地域間交流推進校 【小,中学校・地域間交流に関わる体験活動】 ふるさと再発見-継続的学校間交流をベースにして- 山口県防府(ほうふ)市立野島(のしま)小・中学校

学校の概要
  1. 学校規模
    (小学校)
    • 学級数:2学級(1、3年複式)
    • 児童数:5人
    • 教職員数:4人
    • 活動の対象学年:全学年・5人
    (中学校)
    • 学級数:1学級(2、3年複式)
    • 生徒数:5人
    • 教職員数:4人
    • 活動の対象学年:全学年・5人
  2. 体験活動の観点などから見た学校環境
    • 本校は野島本島を校区としている。
        野島は防府市三田尻港の南東15キロメートルの海上に位置し,瀬戸内海国立公園の一角を占める自然環境豊かな島である。
    • 島の周囲は格好の漁場で,海産物に恵まれ,島の産業の中心も漁業である。
    • 昔から地域と学校が一体となった行事が多く,地域の伝統文化活動に参加したり,授業で地域の人材を活用したりするなど,地域と学校が密接に関わり合っている。
    • 以前から山間部の学校や都市部の大規模校と交流を行っている。
  3. 連絡先
    • 〒747‐0832
        山口県防府市大字野島158番地の1
    • 電話:0835‐34‐1400
    • FAX:0835‐34‐1414
    • ホームページ:野島(のしま)小・中学校
    • 電子メール: noshima1@orange.ocn.ne.jp
体験活動の概要
  1. 活動のねらい
    • 離島野島の豊かな自然に親しみ,自然の中で活動することを通して,ふるさとのよさを実感し,豊かに生きていく知恵やふるさとを愛する心を育てる。
    • 異なる環境や集団での協働生活において,自己を表現する活動や他者を理解する経験を通して,自己を確立したり,他者を思いやる豊かな人間性を育てる。
  2. 活動内容と教育課程上の位置付け
    • 海の体験活動
      • 船からの一本釣り大会(総合的な学習の時間6単位時間)
      • 無人島探検(総合的な学習の時間2単位時間)
      • 伝馬船漕ぎ(総合的な学習の時間2単位時間)
      • 底引き漁体験(総合的な学習の時間2単位時間)
      • ひらめの稚魚放流(総合的な学習の時間2単位時間)
    • 交流体験活動
      • 山間部の柚野中学校との交流(総合的な学習の時間6単位時間)
      • 山間部の東厚小学校との交流(学校行事 6単位時間)
    • 宿泊体験活動
      • 徳地少年自然の家での自然宿泊(1泊2日:総合的な学習の時間 6単位時間,特別活動6単位時間)

1 活動に関する学校の全体計画

(1)活動のねらい

  本校では,以前から,地域の特性を生かして海に囲まれた豊かな自然を活用した「海に関わる体験活動」を教育課程に位置づけて実施している。また,環境の異なる都市部の大規模校や山間部の学校との交流学習も継続的に実施している。
  地域間交流プログラムを企画するにあたり,これまでに実施してきた体験活動や交流学習を地域間交流の視点で見直し,体験活動を豊かなものにしていく方策を探った。
  さらに,本校では相互訪問交流活動を原則として考え,以下の2点の仮説を設定した。

  • 仮説1:受入活動において,自信と誇りを持って自分たちのふるさとや活動を紹介することは,自分たちのふるさとを再認識し,ふるさとを愛する心を育み,自分自身の生き方を見つめることにつながる。
  • 仮説2:地域の環境を有効に活用した豊かな体験活動を経験した児童生徒が,異なる環境・条件の地域で受入校の子どもたちと交流することは,他者を受け入れ尊重する心を育て,コミュニケ-ション能力を伸ばし,豊かな社会性を育むことになる。

  地域に根ざした教育を展開している学校では,地域の特性を生かした特色ある教育活動を展開している。その背景には,地域を愛し,地域を支える人間を育てて欲しいという地域の人々の願いや期待がある。学校はこのような地域の人々に支えられており,教員はそのことを意識して児童生徒を育てようとしている。そのようなとき,環境の異なる学校の児童生徒との交流は,自分の地域の特色を改めて意識する絶好の機会となる。
  地域の環境を有効に活用した豊かな体験活動によって,児童生徒は自分の生活する地域を見る目をもつようになった。さらに,地域の人々の温かさを感じるようになった児童生徒は,他の地域を見る目,他の地域の人々の温かさを感じる心や他の地域の体験活動の魅力や価値を判断する力をもつようになる。そのような児童生徒が,異なる環境で交流校の子どもたちと一緒に体験活動を行うとき,自分たちの地域での活動と比較することや,自分たちが受け入れたときのことを思い出し,相手校の苦労や工夫に目が向くようになる。自らが地元の地域で経験したことがあって,他の地域での交流の楽しさがわかり,価値ある体験活動になると考える。

(2)全体の指導計画

  自分の地域での体験活動を交流地域での活動と関連づけたり,豊かにすることにより,地域間交流体験を豊かな体験とすることができる。そのために,野島小・中学校で以前から行っていた「海に関わる体験活動」を見直し,その意味づけを明らかにして地域間交流活動とのつながりを持たせて年間の指導計画を組んだ。(主要活動のみ掲載)

月日(曜日) 内容 時間 領域 活動場所 指導者
5月6日(木曜日) 自然 無人島(平島)探検 2時間 総合的な学習の時間 野島,平島 地元漁師他2名
6月7日(月曜日) 漁業 ひらめ放流 2時間 総合的な学習の時間 野島,養殖場 漁協職員他4名
6月15日(火曜日) 漁業 底引き体験 2時間 総合的な学習の時間 野島周辺 地元漁師5名
7月13日(火曜日) 交流 柚野中との交流会 6時間 総合的な学習の時間 野島つぐみ浜 野島小中・柚野中教員
9月16日(木曜日) 自然 伝馬船漕ぎ 2時間 総合的な学習の時間 野島,湾内 地元漁師1名
11月6日(土曜日) 交流 東厚小との交流会 6時間 行事 厚東小学校 受入地域教諭
3月14日(月曜日) 自然 野島島内散策 2時間 理科・社会 野島本島全域 地域住人

  年間合計:交流6日(全26時間) 自然に関わる活動7日(全14時間)

2 活動の実際

(1)事前指導

  はじめに総合的な学習の時間で身に付けてほしい力を説明し,さらに自分で課題を見つけることの大切さを指導した。
  そこで,課題設定のために,「平島探検」「野外活動」「伝馬船漕ぎ」などのこれまで行っていた海の体験活動や昨年度の柚野中交流会で行った「筏作り」などの活動に,新たな活動を加えて交流会を盛り上げていくことはできないか,野島ならではの活動はなにか,という視点で話し合いを進めさせた。また,わからないこと,調べたいことがあったときの解決方法として,地域の人に聞くことやインターネット,書籍などを活用することについても再指導した。さらに,柚野中の人へ電話やファックスをする時の留意点も確認した。

(2)活動の展開

  桟橋に出迎え,歓迎会では簡単なゲーム活動をして,交流活動を行った。

【活動1:午前】『特産素材を使った料理コンテスト』(昼食・後片付けを含む)

  限られた時間で特産素材を工夫してオリジナル料理を作る。

  1. じゃんけんにより特産素材を入手
      野島の特産素材:サザエ・アワビ・エソ・えび
      柚野の特産素材:こんにゃく・長いも・みそ・しいたけ
  2. 特産素材と各班にあらかじめ与えられた食材を使って,班で話し合いながら工夫して料理
    料理コンテストの写真

【活動2:午後】『いかだ作り』

  限られた時間に限られた材料を使い,5人で協力し,工夫していかだを作る。

  1. いかだ作り
      審査員は『チームワーク』『いかだの工夫(形・飾りつけなど)』という観点で審査を行う。
  2. レース
      各班で製作したいかだでレースを行う。2班ずつレースを行う。
      いかだ作りの写真

(3)事後指導

  茜島(野島)交流会で学んだことを自己評価させるとともに,交流校の友だちに体験を通しての感想を手紙として送った。さらに,当日の活動の様子をビデオ番組として編集し,地域文化祭で発表した。
  また,児童生徒同士の他者評価表にも累積的な評価を追加すると同時に,自分たちのふるさとのよさについて再評価させた。

3 体験活動の実施体制

(1)学校支援委員会

  学校間交流が継続的に行われ,伝統的な活動として位置づけられている。そのため交流校の委員との打ち合わせも,年間計画の段階での確認さえすれば,後は学校間の実務レベルでの打ち合わせで実施する体制が整っている。
  また,本校には,従来から「茜島シーサイドスクール事業を支援する会」という組織があり,海の体験活動等を行う場合には,その講師等を引き受けていただいている。本交流会でも,安全面での監視といった裏方で多くの協力をいただいた。

(2)地域間交流プログラム開発委員会との連携

  本年度当初の会合で,ビデオによる野島小・中学校の昨年度の活動状況の報告と本年度計画を委員に説明している。さらに,茜島交流会については,委員全員の半日間の視察を行った。

(3)配慮事項

  海での活動が中心になることから,普通救命講習会を学校で開催し,児童生徒全員と全教職員,保護者や地域の方が受講し修了証を得ている。また,午後の活動の「筏つくり」と「レース」では,児童生徒全員にライフジャケットを着用させた。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

  • (1)活動報告では,よかった点や使えた言葉等を評価カードに記入し,教室に掲示する。評価カードは,「使えた言葉」「発表の仕方」「書き方」「進め方」「思いやり」という観点で色分けする。(交流会実施まで)
  • (2)保護者・関係者に,活動中の児童生徒への一言メッセージを付箋紙に書いてもらい,各児童生徒に渡す。(交流会当日)
  • (3)当日の活動の様子を観察し,終了後,「コミュニケ-ション能力」「活動への意欲」「協働の態度」「思いやりの態度や言動」等の観点で自由記述する。(事後評価)

5 地域間交流の成果と課題

  継続的に行われてきた学校間交流を,地域間交流という視点で再点検し,従来行ってきた交流地域の「自然やもの」中心の交流を,昨年度から「人」中心の活動へと計画を変更したことで,目標の明確化ができた。さらに,本活動を通し児童生徒が地域に出かけることが増し,新たな協力者が開発できた。本校児童生徒がもつ共通の課題でもあるコミュニケーション能力の育成については,個々により差があるものの,自分なりに他者との意思の疎通を積極的に図ろうとする姿が見られ,大きな成果を得た。また,児童生徒が自分たちのふるさとの自然・人・ものを再発見する機会がたくさんできたことも大きな成果である。
  課題としては,学校間交流活動を進める場合,自然を活用した活動があるため,天候を考慮しないと計画が立てられないことがある。さらに,学校間交流を進める場合,人と人との交流を中心に考えると,規模の同じ学校との交流が必要になる。しかし,近年の少子化,過疎化,市町村合併等々の影響で,本校でも交流校の選定が難しくなってきている。来年度は,本校が交流校に出向く番である。本年度の活動を終えた時点で,交流校の児童生徒は来年度の交流の計画を考え始めているようである。最後に,茜島交流会を視察されたプログラム開発委員の感想を掲載する。「私が参観させていただいて一番の気づきは,私自身が青年会議所活動の中で推進しております『PTCA(PTAに「コミュニティ(地域社会)」を加えたもの)』がこの場にしっかりとあったことです。へき地等イメージ的には田舎というニュアンスを与える言葉ですが,戦後日本の一番必要な部分を捨ててしまった地域学習力,地域教育力を本交流プログラムで見ることができました。」

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

-- 登録:平成21年以前 --