地域間交流推進校 【高等学校・職場・職業・就業に関わる体験活動】 「勤労観・職業観の育成」を重視した体験活動 青森県立十和田西(とわだにし)高等学校

学校の概要
  1. 学校規模
    • 学級数:6学級
    • 生徒数:210人
    • 教職員数:27人
    • 活動の対象学年:観光科3学年37人
  2. 体験活動の観点などからみた学校環境
    • 各学年、普通科1クラス(大学進学)と観光科1クラス(資格取得)の2クラスからなる小規模校である。
    • 本校の位置する十和田湖町にあっては十和田八幡平国立公園をはじめとする自然的観光資源を核として形成されてきた観光関連産業が発達している。
    • 近年の社会経済情勢にともないこの地区の観光関連産業からの求人も激減している。
  3. 連絡先
    • 〒034‐0302
        青森県上北郡十和田湖町大字沢田字下洗53番地3号
    • 電話:0176‐73‐2929
    • FAX:0176‐73‐2323
    • ホームページ:青森県立十和田西(とわだにし)高等学校
    • 電子メール:towadanishi-h@asn.ed.jp
体験活動の概要
  1. 活動のねらい
    新設事項
    • 職業への適性や将来設計について考える機会を与え、職業意識の育成を促進
    • 交流地域と地元の文化や産業の差異を体得し、広い視野で現在の自分と実社会との関係について認識を深める
    継続事項
    • 学習意欲の喚起と社会や経済の変化に主体的に対応できる基本的な資質の育成
    • 社会の進展に対応できる実践的なコミュニケーション能力の重視
  2. 活動内容と教育課程上の位置付け
    (単位時間数・日数)
    • 上級救命講習会
        課題研究(4時間かける2日)
    • 体験型観光施設スタッフ体験
        「伝統工芸・南部裂織り」
        課題研究(2時間かける2グループ)
    • シティホテル・お土産店スタッフ体験
        課題研究(1泊2日)
    • 秋田県小坂町での観光施設業務体験
        小坂高等学校と合同でのイベント参加
        課題研究(1日)(4時間)
    • バスガイド・添乗業務研修体験
        課題研究(1日)

1 活動に関する学校の全体計画

活動のねらい

  近年、本校の就職希望者に対して、社会の国際化・情報化・サービス化等の急速な進展と、産業構造や求人職種の形態の変化に十分対応できているとは言えない面もあった。この社会情勢の大きな変化の中においても、特に観光科で学ぶ生徒が将来に対する明確な展望を持ち、地元の観光産業及び地域振興への貢献を目指す人材の育成にどのように取り組むべきかが課題としてあげられた。
  前年度から、地元(十和田湖町・十和田市)、八戸市、秋田県小坂町の3地域での体験活動を継続的に実施し、それぞれの地域の文化や産業の特徴等を比較検討させる「職場・職業・就業に関わる体験活動」を中心に学習を進めた。その結果、生徒の学習する姿は行動から活動へと徐々に変化が見られていた。生徒はこれまでの活動により、感動する機会が増えたことで確実に変化し成長した。
  しかし、前年度実施後の課題として、1職業選択のきっかけとなる生徒が少ない。2地元のみならず広い視野で社会と自分との関係の認識が希薄である。の2つがあげられる。
  そこで今年度は、昨年度からの主な活動のねらいに加え、1職業への適性や将来設計について考える機会を与え、職業意識の育成を促進する。2交流地域と地元との文化や産業等の差異を体得し、広い視野で現在の自分と実社会との関係について認識を深める。の2つを補足することとした。
  この2つのねらいにも重点を置くことによって、更に自分と社会との関わりに対する理解と認識が深まり、自己の在り方・生き方について考え、主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されると考えた。また、生徒は社会人と接する機会が増えることで、幅広い世代とのコミュニケーションが必要となり、この能力の重要性を理解することも期待し、以下の指導計画を立てた。

全体の指導計画

  対象学年:観光科3学年(37名)
  教育課程上の位置付け:課題研究3年次2単位(総合的な学習の時間に代替できる科目)
  学習内容:産業現場等における実習に関連付けた体験活動

「体験活動の名称」時期・活動場所
  活動内容
期間・日数
  単位時間数
「上級救命講習会」5月上旬・学校内
  • 昨年実施した普通救命講習を更に発展させた学習として、突然の事故等に遭遇した場合、救急車が到着するまでの応急処置を学ぶ。このことで生命の大切さを認識し、ボランティアや職業体験等の万一の場合に備える。
4時間×2日
「体験型観光施設スタッフ体験」7月中旬・十和田市の道の駅
  • 『道の駅・匠工房』で南部裂織りの指導スタッフを模擬的に体験し、指導方法とお客とのコミュニケーションの取り方を学習するとともに、郷土の伝統工芸再興をはかる取り組みを再確認する。
2時間×2グループ
「シティホテル業務体験・おみやげ品店スタッフ体験」8月下旬・シティホテル、物産販売センター
  • 八戸市のシティホテルで、宿泊や接客サービス等の実務に就いて、総合的に体験するとともに、八戸地域の観光施設の現状とその施設での業務を学習する。
1泊2日
「秋田県小坂町での観光施設業務体験・小坂高等学校と合同でのイベント参加」9月上旬・康楽館周辺、交流センターセパーム
  • 小坂町の観光資源や施設等の現状を学び、その施設内での業務を体験するとともに、本校と同じ観光科目を学習している生徒と合同でイベントに取り組み参加することで、青森県と秋田県との観光事業に関わる連携した取り組みを学習する。
1日
  4時間
「バスガイド・添乗業務研修体験」9月中旬・種差海岸
  • バスガイドと添乗業務の内容を取り入れ、実際に八戸市の観光コースを巡りながら、バスの車内・散策コースの双方で実務的な研修体験をするとともに、県立自然公園種差海岸周辺の観光資源について学習する。
1日

2 活動の実際

事前指導

  各体験学習の実施にあたっては、観光科でこれまでも計画的に実施してきた体験活動現場からの特別非常勤講師を活用した授業を事前指導の時間とするとともに、前年度実施の体験学習からの発展的な活動であることを確認させた。
  また、教材等で不足している部分は、科目「観光ビジネス」の授業でパンフレットやインターネットを利用して最新の正確な情報を収集し、自分なりにまとめさせる準備時間として補充した。このことは自ら知識や情報を検索し、正しい内容を取捨選択する能力を育てることにつながった。

活動の展開(一例)

体験活動の名称 「バスガイド・添乗業務研修体験」
活動の場所 種差海岸(バス車中含む)
指導者 バスガイド・旅行代理店職員
活動のねらい 八戸地域の観光資源を学ぶとともに、実践を通して職業意識の育成を促進する
学習活動
  1. 昨年度の実施内容を確認(事前学習)
  2. 添乗業務・バスガイドの実際
  3. 種差海岸周辺の観光名所を散策し、実務研修を体験
  4. 他の生徒の感想から、自分の考えと比較検討(事後学習)
指導上の留意点
  • 昨年の新人研修体験を確認
  • 挨拶から日程等全般の確認
  • 事前調査の検証と危険箇所の確認
  • 学習活動の位置づけに沿って自己評価と相互評価の機会
備考
  • 昨年の反省事項
  • 指導者助言
  • 安全性の確保と緊急連絡網
  • メモの必要性と評価方法の理解

事後指導

  自ら積極的に体験活動に参加できたか、学習活動の位置づけに沿って活動できたかなど必ず自己評価させるとともに、生徒間での相互評価も設定した。その中から今までの自分と比較し、自分自身の成長を確認することが次回に向けてのモチベーションの高揚になると考えた。

3 体験活動の実施体制

学校としての推進体制

  • 現在ある分掌の観光教育推進部を中心に、対象となる学級担任を交えて企画・運営をした。
  • 実施方法
    • 観光教育推進部での受入先確保と候補の選定(前年度まで)
    • 担当者の計画・立案と推進部での検討(1ヶ月~3週間前)
    • 事前学習(3週間前~当日)
    • 自己評価と体験報告・受入先との意見交換(当日~2週間以内)

学校支援委員会の体制

  学校支援委員会には、主な活動地域から3名を学校支援委員として招いた。本委員会は必要に応じて委員を招集し会議を持ち、体験活動の内容・実施場所等について検討し、支援活動をすることとした。体験活動後は新たな課題等に対して意見交換を行い、改善のアドバイスをする。

学校支援委員一覧

勤務先・職名 備考
十和田西高等学校・校長 代表者
十和田西高等学校・教諭 主担当者
十和田西高等学校・教諭 副担当者
十和田湖町役場・観光推進課長 地元
ホテル総支配人 秋田県
バス会社管理部次長 八戸市

配慮事項等

  今年度実施した体験活動については、特に危険を伴う場所での活動がなかったと思われたが万一の場合に備え、活動の最初に「上級救命講習会」を実施し、安全確保の重要性を認識させた。
  また、全生徒が等しく活動できるように次の3点にも考慮した。

  1. 学校行事とのバランスや部活動の大会等を考え、適宜日程の調整をする。
  2. 体験活動等にかかる生徒の自己負担を極力抑えるために創意工夫をする。
  3. 就職・進学の受験にかからぬよう前期(4月~9月)の期間に実施する。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

評価とその工夫

  評価の観点としては、次の2点を中心に実施した。

  1. 「体験活動の設定目標」と「自己の設定目標」にどれだけ到達したかの成果を確認し、目標への到達度を自己評価できるように努めた。
  2. 生徒のまとめ(感想・反省等)が曖昧な自己評価にならないよう「ポートフォリオ」を作成させ、前期の体験学習での成果と成長を表現させた。また、それを利用してのプレゼンティーションにより、生徒間での相互評価ができるようにした。

指導の改善

  当初、計画した主な活動のねらいから外れがちの場面もあったため、次の2点を改善した。

  1. 体験学習した3地域での文化や産業等の違いを比較検討する時間を設定し指導した。
  2. それぞれの体験活動が職業選択のための探求となり、自我の形成の一助となるよう考察する時間を設定し指導した。

5 活動の成果と課題

  今回この活動を実施しているクラスは、真面目だが今までの観光科の生徒と比べても物静かで自分の考えを人前で発言することを苦手とする生徒が多く、1年次から消極的な傾向があると見られがちであった。これまでも観光科では、体験学習や社会人を講師として迎えての授業は実施していたが、この「豊かな体験活動推進事業(地域間交流)」を機会に2年間継続して、集中的に活動する時間を設けることができた。
  その結果として、生徒には活動グループの中でリーダーシップを発揮している者、新たに進路目標に向けての資格取得をめざし主体的に活動する者など積極的な面も増えてきた。生徒の感想の中にも「自分たちで調べ学習したことを実際に現場で体験できたことが、3年間観光科で学んで良かったところである」と達成感や充実感を表し、職業観の意識改革につながっている点が大きな成果としてあげられる。また、このクラスの進路志望調査(9月30日現在)で見れば、37名中、進学18名、就職19名(内公務員6名)で、ほぼ例年並の割合である。進路先内定(10月12日現在)の結果は、公務員を除く就職13名中9名(内3名が県外)が確定しているところである。
  しかし、この地域間交流では地元のみならず広い視野で社会と自分との関係を知る時間として、現在の自分自身のスキルを確認できる活動に重点を置く必要も感じている。現状では、まだ職業選択のきっかけになったと感じる生徒も少ない。更に効率良く効果的な指導をするために、3年間通しての継続的・発展的な体験活動となる計画を立てるため、全ての特別授業等を再度検討する必要も生じているなど解決しなければならない課題も残る。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

-- 登録:平成21年以前 --