の所轄庁は甲県知事である。この場合乙県に設置する学校に関係のある寄附行為の変更等については申請書類は、甲県知事に提出することとなるが、甲県知事は認可を行うについて乙県知事と協議するなど、相互に連絡を行われたいこと。
 甲県知事所轄の学校法人と乙県知事所轄の学校法人が合併して主たる事務所を甲県に置く学校法人となる場合は、申請書類は甲県知事に提出することとなるが、甲県知事は認可を行うについて乙県知事に協議するなど、相互に連絡を行われたいこと。
 甲県に主たる事務所を置き高等学校以下の学校と私立大学とをあわせ設置している学校法人が、乙県に更に高等学校以下の学校を設置している場合には、甲県の高等学校以下の学校及び乙県の高等学校以下の学校の双方に関係のある事項に係る書類は、甲県の高等学校以下の学校に係るものについては甲県知事が文部大臣に、乙県の高等学校以下の学校に係るものについては乙県知事が文部大臣に進達することとなるが、甲県知事は必要な事項について乙県知事と協議するなど、相互に連絡を行われたいこと。
 以上列記したもののほか、2以上の都道府県知事の双方に権限又は関係のある事項に関する手続については、以上の例に準じて協議するなど、相互に連絡を行われたいこと。
九、  削除
十、  削除
十一 、 学校経営の財団法人に関する事務について
 学校経営の財団法人としての許認可、届、報告等に関する事項については、従来通り財団法人に関する取扱いの例による。

(生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)

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