以上の、既存調査のレビューを踏まえると、国民のボランティア活動自体の意識は必ずしも低い訳ではなく、また行動者率も上下動しながら増加傾向にあると見て取れる。このような状況の中で、一層ボランティア活動を促進していく上では、環境整備の絶対的な不足というよりは、国民それぞれの多様な意識に対応した情報や支援が求められていると考えられる。そこで、ボランティア活動に対して一般住民がどのような意識レベルにあるのかを考えるに当たり、本調査では「AIDMA(アイドマ)の法則」の枠組みを活用する。
AIDMAの法則とは、アメリカの経済学者ローランド・ホールが提唱した消費行動の仮説である。消費者がある商品を知り、実際に買うという行動に至るまでの心理的プロセスを表したモデルで、「注意、認知」「興味、関心」「要求」「記憶」「行動」の5つの段階に分かれている。そして、それらの各段階に合ったマーケティング戦略を立てるために活用されている。
本調査では、ボランティア活動に対する認知から活動への参加までの意思決定プロセスを同様に5つの段階に分け、それぞれの段階で社会的気運醸成のためにどのようなプロモーション活動を行っていけばよいかを考えていく
それぞれの段階での心理状況と求められる支援内容について下表に示す。ここで、「要求」段階では、ボランティア活動をしてみたいという気持ちはあるが具体的な活動内容はまだ定まっていない状態を、また「記憶」段階では具体的に行いたい活動内容がはっきりしている状態を想定している。
意思決定の段階 | 認知の段階⇒ (Attention) |
関心の段階⇒ (Interest) |
要求の段階⇒ (Desire) |
記憶の段階⇒ (Memory) |
行動の段階 (Action) |
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心理状況 | 「お!最近ボランティア活動が盛り上がってるな。」 | 「ふーん。ボランティア活動って、こんなことか。面白そう。」 | 「ボランティアで何かしてみたいな。」 | 「私がやりたいボランティア活動は、あそこでできるはず。」 | 「よし、やってみよう!」 |
既存調査結果から浮かび上がってきた、ボランティア活動を促進する上での課題を、AIDMAの法則の5段階に当てはめて並べたものが図表2_14である。このように、AIDMAの枠組みを利用することにより、それぞれの意思決定段階に対応する個別の課題を明確に整理することができる。そして、その課題を克服するための方策、すなわちプロモーション戦略についても、ある段階にいる人たちをさらに上の段階に移行させるためにはどのようなプロモーションが効果的か、という視点で検討すればよく、戦略の方向性が明確になる。
以上の点を踏まえ、今後、本調査ではこのAIDMAの各段階別に分析を進めていく。
AIDMAの法則におけるステップ | 関連既存調査のポイント | ボランティア活動を促進する上での課題 |
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Attention (認知) |
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Interest (興味・関心) |
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Desire (要求) |
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Memory (記憶) |
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Action (行動) |
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以上の課題を踏まえて、全国の一般市民に対しボランティア活動や日常生活での助け合いに関する意識調査を実施した。
調査時期 | 2004年2月 |
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調査対象 | 全国に居住する18歳以上70歳未満の男女2,000人。 居住地域及び年齢構成は国勢調査の母集団構成比と同一。 |
調査方法 | インターネット調査 |
有効回収数 | 2,000件(100パーセント) |
調査項目 |
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この調査では、ボランティア活動の種類と具体例として以下の表を回答者に示している。これは、平成12年度国民生活選好度調査において利用されたものである。
種類 | 内容の例示 |
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公共施設での活動 | 公民館における託児、博物館の展示説明員など |
青少年の健全育成に関する活動 | ボーイスカウト・ガールスカウト活動、子ども会など |
体育・スポーツ・文化に関する活動 | スポーツ・レクリエーション指導、まつり、学校でのクラブ活動における指導など |
人々の学習活動に関する指導、助言、運営協力などの活動 | 料理、英語、書道など |
自然・環境保護に関する活動 | 環境美化、リサイクル活動、牛乳パックの回収など |
国際交流(協力)に関する活動 | 通訳、難民救援、技術援助、留学生支援など |
社会福祉に関する活動 | 老人や障害者などに対する介護・身のまわりの世話・給食、保育など |
保健・医療・衛生に関する活動 | 病院ボランティアなど |
交通安全に関する活動 | 子どもの登下校時の安全監視など |
自主防災活動や災害援助活動 | |
募金活動、チャリティバザー |
生涯学習政策局社会教育課
-- 登録:平成21年以前 --