推進地域・推進校 【高等学校・交流に関わる体験活動】 学習の深化と思いやりのある心を育ませる交流体験活動 長野県富士見高等学校
学校の概要
- 学校規模
- 学級数:12学級
- 生徒数:405人
- 教職員数:54人
- 活動の対象学年:主に3年生33人
- 体験活動の観点などからみた学校環境
- 山梨県境の長野県の東南に位置し、標高約1,000メートルを中心とした自然豊かな地域である。
- 花卉・酪農・米等の農業地帯であるが、都心から高速道路で約2時間、JRで約1時間半ということもあり大企業も存在し、都内や他の場所から居を持つ人々が多くある。
- 学校に隣接して保育園や福祉施設、半径数百メートルのところに小・中・養護学校がある。
- 高校生は非農家出身者が多く、また、地域の子ども達は農家出身者もいるが農業体験をしている子どもは多くない。
- 連絡先
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体験活動の概要
- 活動のねらい
- 他者に自らが体験し身につけたことを教えることで日頃の学習の深化を図り、さらに新しい自分の発見を目指す。
- 日頃と違った学習形態の中から生徒の個性を見いだし伸ばす。
- 異年齢(特に年少者)と接することでコミュニケーションの力を育て、大切にする心を育てる。
- 同じ社会の形成者としての理解や受容する気持ち、障害者に対して正しい認識を持って接する態度を養う。
- 活動内容と教育課程上の位置付け
- 小学生野菜・草花の栽培交流体験活動
科目「野菜」「草花」各14単位時間
- 保育園児栽培及び花壇づくり体験活動
科目「生物活用」8単位時間
- 養護学校生徒栽培菓子づくり体験活動
科目「総合実習」8単位時間
- 河川浄化活動
農業クラブ専門班活動 10時間以上
- 地域探索
1学年 10時間
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1 活動に関する学校の全体計画
活動のねらい
- 交流においては、これまでの活動がまだ教師に依存するところがあったが、上級生の活動を見、定着してきたことから、対象の子ども達がよりわかりやすく楽しく参加できるように考え工夫するようになってきた。今年度は事前準備を充実させ、生徒がより主体的に活動できるようにする。
- 河川浄化活動においては、過去の成果の継承でなく、他機関との連携を生かして化学的な検証をし、取り組みの意義をより明確にしながら主体的に活動できるようにする。
全体の指導計画
科目授業での活動においては、活動の実施より前に自らが学習していなくてはならない。したがって、当該学年の学習は当然であるが、1、2年での関連科目での学習においても活動について触れて、意識させるようにする。
学年 |
体験活動の種類・内容 |
期間・日数 単位時間数 |
教育課程 位置付け |
活動場所 |
活動対象 |
指導者 |
3年 |
富士見小学校児童との交流
- 野菜や草花を通して土に触れ、育てることの大切さを知る。
- 小学校の花壇を一緒につくる。
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5~11月
6日 14時間 |
科目授業 |
本校 |
ダイコン
ニンジン シクラメン他草花 |
科職員 小学校職員 |
3年 |
富士見保育園児との交流
- 園庭の花壇づくり交流
- 農場でのサツマイモの栽培交流焼きいも会
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5~10月
4日 8時間 |
科目授業 |
富士見保育園 本校 |
花壇用草花 サツマイモ |
科職員 保育士 |
3年 |
養護学校との交流 トウモロコシの栽培・収穫やクッキーづくりを通しての交流。 |
5~2月
4日 8時間 |
科目授業 |
諏訪養護学校 |
トウモロコシ 小麦 |
科職員 養護学校職員 |
2、3年 |
河川浄化活動木炭を製造して水質浄化とホタルの復活に取り組む |
4~11月
4日 12時間 |
特別活動 |
富士見町内の河川 |
川の生物 河川 |
名取指導員科職員 |
1年 |
地域探索 富士見町の自然や文化について講話や校外での体験的学習 |
11~2月
2日 10時間 |
特別活動 |
本校 町内 |
文化史跡
植物 山林 |
外部講師 |
2 活動の実際
(1)小学生との野菜・草花の栽培学習交流
1 事前指導
- 前年度の活動の様子をビデオで観て雰囲気を感じる。
- 授業(実習)で播種の方法や植え替えを行う際、どのようにしたら初めて経験する子ども達がわかってできるか考えさせ意識させる。秤の読み方など小学生の学習進度にも触れる。
- より主体的に活動できるように、楽しく興味を持って学習ができるようにするにはどうしたらよいか考えさせ準備をする。
2 活動の展開
- 活動場所:富士見高校園芸科農場
- 生徒・児童の人数:生徒 野菜選択者17名、草花選択者16名。児童 小学3年生86名
- 指導者:園芸科職員、富士見小学校3学年担任
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実施時期 |
時間 |
活動の内容 |
第1、2回 |
7月中旬 |
各日とも2時間 |
- ◎野菜「ダイコンとニンジンの播種」
- 畑・交流の準備
- はじめの会
- 生徒説明
- 高校生と小学生がグループになり高校生が指導しながら播種
- 終わりの会
- ◎草花「シクラメンの鉢替え」
- 鉢替え・交流の準備
- はじめの会
- 生徒説明
- シクラメンの用土配合・鉢替えをグループに分かれて高校生が指導しながら行う。
- 終わりの会
※野菜と草花の両方を体験できるように2回実施。 |
第3、4回 |
9月中旬 |
各日とも2時間 |
日程は第1回と同じ
- ◎野菜「ダイコンの収穫」ダイコンを収穫、用意した秤で重さを計る。
- ◎草花「シクラメンの管理。枯葉取りと葉組み」
各自のシクラメンの枯葉を取ったりして管理。切り花の収穫。
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第5回 |
10月下旬 |
2時間 |
前半は第1回と同じであるが途中で入れ替わって体験する
- ◎野菜「ニンジンの収穫」
- ◎草花「シクラメンの仕上げ管理」
- ◎後半は全体で「収穫祝」
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3 事後指導
- 各回の終了時に感想の発表や次回への工夫点を出す。全体が終了した時点で活動の振り返りをする。体験してみての感想だけでなく、学習の深化はできたか、どう接することができたかや、体験を通して自分自身について新しい発見や成長した部分を考えさせる。
図:やりやすいようにしたり、目の高さに下がってあげられた
図: 害虫さがし 小さな害虫だが小学生はすぐに発見する
(2)河川浄化・ホタル復活への取り組み
1.事前指導
- 木炭の製造について理論と実践を行う。
- 木炭の効用について学習する。
- 水質の指標生物について調べ学習を行い、水生生物による水質判断について学ぶ。
- ホタルの生態について調べ、ホタル復活にはどのような取り組みをすればよいか考える。
2.活動の展開 農業クラブ専門班(環境保護会)の活動
回 |
実施日 |
時間 |
人数 |
活動内容 |
指導 |
1回 |
6月中旬 |
2時間 |
生徒16名 児童50名 |
- 河川清掃
小学生と一緒に河川清掃を行う。
- 環境教室
小学生に対して河川浄化のミニ学習会。
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園芸科職員 |
2回 |
6月下旬 |
2時間 |
生徒16名 児童30名 |
- 学校せせらぎ園の水質浄化 高校でつくった木炭を入れ替える。
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3回 |
9月中旬 |
2時間 |
生徒16名 |
- 木炭による河川浄化実験 製作した木炭を河川に沈め、水質浄化実験をすすめる。
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4回 |
2月下旬 |
2時間 |
生徒16名 |
- ホタル復活への取り組み(1)
ホタルの生態について、ホタル研究家を招き学習会。
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指導員 |
5回 |
3月下旬 |
2時間 |
生徒8名 |
- ホタル復活への取り組み(2)
越冬状況を現場で指導を受け生息の実態を調査する。
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3.事後指導
- 河川について小学生がどのようなことに興味を持ったか考え、今後の環境保護活動の普及について検討した。
- 木炭による河川浄化について校外で発表したところ、信州大学名誉教授より河川の水質調査についてアドバイスをいただき、連携することになった。
3 体験活動の実施体制
学校支援委員会の体制
教頭・農場主任を中心に園芸科職員で推進。各学校との連携がしやすいように教頭や園長に支援していただいている。
富士見町教育委員会 |
教育長 |
富士見小学校 |
教頭 |
諏訪養護学校 |
教頭 |
ホタル研究家 |
町役員 |
富士見保育園 |
園長 |
配慮事項等
農場での安全確保は、担当職員が全体の動きに注意を払い、各活動の安全については各担当生徒が配慮するよう事前指導。特に7月実施については、圃場の水道が井水であるため注意した。
4 体験活動の評価の工夫と指導の改善
- 自己評価や感想、自分自身への気づきや発見をまとめた。活動時は、回を重ねることで取り組みの姿勢や指導の工夫が見られるか、どんな声がけができているかを中心に観察した。
- 活動終了時に反省と次回の展開について話し合った。
5 活動の成果と課題
活動の成果
- 日頃の学習や事前準備が前向きに取り組めるようになり、活動の中で臨機応変に対応する力もついてきた。また、自分たちが教えることはものの栽培だけでなく、準備や片づけもあることに気づき、自分たちの活動を振り返ることができるようになったりした。
- 一緒に活動する中で、理解できる言葉の違いを感じ、言葉がけの工夫をする姿が見られたり、年少者のためか緊張することなく積極的にできるようになり、主体性が見られた。
- クラスでの様子やこれまでの学習活動の中では見られない生徒の表情や行動が見られた。
- 実践的な活動が活かされ、子どもたちに臆することなく活動ができていた。一人ひとり関わり方に違いはあるが、どの生徒も優しく声がけができ、よく話が聞けていた。
- 環境に対して子どもたちに説明したり活動に係わる中で、さらに環境問題に興味を持ち、その後の取り組みが積極的になっていった。
課題
- 個々に関わるときの取り組みに比べて、そうでないときは代表者に任せきりという姿勢が見られた。全体でどのように関われるか考えなくてはならない。
- 具体的、計画的な評価方法をさらに工夫し、指導改善に役立てる。