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連携に到るまでの経緯
近年,乳幼児を持つ親の育児ノイローゼや公園デビューの問題が一般化してきている。また,乳幼児を持つ親たちが,「スキンシップが苦手」「子育てはストレスがたまる」「自分の時間がない」などの声をあげているのを耳にすることがある。
竜神地区は,近くに自動車産業関連の社宅や寮が多く,全国各地から人が集まってきており,当然,他県出身の若い母親も多い。そのため,近所に知り合いがなく孤独な子育てを余儀なくされている母親が少なくなく,家庭で時間も気持ちもゆとりを持てず,家族そろっての食事や団欒を困難にし,乳幼児と二人だけで一日中家の中で過ごしている母親も決してまれなことではなくなってきている。また,子育てが一段落した母親が社会復帰した場合,子どもが一人でできあいの物を食べながらテレビを見ている,といった状況が生まれてくることも想像に難くない。こうした状況下で,次世代を担う子ども達の心はどこでどのようにして育つのであろうか。憂慮すべき事態である。
このような中,豊田市の交流館においては,「人づくり」「生きがいづくり」「地域づくり」を柱に『子ども・親』をキーワードとして,“家庭や地域で子どもを育てる”をねらいに,子育て・家庭教育に関する支援と環境づくりなどの推進を図っている。子ども達をとりまく環境や,親の子育てに関する悩みやストレス,進む少子高齢化社会などを念頭においた上で,子育て支援事業に力を入れ,少しでも母親たちの不安解消・仲間作りができるように取り組んで来た。特に子育て支援として,家庭教育講座の他に子育てサークルへの支援や,子育て支援ボランティアの育成,親と子の居場所としての子育てサロンの常時開放など,親と子のふれあいや会話の場づくりに積極的に取り組んでいる。
さらに市子ども家庭課から,従来,市で開催していたマタニティ講座を講座終了後の仲間づくりがスムーズにでき,活動が継続しやすいことから交流館と共催で開催したいと要請があり,平成14年度から実施し,平成16年度にはベビー講座も共催するようになった。少しでも親の子育ての悩み・ストレスを解消するための仲間作りや情報交換ができるよう行政・交流館・子育て支援団体などの連携事業が始まった。
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連携した取組みの具体的な内容・方法・実施状況
マタニティ講座・ベビー講座も企画から運営,評価,反省まで,子ども家庭課職員と交流館主事が,地域のボランティアグループの協力を得て実施している。
交流館は単に学級・講座を開設するだけでなく基本方針である人づくり,生きがいづくり,地域づくりに主眼を置き,講座終了後の自主グループ化,その後の活動を支援している。
具体的には,豊田市では,交流館講座修了生が半数以上でグループ活動をする場合,2年を超えない年度末までを期間に,交流館使用料を免除している。これにより,交流館事業に支障のない範囲内で交流館を定期的に利用することができ,その間に自主グループとして自立していくための様々な支援をしていく。その他にも,出前講座の紹介や地域講師の紹介,親子の居場所づくりの手伝いなどの支援,乳幼児をもつ親たちに学習する機会を提供するための託児ボランティアの紹介や育児支援ボランティアの養成にも取り組んでいる。
講座終了後,自主グループとして活動していく場合を考慮し,幅広く講座の中に「父親の講座」「講座経験者の講座参加」「防災講座」を取り入れている。今年度は「中学生の託児ボランティア」も取り入れ講座の充実を図った。
〔講座参加者の感想〕
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家の中で一人で子育てをしていると,疲れてしまう。いい気分転換になった。 |
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来年は先輩ママとして講座に参加したい。 |
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他のお母さんとも話をして,楽しんで子育てをしていきたい。 |
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周りの人の手をかりて,子育てしていこうと思う。 |
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家に帰り,早速主人と非常持ち出し袋の見直しと点検をした。 |
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中学生に子どもを預けるのは心配したが,良い経験になった。(父親) |
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(中学生に)私の子どもも抱いて欲しいと思った。 |
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他人に抱かれている我が子を見て,改めて我が子が愛しく思えた。 |
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中学生のために一役かえて良かった |
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小さくてやわらかく,かわいかった。弟や妹が欲しくなった。(中学生) |
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自分もこんなに小さかったのかと,くすぐったい気分になった(中学生) |
中学生によるおむつ交換体験も…
この中学生を受け入れた講座ほどコーディネーターとしての難しさと楽しさを感じたことはなかった。行政・教師・生徒・受講生,それぞれの思いと立場があるからである。もちろん,企画者である自分と,開催場所である交流館の思いも含まれる。一つでもないがしろにするわけにはいかない。日程を決める一事にも,どれほどの日数と打合せを要したことか。そうしたやり取りの結果,日程は夏休みの最終土曜日と設定し,一年生を対象にベビー講座ボランティアとして参加者を募ったところ,20名の希望者があり,体験と交流など学びの多い講座となった。
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平成17年度 ベビー講座(子ども家庭課と共催) |
終了後 自主グループとなった子育てサークルの活動事例 |
子育てサークル【モンチッチ】
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内容: |
同じ年齢の子どもを持つ親同士で情報交換をしたり悩みを相談しながら,親子で楽しくふれあう |
活動方法: |
4グループに分け,当番グループが半年分の活動内容を決め,講師の依頼や交流館の部屋利用申請等を行う。会費は一ヶ月100円とし,有料の講師を依頼した場合は,その謝礼を会員が均等割りする。 |
活動期間: |
平成17年度~18年度 |
活動状況: |
4月 |
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お花見会,親子遊び |
5月 |
元幼稚園教諭を講師に招いての親子遊び |
6月 |
歯科衛生士による歯磨き指導,親子遊び |
7月 |
七夕会,親子遊び |
8月 |
ボランティアによる絵本の読み聞かせ,親子遊び |
9月 |
運動会,子育て支援ボランティアによる人形劇 |
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19年度以降は,自主グループとして竜神交流館での定期利用申請はせず,フリーでの活動となる予定。 |
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連携した取組に到る過程での課題や工夫した点・対処法
平成14年度から子ども家庭課と交流館と共催でマタニティ・ベビー教室を開催しているが,立ち上がり当初は,講座のねらいや運営方法などコミュニケーション不足もあった。これらの課題を解決していくために,平成16年度から各交流館と子ども家庭課の交流と講座の充実を図る目的で,講座終了後にアンケートを実施し,それぞれの担当の意見交換会を開催してより工夫を重ね,よりよい講座をめざしている。
また,自主グループとなった子育てサークルとは,常にコミュニケーションをとり,時には相談相手となったり,子育て情報を提供したり,交流の機会を設けて常に活動を見守り,自立した活動になるよう支援している。PRとしては,年1回開催される生涯学習センターふれあいまつりへの参加を呼びかけている。
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連携した取組の成果
子ども家庭課と交流館が共催することにより,
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講座終了後の仲間づくりがスムーズにでき,継続しやすい。 |
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地域の身近な交流館を利用して,活動ができる。 |
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地域性にあった子育て支援ができる。 |
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共催することで,専門性に片寄らない企画が可能となる。 |
などの成果があった。
交流館使用料を減免することにより,子育てサークルの活動費用が軽減され,より活動が継続しやすく,活発化することができた。また,他のサークルと交流や学習する中で,先輩ママとして,絵本の読み聞かせや,子育て支援ボランティアとして活躍したり,交流館と一緒に講座やイベントの企画を担当するなど,地域活動へと大きく活動の輪が広がっている。
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連携した取組みの課題
連携していく上で一番大切なのは,行政・交流館・子育て支援団体等が,よりコミュニケーションを図っていくことだと思う。時間の制約もあるが,お互いのねらい・役割分担・予算・今後どうしていきたいのかをよく話し合い実施し,評価・反省し記録に残しながら次の事業に活かしていくことが大切である。 |