推進地域・推進校 【中学校・人間関係づくりに関わる体験活動】 3年間を通じての園児交流-コミュニケーション活動の一環として- 鳥取県境港(さかいみなと)市立第一(だいいち)中学校

学校の概要

  1. 学校規模
    • 学級数:14学級(内障害児学級3学級)
    • 生徒数:381人
    • 教職員数:27人
    • 活動の対象学年:2年生・124人
  2. 体験活動の観点などからみた学校環境
    • 人口約4万人の都市に所在する。古くから港を中心に発展し,恵まれた水産資源を背景に漁業や食品加工がさかんである。近年は貿易港としても賑わいを見せている。
    • 市街地に所在するため,校区内には多くの事業所が建ち並んでいる。体験活動を実施するには都合の良い環境にあり,数年前から多くの事業所に協力いただいている。
  3. 連絡先
    • 〒684‐0033
      鳥取県境港市上道町1840番地
    • 電話:0859‐42‐3711
    • FAX:0859‐42‐3712
    • 電子メール:sakai1-j@mailk.torikyo.ed.jp
体験活動の概要
1  活動のねらい
○  関係機関の協力を得て,福祉活動や勤労生産活動などの体験活動を行い,地域の人々との交流を深め,支え合い,助け合う態度を育成する。
○  様々な異なる年齢層の人々との交流体験を積むことにより,好ましい人間関係を構築する力を育成する。
2  活動内容と教育課程上の位置付け
○  園児交流活動
   (総合的な学習の時間8単位時間,特別活動5単位時間)
○  職場体験活動
  (総合的な学習の時間30単位時間,特別活動10単位時間)

1 活動に関する学校の全体計画

(1)活動のねらい

  • 保育所を訪問し,園児とのレクリエーションによる人間交流を通して,人との関わり方をぶとともに,生徒同士の良好な人間関係を築く。
  • 3年間の交流を通して,園児の成長過程を目の当たりにし,「命」の尊さを感じ取る。

(2)全体の指導計画

  全学年において,年間2回(5~6月,1~2月)の交流を実施している。異年齢の園児との交流は,望ましい人間関係の構築において大きな効果を発揮するものと考える。また,3年間同じ園児をパートナーとする交流(1年時:年少組,2年時:年中組,3年時:年長組)を基本方針とし,園児の成長を目の当たりにすることで,生徒に「命」の尊さを体感させていきたい。交流にあたっての事前・事後の活動は特別活動(5単位時間),交流活動は総合的な学習の時間(8単位時間)として扱い,技術・家庭における保育領域の直接体験学習にも位置づけている。

2 活動の実際

(1)事前指導

  1. 各保育所の交流人数を確認する。(学年主任)
    下矢印
    栴檀保育園(32名:男子18名,女子14名)
    旧1‐1 (31名:男子19名,女子12名)
    聖心幼稚園(43名:男子19名,女子24名)
    旧1‐2 (32名:男子18名,女子14名)
    台場保育所(30名:男子20名,女子10名)
    旧1‐3 (31名:男子17名,女子14名)
    上道保育所(27名:男子13名,女子14名)
    旧1‐4 (30名:男子17名,女子13名)
  2. 5月11日(火曜日)4限
    • 昨年度の交流名簿を参考に,交流相手を確定する。
      (1月の交流相手を各クラスで確認) → 交流名簿作成
    • 手紙書き(第1時)
  3. 5月13日(木曜日)1限
    • 手紙書き(第2時)
    • 名札の作成
  4. 5月13日(木曜日),14(金曜日)放課後
    • 交流名簿を各保育所・幼稚園に持参し,打ち合わせを行う。
  5. 5月14日(金曜日)終会
    • 旧学級にわかれて事前指導

  手紙の作品例の写真

【1~5についての詳細】

  1. 校区内に所在する4つの保育所・幼稚園(栴檀保育園・上道保育所・台場保育所・聖心幼稚園)に協力をいただき,交流活動を展開している。
  2. 一人一人の生徒が自分の交流する園児に手紙を書いている。そして,生徒代表が事前に交流先にその手紙を届けることが交流の足がかりとなっている。キャラクター本等を参考に,イラストを描いたり色使いをカラフルにするなどして,どの生徒も園児が喜びそうな工夫をこらした手紙を作成している。
  3. 毎回交流時の始まりには,折り紙で作成した名札を園児につけている。生徒同士でコミュニケーションをとりながら名札の形を工夫したり,安全面などにおいても園児の立場で考える姿がよく見られた。
  4. 5.各交流先から受けた注意事項を伝達・指導し,下記の点について指導の徹底を図っている。
  • 園児の話を聴くときは,目線を合わせる。わからないことは積極的に保育所の先生に尋ねる。
  • 緊急の場合は,すぐに先生に連絡する。爪は短くする。
  • パ-トナ-の園児には責任を持ってかかわる。

(2)活動の展開

    集会活動の様子1  集会活動の様子2  集会活動の様子3
  それぞれの生徒が交流相手をリードする立場に立つため,控えめな性格の生徒も積極的に園児に関わっている。普段の生活ではなかなか見ることのできない能力を発揮する生徒もおり,生徒同士が互いに新たな発見をするという場面も珍しくない。園児と共に,汗だくになって活動している表情には,充実感が溢れているように見える。同じ施設内であっても,屋外・屋内での様々な活動状況が見られ,交流園児の活動を支える生徒の姿がある。集会活動を設けて活動している幼稚園もあるが,これについては園の主導で行われている。

(3)事後指導

  交流が終わると,生徒は活動の反省を自分自身の記録に残している。また,班ごとに色画用紙等を利用したまとめを作成し,各保育所・幼稚園に届けている。このまとめには,園児と一緒に写った写真や自分自身の活動の感想,園児への伝言などが盛り込まれている。そして,それぞれの保育所・幼稚園の廊下等に掲示していただいているため,園児の保護者にも交流の様子がよく伝わり好評である。各保育所・幼稚園からも生徒向けにメッセージをいただくこともあり,交流は徐々に深まっている。クリスマスカードや年賀状を贈る活動も行っている。

【交流直後の生徒感想】

  他の人も園児に対してすごく気をつかっていたのが感じられた。積極的に話しかけたりしていてとても良かった。それに、友達が楽しそうにしていて、いつもと違う面を見れた気がして、なんだかとっても嬉しかった♪でも、友達同士で話しているのもちょっと見かけた。
自分より小さい園児とかかわるのは3回目だけど、そのたびに学ぶことがあった。思いやりの心を持って相手にとって楽しい時間になるよう、気をつけることができた。

  クリスマスカード作りの様子の写真

3 体験活動の実施体制

(1)学校支援委員会の体制

勤務先又は機関・団体名 職名
聖心幼稚園 園長
上道公民館 主事
ガソリンスタンド 店長
境港商工会議所 課長
境港市立第一中学校PTA 会長
境港市立第一中学校 校長
境港市立第一中学校 2年学年主任

(2)配慮事項等

  園児・生徒ともに,けがのないような活動になるよう,各保育所・幼稚園との間で,担当者同士が事前の打ち合わせを行っている。それぞれの所・園の指導方針や要望を把握し,生徒に対する指導を徹底していくことが重要である。また,障害があり,交流が困難と思える園児や生徒については,園側や中学校側の教職員が交流を補佐し,円滑な交流が行われるように配慮している。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

  交流活動終了後には,毎回活動の振り返りを行い,評価の材料にしている。自らの活動とともに,他の生徒の活動をも振り返ることにより,次回の交流に向けての課題意識は高まっているように思われる。
  また,生徒の感想を抜粋して,学年・学級通信などで全体に紹介している。このことは,自分では気づかなかった視点での,反省事項や交流方法を発見することにつながっているようである。友人の長所を改めて発見する生徒も多く,個々の人間関係づくりや学級・学年集団づくりにも効果をもたらしている。目的意識が薄いままに活動に参加している生徒については,活動の意義についての指導を徹底するよう努めた。

5 活動の成果と課題

  この活動を通して,生徒には相手の立場に立って物事を考えようとする姿勢が見られるようになった。このことは,思いやりの気持ちを育むという点で,大きな成果であると考える。また,3年間,同じ園児との交流を継続し,その成長の様子を体感することは,命の尊さ・大切さを実感として学び取るという点でも,大きな成果があるように思う。
  反面,課題も浮き彫りになってきた。旧学級での活動となるため,活動の指揮を学級担任が執ることができず,学級単位でのまとまりに欠ける印象は否めない。また,本校および各保育所・幼稚園の双方において数多くの転出入が見られ,人数調整に労を要した。編入園児数が10数名増加したため,1人で2人の園児を担当することになり困惑した生徒もあった。逆に2人の生徒で1人の園児を担当する保育所もあり,交流相手の人数配分が均等にならないということは課題のひとつである。また,3回目の交流となり,生徒の中に慣れが生じてきた部分もある。
  来年度については,これらの課題の改善や,生徒の意識を一層高めるための具体的な方策をとっていきたい。例えば,下記の点があげられる。

  1. 4つの保育所・幼稚園との連絡を密に取り,事前の打ち合わせにおいて,この体験活動のねらいについての共通理解を一層深める。
  2. 交流の目的を生徒に繰り返し確認しながら,この活動のねらいとするところを達成できるような指導を重ねていく。
  3. 生徒自身が,前年度の自分の体験をもとに主体的に交流計画を立て,その活動に責任を持って取り組めるような手立てをとる。

  最後に,園児の家庭環境の変化については,活動準備の段階で一層の配慮を心がけたい。改姓など,プライベートな内容に関わる場面が多々あるからである。このことは,3年間という継続的な交流を導入する際には気づかなかった点であり,生徒への適切な指導が必要であると考える。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

-- 登録:平成21年以前 --