推進地域・推進校 【高等学校・交流に関わる体験活動】 嘉穂中央ふれあい体験交流事業 福岡県立嘉穂中央高等学校

学校の概要
  1. 学校規模
    • 学級数:13学級
    • 生徒数:496人
    • 職員数:63人
    • 活動の対象学年: 1年生160名
      3年生32名
  2. 体験活動の観点などからみた学校環境
    • 人口82,000人の商業を中心産業とした市にある。最近、JR篠栗線の電化、バイパスの開通で宅地化が進みつつある。
    • 周辺には自然が多く残り、祭など伝統行事なども受け継がれているが、学校の調査では、徐々に生徒の参加が減少している。
    • 最近、様々な自然体験が見直され市全体で地域づくりや教育の在り方を見直し、協力しようとする雰囲気が高まりつつある。
  3. 連絡先
体験活動の概要
  1. 活動のねらい
    • ボランティア活動で学んだ他者との共生及び環境美化の精神を、日常生活に生かそうとする態度を身に付ける。さらに生命の尊さについて理解させる。
    • 日頃の学習成果を発表する場として、小学生への野菜栽培指導を行い、生徒の学習意欲の向上を図る。
    • 地域の幼稚園・保育園児、小学生、中学生との交流を通して人間性や社会性を育む。
  2. 活動内容と教育課程上の位置付け
    (単位時間数・日数)
    • 交流体験活動
      「総合実習」22単位時間
      「課題研究」23単位時間
    • ボランティア体験活動
      「総合的な学習の時間」8単位時間

1 体験活動に関する学校の全体計画

(1)活動のねらい

  ボランティア体験活動では、中学校・高等学校の生徒が草花植栽・除草の共同作業を行うことにより、生徒の交流を促進し、植物栽培を通して生命の尊さについて学習する。さらに、地域住民と共同で地域の環境美化に貢献することによって、生徒のセルフイメージと地域愛の高揚を図る。交流体験活動では、野菜栽培、収穫体験を本校の授業内容と連動させ、異校種間交流を通して日頃の学習成果を発表する場として位置付ける。また、教師の補助を最小限にし、生徒の自主性を重視して学習意欲の向上と、人に頼らず相手の気持ちを理解して物事に適切に対処できる能力を養う。
  上記の異校種間の体験活動全般を通して、心豊かな人間の育成を図る。

(2)全体の指導計画

ア 活動の名称

  嘉穂中央高校ふれあい体験交流事業

イ 実施学年

  • 第1学年 160名
  • 農業技術科3年 32名

ウ 活動内容

  • 小学生への夏野菜・秋野菜及びイネ栽培指導
  • 保育園・幼稚園児・小学生との交流活動
  • 中学生との合同によるボランティア交流活動

エ 教育課程上の位置付け

  • 野菜・イネ栽培指導 ・・・「総合実習」
  • 交流活動 ・・・「課題研究」
  • ボランティア交流活動 ・・・「総合的な学習の時間」

オ 具体的活動計画

(ア)小学生への夏野菜・秋野菜及びイネ栽培指導
  • 活動時間 「総合実習」
  • 対象 小学2、5年生
  • 活動計画(合計配当時間:22時間)
活動内容 配当時間 場所
5 夏野菜栽培(種まき、定植、支柱立て) 4時間 稲築西小学校
6 サツマイモ栽培(苗植え) 2時間 嘉穂中央高校
イネ栽培(田植え) 2時間 嘉穂中央高校
7 夏野菜栽培(誘引、収穫) 2時間 稲築西小学校
9 秋野菜栽培(種まき) 2時間 稲築西小学校
10 秋野菜栽培(除草・中耕・追肥・間引き) 2時間 稲築西小学校
サツマイモ栽培(収穫)、体験(ポニー乗馬) 4時間 嘉穂中央高校
イネ栽培(稲刈り) 2時間 嘉穂中央高校
12 秋野菜栽培(収穫・ちゃんこ料理) 2時間 嘉穂中央高校
(イ)交流活動
  • 活動時間「課題研究」
  • 対象 幼稚園・保育園児
  • 活動計画(合計配当時間:23時間)
活動内容 配当時間 場所
5 畑作り 2時間 近大幼稚園
6 サツマイモ苗植え 2時間 近大幼稚園
ジャガイモ掘り 2時間 嘉穂中央高校
農場見学 1時間 嘉穂中央高校
サツマイモ苗植え 2時間 嘉穂中央高校
7 保育園訪問 2時間 常葉保育園
10 サツマイモ堀り 6時間 嘉穂中央高校
11 サツマイモ堀り 2時間 嘉穂中央高校
12 保育園訪問 2時間 常葉保育園
12 幼稚園訪問 2時間 近大幼稚園
(ウ)ボランティア交流活動
  • 活動時間 「総合的な学習の時間」
  • 対象 中学1年生
  • 活動計画(合計配当時間:8時間)
活動内容 配当時間 場所
12 草花栽培(事前指導) 1時間 嘉穂中央高校
草花栽培(定植、品種:ポピー) 3時間 飯塚中の島
3 花壇管理(事前指導) 1時間 嘉穂中央高校
花壇管理(中耕・除草・追肥) 3時間 飯塚中の島

2 活動の実際

(1)事前指導

  小学生への野菜・イネ栽培指導では、生徒は2年次に実際に栽培しているため、再度、各野菜・イネの栽培方法をプリント等で復習し、栽培の要点や栽培指導計画について具体的に説明を行った。また野菜栽培指導では、指導の全般をすべて生徒自身の活動とし、教師は指導には入らないことを伝えた。教師を頼らず、生徒各人の自主性と日頃の学習成果を発揮する場として、生徒たちが自ら工夫しながら栽培指導を行うことを確認した。
  幼稚園・保育園児との交流体験活動では、生徒たちに年間の交流計画を立てさせ、必要な事前準備の計画を入念に行った。さらに、学校内の施設・農場の紹介ができるように農場配置図を作成した。
  中学生とのボランティア交流活動では、ポピー栽培の目的・方法、現地への経路、注意事項、中学生との交流の目的、さらには活動場所である公園の歴史についての事前指導を徹底した。

(2)活動の展開

  年度当初(4月)に保育園・幼稚園、小学校及び中学校の担任団と実施の大まかな年間計画を作成し、交流活動に必要な準備等の確認を行った。実施直前には、事前準備、交流内容及び作業内容等の細かい打ち合わせを行い、特に、屋外で行う野菜栽培やイネ栽培では、実施に向けて天候が大きく左右するため、当日まで連絡を取り合って実施の判断をした。

  小学校での野菜栽培指導の写真  幼稚園・保育園児との交流の写真  中学生とのボランティア交流の写真

(3)事後指導

  交流体験活動後、感想文を提出させ、生徒が様々な体験をどう受けとめ、どう感じたか把握した。今後、より良い体験活動をしていくために、実施の目的と生徒の思いが重なっているかを掌握し、次回の実施に向けて工夫・改善することとした。
  また、保育園・幼稚園児、小学生、中学生から頂いたお礼の手紙等を生徒に紹介し、交流活動の必要性とその効果を生徒に再認識させた。

3 体験活動の実施体制

(1)学校支援委員会の体制

  本校では、平成10年度から様々な体験活動を積極的に行っており、その反省から、本年度の研究目標の一つを校内推進体制の確立とし、全職員が様々な体験活動に協力できる体制づくりを行った。その結果、これまでの一部職員による体験活動の実施体制は大幅に改善された。具体的には企画委員の学科主任・学年主任を中心に据えて実施計画案を作成し、学科や学年を主体にした体験活動を実施することができた。
  また、PTA会長、同窓会長、市役所都市計画課長の三者に依頼して学校支援委員会を構成し、活動計画時に関係各方面への協力助言や、実際に外部講師として参加し、指導していただいた。

(2)留意事項等

  交流体験では、比較的移動が容易な距離にある高等学校周辺の幼稚園、保育園、小学校、中学校と連携した。特に、小学校との野菜栽培交流体験活動では小学校内に畑があり、栽培全般を通して、小学生が管理できることを条件として連携を行った。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

  実施後、実習日誌の提出と感想文を提出させ、最後に1年間のまとめを行って、自己採点させた。特に今回、本校の授業内容と連動させ、日頃の学習成果を試す場として捉え、交流時は可能な限り生徒の自主性に任せ、教員の指導助言を極力控えた。

5 活動の成果と課題

(1)成果

  交流体験終了後の感想文では、生徒は学校で学んだ専門知識や技術をどうやって相手に教えるか、またどうやったら理解してもらえるかなどの「教える難しさ」と「交流の大切さ」を学んだ。しかし、自分たちで悩み、工夫しながらコミュニケーションを図っていく中で「笑顔の大切さ」を知り、「協力しながら作業する必要性・楽しさ」を実感し、それを実行して成し得た「達成感」や「充実感」は生徒にとって、貴重な財産になったと考えられる。
  また、野菜栽培指導のなかで、おもしろ半分に苗をひっぱている児童に「そんなことをしたら、苗が枯れてしまうよ。野菜の苗も生きているから、枯れるということは死ぬということだよ」と説明している姿を見て、生命の尊さについての指導が自然に行われており、野菜栽培を通した交流体験活動の重要性を再認識した。

(2)課題

ア 体験活動が天候に左右される

  本校が実施している体験活動は屋外(農場)で実施する場合がほとんどで、雨が降れば延期または中止せざるを得ない。特に小学校や中学校との交流では延期した場合の日程調整が非常に難しい。また、栽培作物も作業の適期があり、実施日がずれると作物の生長に影響を及ぼすので、当日の朝まで実施の判断を延ばすなど対応に苦慮した。

イ 交流体験の実施時数

  専門高校の教育目標の一つに、「将来のスペシャリストとして必要な基礎的・基本的な知識と技術の習得」があり、基礎・基本の上に様々な専門知識を習得するという目標がある。その中で、体験活動を通して交流を行うことは教育的に意義深い。さらに専門深化をするためには、専門的な学習の時間を確保しつつ、交流活動の時間を充実させていく必要がある。そのために、学校の教育活動全体の視点から交流体験活動の実施時間数について考えていきたい。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

-- 登録:平成21年以前 --