地域間交流推進校 【小学校・地域間交流に関わる体験活動】 学ぶ楽しさを味わう交流体験活動の創造 -異なる環境における豊かな体験活動の促進- 鹿児島県鹿児島(かごしま)市立西田(にしだ)小学校
学校の概要
- 学校規模
- 学級数:16学級
- 児童数:462人
- 教職員数:31人
- 活動の対象学年: 5年生(70人)
6年生(91人)
- 体験活動の観点などから見た学校環境
- 校区は鹿児島市の中心部にあり,甲突川と武岡,常盤の森の間に位置し,九州新幹線が開通した鹿児島中央駅も近く住宅街として発展を続けている。
- 住宅街に位置する学校ながら,730平方メートルの農園を所有していることを生かし,農作物の栽培に取り組んできている。
- 連絡先
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体験活動の概要
- 活動のねらい
- 農作物の栽培体験活動を通して,身近な自然や社会・地域と関わり,自ら課題を見つけ主体的・創造的に問題を解決することができる。
- 心の底から伝えたくなるような出会いや環境との関わりを通して,表現する楽しさを味わわせ,子どもたちの「伝え合う力」の育成を図る。
- 地域と交わり,地域で学ぶ学習を通して自然の不思議さや,素晴らしさを感じ取らせ,子どもたちに「ふるさと意識」をつくっていきたい。
- 活動内容と教育課程上の位置付け
(単位時間・日数)
- 市来町での農業体験活動(5年生)…12時間・2日
(総合的な学習の時間・・・全65時間)
- 高田村つくり委員会や高田小学校との農業体験と交流学習(6年生)…6時間・1日)
(総合的な学習の時間・・・全65時間)
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1 活動に関する学校の全体計画
活動のねらい
(1)体験的活動を重視した「総合的な学習の時間」…(食と農に関する教育)
農作物栽培を通して,身近な食に関することに興味・関心を広げ,農作物生産の喜びや苦労を味わい,農業生産に関わる地域や学校との交流を通して,食糧の自給問題・自然や環境の問題に気付き,主体的・創造的に問題を解決し,自らの生活について考え,より豊かに生きていく力を育むことをねらいとしている。
(2)今年度の地域間交流学習のねらい
【5年生】
- 市来町でポンカンの有機栽培に取り組む橋口農園でのぼかし肥作りや,収穫体験を通して,有機農業に取り組む人々の思いや願いを学び,自らの生産活動に生かし,食の安全性や環境問題など自分たちの食生活について考えるきっかけとする。
【6年生】
- 川辺町の高田村づくり委員会との農業体験交流(酪農体験・冬野菜の植え付け・さつまいもの収穫)を通して,生産農家の知恵や思いを学び,日本の食糧生産について考えるきっかけとする。
- 高田小学校での大豆の収穫体験を通して,大豆栽培に関する情報を交換し,コミュニケーション能力の育成を図る。
- 異なる環境にある地域を学ぶ活動を通して,自分たちの住む地域を見つめ,郷土の理解を深める。
全体の指導計画
(1)活動の名称
フェニックスタイム…「総合的な学習の時間」の名称
(2)実施学年
5年生「めざせ有機農業」 6年生「一粒の大豆から」
5年生「めざせ有機農業」 |
6年生「一粒の大豆から」 |
(3)活動内容
有機農業に取り組み,自分たちで土作りや育て方を調べ,試行錯誤しながら野菜を作る活動を通して苦労や喜びを味わうとともに,課題や問題に気付き,意欲的に追究し,学んだことを相手を意識しながら表現する。 さらに,食の安全性や環境の問題など自分たちの身近な食生活について考える学習活動を展開する。 |
(3)活動内容
日本食に欠かすことのできない大豆を育て,加工する活動を通して,自分の思いや願いに応じて必要な情報を収集・選択し,伝える相手を意識しながらまとめ,表現する。 さらに,日本の食文化の知恵,食糧問題等にまで視野を広げ,今後の自分の食生活を見直し,大切にしていこうとする学習活動を展開する。 |
(4)教育課程上の位置付け
地域間交流学習…12時間(2日) 「総合的な学習の時間」…60時間 |
(4)教育課程上の位置付け
地域間交流学習…6時間(1日) 「総合的な学習の時間」…60時間 |
(5)期間 7月…農業体験(ぼかし肥作り・有機野菜の見分け方・農園の見学)12月…農業体験(ポンカンの収穫・有機米のおにぎり作り・新農園の石ころ拾い) |
(5)期間
11月…農業体験(酪農体験・冬野菜の植え付け・さつまいもの収穫) 11月…高田小学校との交流(大豆の収穫) |
2 活動の実際
(1)5年生での事例
1 事前指導
有機栽培や一般的に行われている栽培方法について調べると同時に,自分たちの農園では,どのような方法で野菜を栽培するのか話し合った。一般的に行われている栽培方法と有機栽培について長所と短所を比較しながら話し合ったが結論はでなかった。そのため,子どもたちにとって馴染みの薄い有機栽培の生産農家に話を聞き,自分たちの栽培方法を決定することを提案し,今回の交流学習を計画した。
2 活動の展開
- ア 活動場所…市来町内の農園
- イ 活動の実際 7月14日(水曜日)
3.事後指導
地域間交流学習後,子どもたちは,集めた情報を基に自分たちの力だけで大根を栽培している。栽培しながら播種の仕方や病害虫の予防などの課題にぶつかり,農家の方からのアドバイスを求める声が聞こえるようになってきた。また,今年は,ポンカンを栽培する橋口さんが,これまでになく台風の災害を受けたたことを知り,子どもたちは再度訪問して農園の様子を知りたいという思いも高まり,2回目の交流学習を12月20日に実施することになった。
(2)6年生での事例
1 事前指導
西田小学校とは環境の異なる農村地域で育てられた大豆と自分たちで栽培した大豆とを比較しながら体験学習を進めることにした。また,昨年度の交流学習の反省から大豆の収穫や脱穀の体験だけではなく,他の農業体験を活動に組み込むことで,農業に対する関心や体験活動への意欲を喚起するのではないかと考え,今回の交流学習を計画した。
2 活動の展開
- ア 活動場所…川辺町高田(高田小学校)
- イ指導者…高田村づくり委員会,高田小職員,高田小児童(4~6年生)
- ウ 活動の実際 11月17日(水曜日)
3 事後指導
地域間交流学習後,高田小の子どもたちと交流しながら学んだ方法を生かしながら,学校農園の大豆を収穫した。作業を進めながら大豆の生育状況など違いに気付き,何が違うのか新たな課題を見つけることができた。
(3)その他の交流活動 6年生
修学旅行…熊本市内の史跡や施設を自主学習という形で見学する。その際,熊本コンベンションセンターに協力を依頼し,ボランティアガイド10人の方々とともに楽しく交流しながら学習することができた。
3 体験活動の実施体制
(1)学校支援委員会の体制
今年度は,学校支援委員会に「総合的な学習の時間」における「食と農に関する教育」の更なる推進を図っていくために,継続交流ができる受け入れ地域の選定についても協力を求めた。また,全教育活動の中から社会体験・自然体験・奉仕体験など様々な体験活動について見直し,より豊かな体験活動とするための指導助言を受けた。
【学校支援委員会のメンバー】
- 県農業改良普及センター・有機農業生産組合・鹿児島農政事務所・校区公民館運営審議会会長・PTA副会長・漆間種苗
(2)配慮事項
- 交流学習中の安全を配慮し,一日保険を利用した。
- 現地での安全を確保するために,交流先近くの病院等を調べ緊急用の連絡網を作成した。
- 交流先で打ち合わせを行い,子どもたちに交流先と相互情報交換をすることで学習への意欲を高めた。
4 体験活動の評価の工夫と指導の改善
(1)評価の工夫
- 子どもたちが,体験ごとに活動を振り返り,作文に表しファイルしていく。
- 学習活動の内容を振り返り「今日の学び」は何だったのかを明確にし,次の活動への見通しを持たせる。
- ウェビング法を課題発見の手立てだけでなく,これまでの学びを関連付けることで,個人の学びを評価することに用いる。
(2)指導の改善
- 体験活動が子どもたちの必要感に基づくものとなるように指導計画を工夫する。
- 子どもたちの活動に柔軟に対応できるように指導計画にゆとりを持たせる。
5 体験活動の成果と課題
(1)成果
- 心の底から伝えたくなるような感動体験が,子どもたちの課題追究の原動力となったり,他教科の学習内容(作文や図画工作の作品)にも生かされたりした。
- 交流学習を通して,友達と協力して活動を進めることで友達や自分のよさに気付き,人との関わりを多く経験することで感謝の心を育むことができた。
- 交流地域で打ち合わせを行うことで,人々の思いを肌で感じ教師自身の研修となった。
(2)課題
- 体験活動を通した子どもたちの変容等に関わる評価をより明確なものとできるよう工夫する必要がある。
- 子どもたちの体験を他教科でも生かせるように指導計画の見直しを図る。
- 今後も継続可能で有意義な体験活動となるように関係機関との連携を深める。