中高生を中心とした子供の生活習慣づくりに関する検討委員会(第2回)議事概要

日時   

平成26年1月31日(金曜日)17時00分~19時30分

場所

文部科学省生涯学習政策局会議室

出席者(敬称略)

委員

大久保貴世、景山明、木村治生、鈴木みゆき、成田奈緒子、原田哲夫、前田勉

文部科学省

坂本家庭教育支援室長、西村家庭教育支援室室長補佐

議事概要

(1)坂本家庭教育支援室長より、資料2、3について説明。

(2)生活習慣の乱れが子供の脳や心身の健康に及ぼす影響(主に睡眠)について、鈴木委員、成田委員、原田委員、前田委員より資料4に基づいて発表。

(3)上記(2)について討議。

(4)中高生の生活のマネジメントについて、木村委員より資料4に基づいて発表。

(5)食生活や食育の観点から中高生の生活習慣づくりについて、濱田食育調査官(オブザーバー)より資料4に基づいて発表。

(6)上記(4)(5)について討議。

(7)全体討議

(委員の主な意見) 

○ 生活習慣づくりの普及啓発を担う人材育成について、家庭教育を支援していく人たちが何をどう伝えていいかが見えてこない。議論の一つは何を伝えていくか、その次に誰がどう伝えていくか。

○ 生活習慣が性成熟に影響を与えるということは、いろいろと証拠が挙がってきている。例えば、男女ともに、夜型になればなるほど、同じ年齢で性成熟度が高いということが分かっている。ある程度標準的な時期であれば良いが、余りにも早い時期に性成熟が来てしまうということは、後々の問題が起こりやすいと言われている。特に、女性の性周期に関しては大きな影響を与えるということが言えるのではないか。
 また、モノアミン神経系と言われる、一番原始的な胎児期から発達する神経系が、朝型と夜型の決定にも影響があり、それに伴う気分の状態であるとか、睡眠のリズム、睡眠の質の障害などにも関係があることが分かっている。生活習慣をできれば幼少期からきちんと整えて、これらの神経系を作り上げることが大事。また、成人期になってからでもきちんと刺激を与えさえすれば再構築は可能。

○ 中高生や保護者へどういう科学的知見を教えるか、夜型になるとどういう恐ろしいこと、リスクがあるのかということを、レム睡眠に関して説明する必要がある。
 レム睡眠は早朝に多く出て、また、レム睡眠の前にたくさん寝ていないとなかなかレムは出ないため、遅寝遅起きをしていると、睡眠時間が長くてもレムが結局取れない。レム睡眠では、頭の整理をしているため、それが不足すると記憶が定着しなかったり、海馬というところで一時保存されていた記憶が消えてしまうというようなことが起こったりする。啓蒙するのはなかなか難しいが、レム睡眠を確保するためには早寝早起きするしかない。
 また、成長ホルモンの出る時間は決まっており(中高生だと9時、10時)、そのときに徐波睡眠といって、ノンレム睡眠の徐波睡眠という深い睡眠でないと、なかなか成長ホルモンが上がってこない。成長が十分な女子高生に対しては、成長ホルモンが出ると美容に良く、昼間の壊れた組織を修復してくれるという効果がある、アスリートの場合は、成長ホルモンが毎日出ていないと、練習で痛めた組織を修復できないので、そのあたりも説得する材料になるかもしれない。夜型生活は中高生の心の健康を脅かし、非行行動、ひきこもり、暴力、けんかが絶えないなどのリスクも高まるということが考えられる。

○ 不登校が多い中学校での睡眠調査票を使った調査の結果では、睡眠に問題を抱え、不登校予備軍ともいえる生徒が目立つ。その多くは、夜の基本睡眠時間が短い。ただ、その短時間睡眠の生徒の中には、土日の長時間睡眠や帰宅後睡眠などで不足分を補い、何とか必要睡眠時間を確保している生徒と、全く補充睡眠をとっていない、明らかに睡眠不足状態の生徒がいる。前者は、学校へは来るが午前中は無気力で、午後から元気になり、時に授業に参加しないで学校内をうろうろしていたり、学校から出ていくというような問題を起こしている。後者は、結果的に長時間睡眠となり、生活軸がずれ、不登校につながっていった例もあり、不登校になる可能性をもっている。このような生徒たちに対しては、とにかく頑張ることを求めない、必要睡眠時間の確保と余り学校を意識しないように働きかけている。
 睡眠調査票のメリットとして、見えない睡眠実態が明らかになり、子供たち自身もそれを見て反省し、生活リズムの立て直しに大いに役立っている。親にとっても学校の先生にとっても、何をすべきか、どう対応すれば良いかということが明らかになってくる。
 問題は、自立性を尊重すべき高校生でも睡眠の働きを理解しておらず、「睡眠=疲れを取る」という程度にしか捉えていない現状である。近年、食育への関心が高まってきている中で、生活リズムの基本である「眠育」はいろいろな面で遅れている。朝食をとっていなかったり、簡単なもので済ませている高校生の多くは、夜更かしをしており、朝は食欲がない、食事をとる時間がないなどの理由を挙げている。その結果として、午前中、気力や集中力が弱く、事故を起こしたり、事故に遭いやすくなっている。睡眠のずれ、夜更かしが、学校生活に悪い影響を与えていることを、生徒自身が理解する場が必要である。眠育と食育の関係というのは、やはりセットで考えていくものだと考える。

○ 子供たちに生活をコントロールすることをいかに自分で考えてもらうかという主体性や自律性の必要が、小学生までの生活習慣づくりとの違い。それから、生活時間の格差も、小学生は相対的に小さいが、中高生になると拡大する。子供や家庭による違いを踏まえて、本当に支援を必要としている中高生にどう働き掛けていくかというところがポイント。
 それから、「身辺的な自立」や生活をコントロールする力というのは、当然学習習慣とも関連している。さらに、学習を資質、能力を高める活動と捉えると、将来的には「経済的な自立」につながる。また、そういうことを親から生活のコントロールを受けなくても自分でできるということは、「精神的な自立」にもつながっていく。身辺的な自立、経済的な自立、精神的な自立は相互に関連しているが、これらの力を高校卒業までにどう身に付けていくかということを考える必要がある。
 検討課題として、獲得すべき力の内容とそれを身につける方法、支援の在り方、認知と普及の拡大などが挙げられる。できるだけ多くの一般の中高生にこれをどう伝えるかと、それとは別に格差に対する配慮をどうするか(本当に支援が必要な子にどう支援するか)。この二つの軸があるのではないか。

○ 中高生に特化して、睡眠、メディア、食のそれぞれについての生活習慣に関する指導の目標を示すことができれば、考えるべき普及啓発の内容になっていくのでは。例えば、女の子には性の成熟の話、男の子には体の修復やアスリートのモデルを示して、必要な睡眠をきちんと取ることを促す。

○ 社会全体として、中高生の睡眠時間は7時間とか6時間だという風潮が学校現場でも指導者にもあるが、通常、中高生では8時間の夜間睡眠が必要。脳が発達するのに必要な睡眠時間として、小児科の教科書に書いてある。また、自立というのも自己肯定感が確立されて初めて起こる現象であり、そのためにはセロトニン神経系の適切な発達を促して不安が低いことが必要である。そう考えると、国民全体が「神経系の発達のためにどうしても必要な子供の睡眠時間」を正しい知識として持つよう啓蒙していくことが肝要。

○ 子供の睡眠時間が短くなっているのは、その分、メディア接触時間が増えたからではないか。今、ガラケーがかっこいいと言われているが、リアルな人との付き合いにきらめきを持ったり、インターネットを余りしていないリアルが充実している(リア充)人はかっこいいという風潮もあったりする。インターネットをする時間が1時間未満でも2時間以上でもなく、適度に1時間ぐらいが学力との相関で一番良いということは、ネットもするが、インターネット以外のところをもっと大切にするんだということの指標と言えるのでは。
 保護者、大人へのメッセージとして、自身の生活態度を子供に見せる、つまり、押し付けではなく、大人が良い見本を見せる、口に出す、態度で示すということを盛り込みたい。

○ 家庭教育や地域での取組について、中高生だと地域や家庭とは割と関わりが薄いため、その中でどうやっていくべきかが課題。学校の授業では、保健体育、家庭科、総合学習などでばらばらにやっているのが現状。学校以外の組織が学校に入って、睡眠や食事、メディアなど生活習慣についてどう啓蒙していくのか。例えば、リーフレットを使って授業できる人を養成した場合に、教科外での活用について、どのように学校に働き掛けるか。また、睡眠、食事、メディア接触など生活習慣を全てセットで啓発する必要がある。

○ 何を啓発するかということについて、一つは、睡眠。これは量と質の問題があり、科学的にも十分な量と質が確保されないときの影響を伝えなければいけない。それから、反対に起きている時間の使い方、自己管理の問題。その中で、やはりメディア接触をどうするかは、検討すべき一つの大きな核になると思う。さらに、もう一つはやはり学習の時間をどういうふうに生み出すか。学力上位の子供は隙間時間を使うのが上手だと話したが、どういう時間の使い方をするのか計画できることが重要。また、もう一つ別の視点として、生活リズムの問題もある。いかに生活の中で自分に合ったリズムを刻んでいける子に育てるのかということが重要。

○ 同じ中学生同士や高校生同士で、自分はこんなふうにして、こんな生活をして、こんなふうに良くなったということを伝え合うのはどうか。少なくとも、自分自身こうするとすごく良かったよというのは伝わりやすいのでは。

○ ある高校の生徒会が、ノースマホデーを作ろうと校長先生に掛け合った。生徒もやはり何らかの問題意識は持っていて、日頃ずっとみんながやっているのを見て、まず取り組むべきだと自ら動いたという。

○ ある学校が、ノーメディアデーを生徒会ではなく校長先生の発案でやった。少し実験的にやってみようかと言ったら、生徒の中に「校長先生が言ってくれてよかった」というふうに思っている人が結構いた。生徒会に問題意識があっても、なかなか言えない場合もあるが、それを誰かが言ってくれると助かるということなのでは。

○ 食育の活動の中の子供自身が自分でレシピを作って能動的にお弁当を作るような取組は、生活習慣の中で例えると、計画を作り実行することに似ているかもしれない。計画を立てることも大事。計画も、1日の計画、1週間の計画、1か月の計画、1年の計画というようにスパンが違うと、立てる目標や内容が異なる。そのことを意識して、毎日の宿題とは別に、1か月後にこれを出しなさいというような形で長期に取り組んで出させるような課題を出している学校もある。1日の生活リズムがどうだったのかとともに、少し長いスパンでの計画を立て、それが実際どうだったのかを振り返るような機会があると良いのでは。子供自身が考えるというところがないといけない。

○ 自分を振り返ったり記録したりすることが非常に有効。何もしていない子には初歩から、ある程度やっている子にはちゃんとレシピを教えるなど。そこで大事になってくるのは理論である。どんな子でも理由が分からないとやらない。どういう手段で伝えるのかが難しいが、学校が全部負担するのではなく、学校外の大学や学生、時には自分たちで理由を考えてみさせるなど、一つの方法では無理なように思う。

○ 自分で考え、振り返ることが、自分の生活習慣を作っていく力につながっていくのでは。また、中高生にとって、ああなりたいとか、こうしたいというモデルを示すことも有効。まず、医学的、脳科学的な根拠をきちんと示すこと。生活習慣全体に関して大人の生活を見せていく、大人の意識を語ることが必要。
 本委員会の検討課題の一つとして、内容とともに、どう伝えていくか、プログラムや担い手、伝え方、ここが大事だと思っている。次回はこのことについての討議をしたい。

(以上)

お問合せ先

生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室

(生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室)

-- 登録:平成26年03月 --