長期宿泊推進校 【中学校・自然に関わる体験活動】 わくわくサバイバル-自然の中でたくましく生活しよう 北海道浜中(はまなか)町立散布(ちりっぷ)中学校
学校の概要
- 学校規模
- 学級数:3学級
生徒数:39人 教職員数:10人
- 活動の対象学年:全学年
- 体験活動の観点などからみた学校環境
- 浜中町は道東に位置する人口8,000人に満たない町であり、基幹産業は漁業と酪農である。本校の所在する散布地区は、戸数230戸の純漁村で、主にコンブ・サケ・マス漁を営んでおり、漁繁期には生徒が進んで家業の手伝いをする。
- 自然環境にも恵まれ、前には太平洋、後ろには森林、周辺には火散布沼等の3湖を擁し、夏には丹頂鶴が、冬には白鳥が舞う風光明媚な環境にある。
- 本校は小学校40名、中学校39名の小中併置校である。平成13年度を境に年々児童生徒数が減少している。
- 後継者育成の目的で、昭和46年から地域の漁業協同組合、PTAから援助を受け「水産教育」に取り組んでいる。「獲る漁業から育てる漁業へ」と変容を遂げている中、学習内容も変わってきているが「特色ある学校づくり」の一つとして継続している。
- 連絡先
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体験活動の概要
- 活動のねらい
自然に恵まれた地域に住んでいるとはいえテレビゲームや携帯電話の普及により、自然や人との触れ合いが極端に減少している。そこで、豊かな自然環境や、地域の人々をはじめ多くの人とかかわる多様な体験活動を通して、生徒一人一人に豊かな人間性や社会性、ねばり強くやり抜く態度等の生きる力をはぐくむ必要がある。このことから、次のようにねらいを設定した。
- 全校生徒が共に長期間にわたり宿泊体験をすることを通して、集団生活のルールの大切さを学び、異学年とかかわりながら自分の役割を果たす大切さと喜びを実感する。
- 自然との共生について学ぶとともに、便利さに慣れた日常生活を離れ、知恵を出し合いながら自然の中で活動することを通して自然に感謝する心やたくましく生き抜く力を培う。
- 活動内容と教育課程上の位置付け
- 長期宿泊先における活動
オリエンテーション・野営地設営・片付け(特別活動3単位時間)
トレッキング・カヌー・牧場体験(総合的な学習の時間26単位時間) 自然探索・火おこし・野外炊飯(理科3単位時間 社会2単位時間 家庭科 2単位時間)
- 長期宿泊に関して実施する体験活動
ガイダンス(特別活動1単位時間) 湿原探索・川釣り体験(総合的な学習の時間11単位時間)
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1 活動に関する学校の全体計画
(1)活動のねらい
- 集団生活におけるルールの大切さを学び、集団の中で自分の役割を果たす喜びと大切さを知る。
- 便利さに慣れた日常生活を離れ、水道・電気等の設備の整っていない場所で、自然の力を利用しながら自分たちで工夫して生活することにより、自然に感謝する心やたくましく生き抜く力を育てる機会とする。
- 宿泊する地域の課題に目を向け、その地域への理解を深めるとともに、地域の方々とのかかわりを通して、コミュニケーション能力を高める。
(2)全体の指導計画
1 活動の名称
『わくわくサバイバル』
2 実施学年
実施学年:全学年 (1学年9名 2学年11名 3学年19名 計39名)
3 活動内容
宿泊先における活動(宿泊期間:7月19日~7月23日の4泊5日)
学年 |
期日 |
活動内容 |
単位時間数 |
教育課程上の位置づけ |
活動の場所 |
全学年 |
1日目 |
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2 |
特別活動 |
厚岸少年自然の家 |
3 |
総合的な学習の時間 |
3 |
理科 |
全学年 |
2日目 |
- カヌー作成・体験
- 火おこし体験
- 野外炊飯
- オリエンテーション
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4 |
総合的な学習の時間 |
2 |
社会 |
2 |
家庭科 |
1 |
特別活動 |
全学年 |
3日目 |
|
3 |
総合的な学習の時間 |
厚岸太田ランプの家(電気や水道等のない場所) |
2 |
総合的な学習の時間 |
2 |
総合的な学習の時間 |
全学年 |
4日目 |
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5 |
総合的な学習の時間 |
3 |
総合的な学習の時間 |
全学年 |
5日目 |
|
2 |
総合的な学習の時間 |
2 |
総合的な学習の時間 |
宿泊先における活動に関連して実施する体験活動(6月23日~6月24日)
学年 |
期日 |
活動内容 |
単位時間数 |
教育課程上の位置づけ |
活動の場所 |
全学年 |
1日目 |
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1 |
特別活動 |
霧多布湿原センター |
5 |
総合的な学習の時間 |
全学年 |
2日目 |
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6 |
総合的な学習の時間 |
4 学習指導との関連
総合的な学習の時間においては、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育てることをねらいとし、環境教育の一環として行っている。また、湿原探索等で理科の観察、実験の技能との関連を図っている。
2 活動の実際
事前指導
- 活動内容が決定した後、生徒と保護者にそれぞれ『わくわくサバイバル-長期宿泊体験』についての説明を行った。全学年で取り組む活動ではあるが、学年の発達段階によってねらいが異なるため、学年毎に学級活動の時間を用いて課題意識をもたせるよう指導を行った。
<各学年の重点目標>
わくわくサバイバル-長期宿泊体験
第1学年 |
第2学年 |
第3学年 |
- 集団生活を通し互いに協力し望ましい人間関係を作ろうとする態度を育てる。
- 活動に意欲を持って参加し充実した学校生活を送ろうとする態度を育てる。
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- 中堅学年としての自覚と責任を持ち、意欲的に望ましい人間関係を築く態度を育てる。
- 活動の意義を理解し、ボランティア活動等への積極的参加の態度を育てる。
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- 最上級生としての自覚を持ち望ましい集団活動となるよう問題解決に進んで取り組む態度を育てる。
- 活動を通して規律ある集団行動や公衆道徳について理解しボランティア活動等への意欲的参加の態度を育てる。
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活動の展開
宿泊先における活動に関連して実施する体験活動(6月23日~6月24日)
期日 |
実施内容 |
6月23日(水曜日) |
ガイダンス 湿原探索(竿探し) 竿作り(霧多布湿原)
- 自然との共存についてと2日間の活動について長岡氏(霧多布自然学校指導員)より説明を受ける。その後、川釣りに使う竿作りのための木を探すために湿原探索を行う。
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24日(木曜日) |
湿原探索川釣り体験(霧多布湿原)
- 湿原探索をしてアメマスを釣るための餌を探し、湿原を流れる川で釣りを行う。
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宿泊先における活動(宿泊期間:7月19日~7月23日)
期日 |
実施内容 |
7月19日(月曜日) |
学校~ネイパル(徒歩による移動)
(アヤメが原・・13.2キロメートル※全員完歩の目標地点)
~子野日公園(20.5キロメートル・・ここからバスでネイパルへ)
※さらにネイパルまで歩く意欲のある生徒は徒歩で移動する。
散布~ネイパル(24.5キロメートル)徒歩 (5時間~7時間)
オリエンテーショングループ決め
- これからの5日間の活動内容の再確認をし、生徒の話し合いによりグループ作りをする。(ネイパル厚岸泊)
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20日(火曜日) |
カヌー作りとカヌー体験
- 2人1組でダンボールカヌーを制作し厚岸湖で実際に体験する。
火おこし実習 野外炊飯
- 火きり板作りから始めた火おこしの火を使い、グループ毎に夕飯を作る。(ネイパル厚岸泊)
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21日(水曜日) |
ネイパル~「ランプの家」(徒歩による移動)
- 本格的な野外生活の始まる。3日分の保存の利く食料をグループ毎に購入する。
テント設営 野外炊飯 ドラム缶風呂
- テント設営と並行して調理場のタンクと風呂に使うドラム缶に湧き水を汲み入れる。夜は初のドラム缶風呂体験をする。(厚岸太田ランプの家泊)
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22日(木曜日) |
馬牧場体験(厩舎清掃・乗馬体験等)野外炊飯
- 牧場体験のため早朝から火をおこし朝食準備。その後バスで馬牧場に行き1日馬糞清掃や馬の毛つくろいを体験する。(厚岸太田ランプの家泊)
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23日(金曜日) |
野外炊飯 テント片づけ・ネイパル~学校(バスで移動)
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事後指導
自己評価を実施するとともに、活動ごとにまとめを行い、今後の学習活動や学校生活に生かすことができるよう、意識付けを図った。
3 体験活動の実施体制
校内の体制
- 本校の生徒の実態から身に付けさせたい力について全教職員の共通理解を図り活動内容を検討した。
- 校内推進委員会(教頭、教務主任、生徒指導主事、各学年)を設置し、教科、領域とのかかわりを考えながら具体的な活動内容を決め、関係機関との連絡調整を図りながら準備をした。
学校支援委員会の体制
機関団体及び職名 |
機関団体及び職名 |
浜中町教育委員会指導室長
浜中町教育委員会学校教育係長
北海道厚岸少年自然の家事業課長 北海道厚岸少年自然の家指導員 |
霧多布湿原自然学校指導員
霧多布湿原トラスト理事長
散布小中学校PTA会長 散布小中学校PTA副会長 |
学校関係(校長 教頭 教務主任、生徒指導主事、各学年) |
配慮事項等
- 教職員だけでは、実施の際の安全確保が難しいことから、北海道厚岸少年自然の家をはじめ多くの関連機関や団体からアドバイスや援助、協力を得た。
- 教職員による複数回にわたる下見を実施し、当日の天候変化に対応できるよう計画を立てた。
- 盛夏の実施のため、食品の管理とゴミの始末等に特段の留意した。
4 体験活動の評価の工夫と指導の改善
今年度は、生徒・教職員による自己評価及びアンケートによる意識調査や実際の活動における観察法などをもとに評価を行った。来年度は「総合的な学習の時間」で身に付けさせたい力をもとに項目を設定していく必要がある。
5 活動の成果と課題
活動の成果
- 便利さに慣れた日常を離れ、生活環境の整っていない場所で、自然の力を利用しながら自分たちで工夫して生活することで、豊かな生活のありがたさや人の優しさを感じ取ることができた。
- 自然の中での体験活動を通して、環境問題についての関心が高まった。
- 全学年での集団生活を通して、それぞれの学年としての役割を自覚し、協力してやり遂げる喜びを感じたり、友人の新たなよさを発見したりすることができた。
今後の課題
- 体験活動の内容によっては、教職員だけでは指導できないことも多く、各機関や団体と密に連携を図り、多くの情報と協力を得られるようにする必要がある。
- 生徒の安全確保のためにもボランティアや保護者の協力を検討する必要がある。