2‐2 ボランティア活動に対する国民の意識と規定要因の調査分析 2‐2‐1 調査仮説ならびに調査概要

(1)調査仮説

1.ボランティア活動における意思決定プロセス

  以上の、既存調査のレビューを踏まえると、国民のボランティア活動自体の意識は必ずしも低い訳ではなく、また行動者率も上下動しながら増加傾向にあると見て取れる。このような状況の中で、一層ボランティア活動を促進していく上では、環境整備の絶対的な不足というよりは、国民それぞれの多様な意識に対応した情報や支援が求められていると考えられる。そこで、ボランティア活動に対して一般住民がどのような意識レベルにあるのかを考えるに当たり、本調査では「AIDMA(アイドマ)の法則」の枠組みを活用する。
  AIDMAの法則とは、アメリカの経済学者ローランド・ホールが提唱した消費行動の仮説である。消費者がある商品を知り、実際に買うという行動に至るまでの心理的プロセスを表したモデルで、「注意、認知」「興味、関心」「要求」「記憶」「行動」の5つの段階に分かれている。そして、それらの各段階に合ったマーケティング戦略を立てるために活用されている。
  本調査では、ボランティア活動に対する認知から活動への参加までの意思決定プロセスを同様に5つの段階に分け、それぞれの段階で社会的気運醸成のためにどのようなプロモーション活動を行っていけばよいかを考えていく
  それぞれの段階での心理状況と求められる支援内容について下表に示す。ここで、「要求」段階では、ボランティア活動をしてみたいという気持ちはあるが具体的な活動内容はまだ定まっていない状態を、また「記憶」段階では具体的に行いたい活動内容がはっきりしている状態を想定している。

図表 2_13 ボランティア活動に至る意思決定プロセス

意思決定の段階 認知の段階⇒
Attention
関心の段階⇒
Interest
要求の段階⇒
Desire
記憶の段階⇒
Memory
行動の段階
Action
心理状況 「お!最近ボランティア活動が盛り上がってるな。」 「ふーん。ボランティア活動って、こんなことか。面白そう。」 「ボランティアで何かしてみたいな。」 「私がやりたいボランティア活動は、あそこでできるはず。」 「よし、やってみよう!」

2.課題の整理

  既存調査結果から浮かび上がってきた、ボランティア活動を促進する上での課題を、AIDMAの法則の5段階に当てはめて並べたものが図表2_14である。このように、AIDMAの枠組みを利用することにより、それぞれの意思決定段階に対応する個別の課題を明確に整理することができる。そして、その課題を克服するための方策、すなわちプロモーション戦略についても、ある段階にいる人たちをさらに上の段階に移行させるためにはどのようなプロモーションが効果的か、という視点で検討すればよく、戦略の方向性が明確になる。
  以上の点を踏まえ、今後、本調査ではこのAIDMAの各段階別に分析を進めていく。

図表 2_14 既存調査から得られたボランティア活動促進のための課題

AIDMAの法則におけるステップ 関連既存調査のポイント ボランティア活動を促進する上での課題
Attention
(認知)
  • ボランティアとは時間のある人、技能がある人が行うものと捉え、躊躇している人がいるのではないか(仮説)。
  • ボランティアをもっと気軽にできるものとして定義。
  • 気軽にできるボランティアがあることの情報発信。
    →例:生涯学習活動の発表の場
Interest
(興味・関心)
  • 国民の関心自体は高いが、実際の行動につながっていない人が多い状態にある。
  • さらなる参加意欲の喚起。
  • 意欲はあるものの行動に結びついていない人に対する、行動の促進。
Desire
(要求)
  • 気軽にでき、時間的制約の少ない活動の場の提供が求められている。
  • ボランティアに関してどのようなニーズがあるのかといった情報が、参加希望者に伝わっておらず、そのことが活動の「気軽さ」を失わせているのではないか(仮説)。
  • 気軽にでき、時間的制約の少ない活動の具体化と場の提供。
  • ボランティアを受ける側が気軽にボランティアのニーズを発信し、受けることができる社会の空気をいかにつくるか(“お互い様”の意識)。
  • ボランティアを受ける側のニーズをどのようにして、的確に参加希望者に伝えるか。
Memory
(記憶)
  • 実際にボランティア活動を体験することにより、何らかのハードルが低くなる。
  • はじめの一歩を踏み出す機会をいかにつくるか。
    →例:体験活動、日常の助け合い、学校での総合学習 など
Action
(行動)
  • 高齢者や自宅勤務者(自営業者)など、地域社会との関わりを密接に持っている人はボランティアに参加しやすい。
  • そうでない人でも、結婚し子供を持つことにより、学校を媒介とした地域社会との関わりが生まれ、子供や学校に関連する活動に積極的に参加する。
  • 若年者の行動者率が低いのは、地域との関わりの希薄さから、地域活動に関する活動の行動者率が低いことが原因であり、必ずしも意識が低い訳ではない。
  • 同様に、地域社会との関わりが希薄な住民の多い都市部でボランティア行動者率が低下している。
  • 地域社会との関わりの希薄な若年層、希薄な住民が多い都市部において、情報をどのように発信していくか、また若年層と地域との関わりをどのようにつくっていくか。

(2)調査概要

  以上の課題を踏まえて、全国の一般市民に対しボランティア活動や日常生活での助け合いに関する意識調査を実施した。

1.調査仕様

調査時期 2004年2月
調査対象 全国に居住する18歳以上70歳未満の男女2,000人。
居住地域及び年齢構成は国勢調査の母集団構成比と同一。
調査方法 インターネット調査
有効回収数 2,000件(100パーセント)
調査項目
  1. ボランティア活動の実態
    • 最近5年間の活動経験、継続状況、関心の有無
    • 活動参加のきっかけ
    • 今後の活動参加への関心の有無
    • 活動する上での不安や障壁
    • 活動に関する経験、意識、情報取得
  2. ボランティア活動に対するイメージ
  3. 日常生活の中での助け合い
    • 日常生活の中での助け合いの経験
    • 「ちょぼら」の認知度、必要性
    • 日常生活の中での助け合いの阻害要因
  4. ボランティア活動に必要な条件・環境
    • 魅力向上のために必要なこと
    • 社会的関心を高めるために必要なこと
    • 地域で充実すべきサービス内容
    • 気軽に活動できるような雰囲気づくりに向けての意見
  5. 個人属性(性別、年齢、職業、居住地域、1日の自由時間、配偶者の有無、子供の有無、被介護者の有無)

2.この調査での「ボランティア活動」

  この調査では、ボランティア活動の種類と具体例として以下の表を回答者に示している。これは、平成12年度国民生活選好度調査において利用されたものである。

図表 2_15 ボランティア活動の種類と内容の例示

種類 内容の例示
公共施設での活動 公民館における託児、博物館の展示説明員など
青少年の健全育成に関する活動 ボーイスカウト・ガールスカウト活動、子ども会など
体育・スポーツ・文化に関する活動 スポーツ・レクリエーション指導、まつり、学校でのクラブ活動における指導など
人々の学習活動に関する指導、助言、運営協力などの活動 料理、英語、書道など
自然・環境保護に関する活動 環境美化、リサイクル活動、牛乳パックの回収など
国際交流(協力)に関する活動 通訳、難民救援、技術援助、留学生支援など
社会福祉に関する活動 老人や障害者などに対する介護・身のまわりの世話・給食、保育など
保健・医療・衛生に関する活動 病院ボランティアなど
交通安全に関する活動 子どもの登下校時の安全監視など
自主防災活動や災害援助活動
募金活動、チャリティバザー

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

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